日本で起こりうる災害に関する小説はこれまでたくさん読んできました。
火山の大噴火,地震発生,それに伴う火災の発生や原発の機能停止,放射能汚染などなど,物理的な災害による二次災害もあって,その被害というのは甚大なものになるということを伝えています。特に地震に関しては,いつ巨大地震がやってくるのだろう,不安になっている人も多いと思います。
目次
1. こんな方にオススメ
2. 作者の経歴
3. 本作品 3つのポイント
3.1 大規模発電所の建設
3.2 街が全滅する?
3.3 大災害を防げるか?
4. この作品で学べたこと
● 日本において地震・火山噴火などの災害が多い原因を知りたい
● 大噴火を引き起こす,地球と日本の構造メカニズムを知りたい
● 本作品の,大災害の衝撃の結末を知りたい
関東北部では、金精峠で土砂崩れが起こり、足尾町の人々が原因不明の死を遂げ、富岡で大火災が発生するなど大災害が頻発していた。そんな折、元大手ゼネコン技術者の木龍のもとに、突如奥立という男が現れる。すべてはマグマ活動にともなう火山性事象が原因であり、これ以上の被害を阻止すべく、東京湾第一発電所の建設に携わった木龍の力を借りたいという。だが、木龍の協力もむなしく秩父鉱山で大噴火が発生、やがてマグマは東京へと南下していく。このままでは関東が壊滅し、最悪の場合、日本、そして世界までもが滅んでしまう――。
-Booksデータベースより-
過去にも巨大地震はありました。
大災害と聞いて思い出すのは,やはり「東日本大震災」だと思います。
僕自身は被災はしませんでしたが,本当の意味で地震や津波の恐ろしさを感じました。
さらに原子力発電所での電源喪失,原発建屋の水素爆発も起こってしまうという,想定外の二次災害も起こってしまいました。
これは「Fukushima50」の原作「死の淵を見た男」でも描かれていますね。
この「ゼロの激震」では,地震の話かと思って読んだんですけど「火山の大噴火」がテーマとなってます。
作者は「安生正」さんです。
大噴火がこんなにも甚大な災害を引き起こすのか。
将来,日本でこんな恐ろしい災害が起こるのだろうか。
真剣に考えさせられた作品です。
1⃣ 大規模発電所の建設
2⃣ 街が全滅する?
3⃣ 大災害を防げるか?
浦安に人工島を作り,そこに大規模な「地熱発電所」を建設するというプロジェクトが計画されるところから話は始まります。
フィリピンプレート,太平洋プレートなどをくり抜き,さらにその下のマントルまで掘るというものでした。
マントルって,マグマのような液状のものを想像していたんですけど,実は岩石のような固体なんですね。
それが高熱や高圧で溶けたものがマグマらしいです。
地下のマグマによる地熱を利用した画期的な発電所で,原子力発電のように放射能漏れもない,二酸化炭素も出ない,クリーンな発電所であるといいます。
地下40kmもの距離を掘り進んで大規模発電をするという技術が今の日本にあるのでしょうか。
調べてみると,世界で一番深い地下はロシアにあるそうです。
その深さ約12km。科学採掘といって,地下奥深いところの環境を調査するために掘ったみたいです。地球は中心に向かってどんどん温度が上がるわけですから,12kmが限界だったみたいです。
中学時代に習いましたね。地球の中心は約6000度ですから。気圧の問題もありそうですし。
それを考えても40kmというのは深すぎる印象があります。
なんか嫌な予感がプンプンしますね。
そんな時,大事故が起こってしまうのです。
現場責任者だった木龍は,地下に作業員を地下に残したまま自分だけが助かってしまいます。
それが原因でPTSDを患ってしまい,さらに責任を取って,木龍は現場を去ることになるのです。
日本には至る所に活動している火山があります。
マグマだまりが膨張して大噴火を起こしたとか,水蒸気爆発を起こしたとか。
現在でも海底からマグマが噴出し,小笠原諸島に「西之島」という新しい島ができたのは2013年。記憶にも新しいですね。
この作品では,まず足尾市という北関東で街が全滅するという災害が起きます。
住民がマグマの噴出や火砕流,火山性ガスの発生により,全員亡くなったというのです。
こんな恐ろしいことが実際に起こるのでしょうか。
次は富岡市まで。そして事態はさらに深刻化します。
関東地方の地下でマグマが膨張し,関東平野の地下を大量のマグマが移動し始めるのです。
これを食い止めなければ人口の集中する東京へマグマが突入してしまいます。
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政府はいろんな方法でマグマの南下を防ごうとします。
しかし,間に合いませんでした。
「関東地方の大噴火と大沈没」が起きてしまうんですね。
このままいくと関東地方が全滅してしまう,それをなんとか食い止めないといけない。
そこで技術者たちが呼ばれ,知恵を出し合い対策を練ります。
災害の最大の原因は,火力発電所によって排出された二酸化炭素を地下に埋没させてきたことにありました。
地球の奥深くには「核」と呼ばれるものがあり,その周囲をマントルが覆っているのは先ほど書きました。
地下に二酸化炭素を封じ込めたことによる高圧によってマントルが融解し,マグマが大量に生成されたわけです。
どんどん膨張していき,噴火を誘発してしまいました。
最後のシーンでは,技術者が命を懸けてマグマの流出を最小限に防ぎます。
しかし,関東地方のビル群だけでなく,東京タワーやランドマークタワーも地下に沈んでしまいました。
「えっ,そこまで描くの?」って思ってしまうくらいの衝撃。
きっと,マグマの流れを止めることに成功して,大災害を防ぐのだろうなと思いながら読んだ予想は見事に裏切られました。
これが自然災害の恐ろしさなのでしょうか。
地球温暖化を防ぐために,二酸化炭素排出を目標値まで下げること。
それを大気に排出するわけにはいかないから地下に埋めてきたのです。
日々の生活から出されるゴミが地下に埋められる。
原発の核廃棄物を地下に埋めたり,放射能で汚染されたものを海に流したり,
都合の悪いものは地下に埋めるか海に流す。
しかしその「しわ寄せ」というのはいつか大きな打撃となって跳ね返ってくるのかもしれません。
● 日本を襲う大災害は,地震以外にも,火山の大噴火の可能性もある
● マントルまでの採掘は,地球の構造に大きく刺激し,結果的に大災害のを引き起こす可能性がある
● 大噴火の原因は,地下に二酸化炭素を埋めたことによって引き起こされる可能性がある
今回の話は「天災ではなく人災」だったとも言えるのではないでしょうか。
作者は,人間の行為が災害を生んだと言いたかったのではないでしょうか。