半沢直樹シリーズの第4弾です。
「ロスジェネの逆襲」の続編がこの「銀翼のイカロス」です。
本作品は,実は2020年にドラマで復活した「半沢直樹2」の後半部分の原作となっています。
とうとう半沢直樹シリーズの最終章となってしまいました。
今回の話は航空会社についての話です。
読んでいけばわかるんですけど,おそらくは日本航空がモデルになってると思います。
「ナショナルフラッグである日本航空が倒産するはずがない」
と僕も思ってましたし,おそらく多くの方々もそう思ってなかったのではないでしょうか。
2010年の「会社更生法」の適用を思い出しました。
目次
1. こんな方にオススメ
2. 作者の経歴
3. 登場人物
4. 本作品 3つのポイント
4.1 帝国航空の再建
4.2 半沢史上最大のピンチ!
4.3 半沢の大逆転!
5. この作品で学べたこと
● 半沢の最後のミッションは具体的にどんなことなのかを知りたい
● 本作品での大手航空会社再建がどのように行われるかを知りたい
● やはり,半沢直樹の会心の一発逆転を見てみたい
IT企業間の大きな買収案件を落着させ、子会社・東京セントラル証券から東京中央銀行に復帰した半沢直樹。今度は、破綻寸前の錆びたナショナルフラッグ・帝国航空の立て直しを命じられる。その矢先、政府主導の再建機関から、500億円にもなる帝国航空の借金を帳消しにせよと持ち掛けられ、半沢がノーと言えば、お国からだけでなく、行内のあちこちからも睨まれ、憎まれ、脅され、四面楚歌に。そんな中、半沢はもっとも近寄ってはいけない行内のある問題に気づくが。シリーズ累計550万部突破、説明不要の「半沢直樹シリーズ」第四弾!
-Booksデータベースより-
1963年生まれ 慶応大学文学部・法学部卒業
三菱銀行に入行 退職後コンサルタント業,ビジネス書の執筆を経験
1998年「果つる底なき}で作家デビュー
主な受賞歴
江戸川乱歩賞(果つる底なき)・吉川英治文学新人賞(鉄の骨)・直木三十五賞(下町ロケット)
半沢は,前作の「俺たち花のバブル組」の後,東京中央銀行から東京セントラル証券へ左遷されてしまいました。
半沢直樹・・・主人公 東京中央銀行の営業第二部次長に復帰
紀本平八・・・東京中央銀行常務 旧東京第一銀行出身
中野渡謙・・・行内融和を願う頭取 半沢を出向から呼び戻した
神谷巌夫・・・帝国航空社長
白井亜希子・・国土交通大臣。帝国航空タスクフォース
乃原正太・・・帝国航空タスクフォースの顧問弁護士
黒崎駿一・・・金融庁調査官 オネエ言葉で攻めてくる
1⃣ 帝国航空の再建
2⃣ 半沢史上最大のピンチ!
3⃣ 半沢の大逆転!
大手航空会社である「帝国航空」は経営不振に陥ってました。
このまま倒産でもしてしまったら債権を回収できなくなってしまうので,東京中央銀行としては大打撃になってしまいます。
そこで,中野渡頭取は,帝国航空の再建の責任者に半沢を指名します。
しかし、同銀行内にはそれを良しと思わない者もいます。
東京中央銀行は元々別々の銀行だったんですけど,今回は派閥がかなり強調されて表現されているように思いました。
半沢は元々「産業中央銀行」なので「旧S」で,もう一つは「東京第一銀行」で「旧T」という言い方をしています。
帝国航空の担当はこれまで常務である紀本率いる旧Tがやってきてました。
よって半沢がその担当になるということは,紀本としてもいい気分ではないわけです。
半沢は,旧Tの一人である曾根崎とともに帝国航空を訪問するんですけど,社長からは本気で再建する気持ちを感じではないんですね。
総理大臣の指示の元「帝国航空タスクフォース」という計画を国土交通省大臣の白井という女性が担当することになりました。
そして白井は東京中央銀行に「債権放棄」を迫ってくるのです。
半沢 vs 白井,いや東京中央銀行 vs 帝国航空タスクフォースの構図となります。
ここで白井は自分が所属する進政党の党首である箕部に相談をします。
実は,紀本は政治家の重鎮である箕部とつながりがありました。相当な大物です。
この箕部,紀本はかなり「お世話」になっていて,頭が上がらないみたいなんです。箕部の指示で,紀本は「半沢を帝国航空担当から外せ」と企むんですね。
また,再建タスクフォースの顧問弁護士の乃原からも脅迫されます。
乃原は紀本と同級生で,かつて紀本からいじめられてたらしいんです。
やっぱり,いじめられた方は覚えてますから。
ここであのオネエ調査官「黒崎」が登場します。ん~,やっぱり片岡愛之助さんを思い出しますね。
とうとう帝国航空の調査に乗り出してきたのです!
前回の帝国資料と今回の帝国航空の資料にアンマッチが見つかって,そこを黒崎が追及するのです。「これ改ざんでしょっ!?」と。
金融庁からは東京中央銀行から「業務改善命令」が出てしまいました。
しかし,行内では紀本を中心に「債権放棄」の方向でまとまろうとしてました。
でも半沢は債権放棄だけは絶対してはいけないと主張し,行内で真っ向対立するです。
「貸した金返せよ!」という当たり前の原則が通じなくなることが半沢は譲れないのです。
銀行と企業との「あるべき姿」を追求する半沢はこれを許せないでしょうね。
銀行も多大な損失を被るわけですから。本当にそれでいいのかと。
再生タスクフォース,箕部率いる進政党を含めた政府,東京中央銀行の紀本を含めたほとんどの行員,圧倒的多数で「債権放棄」を選択する者ばかりです。
でも半沢はあくまで「債権放棄拒否」を主張するのです。
半沢はこれまでで最大のピンチを迎えてしまうのです!
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帝国航空再生タスクフォースのメンバーは,融資元の銀行担当者をすべて集めて会議を開きます。
各銀行が「債権放棄なのか,債権放棄拒絶なのか」を述べないといけなくなりました。
各行が債権放棄を選択する中,半沢に番が回ってきました。そこで半沢は,
「債権放棄は拒否させてもらう!」
と堂々と宣言するのです。そしてここからがクライマックスです。
どうやら,過去に東京第一銀行はなぜか進政党の箕部に融資していたようなのです
半沢は富岡という優秀なバンカーにこの証拠を調査させます。
すると,箕部はその融資を不動産会社へ渡し,そこに空港を誘致した上にかなりの利益を得ていたことを突き止めます。
これがバレてしまえば東京中央銀行は大変なことになってしまいます。
この事実を半沢はどうするのか。やはりそこは「半沢」でした。
不正は絶対に許せない!「白は白,黒は黒!」です。どっかで聞いたセリフですね。
とうとう半沢は箕部にそれを突き付けます。
決定的な汚職の証拠を見せつけられた箕部は何と逃げてしまいした。
しかもこの状況が全国に放送されてしまっているというおまけ付き。
白井も辞職に追い込まれ,進政党は万事休す!
もちろん諸刃の剣で東京中央銀行も世間からバッシングを受けることになるのです。
一度は土俵際で寄り切られそうになる半沢でしたが、周りの味方の協力で、政治家のこれまでの不正、銀行との癒着、顧問弁護士の脅迫にも対抗できる「証拠」を握ることができました。
半沢強みは,人脈の大きさと筋書きを構成するスピードの速さ,そして正義感なのかなと思います。
そして債権放棄という最悪のシナリオを回避することができたのです。
やはり大逆転が半沢直樹の真骨頂で,読んでいて気持ちがよかったです。
半沢にとって,日本の空輸を維持しなければならないという再建プロジェクトは大変プレッシャーのかかるものだったと思います。
でもそれ以前に半沢は東京中央銀行の行員であって,銀行の将来を考えての行動だったのだと思います。
やはりそこには、企業とはどうあるべきかを考えられる力、政治家だろうが誰だろうが自分の言いたいことを発言する力。
そのスキルがある人間だけが達成できるタスクであり、それができるのは行内では半沢のみなんですね。
東京中央銀行の合併・融和を願った頭取の中野渡が辞任し、一つの時代の終わりを迎えたということなのだと思います。
今回の作品とは関係ないですが,「JALの奇跡」という本に「日本航空の再生」のことが書かれています。
先に書いたように2010年,日本航空は「会社更生法」を適用をしました。
会社更生法は民事再生法と違って経営陣を入れ替えてしまうので,全く異なった企業になっていったのだと思います。
「稲盛和夫」さんが推進した「フィロソフィ」と「アメーバ経営」で再建しました。
自分の勤める企業に対しての共通の考え方や価値観を徹底して教育し,そして社員一人一人が経営者視点を持って行動できるようにしたことで,2年弱で大手航空会社を蘇らせました。
● 複数の銀行や企業が合併・吸収するというのは,その企業の歴史をも背負うということ
● 大手企業の再建には多くの企業,人,政治家が関わっている。しかしそう簡単に再建できるものではない
● 自分の信念に沿った言動・行動ができる人のことを尊敬できる
半沢シリーズはこれで完結なのでしょうか。それだとちょっと不完全燃焼の気がします。
池井戸先生! お願いですから,頭取まで昇りつめる半沢直樹を見せてください!