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【白銀ジャック】東野圭吾|スキー場の爆破予告の真意とは

白銀ジャック

東野圭吾先生のスキー場を舞台にしたミステリー。先生自身もスキーやスノボが得意で,今回の作品には思い入れがあるようです。

2014年には映像化されています。主演が渡辺謙さん,そして岡田将生さんや広末涼子さんなどの豪華キャストの作品に仕上がっています。

次作の「疾風ロンド」にも続く,東野先生が描かれた数々のシリーズの中の代表的なものの一つになっています。

スキーやスノボをする環境にない僕にとっても,スキー場のことを詳しく知ることができましたし,スピード感のある作風には興奮しました。スキー場そこにミステリーが絡んでくるので,スキー場に行かれる方にとってはたまらない作品かもしれませんね。

話は,「ゲレンデに爆弾を仕掛けた」という脅迫メールが届き,スキー場内の人間がそれを阻止しようと動き出すところから始まります。

このスキー場に,一体何が起こっているのでしょうか。

こんな方にオススメ

● スキー,スノボが好きな方

● スキー場の経営に関わる脅迫事件に興味がある

● スピード感のある作品を読んでみたい

作品概要

ゲレンデの下に爆弾が埋まっている――
「我々は、いつどこからでも爆破できる」。年の瀬のスキー場に爆弾を仕掛けたと脅迫状が届いた。警察に通報できない状況を嘲笑うかのように繰り返される、トリッキーな身代金強奪。ゲレンデを乗っ取った犯人の動機は金目当てか、それとも復讐か。すべての鍵は、一年前に血に染まった禁断のゲレンデにあり。今、犯人との命懸けのレースが始まる!
-Booksデータベースより-



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主な登場人物

倉田玲司・・・主人公。新月高原スキー場の管理人

根津昇平・・・スキー場のパトロール隊

藤崎絵留・・・スキー場のパトロール隊で,根津のパートナー

桐林祐介・・・スキー場のパトロール隊の新人

入江義之・・・新月高原スキー場にやってきた客

瀬利千晶・・・スキー場の近くの居酒屋でバイトをする女性

本作品 3つのポイント

1⃣ 3000万円の脅迫メール

2⃣ 全て怪しく見える人物たち

3⃣ 北月エリア爆破?

3000万円の脅迫メール

舞台は「新月高原スキー場」。このスキー場を管理している倉田の元に一通のメールが届きます。

3日以内に3000万円を準備しなければ,ゲレンデの下に埋めた爆弾を爆破する

このスキー場の管理人,正確には「策動技術管理者」つまり,ロープウェイなどの管理者である倉田はスキー場の上層部に報告します。

しかし「この話は警察沙汰にするな」と指示されてしまいます。苦悩する倉田。脅迫状に驚く爆弾のことがバレると客足が鈍るという評判を気にしてのことなのか。経営の問題なのか,何なのか。最小限の人数で対処するように言われた倉田はある決断をします。

倉田はここで「スキー場のパトロール隊に協力してもらう」ことにするのです。

まず倉田はパトロール隊のリーダー的立場の根津に協力を要請します。根津と言えば,このシリーズのほとんどの作品に登場する人物です。スキー根津はというと,ちょうどあるスキーヤーを追跡しているところでした。滑走禁止区域を滑るスキーヤーが時々出るらしいのです。

スキーのスキルが上がると,難しい場所を滑りたいという欲が出てくるからなのでしょうか。

倉田が指示したのは三人のパトロール隊員です。根津と女性隊員の藤崎絵留,そして新人の桐林です。

広大なスキー場のどこに爆弾が仕掛けられているのか。フェイクではないのか。

しかし,犯人が指示した場所に起爆装置のようなものが見つかります。ここでスキー場側は犯人の要求が本物であることを悟るのです。起爆装置恐怖感いっぱいの倉田を始めとするスキー場関係者たち。

そんな時,ある客がやってきます。入江義之と息子の達樹です。

実は,入江の妻はこのスキー場で亡くなっていました。スキー場の滑走禁止エリアを滑っていたスノーボーダーが入江の妻と接触した際,頸動脈を切られ,亡くなったというのです。

その頃からゲレンデの一部が使用禁止となります。だから,パトロール隊は違反者を一生懸命取り締まろうとしていたんですね。スノーボーダーということは,この入江親子には爆弾を仕掛けるという動機があるということになります。

この親子が犯人なのか。それとも別の人間なのか。スキーをする親子

怪しそうに見える人物たち

入江の妻と接触した人物はまだ捕まっていませんでした。封鎖された北月町側のゲレンデ。

このゲレンデが封鎖されたことによりスキー客が来ないということで,北月町にある飲食店などは経営が傾いていました。廃れる町スキー場のオーナーも苦悩しているようでした。北川町の町長たちから「早くゲレンデを復活させてほしい」と頼まれると同時に,もう一つ問題がありました。

新月高原スキー場が,スキーとスノボの大会の会場になっていたのです。爆弾脅迫メールが来ていることを警察にも伝えていないわけですから,二重苦,三重苦というわけです。

「これは身代金を払って,爆弾の場所を特定するしかない」

そう判断したスキー場の上層部。さらに犯人から指示がきます。

「身代金を持ってくるのは,スキーかスノボの経験者にしろ!」

準備した身代金3000万円を防水のケースに入れ運びます。ところが思ってもないことが。。。ジュラルミンケース身代金を運んでいる時に,犯人にあっさり奪われてしまうのです。

どうやら犯人はスキーかスノボのスキルが相当高い人間のようです。

「さらに3000万円用意しろ!」

これが犯人側の要求です。完全に嵌められたスキー場側。早く警察に言っておけばよかったのにと思ってしまいますよね。

今の状況で警察へ行っても,「なぜ早く言わなかったんだ」とスキー場側は責められるわけですから。

密かに犯人を自分の手で確保しようと考えている人物がいました。根津です。根津彼は正義感の塊のような人物で,自分たちの仕事場,そして客が楽しむ場所を荒らされることに苛立ちを感じているようでした。

そんな時,滑走禁止区域に侵入したスノーボーダーがいました。根津は追い詰めます。犯人なのか? スノーボーダーは女性でした。あの「瀬利千晶」です。瀬利根津と千晶と言えば,「疾風ロンド」でも登場します。ここが初顔合わせだったんですね。

千晶は大会に出場するための練習で禁止区域に入っていました。

スキー場側は二回目の取引にも失敗します。また3000万円がパーになりました。

同時に,爆弾が埋められていない場所も伝えられます。それは「北月町エリア」です。このエリアに何かヒントがあるような気がします。

いや,客としてやってきた,スキー場にある種の恨みもある入江なのか。

そしてとうとう犯人からの三度目の要求が来ることになるのです。脅迫電話

北月エリアの爆破

※ネタバレを含みますので,見たい方だけクリックしてください!

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新月高原スキー場には「売却」の話が出ていました。やはりあの事故が原因なのでしょうか。

北川町のエリアの飲食店などの経営が傾いてきているというのは先に書いた通りですが,一つのゲレンデが封鎖されることによって,損失が町自体を揺るがすことにもつながりかねないんですね。損失でもやっぱり北月エリアだけ爆弾が埋まっていないというのが本当だとしたら違和感ありますよね。犯人は北月エリアに関係する人物のようにも思えてきます。

そして,とうとう三度目の脅迫が来るのです。

取引時に犯人を追うと決断した根津。桐林に同行を依頼するのですが,これを拒否。

絵留が取引に向かいます。そして指示通りに身代金を運びます。そして二人の人物が身代金を運び出していました。

根津と千晶が追います。そして二人を取り押さえると意外な人物が。

桐林でした。彼が犯人だったのか。もう一人は北月町の町長の息子でした。彼らはグルだったんですね。二人組ところが,倉谷には「取引失敗」の連絡が。一体どうなっているのか。

その瞬間,北川町のエリアのゲレンデが爆破されます。倉田や入江親子はちょうど北月エリアにいました。根津たちは間一髪彼らを救い出すのです。

身代金を渡したのに,なぜ爆破されてしまったのか。桐林たちは犯人ではないのか。

実は脅迫した人物は別にいました。それは新月高原スキー場の社長をはじめとする上層部たちでした。動機はこうです。企業上層部スキー場の売却を狙っていた社長は,身代金受け取り失敗することで北月町エリアを爆破させようとしていたんです。

北月町エリアを復活できないと踏んだ社長はこの計画を立てたのでした。

しかし,計画を一早く知った人物がいました。北月町長の息子の増渕です。北月エリアが爆破されれば,損失は北月町にくるわけですから。

彼は桐林に相談していたんですね。「取引を成功させて,爆破をさせないようにしよう」と。話し合いスキー場売却のために脅迫事件を計画した者,それを阻もうとした者。事件はとても根深いものでした。

爆破された北月エリア。スキー場を買い取る者がいました。当初から売却先だった日吉という人物でした。

今回の事件は隠密に,という条件で日吉は新月高原スキー場を救いました。

本作品で登場する「根津」と「千晶」。「疾風ロンド」や「雪煙チェイス」を先に読んでしまった僕自身は「この白銀ジャックがオリジナルだったんだなぁ」と思いながら読みました。

根津はスキー場のパトロール隊として。千晶はスノボをしにきた客として。

何回かに分けて数千万を要求してくる犯人の狙いは何なのか。登場人物はみんな怪しく思えるし、動機は何なのかも検討がつきませんでした。

ひょっとしたらこの人犯人かな,という人間もいましたが,話の途中でそれはないということがわかって益々混乱。ん~、やはり最後まで読まないとダメでした。

読んで思ったのは、これをよくドラマ化することができたな、ということです。

キャストもスキーやスノボがうまい人物でなければならなかったし,スキー場に爆弾が仕掛けられているという話も恐ろしかったし。舞台になったスキー場に影響なければいいなと。

スキー場それにしても,組織というのは結局トップの考え次第で変わっていくものなのだなって思いました。利益優先なのはわかるんだけど,やはりやり方が。。。

今回のスキー場も前代未聞のトラブルに巻き込まれたけど,最後はスキー場にとってはいい方向に進みそうな感じだったので、そこは良かったかな。

最初から最後まで一気に読める,面白い作品でした。

この作品で考えさせられたこと

● スキー場の爆破予告,身代金要求というスリリングな展開

● スピード感溢れる作品で一気読みでした

● スキーやスノボに詳しくない人にもわかりやすいストーリー

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