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【私が彼を殺した】東野圭吾|脚本家を殺害した犯人を推理

私が彼を殺した

加賀恭一郎シリーズ第五弾の作品です。

前作の「どちらかが彼女を殺した」で「最後の最後まで犯人が明かされずに終わる」という衝撃の作品を読みました。

「えっ? こんな終わり方あり?」って思いながら,巻末の「袋とじ」を開封。そして犯人を推理した時の面白さに惹かれました。

本作品も同じ形式の作品です。「どちらかが。。。」は容疑者が2人でしたが,本作品では容疑者は3人となっています。ちょっと難易度が高くなったというところでしょうか。

話は,ある男性が殺害され,その殺害動機がある三人のうち誰が犯人かを推理するものとなっています。

大好きな「加賀恭一郎」が今回はどんな推理をしてくれるのかが楽しみな作品となっています。

こんな方にオススメ

● 最後に読者が犯人を推理するという斬新なミステリーを読んでみたい

● 加賀恭一郎シリーズが好きな方

● 加賀恭一郎が捜査する事件を知りたい

作品概要

全編、読者への挑戦状。この謎を解けるか? 流行作家・穂高誠が、新進の女流詩人・神林美和子との結婚式当日に毒殺された。容疑者は3人。しかし3人が皆「私が彼を殺した」とつぶやく。はたして真相は… 加賀恭一郎シリーズ
-Booksデータベースより-



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主な登場人物

加賀恭一郎・・主人公。練馬署の刑事

穂高誠・・・・脚本家。後に何者かに殺害される

神林美和子・・穂高の婚約者

神林貴弘・・・美和子の兄。穂高のことをよく思っていない

駿河直之・・・穂高のマネージャー

雪笹香織・・・美和子の編集担当者

浪岡準子・・・駿河と付き合っていた女性。穂高のファン

本作品 3つのポイント

1⃣ 穂高に恨みを持つ3人

2⃣ 3人の容疑者への追及

3⃣ 加賀の推理

穂高に恨みを持つ3人

まず一人の脚本家が登場します。穂高誠という男です。最初に書いておくと,この穂高を殺害したのが誰なのか,というのが本作品のメインとなっています。脚本家の穂高穂高に関わる人物についてそれぞれ説明していきます。

穂高は,詩人として仕事をしている神林美和子という女性と結婚することになりました。その美和子には兄がいて,貴弘といいます。彼が容疑者第一号なんです。

貴弘は素直に美和子を祝福するという雰囲気ではないようなんですね。それは貴弘と美和子の兄妹以上の関係にありました。

実はこの兄妹,「近親相姦」の関係だったんです。恋愛感情を持っていた貴弘は心中穏やかではないんです。しかも周囲にもそれが知れ渡っているという状況でした。貴弘と美和子次に駿河直之という,穂高のマネージャーが登場します。

駿河は同じマンションに住む浪岡準子のことを好きになってしまいました。

実は準子は穂高のファンだったみたいです。駿河は気に入られようとしたのか,穂高に準子を紹介するのです。もちろん大喜びする準子。

しかし,ここから思ってもない展開になります。準子が穂高と恋仲になってしまうんです。
そして準子は妊娠。怒り心頭の駿河は堕胎するように説得します。

本当にとんでもない脚本家ですが,さらに事態は悪い方向に進んでしまいます。
穂高が美和子と婚約したことを聞いた準子。落ち込む準子準子はとうとう自殺してしまいます。硝酸ストリキニーネという毒薬を飲んで亡くなったのです。

駿河のマンションには警察も入ります。彼の部屋には,穂高の前妻から送られてきた穂高の所持品の段ボールがありました。美和子と結婚することを知って,前妻が送ってきたのでしょうか。

とにかく,駿河は穂高にさらに恨みを持ったようでした。恨みを持つ駿河そして,美和子の仕事をサポートしている編集者の雪笹香織という女性がいました。

香織はかつて穂高と付き合っていました。その穂高が自分が担当している美和子と婚約したということを聞き,激情します。

香織は穂高の子供を妊娠していたことがあり,彼女も堕胎していたのです。堕胎した香織本当にどうしようもない穂高という男。。。

この神林貴弘,駿河直之,雪笹香織の三人が今回の話のポイントになりそうです。

そして結婚式当日。大事件が起こるのです。

3人の容疑者への追及

挙式が始まりました。祭壇へ進む穂高。しかしその途中で穂高は急に倒れ込みます。

穂高はこの時,亡くなってしまうのです。

祭壇警察の捜査で,どうやら穂高は毒を盛られた様子。

死因は「硝酸ストリキニーネ」による服毒死でした。そう,準子の時と同じ毒薬ですね。

準子は自分が持っていた鼻炎用カプセルと硝酸ストリキニーネを詰め替えていました。

それと同時に穂高のピルケース内のカプセルにも硝酸ストリキニーネを詰めていたようです。

穂高を道連れに死のうと思っていた準子。

しかし穂高は嫌な予感がしたのか,そのカプセルを捨ててしまっていたのです。

結局,亡くなったのは準子だけだったわけですね。犯行に使用されたピルケースということは誰が毒薬を詰め込んだのか。

準子が入れ替えた後に,何者かがカプセルを入れ替えたということになります。

カプセルをすり替えるタイミングがあった人物とは一体誰なのか?

誰が穂高を殺したのか。誰がカプセルをすり替えるタイミングがあったのか。

真実を知ろうと,美和子は加賀に協力してもらいます刑事の加賀そして美和子は貴弘,駿河,香りの三人に向かって訴えるのです。

「誰が彼を殺したのか名乗り出てほしい」と。

沈黙する三人。結局,名乗り出ようとしないんですね。

そうなると最終手段は加賀の推理にかかってきます。加賀はこれまでの状況や人間関係を慎重に考え,ある真実を導き出しました。

最後に加賀は犯人に向かって言います。「犯人はあなただ!」と。犯人はあなただ!

加賀の推理

※ネタバレを含みますので,見たい方だけクリックしてください!

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犯人はあなただ!

これで話は終わります。やっぱりこの手の話,最後はモヤモヤしました。

前作のことがあったので,しばらく自分でも犯人を推理しました。

ん~,時間かけて考えたんですけど,どうしてもわからない。。。

ここからが加賀の推理です。

まず容疑者は3人ですが,容疑者のポイントは2つあります。

穂高が鼻炎用カプセルを使っていたことを知っていた人物

毒物を入れ替えるタイミングがあった人物

もちろんこの条件は3人とも満たします。では犯人は一体誰なのか。

ここで袋とじを開封しました。そうすると新たな事実が書かれていました。

ピルケースには,今回の話に登場しなかった人物の指紋がついていたのです。ピルケースに付いていた指紋えっ? それじゃ本編だけ読んでたら犯人の推理はできないのでは?

実はその指紋は「穂高の前妻」のものだったと、最後の解説で判明。

穂高の前妻の持ち物を所持している可能性のある人物が一人だけいます。

それは「駿河直之」です。そういえば彼の家には穂高の前妻から送られてきた段ボールがありました。穂高の妻から送られてきた段ボールおそらくその中に穂高がかつて使用していたピルケースがあったものと思われます。

そしてそのピルケースを穂高に渡すタイミングです。

駿河は挙式の前に「これを穂高に渡してほしい」とピルケースをホテルマンに渡しています。ホテルマンそれが穂高の元へ届けられます。ここしかケースを入れ替えるチャンスはありません。

なるほど、最初の方の話をよく読んでいないとわからないだろうな。

それを読んで、僕自身も納得するのでした。ん~,やっぱり難しい。。。

今回の作品は,本編を読んで犯人を推理するものだとばかり思ってました。

毒入りのカプセルの錠数がポイントなのかなとかいろいろ考えましたが,実は「袋とじ」が重要な役割を果たしていたんですね。

今回の趣向としては,「袋とじを読んで犯人を推理しよう」ということだったのでしょうか。

ん~,正直それはわからなかった。。。

「そりゃないですよ~,東野先生」って言いたくもなりましたが,そこは新しい作品を模索していた証というふうに前向きに捉えました。

結局,この「犯人はあなただ!」シリーズは2作品のみでした。

でも,またいつかこのパターンの作品を読んでみたいです。東野先生,描いてくれないかなぁ。

この作品で考えさせられたこと

● 犯人を推理しようと意気込んだが,結局袋とじを読んで理解した

● この「犯人はあなただ」シリーズをまたいつか読んでみたい

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