IT技術が進化し,AI(人工知能)が発達してきました。
本作品は,AIを利用するメリットも描かれていますが,逆に「崩壊」とタイトルにあるように実はデメリットもあります。
目次
1. こんな方にオススメ
2. 作者の経歴
3. 登場人物
4. 本作品 3つのポイント
4.1 人間 vs 人工知能
4.2 AI「百眼」の恐ろしさ
4.3 AI技術をどう利用すべきか
5. この作品で学べたこと
● AIのメリット・デメリットについてもっと知りたいい
● AIを犯罪捜査に利用した場合のリスクについて知りたい
● 人間がAIと共存していくために必要なことを学びたい
2030年AIが命の価値を決める。スマートフォンなどのデジタルデバイスによって日々蓄積される検索履歴や趣味嗜好の情報、行動データに加え、年齢、遺伝子情報、病歴、医療費、犯罪歴、納税額ーー。私たちの個人情報から、AIが「生きる価値がある人間」と「生きる価値がない人間」を選別する。大量殺戮が始まるまで、あと数時間。天才AI開発者は、その悲劇を止められるのか。
-Booksデータベースより-
十数年前,AI技術を利用した将棋ソフトが,プロ棋士に挑戦したことがありました。
この頃,ソフトは人間にほとんど勝てませんでした。
しかし現在は違います。
機器の性能が向上し,将棋での攻撃・防御に対する考え方(アルゴリズム)も進化し,とうとうAIは人間の頭脳をも凌ぐ存在になりました。現在では多くの分野でそのAIの技術が利用されています。
「自動車の自動運転」「携帯ショップやホテルなどの受付ロボット」「Google翻訳」「お掃除ロボット」などなど。
これからも私たちの身の回りには,AIを利用したものがあふれかえることでしょう。
しかし逆に,人間の仕事がAIに奪われてしまうのではないかという懸念もありますよね。
かつて,産業革命により工場の自動化が進んだことによって生産性が大きく向上しました。
時代が変化する中で技術革新が起こり,効率化を図ることで世の中は便利になってきた反面,人間の仕事が奪われてしまったという事実もあります。
この作品は,2030年,桐生という最高の技術者が開発したAI「のぞみ」が,事故を機に暴走し出し始めます。
この作品の作者は「浜口倫太郎」さんです。
僕よりも若い方なので,AIを題材にした作品を作り上げたというのは本当にすごいと思います。
桐生浩介・・・AI「のぞみ」を開発した天才科学者。主人公。
桐生 望・・・浩介の妻。AI「のぞみ」の共同研究者。後に亡くなる。
西村 悟・・・浩介の義理の弟。
桜庭 誠・・・警察庁警備局の理事官。AI「百眼」で桐生を追う。
真犯人は誰で動機は何なのか,見どころの多い作品となっています。
1⃣ 人間 vs 人工知能
2⃣ AI「百眼」の恐ろしさ
3⃣ AI技術をどう利用すべきか
桐生という最高のAI技術者が,「のぞみ」という,世の中のさまざまな情報の集合体である「ビッグデータ」を分析し,意思決定につなげるというものを開発します。
この「のぞみ」は,亡くなった桐生の妻である望(のぞみ)のがんを治療するために開発されたものでした。
医療AIである「のぞみ」は,ほとんどの医療機関に導入され,適切な診断,治療を提供する,重要なものになっていきました。
しかし,望のがんは治らず,亡くなってしまいます。
そしてある日,「のぞみ」がハッキングされてしまいます。
そのサーバルームに手鏡を探しに入っていた桐生と望の娘である「心」は,部屋がロックされ閉じ込められてしまいます。
そして「のぞみ」は暴走をはじめます。
その真犯人に真っ先に疑われたのが桐生でした。
桜庭という警察庁の理事官を中心に,桐生の捜査を始めます。
そしてAIを使って桐生へ攻撃を始めます。それが「百眼」です。
この「百眼」は警察の捜査で使用されるAIで,「のぞみ」を乗っ取ることでビッグデータを利用しようとします
防犯カメラ,生体認証データなど,捜査に必要なデータを元に犯人を見つけ出すというものでした。「のぞみ」のサーバ室へたどり着くため,逃げる桐生,それを「百眼」を使って追う桜庭。
まさに,人間 vs AI,「桐生」vs「百眼」の対決が始まりました。
桐生の行動は「百眼」から丸見えになっていました。
どこにいても桐生の居所がわかってしまっている。
日本中の「ビッグデータ」を使い,ターゲットを見つけ出してしまいます。
将来,こんな恐ろしいものが開発されるのでしょうか。
ひょっとすると,これに近いものはすでにあるかもしれませんね。
インターネットを通して,監視カメラ,Nシステム,SNSなど,ビッグデータとAIがあれば,実現できるのかもしれません。
本当に2030年に開発されているかも。
しかし,AIは人の善悪を正しく判断できるのでしょうか。
万が一,罪もない人間がこの「百眼」のようなAIのターゲットになってしまったらと思うと恐ろしくなります。
桐生は「百眼」から逃げ切れるのか。一体,誰が真犯人なのか。動機は何なのか。
ここから先は,本作品を是非読んでほしいと思います!
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必死の思いで桐生は「のぞみ」の元にたどり着きます。
そこには桜庭が待っていました。
桐生はプログラムを書き換えた「百眼」の機能を使い,その真犯人を突き止めます。
「百眼」を使って割り出した真犯人は「桜庭」でした。
飼い犬に手を噛まれる,というのはこのことでしょう。
彼の目的は,生きる価値のない人間とそうでない人間を区別し,価値のない人間を殺害するということを実行しようということでした。
桜庭は,岸という副総理とつながってました。
岸が総理大臣になることと引き換えに,桜庭は全国民のデータを入手します。
そして「生きる価値のない人間」を殺害することで,世の中の貧困をなくすという,何とも身勝手な目的があったのです。
その模様が小型のドローンで全国民に一斉に配信され,桜庭は万事休すです。
「のぞみ」の暴走もストップし,閉じ込められていた「心」も助かります。
時代とともに技術は日進月歩で進歩し,それをどう利用するかが重要になってくると思います。
どんなものにもメリット・デメリットがあるし,またそれを利用する目的もさまざまだと思います。
これからも技術の発展とともにますます生活様式も変化していくことでしょう。
しかし,そのプログラムに不具合があれば暴走する可能性もあるし,さらに悪意があれば意のままにコンピュータを操ることだってできます。
IT業界に限らずですが,「コンプライアンス」の重要性が問われています。
そして高い知識や技術を持っていても,それをどう使うかはその人間によります。
良い方向へ利用する人間もいれば,それを悪用する者も現れます。
そしてAIという人間の処理能力を超えたものが世の中のウェイトを占めてくれば,思ってもない大災害を引き起こすことになるかもしれません。
こんな時代が本当に来るのではないかという警告だと思いました。
では,AIは何でもできるのであろうか。
人間にはできてAIにはできないもの,持っていないもの。
この作品でそれは「感情を持つこと」と「責任をとること」と言っています。
「感情」は,向かい合う相手によっても変わることがあります。
物事の先入観にとらわれて態度が変わってしまったり,好き嫌いで物事を判断してしまうこともあるでしょう。
「感情」がないのであればこそ,AIには正しいことを教え,物事を正しく導くルールみたいなものをAIには教えてほしいと思います。また,AIの行動の「責任」は,それを作った人間となるのでしょう。
IT業界というのは責任の範囲が明確でない場合があります。
車が暴走したときに,自動車メーカーの責任なのか,それを制御しているプログラムを作成したIT企業なのか。
また,銀行の取引が停止してしまったとき,責任を取るのは銀行なのか,それともそのシステムをつくったIT企業なのか。
いずれにしても,誤動作が起きてしまえば,AIは責任を取ることはできない。
その責任を取るのは今は人間しかいません。
● AIを利用すれば世の中が便利になるが,デメリットもある
● AIを作ったのが人間である限りミスは起こりうるし,暴走する可能性もある
● AIを正しく活用するために,コンプライアンスの教育が重要である
● 人間にできて,AIにできないことは「感情を持つこと」「責任をとること」
これらを理解しながら人間はAIとともに進んでいかなければならないのだと思います。
10年後の未来,自分たちは一体どうなっているのでしょうか。
人間とAIが共存しながら,幸せな時代になっていることを願いたいと思います。