死神である「千葉」という男が、自分の担当する人間の死を見届けるという話です。
短編集になっていて,最後の方になると「えっ?」と驚かされる話もあって,面白い作品になっています。
目 次
1. こんな方にオススメ
2. 作者の経歴
3. 本作品 3つのポイント
3.1 死神である千葉の役割
3.2 死神と調査対象者
3.3 もし本当に死神がいたら
4. この作品で学べたこと
● 死神である「千葉」の役割を知りたい
● 自分が死ぬと悟ったとき,自分がどういう行動をとるのかを考えてみたい
● 最後の最後に驚かされる作品を読んでみたい
こんな人物が身近に現れたら、彼/彼女は死神かもしれません──(1)CDショップに入りびたり(2)苗字が町や市の名前と同じ(3)会話の受け答えが微妙にずれていて(4)素手で他人に触ろうとしない。1週間の調査の後、死神は対象者の死に「可」「否」の判断を下し、「可」ならば翌8日目に死は実行される。ただし、病死や自殺は除外。まれに死神を感じる人間がいる。──クールでどこか奇妙な死神・千葉が出会う、6つの人生。金城武主演で映画化された原作です!
-Booksデータベースより-
この作品の面白いところは,まず「設定」です。
千葉が監視対象人物になるということは、その人が1週間以内に何らかの理由で亡くなってしまうということなんです
こんな設定を考え付くのはさすが「伊坂幸太郎」さんですね。
1971年生まれ 東北大学法学部 卒業
システムエンジニアとして働く傍ら,執筆活動も行う
主な受賞歴
新潮ミステリー大賞(オーデュポンの祈り)・吉川英治文学新人賞(鴨とアヒルのコインロッカー)・日本推理作家協会賞(死神の精度)・山本周五郎賞(ゴールデンスランバー)・大学読書人大賞(マリアビートル)・柴田錬三郎賞(逆ソクラテス)
死神である「千葉」が,いろいろな人の生死をどう判断するのかが面白い作品になってします。
1⃣ 死神である千葉の役割
2⃣ 死神と調査対象者
3⃣ もし本当に死神がいたら
千葉の役割は「自分が担当する人の生死を一週間以内に判断すること」というのは先に書きました。
死神の精度は,結局は一週間対象人物を調査した結果,千葉が下すものです。
「可」であればその人間は死に,「見送り」であれば死なない。
一体どんな結末になるのか,どの短編も面白いです。
彼は音楽をこよなく愛しています。
死神の世界には「ミュージック」という娯楽がないという設定も面白いですね。
そして,同じ死神の仲間は全員,日本の都道府県名と同じ名前がついています。
そういう設定を思いつく作者もさすがだなと思いますし,それぞれの短編もただ判定するだけでなく,いろんな角度から話が構成されているというのも面白いです。
それは次の章の概要をご覧いただければわかるかと思います。
本当に面白いの一言に尽きます!!
各章はそれぞれターゲットになる人物がいます。概要は以下の通りです。
① 死神の精度
大手電機メーカーに勤務する藤木という女性は,クレーム処理の仕事をしていました。その中によくクレームをしてくる男がいて,彼女はメンタルを病んでました。その男性が大きなポイントとなります。彼は一体誰なのか。そして,千葉はどういう判断をするのか。
② 死神と藤田
ヤクザである藤田は,筋を通す人間なんですけど,周りの人からは疎まれていました。千葉は藤田の手下である阿久津とともに拉致されてしまいます。すでに千葉の中では結論が出ているようなのですが。。。 意外な結末です
③ 吹雪に死神
洋館に複数の男女が集まってました。外は吹雪の中です。そこに男性の死体がありました。その男女がどんどん殺害されていきます。一体,ここで何が起こったのか。
④ 恋愛で死神
荻原という男性は「死」の選択でした。朝美という女性と付き合っている仲だったのですが,千葉はなぜ,荻原にその判断としたのか。
⑤ 旅路を死神
自分の母親と若者を殺害した森岡という男の逃走の手助けを千葉がするという章です。この森岡は過去に誘拐されたというトラウマがありました。千葉はこの森岡をどうするのか。
⑥ 老女と死神
千葉はある老女から「若い男女四人を集めてほしい」と急にお願いされます。集めた千葉はこの後,想像していなかったことを知ることになります。この章の最後の結末には僕自身も驚きました。絶対読むべき!!
このように作品にはいろんな人物が登場し、誰が生き延びるのか、ドキドキしながら読むことができました。
同じ著者作品の「重力ピエロ」に登場する「春」らしき人物もチョイ役で登場したり、作品を越えた楽しみ方があるのも伊坂幸太郎さん作品の醍醐味かもしれないですね。
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各章の「可」・「見送り」は以下のとおりです。
①死神の精度 藤木「見送り」
②死神と藤田 藤田「可」
③吹雪に死神 「可」
④恋愛で死神 荻原「可」
⑤旅路を死神 森岡「可」
あれ~,最初の章以外は全部「可」となってしまうんですね。
ん~,運命というのはある程度決まってしまっているものなのでしょうか。
そして,一番印象に残った話が、最後の「死神対老女」です。
この老女はなぜか千葉の正体を知っている感じでした。
それがなぜなのかは最後の方でわかります。
海の近くの美容室で働く老女の周りではいろんな人が亡くなっていました。
なぜかこの老女は「あぁ,自分は死ぬんだな」って悟っているようなんですね。
千葉が、老女の持っていた服に見覚えがあることを思い出します。
あっ,なるほど! 老女よ、貴女は新田朝美さんだったんですね。
それがわかった瞬間、ふと前の章を思い出しました。
かつて,千葉が「可」を与えた男性の死により、彼女も辛い思いをしながら生きてきたのです。
死というものに対する人間のそれぞれの価値観というのは、これまで生きてきた環境や考えたこと、出会った人など、いろんなことに影響されるのだなと感じました。
僕自身は,死ぬのは怖いのが半分、しょうがないかなと思うのが半分です。
そのためには,今できる限りやりたいと思うことをやって,行動して,いつ亡くなっても後悔しないように生きたいと思えるようになりました。
たとえ,本当に死神が僕に「可」を下したとしても,僕に悔いはないです。
● 自分の人生は,育った環境,出会った人物に影響を与えられている
● 自分の人生の長さというのは,ひょっとするとある程度は決まっているのかもしれない
● 今,できる限り多くのことにチャレンジし,人生を後悔なくいきたい
与えられた残りの日々を精一杯生きるべきだと改めて考えさせられる作品でした!