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【Nのために】湊かなえ|それぞれの「N」の思いとは

ある高層マンションに住む夫妻が殺害されるところから話は始まります。

本作品には姓,名のどちらかのイニシャルが「N」のつく人物が数多く登場し,それぞれの人物の視点で話が進んでいきます。一体マンションの夫妻に何が起こったのか。そこに「N」たちがどのように関係しているのか。

特に後半は事件の真相を知りたくて,一気に読める作品だと思います。

こんな方にオススメ

● 「Nのために」というタイトルの意味を知りたい

● 登場する「N」がつく全ての人物のことを知りたい

● 人と人との繋がりについて深く考えてみたい

作品概要

超高層マンションの一室で、そこに住む野口夫妻の変死体が発見された。現場に居合わせたのは20代の4人の男女。それぞれの証言は驚くべき真実を明らかにしていく。著者初の純愛ミステリー。
-Booksデータベースより-



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主な登場人物

杉下希美・・・主人公。K大学四年生。将棋が趣味

成瀬慎司・・・杉下と出身が同じで,将棋が趣味。T大学四年生。

安藤望・・・・学生時代のアパートで,杉下と西崎と親しくなる

西崎真人・・・大学四年生。杉下,安藤と同じアパートにいた

野口貴弘・・・安藤の上司。かつて石垣島で杉下,安藤と親しくなる

野口奈央子・・貴弘の妻

本作品 3つのポイント

1⃣ 野口夫妻の殺人事件

2⃣ 事件の原因は不倫?

3⃣ それぞれの「N」のために

野口夫婦の殺人事件

杉下と安藤は大学生。かつて石垣島に旅行へ行った際,野口貴弘・奈央子夫妻と出会います。

杉下と安藤は将棋を趣味にしており,それを見ていた貴弘も将棋に夢中になっていきます。

ある日,杉下と安藤は野口夫妻の住むマンションに呼ばれることになります。将棋に興味を持った貴弘が彼女たちを時々呼んでいたみたいですね。

しばらくすると,なかなか呼ばれなくなります。一体夫妻に何かあったのかが気になります。

ある日,杉下たちが再び野口夫妻のマンションを訪れることになるんですけど,ドアの外側にはチェーンが取り付けられているんです。

内側から外に出られないようにしているようにも思いますが,一体何のためのものなのか。

貴弘が言うには,奈央子が流産してしまい,情緒不安定になっているという様子でした。

外出して事故に遭いそうになったこともあり,このチェーンを付けたようですね。

杉下たちは何とかしようと,成瀬が働くレストランの出張サービスを利用することを考えます。どうしても奈央子に元気になってもらいたい,そんな思いからです。

貴弘は何とか安藤に将棋で勝ちたいと,杉下を呼んで対策を練ります。

そこへ安藤がやってきますが,貴弘は安藤をマンション内のラウンジに呼び出します。

一人で待っていた杉下に突然悲鳴が聞こえます。杉下がそこへ向かうと信じられないことが起きていました。

貴弘は頭から血を流して倒れており,奈央子も腹から血を流していました。

そして驚いたのはそこに西崎がいたことです。血痕のついた燭台を持って。

一体ここで何があったのか。本作品の最大のポイントとなります。

事件の原因は不倫?

野口夫妻の事件。真相は奈央子の不倫にありました。

奈央子は西崎と親密な関係になってしまいました。それを貴弘が気づき,おそらくドアのチェーンも奈央子が出ていけないように取り付けたのでしょう。

一方,西崎の視点では,奈央子は暴力を振るわれていたようです。というか,その原因は西崎にもあったわけで,花屋になりすまし,野口家にやってきたのでした。奈央子が貴弘にナイフで刺されたため,西崎は近くにあった燭台で貴弘を殴ったというのです。

ん~,でも何か裏がありそうな予感がします。これは真実なのでしょうか。

成瀬は杉下と話し,「奈央子救出作戦」を提案してきました。

事件当日,成瀬は杉下との約束通りに野口夫妻のマンションへやってきましたが,突然杉下の悲鳴を聞きます。

成瀬が見たものは野口夫妻の遺体でした。ここで成瀬は作戦のことを内密にするように指示し,その後警察を呼ぶのです。

それが一つ目の「Nのために」ということなのでしょう。

しかし真相は多くの「Nのために」が存在したのでした。

それぞれの「N」のために

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成瀬は密かに「西崎は犯人ではない」と考えていました。それは,西崎がかつて親からの虐待でやけどを負った経験があり,「燭台を持った」ということが信じられなかったからです。

安藤は事件当日,マンションにやってきたものの,赤いバラの花束を抱えた西崎を見つけます。「なぜここに?」安藤は疑問に思います。

安藤は直感するのです。「杉下たちは何かを企んでいる」と。

ここが大きなポイントなんですが,安藤は杉下たちの密かな企みに疎外感を味わったのでしょうか,その時「ドアのチェーンをかけてしまう」のです。

これで作戦,つまり「奈央子を外に連れ出す」作戦が失敗する直接的原因となってしまいました。

杉下は,実は野口貴弘のことを知っていました。石垣島で野口夫妻とも偶然を装って近づいていたのです。杉下,安藤,西崎がかつて住んでいた「野バラ荘」を残してもらうために。
杉下は,安藤には感謝していました。

安藤に救われたこともあった経験から,安藤を野口の会社より内定をもらえるようにしたのも杉下でした。

そして,事件の真相。実は貴弘を殺害したのは西崎ではなく,妻の奈央子でした。

貴弘と対峙した西崎は,ナイフで威嚇していましたが,それを奪われてしまいます。

それを見た奈央子が燭台を貴弘に振り下ろしたのです。

そして,奈央子はナイフで自分の脇腹を刺してしまうのです。これが事件の真相でした。

今回の作品では,誰が犯人なのか、一体マンションの中で何が起こったのかを知りたくてどんどん読み進んでしまいました。

しかし、時間は単純なことではなく、実は複雑に絡み合っていました。

それぞれの人物が過去から引きずっている負の思い出。

友情のため、愛情のため。それを吹っ切るために生きてきた全ての「N」

それぞれのNの思い

それぞれの「N」には秘めたる思いがあったんですね。

最後にこの真相を知ってしまった時には,切なくなりました。

ほんの少しのボタンの掛け違いのために大事件になってしまったということです。

人と人を繋ぐものは「絆」と言える部分もあるでしょうが,その時の「感情」も大きく左右するものなのだと改めて考えさせられました。

まさに「Nのために」というタイトルが相応しい話だったと思います。

この作品で考えさせられたこと

● 登場する「N」たちの少しの考え方の違いで大きな事件を引き起こしてしまった

● 人と人との繋がりはその瞬間だけではなく,過去の出来事,価値観,感情,多くのものに左右されるものである

● まさに「Nのために」という言葉がふさわしい内容でした

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