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【還るべき場所】笹木稜平|K2登頂の困難さを知る

還るべき場所

2006年,日本人がヒマラヤ第2の高さを誇る「K2」に登頂したというニュースが日本に飛び込みました。

かつて「非情の山」と言われたこの「K2」に,史上最年少で青木達哉さんが登頂に成功します。

K2

こんな方にオススメ

● 「K2」とはどういう山なのかを知りたい

● ヒマラヤに登山することがどれだけ大変なのかを知りたい

● 生きることのすばらしさを学びたい

作品概要

スケールの大きな冒険小説で定評のある笹本稜平氏の新境地。登攀中に恋人を遭難で失った主人公・矢代翔平。過去の悲しみを乗り越えるため、登山ツアーのガイドとして「悲劇の現場」K2に再び戻ってきた。圧倒的な迫力で描く感動の山岳小説。
-Booksデータベースより-



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このK2は1800年代から多くの登山でアタックした人々の行く手を阻み,行方不明になることも多かったといいます。

この「帰るべき場所」という作品はその「K2」に登頂するということがこんなにも過酷なのか,ということがよくわかる作品です。

この作品は,かつてヒマラヤ第二の高さ(8611m)を誇る難所「K2」に挑んだ二人の男女のうち,女性(聖美)が滑落してしまい,亡くなってしまったところから始まります。

それを自責の念としてずっと抱えていた男(翔平)が,亮太という友人に誘われ,再び山を目指すというものです。

K2登頂を目指す公募登山というものがあって,そこには一般の愛好家が参加するそうです。

それを統率するサーブと呼ばれる人間たちは事前に山に登り,いくつかのキャンプ地や酸素ボンベその他様々なものを準備しなければならない。

その役割を翔平と亮太が担当し,再びK2を目指すのです。

本作品 3つのポイント

1⃣ K2の本当の恐ろしさ

2⃣ 絶望の境地

3⃣ 生きるということ

K2の本当の恐ろしさ

なぜ山に登るのか? という問いに,かつてマロリーが残した「そこに山があるから」という言葉。確かによく聞く言葉ではあります。

でもこの言葉にはとても深い物を感じます。

それは,本当の登山というのは実は命がけのもので,それを成功させるということが彼らにとっての勲章であり,また最大の困難を乗り越えたという達成感であるのだと言っているような気がします。

誰でも小学生,中学生時代に登山をした経験があるとは思いますけど,あれはどちらかと言えばトレッキングという方がしっくりくるのかなと思います。

本物の登山はまさに命がけです。

エベレスト(チョモランマ)は世界最高峰ですが,このK2はその困難度では比較にならないくらい最高難度。

K2登頂を目指す登るにつれ,極端に酸素量が減る恐ろしい場所で,必ず酸素ボンベが必要ですし,マイナス30度から40度と言われる極低温の中で頂上を目指さなければならないのです。

風速も50m/hを超えることもあるそうで,人間も簡単に吹き飛ばされてしまいます。

K2は「4人に1人」が死ぬ山であると言われています。

生きることができる場所の中でで,最も危険で,死と常に隣り合わせの場所こそがこの8000m級の山々たちであり,その中でも最高難易度なのがこの「K2」なのです

ガイドを引き受けた稜平たちも多くのピンチに遭います。

絶望という境地

エベレストには回収不能になった遺体が100体以上もあると言われています。

きっと,頂上を目指しながら力尽きてしまい,無念な思いを抱いたまま意識が薄れていったことでしょう。

先ほど書いたように,登山者は多くの困難な中での登頂を目指し,多くの準備をし,万が一の時に備えた訓練などもしなければならないです。

しかし,いくら訓練していたとしても,登れば登るほど条件も悪くなるし,また急激な天候の変化で混乱することもあるわけです。

過酷な試練そんな生きるか死ぬかのギリギリの間で意識が行ったり来たりするのでしょうか。

稜平たちもそうでした。登頂を目指しながら,意識が遠のきそうにもなりながら。

それでも生きるために,酸素が足りなりそうなときは,中継点であるキャンプへ酸素ボンベを取りにもどったり,自分の酸素を仲間に分けてやったり。

「こんな苦しいなら,俺を置いて先に行ってくれ」

僕だったらそんな言葉を発してしまいそうです。

絶望」というのは,まさにこのような境地なのかなと思います。

生きるということ

登れば還ってこれないかもしれない。そんな山々になぜ人は登るのでしょうか。

生きている間に一度は登りたいという夢でしょうか。

チャレンジしなかったことで後悔したくないと思うからでしょうか。

自分も苦しい思いをしたことがあります。

メンタル疾患になってとても苦しい時期を過ごしたことがあります。

あぁ,これを絶望というのだろうかという気持ちになったこともあります。

でもこの作品ではそれは「逃げ」であるとハッキリ書いてあります。

稜平たちの決死の行動を見せつけられたら,そう思うのも納得してしまうのです。

この作品に言われているような気がします。

そんなのは絶望のうちに入らない」と。

そこには賛否両論あるとは思いますが。。。

僕自身もキツかった時,その苦しさから逃げてしまったことがあります。

命を絶ちたいくらいな気持ちになってこともあります。

でも,後になって思うのです。やらなかったことに対して,人間は後悔するのだなと。

でも,本当に命を絶ってしまうことはどうなんでしょう。

命ある限りは,やはり死を選んではいけない。

残された遺族の方の気持ちをまずは考えてほしいと思います。

苦しいかも知れないけど,本当に苦しいかも知れないけど,生きることを選んでほしい

もう少し辛抱すれば,その後に幸せなことが待っているかもしれない。

それを知ることもなく終わってしまうことは本当に残念です。

生きたくても,生きることができなかった人だっています。

それは病気だったり,戦争に巻き込まれた経験だったり。

メンタル疾患になった経験のある人間から言わせてもらうと,生きているということはとても幸せなことです。

生きることの幸せ作品を読みながら感銘を受けた言葉が「魂の糧」という言葉です。

これまで,何かギリギリまで自分を追い込んでやり遂げたことがあっただろうか。

それは自分の人生でやりたいこと,将来の夢など。

自分が生きたという証を何か残したい。

それは自分の名前を何かに刻むということではなく,自分の中でいい人生だったと,いつ死んでも構わないと思えることをやり続けることなのではないでしょうか

きっと稜平も,失った聖美の苦しさから,再度山に登ろうとしました。

後悔していたのかもしれません。もう一度登ってそれを断ち切ろうと。

稜平が還るべき場所はこのK2だったのかもしれません。

この作品で考えさせられたこと

● ヒマラヤに登ること,特に「K2」を目指すことはまさに命がけである

● 絶望と感じることもあるが,何とか生きる選択をしたい

● 人生,やはり後悔しないためには行動すること

自分の歩いてきた道を振り返って,いい人生だったと最期に思えるような人生を送りたいと思っています。

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