第100代内閣総理大臣は,岸田文雄さんとなりました。
安倍首相が辞任したのが2020年のコロナ禍の中。それを引き継いだのが菅総理でした。約一年間総理を務め,2021年の9月に突然の辞任の意思を示された時は驚きました。
次期自民党総裁に誰がなるのか。
そんな時に本屋で手にしたのがこの作品でした。
目次
1. こんな方にオススメ
2. 作者の経歴
3. 登場人物
4. 本作品 3つのポイント
4.1 総理の夫は大変!
4.2 凛子が罠にハマる?
4.3 リーダーのあるべき姿
5. この作品で学べたこと
● この作品の女性総理大臣がどんな人間なのか知りたい
● 総理大臣の大変さ,覚悟,決断力を知りたい
● こんなリーダーの下で働きたいと思わせられる作品を読みたい
20××年、相馬凛子(そうま・りんこ)は42歳の若さで第111代総理大臣に選出された。鳥類学者の夫・日和(ひより)は、「ファースト・ジェントルマン」として妻を支えることを決意。妻の奮闘の日々を、後世に遺すべく日記に綴る。
税制、原発、社会福祉。混迷の状況下、相馬内閣は高く支持されるが、陰謀を企てる者が現れ……。凛子の理想は実現するのか!? 痛快&感動の政界エンターテインメント!
-Booksデータベースより-
総裁決定後,解散総選挙になると予想される中,4人の候補者が出ました。
もちろん現総理の岸田さんの名前もありましたが,当初,強烈な印象を残したのが「高市早苗」さんでした。
論理的に物事を考え,決して物怖じしない,自分の考えていることを堂々と主張する人だなというのが最初の印象でした。新しい時代がはじまる予感を感じさせる時期だったように思います。
結果的には初の女性総理大臣は誕生しませんでしたが。。。
作家は「原田マハ」さんです。
1962年生まれ 関西学院大学文学部日本文学科 卒業
早稲田大学第二文学部 卒業
美術館・大手商社に勤務 2003年に執筆
主な受賞歴
日本ラブストーリー大賞(カフーを待ちわびて)・山本周五郎賞(楽園のカンヴァス)・新田次郎文学賞(リーチ先生)・京都本大賞(異邦人)
この作品に登場する第111代内閣総理大臣「相馬凛子」は女性初の総理大臣として描かれています。
相馬日和・・・凛子の夫,つまり総理の夫。東大理学部卒で,鳥類学者。
相馬凛子・・・第111代内閣総理大臣。常に正直で,正義感のある女性。
相馬崇子・・・日和の母親。相馬グループに大きな影響を与える人物。
原久郎・・・・凛子と連立与党を組む党首。実は腹黒い人物。
ひょっとしたらこの作品が出たのは高市さんを推すためのものなのか。
いや,相馬凛子は野党側だから,衆議院の与野党逆転を願うものなのか。
2013年に出版されたこの作品が2021年の9月という時期に書店に並んだのにはいろいろな意図があるような気がします。
いずれにしても,この作品は面白いです。
相馬日和というどこか天然の,野鳥を愛する「善い人」が,名前通りに凛としている妻の凛子を夫としてどう支えるのか。ファーストレディならぬ,ファーストジェントルマンである総理の夫というのは現実には存在しませんが,今後もし実現したらこんなにも大変な役割があるのだろうか,と思いながら読みました。
1⃣ 総理の夫は大変!
2⃣ 凛子が罠にハマる?
3⃣ リーダーとしてのあるべき姿とは?
総理大臣の妻であればファーストレディであるが,この話はファーストジェントルマンである。
この作品を読みながら,総理大臣の配偶者というのは大変な「仕事」なんだなと思う。
それはファーストレディ,ファーストジェントルマンに限らずです。
凛子は一日中,日本をよくするための政策や,国民のことを常に考えている。
家には秘書だけでなく,同じ政党の関係者もやってくることがあります。その周りでサポートするのも夫の役割になります。
また,凛子が外出すれば家のことをするのも日和の仕事です。当然,朝から晩まで国のために行動する凛子が留守の間,家事をするのは日和の役割である。
帰ってくれば食事を出さないといけない。
時には,政策のことに関しても相談に乗らないといけないかもしれない。
直接的には秘書や関係者が絡むとは思うけど,自分の夫にしか話せないこともあるでしょう。
当然,スキャンダルにハマってしまえば内閣の支持率にも影響が出てしまいます。
首相が自分の妻を海外訪問へ連れていくのは,首相を一人にしないためと聞きます。
ハニートラップにひっかかって,機密が漏れてしまえば国全体の損失につながってしまいますから。
自分の本来の仕事も手につかず,首相の足を引っ張らないように気をつけなければならないわけです。
ファースト・レディやファースト・ジェントルマンの大変さがわかります。
相馬日和は,いろいろなトラブルにも巻き込まれながら多くのことを学び,心の底から凛子をサポートするという覚悟を決めるようになるのです。
凛子は,最初はうまくやっていました。
日本の社会保障の財源確保のために増税をすることをしっかりと国民に伝え,連立党首の原もサポートしてました。
日和とともに,この原夫妻とも食事会を行い,日本の将来について語る場面があります。
しかし,本当にこの原という大御所は凛子の味方なのだろうかと思わせる件がいくつか出てきます。
建前は凛子のサポートでしたが,実際には原には野望がありました。
次期総理大臣の就任です。
つまり,凛子は咬ませ犬で,増税に賛成どころか反対して総辞職に追い込もうとする魂胆があることがわかります。
それを知ったのは日和です。彼はその真実を凛子に伝えます。
そして,凛子はどうとう重大決心をするのです。
ここからがこの作品の面白いところだと思います!
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これまで原を信じてきた凛子は初めて悩むところを見せます。
プライドを傷つけられたでしょう。
あまり弱みを見せなかった凛子が初めて弱みを見せ,しかし彼女はは一大決心をするのです。
凛子が選択したカード,それが「解散総選挙」です。
総辞職に追い込まれる前に,彼女は国民の信を問う選択をするわけです。
彼女が挙げた政策が以下の三つです。
1⃣ 社会保障のための増税
2⃣ 経済対策
3⃣ 少子化対策と雇用対策
この三つを必ず実現すると国民に問いかけるのです。
この相馬凛子はすごいです。
頼りないところは全くなく,清廉潔白だから後ろめたいこともなく堂々としています。
そして,これからの日本をどのように導くかをハッキリと示すから,見ていてとても気持ちがよい。増税に対しても,それがなぜ必要なのかをしっかりと国民に説明すれば理解してもらえるのではないでしょうか。
相馬凛子は解散総選挙で選ばれ,第112代総理大臣に就任しました。
彼女の信念以上に,国民の生活を幸せにしたいという本心が国民に伝わったからだと思います。
一番印象的だったのは,彼女がいろいろな人に感謝の気持ちを述べているところである。
日和だけでなく,組織的に支持した日和の母親,そしてもちろん国民にも。
驚いたのは,あの原という政治家に対してもである。何という人格者なのだろう。自分を罠にはめようとした人間に対しても感謝の気持ちを述べることができるとは。
何という人格者なんでしょうか。
● 他人のために自分を犠牲にしてまでも尽くことができることの大切さ
● 自分の部下であろうとなかろうと,常に謙虚で感謝の気持ちを持つこと
● 決して人のせいにすることなく,勇気を持って大きな決断を実行すること
リーダーというのは,このような人間なのかなと,この作品を読んで思いました。
こんな総理大臣がでてきてほしいなと思うし,こんなリーダーの下で仕事がしたいと思わせられる作品でした。