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【贖罪の奏鳴曲】中山七里|絶対負けない弁護士・御子柴

贖罪の奏鳴曲

絶対負けない弁護士「御子柴礼司シリーズ」の第一作目の作品です。

贖罪の奏鳴曲(ソナタ)と読みます。何が贖罪なのか。

御子柴は実はかつて少女を殺害し,少年院で過ごしたことのある人物です。

最初は「そんな人が弁護士できるのか?」って思ってました。

少年院で厳しい教育を受け,同時に司法試験の勉強をはじめるんですね。

そして合格し,弁護士になったというわけです。

弁護士読んでいけばわかると思いますが,彼は高額の依頼料を取って弁護します。

その代わり,彼は徹底的に調査し,法廷ではどんな検察官が相手でも「負けない弁護士」です。

残りの人生を「人を救うために生きる」それが彼の贖罪なのです。

たとえ大ピンチになってしまったとしても,論破してひっくり返してしまうので,読んでいて本当に面白い作品です!

こんな方にオススメ

● 御子柴礼司という弁護士がどんな人物か知りたい

● 裁判がどういうものかを学びたい

● 御子柴が最後に大逆転するシーンを知りたい

作品概要

弁護士・御子柴礼司は、ある晩、記者の死体を遺棄した。死体を調べた警察は、御子柴に辿りつき事情を聴く。だが、彼には死亡推定時刻は法廷にいたという「鉄壁のアリバイ」があった――。
-Booksデータベースより-



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主な登場人物

御子柴礼司・・この作品の主人公。絶対負けない弁護士

日下部洋子・・御子柴法律事務所の事務員

額田順次・・・今回の事件で御子柴と対決する検事

東條美津子・・夫の保険金殺人容疑で逮捕される

東條幹也・・・美津子の息子

東條彰一・・・美津子の夫。事故で意識不明の重体となる

古手川和也・・埼玉県警捜査一課刑事

渡 瀬・・・・埼玉県警捜査一課刑事で,古手川の上司

ちなみに御子柴や古手川は他の作品でも登場します。

作品を超えた独特の世界が楽しめるのが「中山七里ワールド」の面白いところです。

本作品 3つのポイント

1⃣ 保険金殺人事件?

2⃣ 御子柴が疑われる

3⃣ 事件の真相

保険金殺人事件?

ある日,殺人事件が起こります。遺体は水死体であることがわかります。

捜査でこの遺体がフリーランスの記者である加賀谷であることが判明します。

加賀谷はいろんな人を脅したり,強請ったりすることで有名で,恨みを買ったのではないかという線で捜査が続きます。

別の記者から、加賀谷は「東條美津子の事件」を調査していたということがわかります。

美津子が,今回の被疑者であり,御子柴が弁護する人物です。

東条美津子の事件とは,夫の東條彰一がトラックの事故に遭ってしまい,意識不明となってしまうというものでした。

事故この事件は「保険金殺人事件ではないか」と疑われてたんですね。

事件を渡瀬と古手川が捜査することになりました。

この二人は、作者の別の作品である「ヒポクラテスシリーズ」にも登場するなど、作品を超えた繋がりもあるから面白いですよね。

彰一の妻である美津子と息子である幹也がお見舞いにきていました。

しかしある日,突然人工呼吸器が止まってしまい,彰一は亡くなってしまうんです。

この母子のうち,幹也は脳性麻痺があったので犯行は不可能と思われたため,美津子が疑われるわけです。

人工呼吸器の電源スイッチから美津子の指紋が見つかってしまうんですね。

人工呼吸器これが証拠となり,警察は殺人容疑で美津子を逮捕したのです。

御子柴が疑われる

渡瀬と古手川は,水死体の加賀谷が持っていたデータから,御子柴がかつて殺人を犯したことがあることを知ります。

御子柴は過去の事件のことで加賀谷に強請られていたのではないかと疑われるんですね。

つまり,御子柴が少年時代に起こした事件のことですね。

しかし,御子柴には鉄壁のアリバイがありました。

それでも渡瀬・古手川のコンビはひたすら御子柴を疑うんです。

一方,彰一の事件では,1ヶ月前に彰一に保険が掛けられていることがわかってしまいます。

病院側は「医療ミス」であることを完全に否定しています。

どう考えても,矛先は美津子に向くのです。果たして,本当に美津子は犯人なのか?

そこで美津子は御子柴に弁護を依頼するのです。

事件の真相と真犯人

※ネタバレを含みますので,見たい方だけクリックしてください!

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美津子は疑われ,御子柴も別件で疑われ,状況証拠が揃っているこの圧倒的不利な状況を御子柴は挽回できるのか。

高額な費用を請求する悪徳弁護士というイメージは,僕の中ではブラックジャックのイメージです。あくまで容姿のイメージがですので。

御子柴の誘導のしかたが鋭く、実に鮮やかな弁護をします。

特に、3人目の証人である「人工呼吸器のメーカーの人間」への尋問はよかった。

この人工呼吸器のスイッチ,実はかなり強く押さないと停止しないらしいんです。

御子柴は指紋の「面積」に注目しました。

つまり,母親の指紋の大きさでは停止できないというのです。

なるほど,ということは母親の犯行ではないということ。

では,一体誰が。実は意外な人物でした。停止させたのはなんと息子の幹也だったんです。でも,どうやって?

人工呼吸器を制御するマイクロプロセッサを携帯電話から電磁干渉させたというのです。

遠隔操作原理はわかりませんが,要は異常が起こるように仕組んだということなのでしょう。

そして,加賀谷はそれをネタに強請ってきたから,感電死させたのでした。

実は父親を殺害したのも幹也です。全て遠隔操作で人を殺めていたわけです。

しかし,動機は何だろう? それこそ「保険金」でした。

もしこのまま美津子が犯人になれば,保険金は全て自分に入ってくる。

ん~,まさかそこまで考えていたとは。。。

えっ? ということは母親を嵌めようとしたってこと?

裁判は終わりました。御子柴の完全勝利だったわけです。美津子は「無罪」となります。無罪そもそも問題は幹也の出生時にありました。

美津子は薬物中毒になっていて,幹也はそれが原因で脳性麻痺状態になったのです。

産まれてきた幹也をヘルパーにまかせきり。幹也のことが気持ち悪いと。

この母子,元々仲が悪かったんですね。

その描写がないから勝手に仲がいいと思い込んでました。

ん~,でも何かしっくりこない。何でスイッチに美津子の指紋がついてたの?

それは最後の最後にわかります。実は黒幕は美津子でした。

美津子の正体美津子も幹也を嵌めようとしてたんです。えっ? どういうこと?

遠隔操作は全て彼女が誘導したものでした。

幹也に殺意があったのを知りつつ,うまく誘導し,犯行すらも黙認していたんです!

母親もある意味幹也を「遠隔操作」してたわけですね。

そして有罪になっても最高裁までいけばひっくり返せばよいわけです。

なるほど,これで「一事不再理」となるわけなんですね。

つまり,美津子はこれ以上裁かれないと。しかし結末はそうなりませんでした。

その続きはありませんでしたが,おそらく美津子は次の裁判で追及されていったことでしょう。

日本は三審制だから,上告で「無罪」になればそれ以上裁かれない。

「再審」という可能性もない。それは無罪から不利になる裁判を行ってはいけないから。

再審というのは有罪の被告に有利な条件が出てきた場合にのみ行われると,何かの小説で読んだことがあったのを思い出しました。

今回の裁判は,御子柴が犯罪の大枠を知った上で,証人尋問では御子柴が思い描いたように証人に発言・誘導させる。

検事がどう攻めてくるかもシミュレーションして,検事をも追い込む。

そして無罪に持ち込む。読んでいて本当に面白かったです。

この作品で考えさせられたこと

● 法廷ミステリは,特に弁護士が主人公だと大逆転があるので面白い!

● 最高裁で無罪になれば,最終判決となり「一事不再理」で裁かれることはない

● しかし逆に言えば,それで真の犯罪者が裁かれないという可能性もあるということ

御子柴の作品はどれも面白いです。

僕自身が,法廷ミステリが好きなんだろうなぁと思います。

次作は「追憶の夜想曲」です!

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