「加賀恭一郎シリーズ」の第2弾の作品。
僕自身が東野圭吾先生の作品で3番目に読んだ作品です。この頃から「この加賀恭一郎シリーズは本当に面白い」と思ってシリーズ作をどんどん読んでいった覚えがあります。
本作品は映像化されてますけど,見たことはないです。見る機会あるかなぁ。
ただ,読んだときのイメージ,バレエ団の事務所やホール,そして殺害シーンや殺害の死因についてなど,はっきりと覚えています。
今回はそのバレエ団で起こる連続殺人事件の話です。ある日,バレエ団の事務所に一人の男が侵入し,その時たまたま居合わせたバレエ団のメンバーが驚いて男を殺害してしまうところから話は始まります。
目 次
1. こんな方にオススメ
2. 登場人物
3. 本作品 3つのポイント
3.1 正当防衛の殺人事件
3.2 ニューヨークでの出来事
3.3 2つの事件の繋がり
4. この作品で学べたこと
● バレエ団を襲う事件について知りたい
● 加賀恭一郎の推理を読んでみたい
● 冒頭の事件が終盤に向かってどのように繋がるのか興味がある
青年刑事が追う踊り子の美しくも哀しい秘事華麗な舞を舞うバレエ団のプリマが正当防衛とはいえ、レッスン場に忍び込んだ男を殺害してしまった。捜査に当った青年刑事は次第にあるバレリーナに魅かれていく。
加賀恭一郎シリーズ
-Booksデータベースより-
加賀恭一郎・・主人公。警視庁捜査一課の刑事
浅岡未緒・・・高柳バレエ団のダンサー
斎藤葉瑠子・・高柳バレエ団のダンサー。未緒の親友
高柳静子・・・高柳バレエ団のオーナー
梶田康成・・・高柳バレエ団のバレエマスターで被害者
柳生講介・・・高柳バレエ団のダンサー。葉瑠子の恋人
風間利之・・・画家で,バレエ団に侵入し,殺害される
1⃣ 正当防衛の殺人
2⃣ ニューヨークでの出来事
3⃣ 2つの事件の繋がり
ある日,高柳バレエ団の事務所に風間という男が侵入します。事務所にいたバレエ団の斎藤葉瑠子がその風間という男を殺害してしまうのです。葉瑠子は自分を護るために殺害,つまり「正当防衛」として拘留されてしまいます。
この侵入した男,物取りなんでしょうか。警察が捜査していくと,バレエ団には関係なさそうだし,一体何のために侵入したのかという動機もわかりませんでした。
ここで刑事の加賀が登場します。彼はこのバレエ団の演劇をみたことがあったようです。その際に気になった一人のダンサー,浅岡未緒と出会うことになるのです。
未緒は容疑者である葉瑠子と幼馴染で親友でした。
未緒のことが気になる加賀としては何とか事件を解決し,彼女たちを救ってあげたいという気持ちになっていたようですね。
何も関係ないと思っていたこの事件の被害者の風間利之。捜査の段階で,微妙にバレエ団と関係があることがわかります。
高柳バレエ団にはニューヨークにダンスの留学先がありました。
実は被害者の風間は2年前に何とニューヨークに住んでいた経験があり,しかもその場所が留学先と近いというのです。その過去の出来事を知り怪しむ加賀恭一郎。
ところが捜査がどんどん進展していく中,今度はバレエ団の中で事件が起こってしまいます。
バレエ団の劇場で,バレエマスターである梶田が急に倒れてしまうのです。そして亡くなってしまいました。
彼の背中には針のようなもので刺された跡がありました。一体,誰が梶田を殺害したのでしょうか。最初の事件とつながりがあるのでしょうか。
梶田の死因は,梶田自身が来ていたジャケットにありました。
ジャケットの裏には毒針のようなものが仕込まれており,席にもたれ体重をかけた瞬間に毒が注入されるというトリックが利用されたのではないかと推測されました。ところが警察が調べた時にはその針は取り去られていました。
この針に重要な証拠があるのか。毒物の入手ルート? それとも指紋か何か残留物があったのか?
柳生というダンサーが独自に調査をしようとします。警察には任せておけないと。
状況的にはおそらくバレエ団の中に犯人がいるでしょう。そう加賀も確信しているようです。
ところが今度はその柳生が毒を盛られてしまうのです。運よく一命は取り留めたものの,やはり真相に迫ろうとした行動が真犯人を刺激したのでしょうか。
梶田の葬儀の日。加賀は犯人のヒントがないかと目配せしていました。すると未緒が路地裏で佇んでいるところを目にします。声をかける加賀。
そこから二人は公園に行くことになります。未緒のことを気に入っている加賀にとっては少し幸せな瞬間だったかもしれないですね。そしてここで加賀は重大なヒントを手にします。
軟式テニスの練習をしている女子中学生を見ているうちに,空気入れを見つけます。
「この空気入れが殺害トリックに利用されたのではないか」かつて軟式テニスの経験があった森井というメンバーに焦点が当たります。彼女は自宅で亡くなってしまっていたのです。
しかもその傍らには証拠品として捜査していた毒針が見つかりました。犯人は森井?
捜査が進むにつれ,実はニューヨークでの出来事が大きなポイントだとわかってきます。
一体,ニューヨークで何があったのかが大きなポイントです。
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実は森井も高柳亜希子とともに留学経験がありました。そこで風間と関係があったのか。。。
実は高柳亜希子にはニューヨーク時代に恋仲になった男性がいました。しかしそれを引き離したのが梶田です。しかもその恋仲になったのは亜希子ではなく森井だということにしたのです。
高柳はやはりバレエ団の重要人物です。恋仲になったとなればいろいろなことが狂ってしまうと考えた梶田は,そんな仮想的な事実を作ったのです。
それを風間から聞いた森井は梶田に復讐しようとします。やはり梶田殺しの犯人は森井でした。
そして,高柳亜希子にも恋仲になっていた男性が今も会いたがっていると吹き込んだのがその男性と仲の良かった風間です。
つまり,風間は自分が殺害されたあの日,亜希子に頼みに行ったのです。
「ニューヨークにいる男性に会いにいってくれ」と。
ところが「そんな気はない」と亜希子にあっさり断られた風間は逆上し,亜希子を襲ったのです。
そしてここが風間殺しの真相になります。
正当防衛と思われていた事件。その風間を殺害したのは実は「未緒」でした。
えっ? となりますよね。未緒は親友の亜希子が襲われいていると思い,花瓶で風間を殴ったのです。
未緒は事態が落ち着いたら自首するつもりだったようです。彼女にはバレエ団での大事なイベントが控えていましたから。
しかしこれは加賀にとっては衝撃な真実だったと思います。
犯人を追い詰めるのが加賀の仕事。しかし,本音は追い詰めたくないと思っていたのではないでしょうか。加賀は何か未緒のことを気に入っている様子だったので。
バレエを演じるために,必死で練習し,減量、体型の維持もやってきた未緒の姿を見てきていた加賀にとっては辛い結末だっただろうと思います。
加賀という人物は,一見堅物でとっつきにくい人物に映ります。
でも心は本当に優い人間像だと思います。そして誰よりも人間味がある。
シリーズ第一作目の「卒業」でも一人の女性に恋心を寄せているようでしたし,今回も同じようにある意味「恋」をしている感じを受けました。
事件と人間関係は別物ですから,時には加賀の気持ちになってみると,何か切なさが残るような作品でもありました。
それでも自分の心を抑え込んで自分自身の職務を全うしようとする加賀恭一郎に僕自身も魅かれるわけです。
シリーズが10作も続くというのは,やはり加賀恭一郎という人間に魅力がであるからなのではないかと,これまでの作品全てを読んで思うわけです。
● 今回の話は,加賀にとっては辛い展開になってしまったと思う
● それでも自分の職務を全うしようとする人格者の加賀にやはり惹かれます