本作品は東野圭吾先生の代表作と言っても過言ではないと思います。2006年に描かれた本作品,今でもツイッターで上がってくるくらいの人気ぶりです。
2008年にはドラマ化もされました。二宮和也さん・錦戸亮さん・戸田恵梨香さんの三兄妹が主演です。
上記のように,三人の兄妹が登場します。彼らは夜中に家を抜け出し,流星群を見ていました。しかし,家に戻ってみると衝撃の事件が起こっていました。彼らの両親が殺害されていたのです。
誰にも頼ることができない子供たち。そして彼らは誓います。
「いつか自分たちで犯人を見つけ出してやる」
育ててくれる人もいない彼らは詐欺をするなど,自分たちで生活する力を身につけ,そして目的を達成するために生きていくのです。
三人の兄妹の「絆」の話です。
目 次
1. こんな方にオススメ
2. 登場人物
3. 本作品 3つのポイント
3.1 三兄妹を襲った大事件
3.2 犯人の動機は「レシピ」なのか
3.3 真相と真犯人
4. この作品で学べたこと
● 三人の兄妹を襲った大事件を知りたい
● 自分たちの手で犯人を見つけ出すシーンを見てみたい
● 三人の兄妹の「絆」を知りたい
何者かに両親を惨殺された三兄妹は、流れ星に仇討ちを誓う。14年後、互いのことだけを信じ、世間を敵視しながら生きる彼らの前に、犯人を突き止める最初で最後の機会が訪れる。三人で完璧に仕掛けたはずの復讐計画。その最大の誤算は、妹の恋心だった。涙があふれる衝撃の真相。著者会心の新たな代表作。
-Booksデータベースより-
有明功一・・・三人兄妹の長男
有明泰輔・・・三人兄妹の次男
有明静奈・・・三人兄妹だが,兄とは血は繋がっていない
戸神政幸・・・洋食チェーン「とがみ亭」の経営者
戸神行成・・・政幸の長男
萩村信二・・・事件担当の刑事。三兄妹に寄り添う
柏原康孝・・・事件現場に最初に到着した刑事。
1⃣ 三兄妹を襲った大事件
2⃣ 犯人の動機は「レシピ」なのか
3⃣ 真相と真犯人
横須賀市にある貧しい洋食屋「アリアケ」。借金をしながらも必死で経営していました。この家には三兄妹がいました。有明功一・泰輔・静奈です。
ある日,三人は夜中に家を抜け出し,ペルセウス流星群を観に行っていました。
しかし家に戻ると,自分たちの両親が血まみれで亡くなっているのを発見してしまいます。
発狂する三人。まだ幼い小学生の三人にとっては受け入れがたい状況だったでしょう。
この事件を担当したのが柏原と萩原の2人の刑事。少年たちを気遣いながらも必死で捜査します。
家には一本の見慣れない傘がありました。犯人の傘かもしれない。しかし傘からは指紋が検出されませんでした。
次男の泰輔の目撃情報を元に似顔絵を作成して捜査をしますがこれも空振り。事件は迷宮入りの気配が漂います。
子供たちがいないということを知っている人物がいたのでしょうか。
そして時は経ち,彼らも徐々に成長していくのです。
三人は生計を立てるために「詐欺行為」をしていました。もちろん慣れないことをやっているわけですから,時々失敗して捕まることもありました。
「これもいつかバレるだろうから,今回を最後にしよう」と考えて最後のターゲットにしたのが大手洋食チェーン店「とがみ亭」でした。
とがみ亭には御曹司である戸神行成という人物がいました。
早速実行しようとするんですけど,何か静奈は乗り気じゃなさそうなんですよね。ん~,なんだろう。。。
とがみ亭には静奈が行き,御曹司の行成に近づきます。ただやっぱり静奈に違和感が。
どうやら,静奈は行成のことを好きになってしまったみたいです。ん~,何か嫌な予感がするなぁ。兄たちの計画はうまくいくのでしょうか。
何とかとがみ亭の「ハヤシライス」の試食会に潜入することができました。静奈は行成に徐々に近づいていきます。戸神家に行く約束も手に入れます。
そんな静奈を迎えに行った泰輔は驚きます。自分たちの「両親が殺害された時に目撃した人物」を発見するのです。
それは行成の父で,とがみ亭の経営者である「戸神政行」でした。
「あいつだ,間違いない」
泰輔は確信します。彼らは政行を追います。
果たして,真犯人はこの戸神政行なのでしょうか。
ここで戸神を疑うネタが出てきます。自分の育った洋食屋「アリアケ」にも定番の「ハヤシライス」がありました。功一は,
「とがみ亭のオムライスがアリアケのものとそっくりだ」というのです。
実は功一は父親が作ったハヤシライスのレシピを持っていました。レシピって,その店の大切なものですよね。
現在はいろんなレシピがネットに載る時代になってるし,レシピには著作権があるのかどうかわかりませんが,どうやってそれを入手したかが問題のような気がしますよね。
「アリアケ」が隠し味に使っていた醤油。これがとがみ亭のハヤシライスにも使われていることを突き止めます。ますます怪しいとがみ亭。
そもそもアリアケは借金していたため,三人は考えます。実は父親が金と引き換えにレシピを売ったのではないか。そして政行が父たちを殺害したのではないか。
ここで三人は別の計画を立てます。戸神政行を犯人に仕立て上げようというのです。
彼らは不審車両を準備します。その車の中に「祝アリアケ新装開店記念」という文字が入った時計を置いておくのです。
不審車両を捜査する警察。この車がとがみ亭のものだったため,警察は三人の思惑通り「とがみ亭」を疑い始めます。
また,静奈は行成に連れられ,戸神家に侵入することに成功します。そして書庫にハヤシライスのレシピを入れようとします。ところが行成に見つかってしまいました。
「あなたは一体,誰なんですか」
行成に追及される静奈。言い訳もできなくなった静奈はとうとう自分の素性を正直に話すことになるのです。
困惑したのはもちろん行成です。
「自分の父親が犯罪に関わっているのか」「本当にレシピを手に入れたのか」
行成は決断します。三人に協力することにしたのです。
もちろん自分の父親である政行の無実を晴らすためでもありました。
「警察がDNA鑑定をしたいらしいから,髭剃りを渡しておいたよ」 行成は父親の政行にそう告げるのです。
ここで警察は14年前に犯人が忘れていった傘に残っていたDNAを手に入れていました。
行成から政行の髭剃りを手に入れた警察。何とDNAが一致してしまいます。
政行は「14年前の傘のことなんか知るか」と言ってしまいます。言った瞬間「はっ」とする政行。
政行はなぜ「傘」だと思ったのか。そこを追及されます。これが政行の秘密の暴露でした。関係者しか知りえない事実を話してしまったのです。やはり犯人は戸神政行か。
覚悟を決めた政行は14年前のことを語りだすのでした。
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政行は覚悟を決めて語りだします。
「50万円でハヤシライスのレシピを買ってくれないか」
功一たちの父親は政行にそう言ってたようです。つまりこれは同意の下だったと。
でも政行は「自分は殺していない」と言います。では一体誰が。
政行の話には続きがありました。
「あの日,自分は他人の傘と間違えて持って帰ってしまった」と。
ということはその傘には何か残っているはずです。傘を調べるため,警察に戻ろうとする柏原。
そこへ功一がやってきます。そして功一は自分の推理を話し出すのです。
事件の日,一番早く現場にやってきた刑事は,傘を逆さにしてゴルフの素振りをしていました。それを見ていた功一は「傘の持ち手に地面を擦った後があるはず」と睨んだのです。
もう一つの傘に何も残っていなかったのは,犯人が拭き取ったから。
功一は最初から怪しんでいたようです。指紋が拭き取られていたということは,犯人は一番最初に「アリアケ」へ着た人物だと。
警察に政行の傘を持っていってしまえば,真犯人が拭き取る可能性があるから,功一は先手を打ったんですね。
そうなんです。真犯人は「柏原」でした。
殺人動機はやはり「カネ」でした。柏原には手術が必要な子供がいたようで,やはり相応のお金を必要としていました。
アリアケには500万円の借金がありました。警察の特権を生かし,柏原は闇金融から200万円を借り,有明夫妻に渡します。と同時に柏原はその200万円を自分に貸してほしいと言うのです。200万円を渡したくない有明側は拒みます。ここで二人は揉み合いになります。そして柏原は有明を殺害して,200万円を持って逃げました。
その後に戸神政行がやってきたのです。入り口には犯人が忘れた傘も。。。
逃げ道のない柏原。罪を認めました。そして歩道橋から飛び降り自殺してしまいました。
これが事件の真相でした。
なぜ自分の家の店のオムライスのレシピが他の店で使われているのか。そこから犯人を絞り出していく過程はドキドキしたし,復讐を遂げてほしいと願いながら読んでいました。
生きていく生活費を稼ぐために詐欺まがいのことを行ってきた3人は,それぞれ自分の道を歩いていきました。
しかし,長男功一,次男泰輔はこれまでの罪を償う道を選びます。何か憑き物が落ちた感覚だったのでしょうか。
そして,この兄2人の妹に対して,幸せになってほしいという気持ちがとても心に染みました。悲しい話ではあったけど,世の中には星の数ほどの絆があるのだなと。人はここまで人を思いやれるのかを考えさせられました。
最後のどんでん返しには驚きましたが,いい話でした。
● 二人の兄の,妹に対する愛情が心に響いた
● レシピ・味とはその店にとって大切なもので,忘れられないもの
● 犯人を必ず見つけるという目的のためなら何でもするという,三人の生きる力