以前から気になっていた作品で,ようやく購入して読むことができました。
やはりタイトルに惹かれますよね。
「殺した夫が帰ってきた? 一体どういうこと?」
そんなことを考えながら読まれた方も多いのではないでしょうか。
主人公は鈴倉茉菜という女性で,一緒に住んでいた夫を崖から突き落とすという,恐ろしいシーンから始まります。
「自分が殺したはずの夫がなぜ目の前にいる。。。」
なぜ茉菜は夫を殺害しなければならなかったのか。夫はなぜ生還できたのか。
二転三転するストーリー,一気読みでした。
目 次
1. こんな方にオススメ
2. 登場人物
3. 本作品 3つのポイント
3.1 夫が帰ってきたという衝撃
3.2 夫は本物か偽者か
3.3 衝撃の真相
4. この作品で学べたこと
● 死んだはずの夫が帰ってきた時の主人公の衝撃を知りたい
● 夫は本物なのか,それとも偽者なのかを知りたい
● 今回の事件の深い真相を知りたい
茉菜のもとに一通の手紙が届く。手紙には一言だけ「鈴倉茉菜の過去を知っている」と書かれていて……記憶をなくし帰ってきた、殺したはずの暴力夫。謎めいた正体と過去の愛と罪を追う、著者新境地のサスペンスミステリー。
-Booksデータベースより-
1⃣ 夫が帰ってきたという衝撃
2⃣ 夫は本物か偽者か
3⃣ 衝撃の真相
「やってしまったという後悔と,終わったという安堵」
主人公の鈴倉茉菜は夫を崖から突き落とした時の心境をこう語っています。いきなりやってきた殺害シーン。「私は夫を殺した」
鈴倉茉菜はアパレルメーカーに勤める女性です。そんな茉菜につきまとっている男性がいました。「穂高」という男です。会社でも噂になっていました。「気を付けろ」と。
「偶然会うことが多くなった」ということは,完全にストーカーなのでしょう。
茉菜が住んでいる家まで突き止められてしまいました。茉菜の部屋に強引に入ろうとしたその時,ある男性が茉菜を助けます。
「その手を放せ」穂高を追い返し,茉菜が安堵したのも束の間,衝撃の瞬間がやってきます。
「大丈夫? 幽霊みたいな顔をして。夫の顔を忘れたとか?」
何と,助けてくれたのは茉菜の夫だった鈴倉和希でした。「夫?」とつぶやく茉菜。冒頭にも書きましたが,茉菜は5年前に夫を崖から突き落としています。その夫がなぜ目の前に。混乱する茉菜に対し,冷静に語り掛ける和希。
どうやら和希には後遺症があるようです。記憶が一部喪失しているようなんです。
やっぱり夫なのか? それとも別人がなりすましているのか?茉菜はかつて和希から暴力を振るわれていました。それが殺害動機です。
その和希が以前と違う性格になって戻ってきたのです。あまりにもギャップがあります。
ん~,どっちなんだろう。もし本当の夫なら,これまでどこで何をしていたのか。
相手が夫と言っているわけですから,茉菜も一緒に生活することを拒むことができません。でもかつてのトラウマが甦ります。
「あの最悪な生活から,せっかく幸せな普通の生活ができているのに」
しばらく二人きりの生活が続いたある日,衝撃の郵便物が届きます。郵便物にはこう書かれていました。
「鈴倉茉菜の過去を知っている」和希がやってきたタイミングでこの手紙。一体,誰からの手紙なのか。和希なのか,それとも別の人間なのでしょうか。
和希は本物なのか? 茉菜は半信半疑のようでした。そして和希が本物なのか,茉菜自身が仕事に行っている間,一体何をしているのか。茉菜は調べ始めます。
ある日,茉菜は和希を尾行していました。特に怪しい様子もありません。ただ,和希は警察らしき人物と話をしていることがありました。
「和希を殺害まさかしたことに関係することなのか。疑われているんじゃないか」
こんな時,茉奈は激しく動揺するでしょうね。いろんなことを想像して。
和希の素性を知りたいと,いろいろなことを聞き出そうとしますが,なかなか本性を現さない和希。
茉菜は心の中で「和希は本物で,彼のことを信じたほうがいいのではないか」と思うように
なります。
そんな時,二通目の手紙がやってきます。「鈴倉茉菜が殺した」と。
激しく動揺する茉菜。同時に茉菜にスマホに電話が入ります。宮城県警の西垣刑事からでした。そこで衝撃の事実を伝えられるのです。「崖の下から和希と思われる白骨死体が見つかった」と。歯形が一致したらしいです。
夫からDVに遭っていたことを正直に話した茉菜を,刑事の西垣は疑っているようです。
5年前に無理やり引き戻される茉菜。ということは,一緒に住んでいる人物は和希ではないということになります。一体,何者なんでしょうか。
ある日,茉菜の目の前にまた穂高が現れます。ホントにしつこい男です。
追われている茉菜を助けたのはまたしても和希でした。
しかし,警察で和希は「本当の和希ではない」ことはわかっています。問い詰める茉菜。
和希と思っていた人物。
それは和田佑馬という人物でした。今度は彼が何者なのかを考える茉菜。
まず茉菜に届いた二通の恐怖の手紙。これは佑馬が仕組んだものでした。佑馬は警察だったのです。
茉菜のことを怪しんでいた佑馬ですが,実は佑馬も茉菜を怪しんでいたんですね。
ここで茉菜は覚悟を決め,重大な秘密を暴露するのです。
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茉菜は実は「鈴倉茉菜」ではなかったのです。彼女の本当の名前は「上坂愛」です。
上坂愛が鈴倉茉菜として生きていたのです。ここで少々混乱してきました。一体何のために?
上坂愛は母親から「産まなきゃよかった」と言われながら育ってきました。やはり世の中にはネグレクト,つまり育児放棄されて育つ子供たちも多いのでしょうか。
愛は小学校へ通っていません。愛は戸籍も持ってなかったのです。さらに母親はとっかえひっかえ男を連れ込み,再婚相手の連れ子と肉体関係を持つようになります。
絶望的な,不遇な環境で育った愛。とうとう家を飛び出してしまいます。盛岡から仙台へ向かった愛はここで本物の「鈴倉茉菜」と出会うのです。
茉菜も不遇な環境で育っていました。何度も再婚を繰り返す母親の元で。
愛と茉菜は同じような環境で育ったことに意気投合したようでした。そして一緒に住むようになるのです。茉菜はある日,当時交際していた男性との間にできた子供を妊娠します。その男性こそが本物の「和希」でした。そして二人は結婚します。
しかし和希の度重なる暴力により茉菜は流産してしまいます。別れる決意をした茉菜ですが,和希は逆上します。
さらに暴力はエスカレートし,我慢できなかった茉菜は崖から突き落とすのです。これが冒頭の殺害のシーンでした。
罪を抱えた茉菜。それを知る愛。自首しようとしたときに思ってもないことが。。。
大地震がきたのです。そして巨大な津波が彼女たちを襲います。
海の近くにいた愛と茉菜。愛は茉菜を助けようとしますが,愛が腕を掴んだと思っていたものは茉菜のバッグの紐でした。
そして茉菜は海に吸い込まれ,亡くなってしまうのです。
愛はバッグに残された運転免許証を使って,「鈴倉茉菜」になりすまします。愛には悪意はなかったように思います。
茉菜が持っていた免許の更新を繰り返し,本当に「鈴倉茉菜」として生きていったのです。つまり,愛は「和希」の本当の顔を知らなかったことになります。ただ,茉菜から見せられていた男性の写真がありました。それが佑馬だったんですね。
冒頭の「夫?」という言葉が伏線だったのかなと思います。佑馬に「夫の顔を忘れたのか」と言われて,愛自身も戸惑ったことでしょう。見たことある顔だったわけですから。
では佑馬は誰なのか。実は茉菜の母親の再婚相手の連れ子だったようです。
佑馬は茉菜に惚れてしまっていました。だから茉菜を探していたんですね。愛が「鈴倉茉菜」になりすましていることを知り,愛に近づいたということなんです。
警察に全てを話すことを佑馬に言われた愛。彼女はいろいろなものを失いました。
彼女には戸籍がありません。「犯罪を確定させるために,戸籍が必要」なため,おそらく愛は本当の「上坂愛」の戸籍を持つことになったものと思われます。
一時的ではありましたが,愛は幸せだったようです。
「幸せな時間をありがとう」
そう言う愛に対し,最後に佑馬は愛にこう語ります。
「幸せな時間と思ったのは,愛だけじゃないよ」
殺した夫が帰ってきた,ということには深い深い真実がありました。
世の中には不遇な環境で育っている人もいるのだと考えさせられます。
自分の母親だったり,周りの人間関係,そして今回の話では自然災害の話まで。
目の前に亡くなったはずの人間が現れた時はどんな反応を示すのか。
真相を知りたくて一気読みでした。
僕自身が予想していた結末とは全然違いましたけど,最後は「茉菜」が救われたような感じの終わり方だったのが,本当の「救い」だったのかなって思います。
● 過去には主人公,夫,いろいろな人々の人間模様
● 死んだはずの人間を目の当たりにしたときの衝撃
● 過去の大きな分岐点となった出来事に切なくなった