本作品との出会いは,本屋へ行った際,中山祐次郎先生の「泣くな研修医」が山積みされていたことがきっかけです。
中山先生は九州にある大学の医学部をご卒業されており,九州にゆかりのある方です。
とても親近感を持ったので「これは読んでみないと」と買ったのがきっかけです。
医者の卵である研修医が,どんなことに悩みながら成長していくのか,とてもわかりやすく描かれているので,読みやすいですし,さらに2021年4月にはドラマ化されています。
目次
1. こんな方にオススメ
2. 登場人物
3. 本作品 3つのポイント
3.1 研修医雨野隆治の苦悩
3.2 試練を乗り越え,成長する雨野
3.3 研修医の過酷さとやりがい
4. この作品で学べたこと
● 医者を目指している方々
● 主人公の雨野がどんな経験をして成長していくかを知りたい
● 研修医が一人の医師として患者と接する姿を見てみたい
雨野隆治は25歳、大学を卒業したばかりの研修医だ。新人医師の毎日は、何もできず何もわからず、上司や先輩に怒られてばかり。だが、患者さんは待ったなしで押し寄せる。初めての救急当直、初めての手術、初めてのお看取り。自分の無力さに打ちのめされながら、ガムシャラに命と向き合い成長していく姿を、現役外科医が圧倒的なリアリティで描く。
-Booksデータベースより-
1⃣ 研修医,雨野隆治の苦悩
2⃣ 試練を乗り越え,成長する雨野
3⃣ 研修医の過酷さ
鹿児島にある大学の医学部を卒業した雨野隆治は,将来立派な医者になりたいという目標を胸に研修医として勤めています。
しかし,そこには厳しい現実が待っていました。
① 交通事故
交通事故に遭い,救急車で運ばれてきた琢磨という少年。腸に異常があるようです。危ない状況であることを知る雨野。少年を救うことができるのか。
② 生活保護
94歳という高齢で認知症の老人。胃がんにも罹っており,処置が難しい状況です。老人の治療を,病院側はどう対処していくのか。
③ 虫垂炎
腰が痛いと言って救急車で運ばれてきた男性。隆治は「腰痛」と診断するが,実は違いました。また,絢という女性もやってきます。雨野の診断通り「虫垂炎」のようなのだが,穴を指摘されます。それは一体何なのでしょうか。
④ イシイ
イシイはステージ4の大腸がんです。抗がん剤治療が効かず,雨野は悩みます。そして病院側は苦渋の決断を迫られるのです。
⑤ 都会
合コンに参加する雨野。ここでCAのはるかと出会う。いい雰囲気になっている裏では大変なことが起こっていました。
⑥ おなら
拓磨は事故から約2ヶ月経っても食事ができないでいた。少年はやはり母親のことが恋しくなります。腹部が張っている状況で,拓磨はどうなってしまうのか。
※ネタバレを含みますので,見たい方だけクリックしてください!
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① 交通事故
雨野は知るのです。拓磨はかなり重症であることを。さらに腸自体が多くの臓器とつながっているということも知りました。それが人間というシステムの一部だと学ぶのです。拓磨は他の短編でも何度か登場します。各短編のストーリーの中で,拓磨がどうなっていくのかにも注目です。
② 生活保護
生活保護を受けている老人。末期がんから救うことはできないのか。肝硬変まで起こしているこの患者を「治療を行わない」という方針に切り替えます。
雨野は医者は時に無力であることを感じ,さらに患者にとって一番の幸せが何なのだろうと考えさせられるのです。
ここで,拓磨は徐々に回復しているようにも見えました。
③ 虫垂炎
腰を痛がっていた患者は実は「尿道結石」でした。
また,虫垂炎と診断した雨野の穴は,他の病気の可能性も考慮することを学びます。外妊,つまり子宮外妊娠の可能性があるということです。結果的には虫垂炎でした。
④ イシイ
イシイの命は「あと1ヶ月」と診断されます。イシイと同い年の隆治に「いい医者になってください」と声をかけられます。あと数日しかない延命が患者にとっては苦痛になることを雨野は知ることになり,イシイを看取るのです。
⑤ 都会
合コンが盛り上がっている間,病院では拓磨の容体が急変していました。後悔する雨野。プライベートを楽しむのは必要だと思います。しかし,医師は最悪の事態も想定して行動しなければならないのだと思いました。上司の佐藤から注意を受け,また雨野は一つ学ぶのです。
⑥ おなら
回復することを願う雨野。張っている腹部を手術する可能性をほのめかされます。そんな中,とうとうおならが出るのです。張っていた腹部も柔らかくなっており,雨野は嬉しくなります。患者が医師の力で回復するという,医師のやりがいみたいなものを感じているようにも思いました。
最後は,兄が亡くなった真実。
雨野が幼いころに兄を亡くしたことが,医者の道へ進ませた大きな要因となったのですが,なぜ兄は死んでしまったのか,本当は自分のせいで亡くなってしまったのではないか,と苦悩する姿も見られます。
かつては真実を語ってくれない両親でしたが,最後はその理由を聞くことになります。
それは「アナフィラキーショック」が原因でした。呼吸困難に陥った兄はそのまま息を引き取ったのです。
実は僕自身もアレルギー体質です。魚は食べれますが,えびとか貝とかは食べれないんですね。
親も同じ体質ですしし,僕の弟も同じです。遺伝の要素が強いということですね。
それでも僕はまだいい方です。友人には同じ体質でももっと酷い症状が出てしまう者もいました。
今では食べ物だけではなく,匂いでもアレルギーを起こすということを聞いたことがあります。
世の中には本当に多くのアレルギー体質があって,本当に注意しないといけない怖いものだなと思います。
どんな組織に入社しても,最初は電話対応や簡単な事務作業から始めますよね。
僕自身もかつてIT業界にいて,最初は電話を取るのが当たり前,先輩の下で指示された単純作業をやるだけの毎日でした。それは医者も例外ではないんですね。
ただ医者というのは単純作業だけでなく,オペに参加したり,患者の診察・診断をしたり,やはり命を預かっている責任の大きい仕事,とてもハードルの高い仕事だなと思います。本作品内でも交通事故で運ばれてきた少年のオペでは,終わったら気を失ってしまったり,プレッシャーのある中,研修医という身分でありながらも一人の医師という責任の重さを感じます。
胃がんが進行している患者を最終的には「治療をしない」という選択をする場面では,救えるかもしれない患者に対しての研修医雨野の葛藤が伝わってきました。
自分が担当した患者が,亡くなってしまうというショックを受け,人の命を預かる責任を感じながら,技術的にも精神的にも成長していく雨野。
新しいことに戸惑いつつも,良き上司に支えられながら生きている姿がとてもよかったです。
そして感謝された時の嬉しさ。きっとそれが医師としてのやりがいの一つなのかなと思いました。文中には「騎射場」とか「鹿児島空港」とか「芋焼酎」などの言葉が出てきて,かなり親近感を持ちました。
それが楽しくて,本作品をはじめとした「泣くな研修医シリーズ」を読み続けています。
中山先生は,地元のローカル紙である「南日本新聞」でもコラムを書いてらっしゃいます。
そんな作者と雨野をリンクさせているのだろうと思っていましたが,そのコラムでもおっしゃてますが,雨野のモデルは中山先生の仲の良かった友人だそうです。
本作品がいつか映像化されるのを楽しみにしたいです,と出版された頃は思っていましたが,冒頭で書いたように2021年にドラマ化されました。
このシリーズはあと3作品あるので,また今後ドラマ化されることを楽しみにしたいと思います。
● 研修医が多くの患者と接し,命の重みを感じていくこと
● 失敗しながら,それにめげずに前を向いて成長していこうとする気持ち
● 研修医でありながらも,一人の医師としての責任を痛感する主人公