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【流星ワゴン】重松清|人は未来を変えられるのか

流星ワゴン

重松清さんの作品は,とても人情味が溢れるいい作品ばかりです。

最近では「とんび」が映画化されるみたいですね。

こんな方にオススメ

● 流星ワゴンが何か,どういう役割をするのかを知りたい

● 本作品で,過去に戻って人生を変えられるのかを知りたい

● 目の前の人生を一生懸命生きることの重要性を学びたい

作品概要

死んじゃってもいいかなあ、もう……。38歳・秋。その夜、僕は、5年前に交通事故死した父子の乗る不思議なワゴンに拾われた。そして――自分と同い歳の父親に出逢った。時空を超えてワゴンがめぐる、人生の岐路になった場所への旅。やり直しは、叶えられるのか――? 「本の雑誌」年間ベスト1に輝いた傑作。
-Booksデータベースより-



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重松清さんの作品を読んだのは,僕の長男が「とんび」を持っていたのがキッカケです。

いい作品だなと思い,この流星ワゴンを手にしたというわけなんですね。

重松清さんの紹介

1963年生まれ 早稲田大学教育学部国文科 卒業

出版社に勤務後,フリーライターとなる

主な受賞歴

坪田譲治文学賞(ナイフ)・山本周五郎賞(エイジ)・直木三十五賞賞(ビタミンF)・吉川英治文学賞(十字架)・毎日出版文化賞(ゼツメツ少年)

5年前,ある父親と息子がドライブ中に交通事故で亡くなります。

その二人が,命がいくばくかの人間を過去の大事なポイントへ連れていくという面白い発想の話になっています。

2015年には,主人公の永田一雄を「西島秀俊」さんが主演したドラマも放映されました。

主な登場人物

永田一雄・・・会社からリストラされ,現在失業中。今回の主人公

永田忠雄・・・一雄の父。癌になってしまい,命わずか

永田美代子・・一雄の妻。一雄に離婚を迫っている

永田広樹・・一雄の息子。受験に失敗し,引きこもりとなる

橋本義明・・・かつて自分が運転する車で事故に遭い亡くなる。流星ワゴンに乗る

橋本健太・・・義明の息子。義明と車に乗っていて亡くなる。流星ワゴンに乗る

リストラに遭った永田一雄は,妻からは離婚を迫られ,息子は受験に失敗してひきこもりになってしまいました。

一雄が「もう死んでもいいかな」と思っているところから話は始まります。

本作品 3つのポイント

1⃣ 流星ワゴンとの出会い

2⃣ 未来を変えようとする一雄

3⃣ 未来を変えるために

流星ワゴンとの出会い

リストラに遭い,妻に離婚を突き付けられ,息子がひきこもりになってしまった一雄は,人生に絶望感を感じていました。

ある日一雄は居酒屋で酔っ払い,帰りにフラフラと歩いていると,駅のロータリーで一台のワゴンが止まっているのに気づきます。助手席には少年が乗ってました。橋本健太です。運転席には橋本義明がいます。

5年前に義明が運転する車に一緒に乗っていた健太と共に事故で亡くなった二人でした。

その健太が「早く乗って」と声をかけてきたのです。

一雄は酔っぱらってヤケになっていたのか,そのまま乗ってしまうんですね。

ワゴンに乗ると,過去にどんどん向かっていきます。

このワゴン,何となくタイムマシンみたいですね。ひょっとすると,この話は過去に戻って未来を変えようとしているんじゃないか。

そしてある一人の人物と会うのです。一雄と同じ38歳の時の父親,忠雄でした。

かつては犬猿の仲だったこの二人が同じワゴンに乗ることになるのです。

未来を変えようとする一雄

人生の分岐点へたどり着きます。実は息子の広樹は学校でいじめられてました。

そして一人公園で玉をゴムで飛ばす「パチンコ」で,某人形を打ってます。

そこには自分の友達だけでなく,自分の両親の名前も。

そんな広樹の気持ちも知らなかったことに一雄は愕然とします。妻の美代子も同じでした。

嘘をついて出かけては,たくさんの男と会っていたこと。

そして,家のカネをパチンコにつぎ込んでいたこと。

サラ金に手を出していたこと。一雄の視点で見ると,なんて可哀そうな父親だなって思うんですけど,仕事ばかりで家庭を振り向かない一雄にも問題があったわけですね。

寂しい思いをしていた美代子は不倫し,広樹もひきこもりになってしまった。

一雄は未来を変えようと,リストラに遭わないように会社に提案したり,美代子と広樹と一緒に夕食を食べにいこうと提案します。

あっさり断られます。そんな簡単には未来を変えることはできない。

結局は根本的解決になっていないことを悟ります。

未来を変えるために

今回は敢えて結末を載せませんでした。ここに大事なことが凝縮されていると思うからです。

過去に戻っても,そう簡単に未来は変えられない,ということを作者は言いたかったのかなと思っています。

そんな簡単に現実を変えられてはいけないのだと思う。

運・不運,好調・不調などの波があっての人生だと思うからです。

確かに,人生にはいくつかの分岐点なるものがあると思う。

でもそれがわかるのは後になってからのことだし,そんな人生は人生とは言わないと思います。

橋本親子だって不運な事故で亡くなってしまったけど,未練はありながらも現実をしっかりと受け止めてあの世で生きているように思いました。

これから死に向かって進んでいる自分たちも現実から目をそらしてはいけない。一番大事なことは,目の前のことに一生懸命に取り組むこと。

どんなことも受け止める覚悟を持って,たとえそれで失敗したとしても前向きに進んでいくことしかないのだと思います。

知りたくなかった過去の真実を知ったってしょうがない。

知って悲しんだり喜んだりしたって意味がない。

知ってしまうこともあるし,知らないまま終わってしまうかもしれない。

でもそれも人生の一部。明日あるかわからない自分の命。

だからこそ今を精一杯生きるべきなんだと,ここに尽きると思います。

今を変えることこそが未来を変えられる唯一の方法だと思います。

この作品で学んだこと

● 過去の出来事が変わったからと言って,人生大きくは変わらない

● 過去は変えられないが,未来は変えられる

● 後悔したくなければ,今の人生を精一杯生きることである

いい人生だったなぁ,と思えるような人生にしたいですね!

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