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【ゲームの名は誘拐】東野圭吾|狂言誘拐の行方

ゲームの名は誘拐

本作品は元々,ある雑誌で「青春のデスマスク」として約2年間に渡って連載されたものを,2002年に刊行化されたものです。

かつて東野圭吾先生の作品を読み漁っていた頃,多くの作品の中でも「これは面白かったな」と思ったのを覚えています。

実際に2003年に映像化もされています。タイトル「g@me.」として,藤木直人さん,仲間由紀恵さんが出演されています。そして2024年,長い時を超えて,WOWWOWのドラマとして復活するようです。

テーマは「狂言誘拐」で,狂言なのでもちろん見せかけの誘拐なわけなんですけど,とてもスリルがあり,一気読みした記憶があります。

ドラマ化される前に興味のある方は是非読んでみてほしいと思います。

こんな方にオススメ

● 主人公が計画した「狂言誘拐」とはどんなものなのかを知りたい

● 誘拐は成功するのか,スリルのある作品を読んでみたい

● 最後に起こる大どんでん返しを知りたい

作品概要

敏腕広告プランナー・佐久間は、クライアントの重役・葛城にプロジェクトを潰された。葛城邸に出向いた彼は、家出してきた葛城の娘と出会う。“ゲームの達人”を自称する葛城に、二人はプライドをかけた勝負を挑む。娘を人質にした狂言誘拐。携帯電話、インターネットを駆使し、身代金三億円の奪取を狙う。犯人側の視点のみで描く、鮮烈なノンストップ・ミステリー。
-Booksデータベースより-




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主な登場人物

佐久間駿介・・主人公。広告代理店「サイバープラン」のクリエイター

葛城樹里・・・父である葛城勝俊と愛人との間に生まれた娘

葛城勝俊・・・「日星自動車」の副社長。樹里の父親

本作品 3つのポイント

1⃣ 主人公の計画した狂言誘拐

2⃣ 計画は成功したのか?

3⃣ 本作品の考察

主人公の計画した狂言誘拐

広告プランナーである佐久間駿介には,時間をかけて作り上げた「オートモービルプラン」というプロジェクトがありました。そのクライアントは日星自動車という大手企業。しかしその副社長である葛城勝俊という人物が一方的に「中止」を言い出したのです。

これには納得いかない佐久間は,直接,葛城の自宅を訪ねるために田園調布へ向かいます。一体,プロジェクトのどこが気に入らなかったのかを問い質すつもりのようです。

ところが家に近づいた時,一人の女性が塀を飛び越え,逃げていきます。佐久間は彼女の後を追うことにします。そしてホテルまでたどり着いた時「今夜の宿を探しているんでしょ,葛城さん」と佐久間は声をかけます。これに戸惑う女性。

彼女の名前は葛城樹里といいました。もちろん勝俊の娘です。母親は彼女が8歳の時に白血病で亡くなってしまったようです。葛城家には後妻との間に授かった千春という娘もいました。しかしこの樹里には何か確執があるようです。

どうやら勝俊の以前の愛人との間に生まれたのが樹里らしいのです。なんとも複雑な。。。葛城家の意外にも不遇な家庭環境を知る佐久間。樹里も家に帰りたくない様子。

そこで佐久間はある計画を立てます。そして言うのです。「ゲームをやってみないか」それが今回の「ゲーム」であり,樹里の誘拐だったのです。樹里の身代金を要求するという計画。

葛城勝俊様へ

ご息女を預かっている。無事に返してほしければ,こちらの要求に従っていただきたい。まずは現金,三億円を用意すること。

ゲームなので,実際には「狂言誘拐」ということになります。佐久間には樹里を殺害する気持ちもないわけで,ただプロジェクト中止の復讐心のようにも思えます。

共に生活を始める佐久間と樹里。葛城が会議に体調不良で会議に出席しないことがありました。もちろんその会議には佐久間も平然と出席しているわけです。佐久間はしてやったりの様子です。

そのことを佐久間は樹里にも伝えます。狂言誘拐でありながら,徐々に心が通じ合ってくる二人。ただ,佐久間はある一線は超えないように気を付けているようでした。かつて「ストックホルム症候群」というものを聞いたことがあったからです。

ストックホルム症候群とは

人質や被害者が自分を脅迫または虐待している人に対して共感や愛情を抱く心理的現象を指します。

1973年にスウェーデンのストックホルムで起きた銀行強盗事件で、人質たちが犯人に同情的な態度を示したことから名付けられました。

-ハートフルライフカウンセラー学院サイトより-

そして,ゲームは開始されます。まずは樹里が父親の携帯に電話をします。身代金の受け渡し場所を次々と変更しながら,樹里は父親を誘導するわけです。トバシの携帯で掛けているから,着信履歴もあてにならないんですね。

ところが,佐久間は何かしら違和感を感じている様子。高速を周回して走っている車が,樹里の父親の乗るベンツだけであることがおかしいと。つまり,誘拐事件なので警察車両なども一緒に周回しているはずなんだけど,それがない。

ん~,確かに何かしらの違和感は感じます。この違和感は何なのだろうか。。。

計画は成功したのか?

ある日,佐久間が起きると,隣で寝ていたはずの樹里がいません。

すでに起きて,朝ごはんを作っているようです。佐久間は何となく,その姿をデジカメに撮ります。実はこのシーンが後々ポイントになります。

佐久間は樹里と会話する中で,自分の過去を知っていることに気づきます。どうやら樹里は,佐久間のパソコンの中を覗き,いろいろなファイルの中身を読んだようです。勝手なことをする樹里に対して,佐久間は不信感を感じている様子。

そう言いながらも,佐久間は計画を実行します。身代金の受け渡しに樹里を使って。そして受け渡しに成功するのです。「とうとうやった。大成功だよ!」興奮する樹里。そりゃ目の前に大金があるわけですから。佐久間は自分のパソコンからメールを打ちます。

葛城勝俊殿

荷物は確かに受け取った。中身を確認し次第,葛城樹里をお返しする

葛城樹里を解放する前に,佐久間は確認します。樹里が警察からいろいろと聞かれた時に何と答えるか。誘拐された夜は「化粧クリームのことで,千春と揉めた」と言う。犯人のアジトを聞かれたら「目隠しをされて,ベッドに寝かされていたからわからない」と。用意周到に確認する佐久間。そして二度と会わない約束をします。

ところがここから意外な展開が待っていました。それは「葛城樹里が行方不明になった」らしいのです。葛城勝俊からも身代金を払ったから娘をはやく解放しろと訴えています。えっ? どういうこと? ということは,樹里は家に戻っていないということ?

さらに意外なことがニュースで流れます。警察が葛城樹里の捜索に乗り出したというのです。そのニュースで女性の顔写真が映し出されます。写真の下には「葛城樹里さん」の文字が。。。

しかし佐久間はこの顔写真に衝撃を受けます。それは一体,どんな写真だったのか?

本作品の考察

この後は,実際に作品を読んでほしいと思います。

本作品の主人公は佐久間ですが,ほぼ一人称で描かれています。計画した狂言誘拐に対して,葛城との対決,身代金を得るための娘との一連の行動だけでなく,警察が裏でどんな動きをしているかも伏せられていて,とてもスリルがあって面白かったです。

誘拐を実行しながらも,時々違和感を感じる主人公。それらは全て伏線であり,最後の最後に一気に回収されます。読んだ方は,最後の結末を知って「なるほど,そういうことだったのか。。。」と,驚いた方も多いのではないでしょうか。

自分が考えたプロジェクトを中止させられた佐久間のプライドと,中止にした葛城のプライドのぶつかり合い。結末に向かう過程で張り巡らされた,数々の伏線。

今年(2024年)に放映されるWOWWOWのドラマも観てみたいですね。

この作品で考えさせられたこと

● 主人公の一人称で描かれていることで,スリルが倍増している

● 計画どおりに進んだはずの狂言誘拐の結末に驚いた

● やはり,この構成を考えついた東野先生に感服です

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