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【本を守ろうとする猫の話】夏川草介|本に対する考え方

本を守ろうとする猫の話

「自分がなぜ本を読んでいるのか」「本を読むことでどんな効果があるのか」

これまで1000冊近く本を読んできて,自分なりに「読書を継続する意味」が理解できるようになってきました。

それをまとめて公開しようと思ったのが本ブログです。

本作品は「本とは何か」ということをもう一度考えさせてくれる作品でした。

本とは何か僕自身の中で「本を読むメリット」は本サイトでも書いてますけど,「やっぱりそうだよなぁ」って同感する部分もあれば,「そういう考え方もあるのか」と発見した気持ちになる部分もありました。

それを教えてくれるのが本作品の登場人物たちです。

主人公の青年には祖父がいました。「夏木書店」を守ってきた祖父,自分を養ってきてくれた祖父が亡くなり,悲しい気持ちになる中,一匹の猫が現れます。

本を守ろうとする猫」は主人公にいろいろな試練を与えます。この猫の意図とは何なのか。

こんな方にオススメ

● 本を読む習慣のある方

● これから本を読んでみようと思っている方

● 本を読むことでどんな効果があるのかを知りたい方

作品概要

「お前は、ただの物知りになりたいのか?」
 夏木林太郎は、一介の高校生である。幼い頃に両親が離婚し、さらには母が若くして他界したため、小学校に上がる頃には祖父の家に引き取られた。以後はずっと祖父との二人暮らしだ。祖父は町の片隅で「夏木書店」という小さな古書店を営んでいる。その祖父が突然亡くなった。面識のなかった叔母に引き取られることになり本の整理をしていた林太郎は、書棚の奥で人間の言葉を話すトラネコと出会う。トラネコは、本を守るために林太郎の力を借りたいのだという。お金の話はやめて、今日読んだ本の話をしよう--。
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-Booksデータベースより-



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主な登場人物

夏木林太郎・・主人公。祖父を亡くして落ち込んでいる

柚月沙夜・・・林太郎の同級生。徐々に林太郎のことを知っていく

トラネコ・・・本を愛する猫。林太郎に試練を与える

本作品 3つのポイント

1⃣ 4つの章の概要

2⃣ 各章の結末とは

3⃣ 本から何を得ることができるのか

4つの章の概要

主人公の夏木林太郎。祖父が経営していた「夏木書店」の閉店セールをしていました。大好きだった祖父,本の良さを教えてくれた祖父。夏木書店本当は手放したくない「夏木書店」が無くなってしまうことにかなり落ち込んでいて,学校へも行けない状態になっていました。

そんなある日,彼の前に一匹の猫が現れるのです。猫が「猫で悪いか」と話すことに驚いた林太郎。何か本のことを良く知っている感じの猫。

この猫が林太郎に依頼するのです。「力を貸してほしい」と。林太郎とトラネコ依頼を受けた林太郎は猫とともにいくつかの「迷宮」へ行くことになるのです。
「行くぞ,二代目」

第一章 第一の迷宮「閉じ込めるもの」

ある屋敷を林太郎と猫が訪れます。屋敷の奥には主人がいて,五万冊以上もの蔵書が収められていたのです。

一ヶ月に百冊を読むというこの主人,一度読んだ本はもう読まないみたいです。
月100冊はすごいです。年間1200冊ってことですもんね。

そこまでは読めませんが,一度読んだ本はもう読まないといいます。

猫は主人のどこを不満に思い,林太郎に何を解決してほしいのか。

大きな本の屋敷

第二章 第二の迷宮「切りきざむもの」

「読書研究所」が次の迷宮です。林太郎は猫と同級生の沙夜とともに研究所に向かいます。そこには自称学者の「白衣の男」がいました。

白衣の男は,月に100冊もの本を読むために「速読」をしていました。これが彼の目指す「読書の効率化」です。

一度読んでは本を切り刻み,次へ次へとどんどん読んでいく。

切り刻むのはどうかと思いますが,真っ当なことを言っている白衣の男。林太郎は疑問を感じます。

猫,そして林太郎は白衣の男のどこを責めるのでしょうか。

本を切り刻む

第三章 第三の迷宮「売りさばくもの」

「第三の迷宮の主人は,いささか厄介だ」

そう言われて迷宮に向かう林太郎と猫。このには「世界一本を売っている書店」を自負する主人がいました。

どうやら第三の迷宮は「売れる本をできるだけたくさん売る」ということを目的にしているようです。この章は猫は林太郎と一緒に行かず,入口で見送ります。

林太郎は一人で主人の考えを覆すことができるのか。

世界一の本屋

第四章 最後の迷宮

第三の迷宮で「これが最後だ」と言った猫。

しかし最後の最後の強敵が現れたようです。とても自分の力では太刀打ちできないと判断した猫は,林太郎に最後の依頼をするのです。

今度の相手は手強い。これまでと全く別物だ」という猫。しかも林太郎の大切な友人である沙夜が連れていかれたというのです。

林太郎は最後の敵に挑み,無事戻ってくることができるのか。沙夜を連れ戻すことができるのでしょうか。

謎の女性

各章の結末とは

ここからは各短編の真相を書きたいと思います。読みながら結構理解の難しい部分もあったので誤記もあるかもしれませんが。。。

※ネタバレを含みますので,見たい方だけクリックしてください!

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第一章 第一の迷宮「閉じ込めるもの」

一冊の本を10回読む者より,10冊の本を読む者の方が敬意を集める世の中だ。社会で大切なことは,たくさんの本を読んだという事実だ。読んだという事実が人々を魅了し惹きつけるのではないか。違うかね?

ん~,この主人の意見は僕自身もわからないでもないです。これまで読んだ本を僕自身は全て自分の部屋の本棚に収め,こうやってブログを書いています。

「たくさん読んだ」ということに満足しているだけなのかもしれないです。

林太郎は考えます。主人のどの部分に欠点があるのか。林太郎は主人にいいます。

「あなたは本を愛しているように見えて,実は愛していない」と。

本にはシリーズものがあったりしますが,どうやら主人の本のコレクションには「欠けている本」があることに気づきます。

全11作のシリーズなのに10作しかないとか。

ここは大切な本を置いておく書棚ではない。手に入れた本を誇示するただのショーケースです

 

この部分を読んだとき正直「グサッ!」と僕自身,何かに刺された気持ちになりました。

本を愛していなかったのだろうか。そんなことを考えさせられました。

主人は,本をコレクションしている自分を愛しているだけで,本を愛しているわけではない。

猫に導かれ,林太郎が出した結論でした。

第二章 第二の迷宮「切りきざむもの」

世の中にはたくさんの本がある。対して,我々人間はあまりに忙しく,全てを読み解く時間は与えられていない。だから速読法は重要な技術だ

白衣の男はこう訴えるのです。

確かに少しでも多くの作品を読みたいがために「速読」をする。わかるような気がします。たくさん読んでいくと確かに速読できるようになります。

でも,それがいいことなのかはあまり考えずに読んできました。頭の回転は速くなったという自負はありますが。。。

さらに白衣の男は「あらすじをたった一行,ないしは数行で表現してしまう」ということを林太郎たちに伝えるのです。

林太郎は白衣の男の意見にどう対応していいいかわからない状態になってしまいます。焦る林太郎。しかし次の瞬間ん疑問に思います。

これは第九などの音楽を早送りで聞いているのと同じではないか,あらすじはフィナーレだけを早送りできいているだけではないか

たとえ読めなくなる本があるとしても,大切な一冊の本をたった一行に収められてしまうのはよくないと林太郎は話すのでした。

第三章 第三の迷宮「売りさばくもの」

「世界一の出版社『世界一番堂書店』へようこそ」という看板を見ながら「迷宮」に入っていく林太郎。

いきなり林太郎は「夏木書店」のこと言われてしまいます。

今時売れもしない難解な本を山のように並べて,自己満足にひたっている時代遅れのむさ苦しい古本屋

カチンとくる林太郎。大好きな祖父が大切にしていた本屋の悪口を言われてわけですから,それはいい気はしませんよね。

主人はさらに「ここは大出版社であって,毎日本を作り,売ることによって得た利益でさらに本を出版する」ということを自負しているようです。

本を消耗品のように扱う主人。売れればよいという考え方の持ち主です。

売れるのは,あらすじなどの要約したもの。世の中の人々は忙しくて読む時間がないというのです。

しかし林太郎は主人にも訴えるのです。「あなたも本が好きなはずだ」と。

あなたが本を作る人なら,たとえうまくいかないことがあっても,本を消耗品と言ってはいけない

林太郎が言った言葉は裏を返せば,好きではない本は作ってはいけないということです。

そこを突かれた主人は負けを認めたようでした。

第四章 最後の迷宮

「本には心がある」最後の迷宮へ送り出す猫が林太郎にこんな言葉をかけます。

本はそこにあるだけではただの紙切れにすぎない。けれども人の思いが込められ,大切にされ続けた本には心が宿るようになる

猫はこんなことを言いますが,これはどういう意味だろうと考えながら最後の迷宮に突入する林太郎。

最後の敵は女性でした。「真剣に本について語りたい」そう話す女性。ここで女性は衝撃の事実を話し出します。

第一の迷宮の男はがむしゃらに本を読むことをやめてました。

第二の迷宮の白衣の学者は,一冊の本を一ヶ月で読む凡人になってしまっている。

第三の迷宮の男は,売れない本でも絶版にせず,その経営の方針の転換が社員の反感を買っていました。

林太郎が関わったことで不幸になっている三人の男たち。しかし林太郎は訴えます。

本にはたくさんの人の思いが描かれている。苦しんでいる人,悲しんでいる人,喜んでいる人,笑っている人。物語を読むことで,僕たちは自分以外の人の心を知ることができるんです

これは僕が一番共感できたことです。

確かに本を読めば主人公だけでなく,主人公以外の気持ちを知ることができるし,人の気持ちを理解することができる可能性があると思います。

人を思う心,それが本の力

本が読まれなくなり,多くの本が無くなっていく現実に絶望していた女性は,この林太郎の言葉に感心しているようでした。

そして,沙夜とともに元の世界へ帰っていくのでした。

本から何を得ることができるのか

本から何を得ることができるのか。学ぶことができるのか。

本ブログでも「小説を読むメリット10選」で書いてますが,主人公やそれ以外の人物になれるというのがメリットの一つだと思います。

登場人物はストーリーの中でいろいろなことを考えて行動しています。

「この人物はこう考えているけど,自分だったらどうだろうか」

と考えながら読むことが多いです。

もちろん,善意だけでなく,悪意のある人物もいます。

しかし,ストーリーを読んでいけばそれが良いことなのか,良くないことなのかはわかるように,作家の方々はうまく描いているように思います。

多くの作家の方々のすごいところではないかと思うのです。

これまで多くの本を読み,人の心を理解することができる,本から勇気をもらうことができる。僕自身も感じてきたことです。

人を思う心,それを教えてくれるのが本の力であり,その力がたくさんの人々を勇気づけてくれる本から学ぶまさに本作品で描かれていることに納得します。

今になって思うのは「なぜもっと多くの本を読んでこなかったのだろう」ということ。

そうすればこれまでの人生ももっと有意義に過ごせたのではないかなと思います。

もちろん「実際に失敗して理解できること」もあるとは思います。

世の中のことを知ることができるだけでなく,世の中にはいろんな仕事を通して,どんなことを考えて生きているのかを知ることができる。

その手段の一つが「本」なのではないかと思っています。たくさんの本との出会いもし生まれ変わることができるなら,間違いなく「本を読むこと」を趣味にしていると思います。

遅かったかもしれないけど,本の面白さに出会えたことに感謝しています。

この作品で考えさせられたこと

● 本に対する考え方はひとそれぞれ異なるということ

● 本から学べることはたくさんあるのだということ

● 本の面白さに出会えたことに感謝

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