もしあと数日で地球が滅亡するとしたら,みなさんはどうしますか?
その数日の間にやりたかったことをやってみようと思うのか。
それとも本当に地球がなくなるのか不安で不安でしょうがない日々を送るのか。
本当に「全てが終わる」という予測があればいいですけど,不信感を持っている人はその先も「生きる」ことだけを考えるかもしれません。
YouTubeか何かで,半径100mの隕石が落ちた時のシミュレーションを見たことありますけど,これが本当なら人類が生き延びることはできないなと。
津波が来るとか,そんな話ではないです。地球の奥底から高熱の物質が噴き出すわけです。
宇宙から相当なエネルギーを持ってやってくるわけですから,このシミュレーションはホンモノかなと納得させられます。
本作品は,ある小惑星が5日後に地球に衝突する状況で,人は何を考え行動するのかを考えさせられる作品となっています。
目 次
1. こんな方にオススメ
2. 登場人物
3. 本作品 3つのポイント
3.1 小惑星が衝突するとしたら
3.2 犯人を必死に探す主人公
3.3 真犯人と姉の思い
4. この作品で学べたこと
● 小惑星が衝突するかもしれないという話を読んでみたい
● 地球が滅亡するまでに何をするべきかを考えてみたい
● 主人公の姉がなぜ殺害されなければならなかったのかを知りたい
2023年10月、小惑星ダイスが地球に接近。人類滅亡の恐怖に世界が混乱する中、亮の姉・圭子が殺された。残された5日間で復讐を決意した亮は、謎の同級生・美咲の助けを得て、犯人を追うことに。しかし亮や周囲の人間が狙われ、謎は深まり続ける。姉の死の真相と、亮が終末に目にする光景とは? 感動止まらない、青春と絶望のカウントダウン・ミステリー!
-Booksデータベースより-
漆原亮・・・・主人公。姉が殺害され,復讐を誓う
漆原圭子・・・亮の姉。公園の花壇で何者かに刺殺される
四元美咲・・・亮と行動をともにする少女。クラスでは浮いている
日下部雪乃・・亮の彼女。亮は雪乃のことをそこまで想っていない。
岩田千秋・・・立川署の刑事。圭子の事件を捜査している。
魚住健二・・・圭子の元彼? 犯行を否定する
東雲香澄・・・魚住の現在の彼女
1⃣ 小惑星が衝突するとしたら
2⃣ 犯人を必死に探す主人公
3⃣ 真犯人と姉の思い
小惑星ダイス。人類の滅亡を占う神のサイコロ。
三年前に,アメリカの天文家によって発見された「ダイス」
直径400㎞の巨大惑星は,地球に接近するも,当初は衝突の恐れはないということでした。
しかし,このダイスに別の天体が衝突し,軌道が変わって地球に向かっているということがわかります。
つまり,地球に「ダイス」が衝突する可能性があるというのです。
直径400kmということは,九州くらいの大きさの物体が地球にものすごいスピードで飛び込んでくるということですよね。
それって,どこに被害がというよりは,地球全体に影響があるんじゃないの?
例え,地球の裏側に逃げたとしても,地殻変動が起きて人類は生きていることはできないのでは?
こういう時,政府や公の機関はその真実を隠そうとするわけです。混乱させたくないから。
「裁きの刻」が少しずつ迫る中,漆原亮は復讐を誓っていました。心から愛する姉である圭子が何者かに刺殺されてしまったのです。
本作品の冒頭は,これから亮が復讐する3時間前から話は始まります。
一緒にいたのは,これまで亮をサポートしてきた四元美咲で,彼女は亮になにかを渡します。
それは最後の最後にわかります。
そして話は,ダイス衝突5日前へ戻り,一日ずつカウントダウンしながら話は進んでいきます。
亮には雪乃という彼女がいましたが,亮自身はそこまで彼女のことを好きではないような気がします。
そこで現れたのが四元美咲でした。彼女は自分の知り合いのバーに亮を連れて行きます。このバー,麻薬の取引とか,闇の取引で儲けていそうな場所です。
ここで亮は銃を手に入れます。もちろんタダではありません。二百万円で銃を購入しました。
どうやら,亮の復讐というのは本気みたいです。
そしてある公園の展望所で亮と美咲は話し込むのです。ブランコに乗りながら。これが表紙のイメージなんでしょうか。
あと5日で地球が終わるというようにはとても見えないくらい綺麗な表紙ですよね。
亮が犯人は,圭子と付き合っていたとされる男性ではないかと考えていました。そして聞き込みした結果,当時圭子が付き合っていたとされる魚住健二という人物が浮上します。
「こいつが姉さんを。。。」
亮の彼女である雪乃が弁当を作って渡したときも,亮の心は雪乃ではなく姉の圭子にあるようでした。
以前はそうでもなかったのに,姉が亡くなってから急に煩わしくなっていたようですね。
そのくらい,亮にとっての圭子という姉はとても大切な人だったのでしょう。
そんな亮を見ていた美咲は,雪乃は圭子の代わりであるかのように言います。
指摘された亮は何も言えない。半分以上は当たっている感じです。
そしてとうとう,亮は犯人だと確信している魚住健二の自宅へと向かうのでした。
「姉のことでお訊ねしたいことがありまして,少々お邪魔してもいいですか」
初対面の亮は丁寧な言葉で,魚住の自宅に上がり込みます。
ポケットの中には,バーで購入した銃が入っています。
「お姉さんのことは聞いたよ。すごく驚いた。ご愁傷さまです」
魚住の本音なのか,それとも嘘をついているのか。
いろいろな話を聞くうちに,亮の怒りはマックスに。。。
そして銃を取り出して脅すのです。慌てふためく魚住。タイミングよく来客がありました。どうやら魚住の彼女のようです。東雲(しののめ)香澄という女性です。魚住の彼女のようですね。
場が悪くなったのか,魚住は亮を外に連れ出します。そして圭子のことを話し始めるのです。
確かに魚住は圭子のことを気に入ってアプローチをしていました。
でも,魚住と亮との会話を聞く限り,どうも圭子を殺害したようには思えないんですよね。
それは,亮も同じように感じているようでした。
しかし,ここで亮は2つの重要なことを聞き出します。
① ダイスを崇拝するサークル『賽の目』に圭子が所属
② 小田切という教授が圭子と歩いていたという証言
特に小田切教授の件には亮も敏感に反応します。実は犯人は魚住ではなく,この教授なのではないか。
しかもこの小田切はサークルにも絡んでいてようなんです。う~ん,限りなく怪しい。。。
でも小田切教授は60歳だし,亮の姉が交際しようとするのかな? というのが疑問です。
魚住が犯人でないと確信したのか,亮は姉が最後に自分にかけた電話のメッセージを聞かせます。
「亮!亮!お願いだから電話に出て。。。お願い,助けて。。。」この時,亮は彼女(雪乃)と一緒にいたようです。なぜあの時,姉からの電話に気づかなかったのか。。。亮は自分を責めているようでした。
殺害される寸前,最後の頼みの綱である亮にどんな思いで電話をかけたのか。。。
ところが後日,思ってもないことが起きます。あの魚住が何者かに殺害されたのです。
亮は立川署に同行を求められます。そして姉に関する取り調べを受けることになりました。
魚住から聞いたこと,魚住以外に怪しい人物,小田切教授の存在。
そして姉のバッグには「シルデナフィル」という薬が入っていたことも。
実はこの薬「ED」の薬のようです。ということはやはり小田切教授のために使ったのか?世間ではダイスの話題になっていました。確実に近づいている小惑星「ダイス」
実は政府は長野県に自分たちが逃げ込むための「シェルター」を作っているようなんです。
ん~,でもシェルターに逃げ込んでも生き延びるのは難しいと思うんだけどなぁ。
メディアもそのことを取り上げ,政府の身勝手さが浮き彫りになります。官邸前は抗議の人だかり。こういう前代未聞の事態には,人間の心理や行動ってこんなもんなのかなって思います。
「ダイス精神病」という病気も出てきたようだし。この世の終わりで病に罹ることもあるわけです。
本当に世の中がどう動くかなんて,未知数ですよね。それに対し,国も動きます。自衛隊発動です。
世界で治安が良いと言われる日本も,さすがにこの事態にはどうしようもないのか。
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亮は雪乃も捨て,一人復讐のみを誓って行動しているようでした。
終盤で「教会」が出てきます。そうだ,神父さんとかはこの事態をどう解釈するのか。興味ありますよね。
本作品で登場する教会の神父さんはこの事態に「特別礼拝」をおこなってました。
ダイスが落ちてこないように祈ることもするが,基本的には神の身心のままに,というところかな
落ちてくる来ないは自分たちが決めることではなく,神のみぞ知ること。
それを決めるのは人間ではない。怯えて我を失うことなく,静かにそのときを迎える強い心をあたえてほしいと願うんだ
神父さんらしい言葉ですね。やはり落ち着いてる。確かになるようにしかならないでっすもんね。
大学に戻った亮は思いもよらないことに出くわします。圭子の捜査をしていた岩田刑事が殺害されたのです。
亮は一瞬美咲を疑います。しかし美咲は否定します。では一体誰が。。。やはり小田切教授か?亮は小田切教授を追います。そしてとうとう小田切と向き合います。
やはり小田切教授は亮の姉である圭子を愛していたようです。
「私たちが圭子を殺した。。。」
ん? 私たち? 何かちょっと違和感あるなぁ。でも亮は小田切の犯行を疑っていません。
ところが小田切は「贖罪」と称して,突然服毒してしまうのです。そして小田切は絶命してしまいました。ということは,小田切は犯人ではなかったのか。。。
再び亮は美咲と話します。美咲が母親のことをとても愛していたこと。
そんな母親を安らかに眠らせるために,薬を打とうとしていたこと。
何か,亮にとっての圭子,美咲にとっての母親の存在がダブります。
さらに,圭子を殺害したのは小田切で,圭子は「ED」の薬を持っていたこと。
しかし美咲はそのことに違和感を感じます。「それっておかしくない?」
つまりこういうことです。EDの薬を持つのは普通は男性であって,女性ではない。では圭子はなぜ「ED」の薬を持っていたのか。
実は小田切には心筋梗塞になったことがありました。
そういう人って,症状を緩和するために「ニトロ」を服薬することがあります。
これとEDの薬の相性は悪いはず。ではなぜ持っていたのかということ。亮はネットで検索します。
「シルデナフィル」「呼吸器科」「病気」というキーワードを使って。
検索結果に出たのが『肺高血圧症』と出たのです。これはどうやら難病らしいです。
肺高血圧症とは
心臓から肺に血液を送るための血管を「肺動脈」といいます。
この肺動脈の圧力(血圧)が異常に上昇するのが「肺動脈性肺高血圧症(PAH)」です。
肺動脈の圧力が上昇する理由は、肺の細い血管が異常に狭くなり、また硬くなるために、血液の流れが悪くなるからです。
-難病情報センターサイトより-
そして衝撃の真実が明らかになります。実はサークル『賽の目』の代表は確かに小田切でしたが,それを乗っ取った人物がいました。
その新しい代表者は『賽の目』を大きくしていった。実は亮の姉圭子も賽の目のメンバーだったのです。
新しい代表者は圭子に一目置いていた。ダイスの衝突まで,圭子を近くにいさせようとした。
しかし圭子はそれを拒みました。弟である亮と一緒に最期を迎えることを選択したのです。
それを赦せなかった新しい代表者は,圭子を殺害したのです。
ではその「新しい代表者」とは誰なのか。
どうやら亮は閃いたようです。誰が犯人なのか。その犯人からメールが来ます『明日午前九時 圭子が死んだ場所で』
美咲は待ち合わせ場所に行く亮にある物を渡します。それが冒頭のシーン。紅いお守りを渡されます。
そしてとうとう犯人が判明します。
「お久しぶりです,香澄さん。あんたが姉さんを殺したんだな」
犯人は東雲香澄でした。あの魚住の家にやってきた彼女です。魚住健二,そして岩田刑事をも殺害したのも彼女でした。ではなぜ殺害したのか。動機は,香澄も圭子を愛していたからでした。
最後は自分の弟と一緒にいると言われた香澄は嫉妬したのでしょう。
亮を殺害しなかったのは,亮が苦しむ姿を見たかったから。何とも自己中心的な考え。。。
亮は持っていた銃の引き金を三回引きました。しかし何も起きませんでした。
三発の銃弾は実は「紅いお守り」の中にあったのです。美咲はこれを予想していたのか。亮に犯人を殺害させないようにすることを。
そして驚くべき真実が明らかになります。
圭子を殺害したのは。自分自身でした。つまり圭子は自殺だったと。
圭子の自殺の動機は「自分が亡くなれば,弟はダイスがやってくるまで自分のことだけを考えてくれる」ということでした。
亮が圭子を大好きだったように,姉も弟のことを一番に想っていたんですね。
そして亮は美咲とともに例の展望所へ行きます。まさに表紙のシーンはここだったのかもしれません。
ダイスが突如として真っ赤に輝きだした。とうとう大気圏に突入してきたのだろう。
空が深紅に燃え上がる。それは恐ろしくも美しい光景だった。
地球滅亡が近づいているという中,世の中の人間がどんなことを考えるのか,どんな行動を起こすのかをうまく表現していたと思います。
「自分の人生があと残りわずかということ」と「地球の滅亡」は,やはりイコールではないのかな。
悪事を働く人間もいれば,残りが少ないとわかっていてもより良く生きる人がいる。
その差は,その人自身の「人間性」に現れるのではないでしょうか。
今回は自分の姉が殺害された主人公の話でしたけど,それも含めていろいろなことを考えさせられました。
今,生きていることに感謝しながら,自分の周囲の人々が健康で元気に生きていることに感謝しながら,これからも生きていきたい。
● 主人公の姉の想いとダイスの関係
● 残された人生をどう生きるかを考えさせられました
● 隕石や小惑星が本当に地球に衝突する事態に,自分どんな行動をとるのか