東野圭吾さんの作品をほぼ制覇した後,次は誰の作品を読もうかなとネットで調べてました。誰の作品が面白そうかなと。
その時「魔王が面白い」というコメントを見て「次は伊坂幸太郎だ」と思って手にしたのが本作品です。
● 安藤兄弟がどんな特殊能力を持っているのか知りたい
● 犬養という次期総理大臣の何が危険なのかを知りたい
●日本の未来について考えてみたい
会社員の安藤は弟の潤也と二人で暮らしていた。自分が念じれば、それを相手が必ず口に出すことに偶然気がついた安藤は、その能力を携えて、一人の男に近づいていった。5年後の潤也の姿を描いた「呼吸」とともに綴られる、何気ない日常生活に流されることの危うさ。新たなる小説の可能性を追求した物語。
-Booksデータベースより-
伊坂幸太郎さんの作品って,ミステリーというよりはファンタジー的な作品も多くて,とても好きな作家さんです。
犬養という危険?な政治家に,特殊能力を持つ安藤兄弟が挑むという話です。
第一話が安藤(兄)の視点「魔王」,第二話が安藤(弟)の視点「呼吸」という二部構成になっています。
主な登場人物
安藤・・・・今回の主人公。安藤潤也の兄。安藤が思ったことを人に喋らせるという特殊能力を持つ
安藤潤也・・ある一定の確率内であれば、それを実現してしまうという特殊能力を持つ
犬養舜二・・未来党の党首。過激な演説で国民からの支持を得る政治家
ドゥーチェのマスター・・・ドゥーチェというBARのマスター
1⃣ 安藤の特殊能力とは
2⃣ 兄の仇
3⃣ 日本の未来
安藤の特殊能力とは
安藤はある日電車に乗っていました。そこで老人に席を譲らない男を目にします。安藤は,自分が老人の立場だったらこんなことを言うのにと考えていました。
そうするとその老人が,まさに今安藤が思ったことを口に出して罵声を浴びせていたのです。
「うわっ,ホントに言っちゃったよ」みたいな感じでしょうか。
安藤は他でも試しているうちに,自分には「腹話術」のような能力があることに気づくのです。
犬養という政治家が出てきます。安藤は直観で「危険な政治家」と考えるんですね。犬養は「注文の多い料理店」が好きだと言います。宮沢賢治の作品ですね。
ストーリーが,山奥で西洋の料理店を見つけた二人の猟師が駆け込みます。
しかしその料理店のオーナーは化け物の山猫で,客を料理する恐ろしい生き物でした。
命からがら助けられるんですけど,その影響力は大きく,恐怖からか猟師の顔は歪んだままもどらなかったという話です。
確かに,この話が好きだと言わると恐ろしくなりますよね。
安藤は,このまま犬養が総理大臣になってしまえば,日本は彼の思い通りになってしまうと危惧するんです。
しかし,安藤は自分の身に危険が迫っていることを感じます。
仲が良かったアメリカ人のアンダーソンの家が燃やされたり,自分の身の回りにも影響があることを悟ります。
安藤は,日本がこの「魔王」に支配されてしまうのではないかという錯覚を起こすようになります。何とか彼の暴走を食い止めなければならない。
演説に来ていた犬養に対し,安藤はあの「腹話術」を使おうとします。
演説で国民の不満を買うことをしゃべらせようとするんです。
しかしそれを何者かに阻まれてしまいました。安藤はダメージを受けてしまいます。
そして安藤はとうとう亡くなってしまうのです。
これは犬養の能力なのか。それとも安藤のような特殊能力を持つものが他にいるということ? いったい誰が真犯人なのか??
兄の仇
安藤兄が亡くなってすでに約5年が経っていました。
弟の潤也は結婚して,仙台に住んでいました。
伊坂さん,出身が仙台だから舞台が仙台になることが多いですね。
実はこの潤也にも特殊能力が備わってました。
それは運を持っていることです。しかも高確率で。
くじや抽選などで当たりをひきまくり,じゃんけんしても誰にも負けないんですね
でも,これをどう利用とするのでしょうか。
何を思ったか,潤也は金を集めだします。
競馬で万馬券をどんどん当てまくり,かなりの金が銀行口座に入金されていました。これが何のためかはあまりよくわかりませんでした。
潤也は人を救うためだと言ってたんですけど,具体的には描かれてなかったです。
彼は何か思うところがあったのだと思います。次に続くのでしょうか。
正直,ちょっと消化不良のような感じもしました。。。
実はこの続編的な作品なのが「モダン・タイムス」となっています。
こちらも併せて,是非,読んでみてください!
日本の未来
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そうこうしているうちに犬養はある男に襲われて,命は取り留めたもののの入院します。
安藤は,これまで犬養は他の人間の特殊な能力で守られていたと推測するわけです。
犬養のワンマンに嫌気がさしたのでしょうか。だから守りが薄くなったのでしょうか。
この話は、犬養が主張するように、
「周りに流されず、自分の思うように行動しろ。たとえそれが間違っていても、自分を信じろ」
という強烈なメッセージが込められています。
ここからは自分の想像ですけど、弟は兄の敵を取ったのではないか。銀行口座の巨額のお金。それが何に使われたのかはわかりませんでした。
「魔王」編で犬養を守っていたのは、味方だと思っていたドゥーチェのマスターでした。そのマスターも特殊な能力を持っていたけど、その後はどうなったかはこの作品では不明です。
世の中には安藤兄弟のような視点に人々もいれば,強烈な指導者もいる。
今思えば,犬養も実はそんなに悪い人間じゃなかったのかもしれません。
むしろ少々強引な指導者がいた方がいい場合もあるのかもしれません。
そうやって,何かちょっとしたことで人間関係が崩れてしまうあたりの表現が多かったように思います。
2005年に出版された作品ですけど、内容は現代の政治の流れを占うような、予言的なことが書かれているような印象も持ちました。
例えば、「憲法9条を改正」するために、まず「憲法96条の国民投票の改正」をすると。
そして両議院の3分の2の同意を過半数へ改正。僕もそれがいいのか悪いのかは専門家ではないのでわかりません。
これって,今の日本を変えるためには憲法改正が必要だと言っているんですかね。
確かに,憲法の改正していない国は日本くらいのものです。
他国は憲法を改正し,自分たちの生きやすい環境へ次々手を打っている印象があります。
しかし,日本は未だ改正したことがないのです。
例えば,自衛隊についてもかつて「集団的自衛権」でも話題になったように,自衛隊のことが明記されていないため,活動内容が曖昧になっている印象があります。
「戦争放棄」という大枠はあるけども,他国の争いに自衛隊派遣は違憲ではないのかどうか,未だに議論されています。
人によって解釈が違うし,また人によって価値観も違うからなかなか前に進まない,そして何よりも国民が戦争を許さない。
また,東北大震災の教訓として,対応が後手後手にまわってしまったことがありました。
今後,南海トラフ地震がかなりの確率で近い将来起こると仮定すると,今のうちに緊急事態で迅速な決定権を内閣が持てるようにしないといけないということなのでしょうか。
時間のかかる国会頼みの決断が,日本の未来を大きく変えてしまう可能性もあるということなのでしょう。いろいろな課題はありますが,自分が思うように行動することの大切さを教えてくれる、勇気を与えてくれる話だったように思います。
いずれにしても「モダン・タイムス」に続くらしいので,早く読んでみたいですね。
● 将来の日本をどうするかは,人によって考え方が異なる。憲法改正が未だに議論されているのもそのためではないか
● 自分がこうだと思うこと,こうしたいと思うことへ向け行動することも大事
● 憲法改正について,未だに議論が続いている。自分たちの国は自分たちで守る手段を国会だけでなく,国民全体も真剣に考える時がきいているような気がする
日本の未来がどうなるかわかりません。憲法が改正されるかもわかりません。
ただ,二度と同じ過ちを繰り返さないよう,命を奪い合う争いのない,平和な世の中になってほしいと願うばかります。