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【13階段】高野和明|冤罪の囚人を救えるか

13階段

デビュー作にして,江戸川乱歩賞受賞作です。

作品の冒頭から「死刑囚」の心理と精神状態が描かれているので,衝撃を受けます。

しかもこの男性は,おそらく犯罪を犯していない,つまり「冤罪」なのです。

果たして,この男性は刑を受けなければならないのか。

執行のタイムリミットがすぐそこまで迫っている中,ハラハラさせられる作品となっています。

こんな方にオススメ

● 冤罪が起こってしまった理由を知りたい

● 「13階段」とは何かを知りたい

● 冤罪の死刑囚に刑がが執行されてしまうのかどうかを知りたい

作品概要

犯行時刻の記憶を失った死刑囚。その冤罪を晴らすべく、刑務官・南郷は、前科を背負った青年・三上と共に調査を始める。だが手掛かりは、死刑囚の脳裏に甦った「階段」の記憶のみ。処刑までに残された時間はわずかしかない。2人は、無実の男の命を救うことができるのか。江戸川乱歩賞史上に燦然と輝く傑作長編。
-Booksデータベースより-




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主な登場人物

三上純一・・・男性を殺害した罪で懲役2年後,仮出所する。

南郷正二・・・刑務官。ある男性を無罪にするため,三上を誘う

佐村光男・・・三上がかつて殺害した佐村恭一の父

宇津木耕平・・樹原が起こした殺人事件の被害者

樹原亮・・・・作品冒頭の死刑囚。

安藤紀夫・・・ホテル「陽光」のオーナー。樹原を保護観察

杉浦弁護士・・南郷と三上に事件解明の依頼をする

本作品 3つのポイント

1⃣ 事件再調査の依頼

2⃣ 南郷・三上の必死の調査

3⃣ 「冤罪」から救えるか?

事件再調査の依頼

冒頭の樹原という男性の心理状況はとてもリアルです。何というか切なくなります。

おそらく「冤罪」であろうこの事件,樹原自身が独房に入っている状況で「刑務官の足音がここで止まらないように」と祈っている姿が目に浮かびます。

死刑囚きっと犯罪を犯していても死刑を執行される瞬間というのは恐ろしいものだと思いますし,またそれが冤罪で「自分は何もやっていない」とあればなおさらだと思います。

「13階段」というのは,処刑台の段数から来ているらしいですが,本作品中では,被告が死刑になるまでに13もの手続きが必要であるという表現もあります。それで13階段?13階段その最後の13番目の手続きの前で食い止めるために,冤罪を明らかにするために,刑務官の南郷が,仮出所したばかりの三上を連れて再調査に乗り出すのです。

この調査自体は杉浦弁護士からの依頼です。弁護士も違和感を感じているんですね。

ただ三上は,南郷がなぜ自分を選んだのか,疑問に思っているようでした。

三上は仮出所して現実を思い知らされます。刑務所にいる間,三上の家族は大変な思いをしながら生活していました。

三上の両親は工場を経営していましたが,ギリギリの生活をしながら,被害者の父親である佐村光男に賠償金を払い続けていたのです。

そして,佐村光男に謝りにいきます。もちろん,恨んでいるので佐村の言葉は厳しく,鋭かったですが,それでも恭一の仏壇に手を合わせます。仏壇に手を合わせるこの辺りは「罪を犯すべきではない」という作者からのメッセージにも取れました。

一応のけじめをつけた三上はここから南郷と調査を始めるのです。

南郷・三上の必死の調査

そもそもこの事件は,事件があった時刻,近くで樹原がバイクに乗って事故に遭ったことが発端でした。樹原が犯人であるという証拠が次々に見つかり,逮捕されたのです。

そして樹原にはその時の記憶がありません。あったのは階段を見たという証言のみ。

南郷と三上は調査を始めました。

三上は仮出所中で,ここで事件を起こすと刑務所に逆戻りなので慎重に調査している印象でしたが,徐々に大胆に調べていきます。

南郷も刑務官でありながら,かなり強引に調査している印象でした。

そして殺害された宇津木耕平の自宅を捜査します。

樹原が見たという階段。それらしきものはどこにも見当たらないのです。

事件以降,宇津木の家はそのままになっているようです。血痕の残った畳を見ながら,南郷と三上は必死になって調べます。

預金通帳を見つけようとします。強盗に入ったわけだから通帳を見たはず。そこには指紋がついている可能性は高い。

しかし見つかりませんでした。その代わりに住所録を発見します。亡くなった耕平は保護司をしていたので,いろいろな人物とつながりがありました。住所録そこで「佐村光男」「佐村恭一」の名前を見つけるのです。

ん? ここで何かつながるのか。それともミスリードなのか?


事件の真相

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南郷と三上は必死に調査をします。

事故現場から意外と近いところに証拠品があるのではないかと睨んだ南郷と三上はある場所に辿り着きます。増願寺「増願寺」というお寺でした。大雨が降り,徐々に土砂に埋もれていたのです。

そしてとうとう樹原が見たという「階段」を探し当てたのです。

階段は全部で13段ありました。これが「13階段」だったんですね。

不動明王像が置いてあり,その後ろに預金通帳が隠されていました。預金通帳通帳に書かれていた名前は,樹原を保護観察していた者の名前でした。

やはり樹原は嵌められていたんですね。

その男とともに行動していた南郷はこの男に襲われますが,ギリギリ食い止めました。南郷が犯人を取り押さえる真犯人は,宇津木が生前時代に脅されていたようです。

そして逆上して殺害したのです。いくら脅されていたとはいえ,結局,全く罪もない樹原が死刑になってしまうという,恐ろしい事件でした。

樹原は,死刑執行寸前で「再審請求」が通り,命を救われるのです。

この小説はいろいろなことを教えてくれます。

死刑の執行を請求するのは検察官。そしてそれを執行するために多くの手続きが行われ,最終的には事務次官,そして法務大臣まで伺いがいくわけです。

でも実際にその刑を執行するのは刑務官です。刑務官刑務官はもちろん囚人を監視する役割がありますが,実際に死刑執行の際にはボタンを押す役割もあるらしいです。

これは他の小説でも描かれていることがあります。3つボタンがあって,三人の刑務官が同時に押すことにより誰が押したかわからないようにするということ。

その際には多くの刑務官もいるし,教誨師も読経するということ。教誨師教誨師がどんな人かついては,中山七里さんの「死にゆく者の祈り」を読むとわかります。

刑務官の仕事は本当に大変だと思います。この作品でも刑務官は執行する際には夜も眠れない。

そして執行してしまえば,自分は「人を殺めた」という自責に苛まれると書かれています。

その経験があるからこそ,南郷はどうしても冤罪である青年を救いたかったのではないでしょうか。

この作品で考えさせられたこと

● 刑務官という仕事の過酷さ

● 世の中には死刑判決を受け「冤罪」のままの囚人もいる可能性がある

● 人の人生の最期を見届けた者にしかわからないものがある

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