雫井脩介さんの作品で一番好きな作品です。
どの作品もいいんですが,悩んだあげくこれを「名刺代わりの小説10選」に選びました。
目次
1. こんな方にオススメ
2. 登場人物
3. 本作品 3つのポイント
3.1 息子が行方不明に
3.2 価値観・考え方の相違
3.3 「望み」とは
4. この作品で学べたこと
● 殺人容疑をかけられた息子に対する父親・母親の考えの違いを知りたい
● 行方不明になった息子の結末を知りたい
● 本作品「望み」の真の意味を学びたい
年頃の息子と娘を育てながら平穏に暮らしていた石川一登・貴代美夫妻。9月のある週末、息子の規士が帰宅せず連絡が途絶えてしまう。警察に相談した矢先、規士の友人が殺害されたと聞き、一登は胸騒ぎを覚える。逃走中の少年は二人だが、行方不明者は三人。息子は犯人か、それとも……。規士の無実を望む一登と、犯人でも生きていて欲しいと願う貴代美。揺れ動く父と母の思い――。心に深く突き刺さる衝撃のサスペンスミステリー。
-Booksデータベースより-
石川一登・・・自宅で建築デザインをしている
石川貴代美・・一登の妻。フリーの校正者の仕事をしている
石川規士・・・突然行方不明になる。友人の殺人容疑をかけられる
石川雅 ・・・一登と貴代美の娘
1⃣ 息子が行方不明に
2⃣ 夫婦の価値観・考え方の相違
3⃣ 「望み」とは
石川一家は,普通のどこにでもある家族で,ごく普通に幸せに暮らしていました。
ところが突然事件が発生します。
石川一登と貴代美には二人の子供がいましたが,長男の規士が行方不明になってしまいます。
思えば心当たりというか,不吉な予感はあったようです。
これまでサッカーを続けてきた規士が急にサッカーをやめたり,さらに貴代美が規士の部屋のゴミ箱からナイフを見つけたり。
一登が問い詰めるも,規士は何も言わないのです。
一登はナイフは取り上げますが,それ以上問い詰めませんでした。
ある日,不審な車両のトランクから高校生の遺体が見つかります。
それは倉橋という,規士の友人でもありました。ひょっとして規士が関係している?
何人かの高校生が行方不明になっていることから,いろんなことが考えられるわけです。
規士が犯人なのか? いや,規士も殺害されているのではないか?
ここから一登と貴代美は,考え方の違いで衝突するようになります。
一体,息子に何が起こっているのか。
ここから記者たちが取材にくるようになります。
まともに取り合わない石川家には罵声が浴びせられます。
最悪なのは生卵を自宅にぶつけられたりする様子が描かれます。現実にこういうことが起こっているのでしょうか。
いくら仕事とはいえ,それはないだろうと思いますよね。まだ何も判明していないわけですから。当然,一登や貴代美だけでなく,娘の雅にまで嫌がらせが及びます。
最近ではネットでの書き込みが問題になったりしますが,それと同じことも起こってしまいます。
いくつかの状況から勝手に規士が殺人犯扱いにされてしまうんですね。
そして捜査が進展します。二人の高校生が逃走中であることがわかります。
三人行方不明なのに? 一体何が起こってる? まさか,誰か亡くなってる?
これは家族にとっては辛い。想像だけが膨らむだろうし,まともに生活も送れない
一登は大変ことに気がつきます。取り上げたはずのナイフが無くなっているのです。
果たして,自分の息子は加害者となってしまったのか。
それとも,誰かに殺害されてしまったのか。
この2つに1つしかない状況の中,父親,母親がどんな思いでいるのかをとても考えさせられました。
一登は息子の無実を信じている。しかし,貴代美は息子の無事を望んでいる。
父親は「自分の子供がそんなことをするはずがない。加害者であってほしくない」
母親は「自分の息子が無事であってほしい。被害者であってほしくない」
男性はどちらかというと世間体を気にするのでしょうか。社会的な領域にいる時間が長いからでしょうか。
しかし女性は命を重視するような気がします。単純に子供を産んだからということだけではないような気がします。
父性と母性の違いと言ってしまえばそれまでですが,やはりそこには価値観・考え方の違いがあるのだろうなと思います。そして,とうとう真実が明かされます。
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眠れない,辛い辛い日々が続いたと思います。
ある日,一登は規士の机の抽斗からナイフを発見します。
一登は一瞬安堵の気持ちになったのではないかと思います。
つまりそれは,息子が入れたもので,自分は事件に関与しようとはしていないという印だと思ったのではないでしょうか。
しかし厳しい現実が家族に襲い掛かります。
逃走中の二人が確保されたという知らせが入りました。ということは一人は亡くなっているということです。
「あぁ,そうなってしまったか。。。」
そしてとうとう規士に何が起こったかが判明します。確保された二人の中に規士はいませんでした。
そして遺体が発見されます。まさしく規士でした。一登と貴代美は泣き叫びます。n何という残酷な辛い結末。。。
僕自身もしばらく呆然としていまいました。いつの間にか僕自身も「望み」を持ってました。
やはり「望み」というのは,貴代美が思っていたように「生きているという望み」だったのだと思います。
加害者ではないという望み,という言い方はしませんから。
今は普通に生活を送っていますけど,いつ同じことが自分に降りかかるかわかりません。
そして,万が一このような事件が起こった時,親というのは,自分の子供が被害者だろうが,加害者だろうが,真実を真っ向から受けるとめる覚悟が必要なのだと思います。
自分が社会的に批判を浴びたとしても,贖罪という一生かかってでも晴れることはないもの,批判を受ける覚悟を持って。
それが人を育てるという責任なのだと思います。
● 子供に対する父親と母親の考え方や価値観は微妙に異なる
● 「望み」とは,未来に期待する時もあれば,生きていることを信じる時にもある
● 人を育てるということには,責任と覚悟も必要なのではないか
未来は本当にどうなるかわからないけど,どんなことが起こっても覚悟を決め,これからの未来を進んでいかなければならないと思わせられる作品でした。