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【海賊とよばれた男】百田尚樹|石油業界の礎を築いた人物

海賊とよばれた男

百田尚樹さんというと,やはり「永遠の0」を思い出しますが,僕自身が読んでみたいと思っていた作品がこの「海賊とよばれた男」でした。

石油を扱う国岡商店の店主である国岡鐵造(てつぞう)が,戦前,戦後にどのような活躍したかを描いた作品です。

国岡商店は,戦時中は軍に燃料となる石油を供給し,敗戦してからはGHQの支配下の元,国岡自身も経営を続けなければならないのです。

日本のために,日本国民のために,そして自分の会社の社員のために奔走する国岡がいかにすごい人物かを感じることができる作品です。

モデルになっているのは出光商会の創業者である「出光佐三」さんだそうです。

こんな方にオススメ

● 国岡鐵造という人間を知りたい

● 日本の石油業界の礎を作った人間の半生を知りたい

● 国岡の真のすごさを知りたい

作品概要

一九四五年八月十五日、敗戦で全てを失った日本で一人の男が立ち上がる。男の名は国岡鐡造。出勤簿もなく、定年もない、異端の石油会社「国岡商店」の店主だ。一代かけて築き上げた会社資産の殆どを失い、借金を負いつつも、店員の一人も馘首せず、再起を図る。石油を武器に世界との新たな戦いが始まる。石油は庶民の暮らしに明かりを灯し、国すらも動かす。「第二の敗戦」を目前に、日本人の強さと誇りを示した男。
-Booksデータベースより-




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本作品 3つのポイント

1⃣ 国岡商店の歴史

2⃣ 海外への石油販路拡大

3⃣ 国岡鐵造の真のすごさ

国岡商店の歴史

国岡商店は戦前,日本軍に石油を供給していました。

ただ,日本で供給するのではなくて,中国や東南アジアなど,日本軍の拠点での供給です。

日本の供給を統括する組織からは「異端者」として扱われる国岡。

「特攻」という最終手段を選択した日本軍も,最終的には敗戦し,国岡の会社も海外の拠点から撤退してしまいました。

そして日本は全てをマッカーサー率いるGHQ(連合国軍)に支配されたのは誰もが知るところです。

空襲に怯えながらも,日本が戦争に勝つことを信じていた国民は,さぞ無念だったと思います。

戦争が終わるということは戦闘機を飛ばすのに必要な石油の供給が一気に減るということです。

終戦直後には石油の供給がアメリカにより削減されため,日本は途方に暮れてしまうわけです。

その中でも国岡商店はGHQの指令により,旧海軍の燃料タンクから石油を取り出すという,とても過酷な仕事をさせられるのです。

石油を販売して利益を得なければならない国岡商店の店主,国岡鐵造は何とか経営しなくてはなりません。

苦しい状況の中,国岡の指示の元,国岡商店の社員たちは必死で働き,ようやく販売店の権利を得ることになるのです。

ところがこれを良しとしない,邪魔する企業や人間も現れるのです。

出る杭は打たれるといったところでしょうか。国岡商店にピンチが訪れます。

国内での販売が難しくなった国岡は,次の一手に考えました。

海外への石油販路拡大

日本国内での石油の販売が難しくなった国岡が考えた策が,海外への石油の販売です。

そのためには石油を輸入し,輸出しなければなりません。

そこで国岡商店は「タンカー」を製造しようと考えます。

実は戦時中も「日章丸」というタンカーを製造していましたが,これが二艘目となります。

海外から石油を輸入し,さらに世界への販路を拡大しようとする国岡。

徐々に海外への販路拡大により利益を得ていこうとするのですが,ここでまた邪魔が現れます。

「セブンシスターズ」という石油メジャーが立ちはだかるのです。

石油メジャーというのは,大きな資本や政治力により,石油の生産から販売までを独占しようとする企業の複合体のことです。

大ピンチの国岡は,石油国有化を目指していたイランとつながりを持つようになります。
元々イランの石油は,イギリス資本で経営されていたようです。

そこで国岡は,自前のタンカー(日章丸)をイランへ派遣し,極秘裏にイランからの石油を受け入れ,日本へ運ぶことに成功します。

国岡の行動というのは,もちろん国岡商店の経営のためではあるんですけど,日本のために行動しているようにも思えます。

何かに支配されて言いなりになるのではなく,新しいビジネスを作り出すために,現状を変えようとする行動力や決断力は本当にすごいと思います。

しかし,そのビジネスもそう長くは続きませんでした。

イランとの友好の架け橋となっていたモサデク大統領が失脚し,イランの石油は再び石油メジャーに支配されてしまうのです。

国岡,またまだ大ピンチです!

国岡鐵造の真のすごさ

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国岡のアイデアはここで終わったかに見えました。

ところがここから国岡の反骨心が発揮されます。国岡の次の策は「石油精製」です。

海外の産油国から原油を輸入し,それを日本で精製しようとするのです。

具体的には,石油精製設備を建設し,原油から不純物などを取り除き,原油を灯油・ガソリン・軽油・重油などに分解することです。

これができないと結局は石油メジャーと対等になれないと考えたのです。

ではどうやってその設備を建設するのか。

そこには多額の資本が必要ですが,国岡の人脈でとうとう「バンク・オブ・アメリカ」から融資を受けることになるのです。

そんな世界有数の銀行から融資を受けるという確約を得る国岡の力は本当にすごいと思います。常識外れのスピードで石油精製設備を完成させ,国岡は日本の石油業界の礎を築き上げたのです。

企業のトップって,最終的には大きな決断をしなければならないから,孤独でもあるのだと思います。それは国岡も例外ではなかったでしょう。

しかし,国岡には強い信念があるような気がします。

全ては消費者のために」ということに尽きるのかなと思います。

さらに国岡のすごいところは,国の各省庁や同業他社に圧力をかけられたとしても決して動じないんですね。とにかく信念に従って闘います。

反発を受けるから闘うのではないです。消費者のため,自分の会社の社員とその家族のために。そして,徐々に国岡は多くの人の信頼を得ていきます。やはり見ている人間は見ているのだと思います。

国岡鐵造は本当にすごい人です。とにかくすごい!

これまでいろんな本を読んできましたけど,決断力に舌を巻く登場人物といえば,この国岡と,今野敏さんの「隠蔽捜査シリーズ」の竜崎伸也,そして半沢直樹くらいかなと思うくらいです。

でも,国岡はそのレベルが違います。国家レベルのビジネスを築き上げたその手腕には脱帽するしかないです。

大きな決断力だけでなく,自分が全責任を負うという覚悟を持っている。

国岡のような人間もいれば,逆に利権剥奪,私利私欲,我田引水,嫉妬心,不平等,梯子を外す,というような人もいます。

世の中には本当にいろんな人がいますよね。

これまでの人生,戦いの連続だった」という国岡の言葉。これが国岡鐵造の真のすごさを物語っている思います。

この作品を読むことができて,本当によかったです。

僕の人生の中でも,尊敬できる人物の一人となりました。

この作品で考えさせられたこと

● 日本の石油精製の礎を築き上げたというすごさ

● どんな敵にたいしても臆することなく闘う国岡の反骨心

● すべては消費者のために行動していたという国岡の思い

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