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【連続殺人鬼カエル男ふたたび】中山七里|真のカエル男とは

連続殺人鬼カエル男ふたたび

「連続殺人鬼カエル男」の続編です。

「カエル男」と呼ばれる殺人鬼,前作で世間を震撼させた残虐な連続殺人事件。

御前崎という精神科医,かつて人を殺害したことがある勝雄という青年,その勝雄を音楽療法で回復させようとしていたさゆりという女性。

特に重要人物だったさゆりが,前作の事件に関わっていたため刑務所に入ってしまいました。

うまく勝雄とさゆりを操り,自分自身は「完全犯罪」を成し遂げたと思い込んでいた御前崎の元に勝雄が現れます。御前崎さて,この続編,一体どんな展開になるのか。

前作を読んだことがある方は必読です。

こんな方にオススメ

● 刑法39条について考えてみたい

● 前作を読んでおり、続きが読みたい方

● 今回も、大どんでん返しを見たい

作品概要

凄惨な殺害方法と幼児が書いたような稚拙な犯行声明文、五十音順に行われる凶行から、街中を震撼させた“カエル男連続猟奇殺人事件”。それから十カ月後、事件を担当した精神科医、御前崎教授の自宅が爆破され、その跡からは粉砕・炭化した死体が出てきた。そしてあの犯行声明文が見つかる――。カエル男・当真勝雄の報復に、協力要請がかかった埼玉県警の渡瀬&古手川コンビは現場に向かう。さらに医療刑務所から勝雄の保護司だった有働さゆりもアクションを起こし……。破裂・溶解・粉砕。ふたたび起こる悪夢の先にあるものは……。
-Booksデータベースより-



主な登場人物

古手川和也・・埼玉県警捜査一課の刑事

渡瀬・・・頼りになる古手川の上司

当真勝雄・・・今回の「カエル男」?

有働さゆり・・当真勝雄の保護司

御前崎宗孝・・精神科医。過去に孫娘を殺害された

本作品 3つのポイント

1⃣ 連続殺人事件ふたたび

2⃣ 被害者の共通点とは

3⃣ 誰のための復讐か

連続殺人事件ふたたび

かつて世間を震撼させた連続殺人事件。五十音順という共通項を基に殺害された人々。

当初は,知能障害を持つ青年である勝雄と,その保護司である有働さゆりの犯罪かと思われましたが,実はその裏には黒幕の影が。。。

精神科医である御前崎教授。彼が二人を操っていたと判明してから約10ヶ月後。勝雄が御前崎の前に現れます。

「おーっ、勝雄君、久しぶりだね」

その後、なんと、御前崎の自宅が爆破されてしまいます。家からは炭化した死体が出てきました。爆発捜査にあたるのは,前作でも登場した古手川・渡瀬のコンビです。

きょう,ばくちくをかってきたよ。

おきなおとをたてて,なんでもばらばらにするんだ。

すごいなあ。それでかえるのなかにいれてひをつけてみた。

かえるははなびみたいにばくはつした。

ふくにかえるのめだまがくっついたよ。

うわーぁ。前作を思い出す犯行声明文。やはりこれを書いたのは勝雄なのか。

遺体の遺留物と御前崎の毛髪が鑑定の結果同一人物と認定されます。鑑識しかし当真勝雄は行方不明です。やはり,勝雄なのか? 前作の復讐なのか? そして今回も連続殺人事件が起こってしまうのか。

前作が「ア行」の人物がターゲットになり,最後のオマエザキで完成してしまいました。ということは,次は「カ行」なのか? ところが本作品は違いました。

最初の犯行は殺害されたのは工場の濃硫酸プールの中に,まるで風呂にでも浸かっているいるかのように殺害されていました。

名前は「佐藤尚久」という男性でした。

えっ? ひょっとして,今度は「サ行」?

古手川ら警察は,前回の被害者たちの共通項である「沢井歯科」を訪れます。

しかし,佐藤の名を探しますが,来院者のカルテの中に,佐藤尚久の名前はありません。

次は何を元に被害者を選ぼうとしているのか。それともこの佐藤だけで終わるのか。
と思ってましたが,次の事件が発生してしまいます。

JR神田駅で女性の悲鳴が聞こえます。京浜東北線に誰かが飛び込んだ様子。人身事故です。京浜東北線被害者は「志保美純」です。やっぱり次は「サ行」で間違いないようです。

ただ,なぜ犯人はこの女性が志保美純だと知りえたのかということ。

なんだろう,被害者の共通項は?

被害者の共通点とは

本作品には別シリーズの人物が登場します。何と「御子柴礼司」!

彼は前作で逮捕された有働さゆりの弁護を引き受けたようです。御子柴ということはきっと有働は「無罪」になるんだろうなぁ。なんせ,弁護士が絶対無敵の御子柴ですから。

御子柴はかつて殺人を犯し,少年院にいた頃に御前崎教授から指導を受け,さらに有働さゆりのピアノも聞いていたようです。

やっぱり中山七里ワールドは本当にすごい。御子柴自体は事件に関係ないと思いますけど。

そしてさらに次の犠牲者が出るのです。

「末松健三」という精神科医です。彼は前作の被害者である弁護士の衛藤と知り合いでした。精神科医連続殺人事件での証言台に立ち,自分が注目を浴びると思っていましたが,結局全て衛藤の手柄になってしまいました。

ついてない,自分はキレイな妻をもらい,世間でも注目を浴びるという夢があったようです。

しかし,未だに独身で,さらに衛藤の思うようにされてしまった。こんなはずじゃ,と思いながら街を歩いていました。

するとそこに突然ホームレスがからんできます。羽交い絞めにされ,あっという間に背後を

取られ,最後には後頭部に衝撃が走ります。気が付くと製材所にいました。そして妙な機械音が。。。

そして破砕機に巻き込まれて亡くなってしまったのです。

やはり「サ行」の人間が殺害されてしまいました。

ここでもシリーズを超えた面白さが。

この遺体を解剖したのがあの法医学教室の光崎です。法医学「解剖部位も医学的興趣も半分以下の,つまらない執刀だった」

光崎らしい発言ですよね。

と,また話はそれましたが,ここで思ってもないことが。。。

あの有働さゆりが,拘置所から脱走したらしいのです。

うわぁ,これは誰が犯人なのか本当にわからなくなってきたぞ。

脱走古手川は御子柴のところへ向かいます。

古手川は「実は御子柴が匿っているのではないか」と疑問を持っていたようですね。

当然,御子柴がそんなことするはずはありません。

では,一体さゆりはどこへ。そして勝雄は今どこに。

誰のための復讐か

※ネタバレを含みますので,見たい方だけクリックしてください!

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御前崎がかつて自分の娘と孫娘を殺害された「松戸母子殺害事件」の当事者であることは前作でわかりました。

犯人の古沢冬樹は精神鑑定の結果,無罪に。その鑑定をしたのが先に登場した末松健三。

ということは,今回の「サ行」の連続事件の目的は末松だったのでは?

そしてとうとう古沢の元に一人の男が。彼はフードを被っています。フードの男「フルサワフユキか?」フードの男は聞きます。

ここで古沢をフードの男が狙います。

「やめろっ! 当真勝雄!」

やってきたのは古手川です。どうやら古沢をつけてきたようですね。

古手川は,前作に続き,最後の格闘でピンチに。

しかし今回は渡瀬が助けに入ります。そしてフードの男を確保します。

古手川は前作に続き,勝雄との闘いを思い出したようでした。

しかし,フードをとった顔を見て驚きます。勝雄ではありませんでした。

何とこの男,実はあの御前崎だったのでした。御前崎はっ? じゃ,冒頭の勝雄との対面,そして爆破された遺体はなんだったのか。これは意外な展開。

実は御前崎はあの時,当真勝雄を殺害してました。

そして自分の身代わりで発見させる別の老人を殺害,一緒に自分の家を爆破したのです。

つまり御前崎は自分が殺害されたものと偽装し「カエル男」として連続殺人事件を起こしました。

「松戸市母子殺害事件」で衛藤弁護士と鑑定書を作成した末松健三を殺害した。

最後の仕上げは,自分の娘と孫を殺害し,精神鑑定で無罪となった古沢冬樹が仮出所中になるのを待って,命を狙った。出所完全に「復讐」だったんですね。御前崎の復讐は,実は前作から始まっていたというわけか。。。

じゃ,有働さゆりはどこへ行ったの?

クリスマスイブの日,彼女は名古屋のクラブにいました。そこにいたのがあの古沢冬樹。

古沢は御前崎に襲われたものの,警察に救われ,解放感いっぱいでした。

隣にいるのはさゆり。古沢は彼女を気に入ります。

イブだから,望みをかなえてあげる

さゆりのかざしたナイフが,ギラリと室内灯を反射した

刑法第39条がテーマ。精神的な判断能力・責任能力を失った人間が罪を問われないというのは,やはり理不尽と感じてしまいます。

きっと法律が正しいのか誤りなのはという議論はこれまで何度もされてきたのだと思いますが,立場が違えばいろんな議論がありそうです。

責任能力がないから? 有罪にしてしまうと人権問題に関わるから? 日本の犯罪の歴史,凡例などを重要視して,法律を改正できない日本。憲法39条いや,2022年から「改正少年法」が施行されています。

ただ,日本では年間800人もの人間がこの法律で無罪,釈放されています。

中には精神病者と偽り,法律に護られ,普通に生きている人もいるでしょう。

再犯率が4割を超える日本で,果たしてこの法律が与える影響というは想像以上に大きいのではないでしょうか。

加害者の親はもちろん自分の子供が有罪になってほしくないから39条を主張するかもしれません。

でももし自分の子供が殺害され,その容疑者の弁護側が刑法39条を盾に無罪を主張して無罪になったら,果たしてその人は納得するのでしょうか。

おそらくこれまで何度も議論され,未だに結論の出ない問題なのでしょう。

この作品で考えさせられたこと

● 刑法39条に対する解釈は、永遠のテーマである

● 前作の続編で、意外な真犯人に驚いた

● 精神鑑定の判断が、次なる事件を生むことがある

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