超大作、ざっと850ページ。これまで東野圭吾の小説の中でも最も長い話でした。
しかも,東野先生の初期の頃の作品ではあるんですが,これまで何度か映像化されてます。発行部数は200万部を超え,ファンの間でも語り継がれる作品です。
1973年,ある質屋の主人である桐原洋介が殺害されるところから話は始まります。
この事件は未解決事件となってしまいます。
その被害者である桐原の息子亮司と,事件の容疑者である西本文代の娘である雪穂。
別々の道を歩んでいるように見えます。亮司の周囲でも,雪穂の周囲でもそれぞれ事件は起きていきます。別々の事件なんですが,何か違和感を感じるのです。
果たして二人につながりはあるのか。事件の真相は何なのか。
笹垣という刑事が時を超えて彼らの事件を追います。
目 次
1. こんな方にオススメ
2. 登場人物
3. 本作品 3つのポイント
3.1 幼き頃の事件
3.2 意味深な行動を取る雪穂
3.3 雪穂と亮司の白夜行
4. この作品で学べたこと
● 冒頭の殺人事件の真相を知りたい
● 亮二と雪穂の間にはどんなつながりがあるのかを知りたい
● 「白夜行」の真の意味を知りたい
1973年、大阪の廃墟ビルで一人の質屋が殺された。容疑者は次々と浮かぶが、事件は迷宮入りする。被害者の息子・桐原亮司と「容疑者」の娘・西本雪穂――暗い目をした少年と、並外れて美しい少女は、その後、全く別の道を歩んでいく。二人の周囲に見え隠れする、いくつもの恐るべき犯罪。だが、証拠は何もない。そして19年……。伏線が幾重にも張り巡らされた緻密なストーリー。壮大なスケールで描かれた、ミステリー史に燦然と輝く大人気作家の記念碑的傑作。
-Booksデータベースより-
1⃣ 幼い頃の事件
2⃣ 意味深な行動を取る雪穂
3⃣ 雪穂と亮司の白夜行
冒頭に書いたように,質屋の桐原洋介が何者かに殺害されます。
建築中の建物の工事が中断してしまい,この利用されない場所を使って殺人が行われたのです。
この桐原,西本文代という女性の家に行っていたことがわかります。しかし,文代は自分は無関係だと主張します。
刑事である笹垣など捜査により,次々と事実が明らかになります。
桐原には亮司という息子がおり,文代は亮司が店にいた主張。
文代は寺崎という男性と付き合っていたんですけど,その寺崎が交通事故で亡くなってしまいます。
そして,文代の娘である雪穂も自宅に鍵がかかっていることに違和感を感じ,管理人が開けると,何と文代自身も自宅にガスが充満した状態で亡くなってしまっていたのです。
冒頭からいきなり殺人事件があり,関わっている人間も非常に多い。
主人公の雪穂,そして亮司の二人には何か秘密があるのでしょうか。
何か怪しい関係性を疑いながらも,彼女たちは別々の道を進んでいくのです。それから四年後。雪穂は唐沢と名乗り,中学生になっていました。かなり美形であるため,他の学校から雪穂目当てに押し寄せる状態。
雪穂の写真を誰かが撮ったの撮らないという話が出たり,女性の裸を写したものを手に入れた入れないなどの事件が起こります。
そこに亮司も絡んでくるんですけど,どうも雪穂と亮司は直接絡んでいる様子がないんですね。ん~,ただ何か匂う感じです。。。
それから二年後,友彦という男が女性と性的行為を行った後,女性が亡くなるという事件が発生します。友彦に相談される亮司。
見限ろうとしましたが,気が変わったのか彼を誘って「無限企画」という,「サブマリン」というゲームをパクって自分たちで「マリン・クラッシュ」というゲームとして売って儲けようとするわけです。事件についても亮司に救われます。この恩を売って利用しようとする辺りが亮司のズルさなのかな。
雪穂の狡猾さ,亮司の異常なまでの行動。彼女たちは別行動に見えて,実は繋がっているようにも思わせられます。そこが東野先生の表現のうまさでしょうか。
そしてさらに多くの事件が起こります。
さらに2年後,今度は雪穂の話になります。彼女は大学生になっていました。
同じ研究室には中道正晴がいるんですけど,どうやら雪穂に惚れているみたいです。
ここで研究室では問題が起きていました。研究室で作成した「サブマリン」をパクった「マリン・クラッシュ」というゲームが通販で販売されていたのです。
つまり著作権の侵害で,これが先に書いた話とつながるんですね。
ん~,やっぱりこれを流したのも雪穂か? 亮司にプログラムデータを渡した?正晴は雪穂に不信感を持ちます。そして彼女の幼い頃の事件を調査しようとするんです。
しかしここはさすが雪穂。泣き落としに遭い,正晴は雪穂を追及することができなくなってしまいました。
さらに2年後,ソシアルダンス部に入部した雪穂は,一人の男性に惚れます。それが篠塚一成でした。しかし一成には江利子という好きな女性がいました。
ある日,江利子がサークルに顔を見せなくなりました。何かしら嫌な予感を感じる一成。
しばらくすると,江利子の裸の写真が出回ってしまいました。一体誰が。。。
さらに,部費を管理していた口座から多額の金が引き落とされていることに気づきます。
警察が動き出す事件にまで発展しました。どうやらこの口座の金も亮司が引き落としたようなのです。何も悪びれない亮司,そして雪穂。ちょっと「サイコパス」な感じを受けてしまいます。
やはり彼らは年月を重ねても「密かにつながっていた」わけなのでしょう。
そして雪穂はとうとう結婚することになるのです。大学時代から付き合っていた高宮誠という男性です。しかし,ここでもさらに事件が発生してしまいます。
誠が経営している企業のシステムととてもよく似たシステムが存在することに気づきます。システムだけでなく,入っているデータまでが似ているとなれば,これも著作権違反です。
社内システムのはずが,外部からIDとパスワードで侵入できるということは,これも雪穂が亮司に流したのでしょう。不信感いっぱいになった誠は,雪穂と離婚することにします。
ある日,誠はゴルフの練習場へ行きます。ここで誠は今枝という調査員と出会います。
今枝はある企業が使用しているシステムの調査依頼を受けていました。
そしてそのシステムを密かに販売して儲けている男に目をつけていました。
今枝はゴルフ練習場で,その今枝に一成から連絡が入ります。
一成の従兄,篠塚製薬の常務と雪穂が付き合っているらしいのです。
これはどう考えても怪しいですね。一成もそう思って今枝に連絡してきたのでしょう。
誠,一成,今枝たちも不信感を抱いているようでした。雪穂は一体何者なのか。そしてそこに亮司がどう絡んでいるのか。
ここからがクライマックスです。
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調査員だった今枝はこれまで聞いたこと,そして一成の雪穂への不信感などから独自に調査を始めました。
次の狙いは誰なのか。今枝は一成ではないかと思っているようでした。
ところが今枝は妻から「ウチに盗聴器が仕掛けられている」と打ち明けられます。
これで今枝は,雪穂の狙いが自分自身であることを悟るのです。
刑事の笹垣も徐々に真相に迫っていました。彼は亮司の写真を今枝に見せます。
今枝は知らないと言いますが,実は見たことがありました。
今枝はようやく気付くのです。雪穂と亮司がつながっていることに。しかし,自宅に帰り,トイレに違和感を感じた後,外蓋を開けた瞬間,亡くなってしまいました。どうやら青酸カリが仕込まれていたようです。
実は,これを手に入れたのが亮司でした。彼はわざと気分が悪いフリをして,病院の薬剤部に勤務していた典子に近づいたのです。
確信的に青酸カリを手に入れ,今枝を殺害したのです。その狡猾さには言葉も出ないです。
笹垣がさらに真相に迫りつつありました。彼はかつて亮司の父親が殺害された事件の調書を見直します。
「ビルのダクトを移動したが,ブロックが邪魔してドアが開かなかった」
という証言に注目します。そしてその証言をした人間に確認をします。確かに開かなかったと。
ドアが開かないということは犯人はドアから出れない。つまり,ダクトを使うしかなかったわけです。
そうなると犯人は一気に絞られます。犯人は当時「子供」だった人間です。
雪穂か? 亮司か? 笹垣は「亮司」であると踏みます。
ここでようやく真相が明かされます。19年前に亮司の父親である洋介がなぜ殺害されなければならなかったのか。
洋介には「幼女虐待」の趣味がありました。雪穂をもてあそんでいたのです。
事件当時の廃屋に雪穂を連れ込んで情事に走っていたのです。
驚くべきは,洋介は雪穂の母親である文代に金を積んでいたのです。つまり強要された「売春」です。
ここまで読んで,ようやく全てが一本につながりました。
洋介が情事に走っていた瞬間,殺害したのは亮司だったんですね。
亮司は仲のいい雪穂がもてあそばれていたこと,そして父親に対する怒り,全ての力をふりしぼって自分の父を殺害したのでした。そしてダクトから逃げたということです。
これが19年前の真相でした。
桐原亮司は西本雪穂を守っていたんですね。そこから彼らの人生がおかしくなったしまったのでしょうか。
父親を殺害した亮司は自分しか信じられないようなところがあり、雪穂も周囲から一目置かれるも、見る人間によっては危なさを感じるところがありました。
そして笹垣という刑事が時効が成立してしまった事件を執念で調査し,19年間かけてやっと真相に辿り着きました。
時効を迎えているため、19年前の事件自体は裁かれないでしょう。
しかし,亮司は雪穂のために多くの犠牲を払ってきました。
驚くべきことに,雪穂は殺人には,ほぼ?手を染めていないということです。
全ては亮司が実行したものでした。きっと,雪穂に対しての「贖罪」だったのではないでしょうか。ダメな父親の代わりに罪を償っていたということ。
それからというもの,彼らは生きるのに必死でした。生きるためには住む場所も必要だし,お金も必要。
彼らは生きる力が恐ろしく強かった。しかし生き方を間違えたのだと思います。
表の顔、裏の顔。見事に使い分けながら犯罪をやりとげてしまった。
白夜行。暗闇の中にいながらも、亮司の薄暗い光を頼りに進んでいた雪穂。
雪穂がいたから亮司は犯罪を繰り返しながらも雪穂を支え,亮司がいたから雪穂は何とか生きてくることができたのかなと思います。
終わってみると,本当に切ない話でした。
● 19年前の真相,雪穂と亮司の境遇を知ると切なくなった
● 雪穂と亮司の絆の深さ
● 19年間捜査を続けた笹垣刑事の執念