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【追憶の夜想曲】中山七里|御子柴と岬恭介が法廷で闘う

追憶の夜想曲

絶対負けない弁護士「御子柴礼司シリーズ」の第二弾の作品です。

夜想曲は「ノクターン」と呼び,前作「贖罪の奏鳴曲」の続編となります。

今回は「自分が殺した」と犯行を認めている人物を御子柴自ら弁護をすると宣言します。

御子柴が弁護をしたいというのには理由がありました。

その理由が何なのかというのが一つのポイントとなる作品です。

そして面白いのは,中山先生の別シリーズの人物が御子柴と対決します!

こんな方にオススメ

● 犯行を認めている人物をどう弁護するか知りたい

● 御子柴が法廷で対決する意外な人物を知りたい

● 御子柴の「贖罪」とは何なのかを知りたい

作品概要

少年犯罪の過去を持つ、「悪辣弁護士」御子柴礼司が甦った! 岬検事との法廷対決の行方は?豪腕ながらも、依頼人に高額報酬を要求する“悪辣弁護士”御子柴礼司(みこしばれいじ)は、夫殺しの容疑で懲役十六年の判決を受けた主婦の弁護を突如、希望する。対する検事は因縁の相手、岬恭平(みさききょうへい)。御子柴は、なぜ主婦の弁護をしたのか? そして第二審の判断は……
-Booksデータベースより-



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主な登場人物

御子柴礼司・・主人公。絶対負けない弁護士

津田亜希子・・夫をカッターナイフで殺害した容疑者となる

津田伸吾・・・亜希子の夫。亜希子に殺害された?

津田美雪・・・亜希子の長女

津田倫子・・・亜希子の次女

岬恭平・・・・検察官。まさか岬洋介の父親が登場するとは。。。

異なる作品で登場する人物が出てきて,独特の中山七里ワールドを楽しめます。

本作品 3つのポイント

1⃣ 御子柴が弁護を奪う?

2⃣ 御子柴 vs 岬恭介

3⃣ 真相と御子柴の過去

御子柴が弁護を奪う?

津田亜希子が自分の夫をカッターナイフで刺すという事件が発生します。

夫の伸吾は企業の部長だったんですが,その企業が倒産してしまって引きこもり状態になってしまうんです。

父親の要蔵に金の無心をし,その金を株に投資して大損害になってしまいました。

亜希子だけでなく,娘である美雪と倫子にも暴力を振るっていたのです。DVこれだけでも亜希子には十分に殺意があったと判断されてもしょうがないですよね。

しかも亜希子自身も犯行を認めているんです。そして裁判では「懲役16年」という判決が出ているのです。

ここで御子柴が登場します。

それまで亜希子の弁護をしていた弁護士に御子柴自身が「自分が弁護をする」と説得し、担当が入れ替わることになったのです。

なぜ御子柴はこの女性の弁護を引き受けようと思ったのか?

ちょっと疑問ですよね。その理由はだいぶ後になってからわかります。

ただ,亜希子自身は罪を認めてはいるのですが、何か隠しているような気がするんです。亜希子は何か隠しているそれが何なのかが今回の大きなポイントです。

御子柴は、彼女の過去にヒントがあると考えました。

そこで戸籍抄本から女性がかつて住んでいた場所を探し出し、その周辺に聞き込みを行うのです。

御子柴 vs 岬恭介

御子柴が法廷で争うことになった相手が岬恭平です。

いや~,まさかここで夢のような対決が見れるとは。

岬恭平は「岬洋介シリーズ」の洋介の父です。

岬洋介は,中山先生作「さよならドビュッシー」などの中心人物です。

このシリーズを読んでた方は「あっ!」と思ったかもしれませんね。

すごい夢のような対決です。強者同士の闘い!御子柴 vs 岬検事こんな対決を実現できるのも,中山七里さんがいろいろなシリーズを描いているからなんですよね。

御子柴が弁護をすることになった亜希子。彼女は御子柴に心を開こうとしません。

というか,やっぱり何か隠しているようなんです。おそらくかなり重要なこと。

御子柴は,一つの疑問を持っていました。

ゴミ箱にあった避妊具の存在です。これは一体何に使われていたのだろうか。ゴミ箱亜希子と伸吾の間には夫婦の営みはありませんでした。

ではこの避妊具は何に使われたのでしょうか。

亜希子の浮気? いや,でも夫は引きこもりだったからそれはないのか? 一体なんだろう?

亜希子は明らかに何か隠しているし,法廷の相手は岬検事という強敵だし,御子柴はここからどうやって無罪に持っていくのか。

そして,驚愕の真相が判明するのです。

真相と御子柴の過去

※ネタバレを含みますので,見たい方だけクリックしてください!

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御子柴の証人尋問が始まります。

実は亜希子には妹がいました。妹はかつて惨殺されていたことがわかります。

無残にも体を切断され、亜希子はそのトラウマでPTSDに罹ってしまっていたのです。

でもこれだけでは亜希子の無罪は証明できない。

PTSD以上に彼女には夫を殺害することはできなかった証拠がありました。

御子柴は証人を呼びます。彼女のかつての主治医である男性でした。

この主治医が法廷に立った際、彼女の部屋の写真を見せるのです。そして確信します。

「これは先端恐怖症である」と。

ペン立てに入れているものがない。いろいろなものの先が削られ、丸みを帯びている。

そして決定的だったのは、台所に包丁が一切ない。あるのはスライサーのみ。

なるほど、彼女は料理の時にも刃物を使用しなかったということなんですね。先端恐怖症これでは彼女は殺せるはずがない。完全に無罪です。

しかし、亜希子はそれを知っていました。

彼女は庇っていたのです、真犯人を。もうここまで書けばわかりますよね。 美雪と倫子真犯人には同情すべき点がたくさんあります。

暴力だけではない,許せないような仕打ちを受け,これは殺意も生まれて当然だろうと思います。

母親であればなおさら絶対に許せないでしょう。

同時に、御子柴はパッシングを浴びることになりました。

実は、亜希子の妹を殺害したのが御子柴本人だったのです。

御子柴は亜矢子の弁護をかって出た理由はこれだったんですね。

この部分が前作「贖罪の奏鳴曲」から繋がっていたわけです。

御子柴にとって,世間からバッシングを受けることこそが,本当の「贖罪」だったのではないかと思います。

こうなることがわかっていて、敢えて弁護を引き受けたのですから。

残りの人生を,困っている人々を救うことに費やせ!

その言葉を胸に,御子柴は生きているのだろうなと思います。

この作品で考えさせられたこと

● 御子柴と岬恭介のシリーズを超えた闘いが面白かった

● 世の中にはこの作品のように不遇な環境で生きている人々がいること

● 罪を償うために敢えて弁護を引き受けた御子柴の覚悟

次作は「恩讐の鎮魂曲」です!

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