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【教場】長岡弘樹|警察学校教官の真の厳しさ

警察小説は本当に多いです。

多くの警察小説というのは,殺人事件が起きて,それを刑事が捜査する。

殺人の動機は何か,どうやって殺害したのか。

それだけでなく,いろいろな業界の知識もわかりますし,もちろん警察という組織についてもよく知ることができます。

しかし,警察学校という場所はどうでしょうか。

警察学校がどういうところなのかというのはあまり知られていないと思います。

今回の舞台はその「警察学校」です。

こんな方にオススメ

● 警察学校のことを知りたい

● 警察学校は何のための学校なのかを知りたい

● 本作品の風間教官の厳しさはどこからくるものなのかを知りたい

作品概要

君には、警察学校を辞めてもらう。この教官に睨まれたら、終わりだ。全部見抜かれる。誰も逃げられない。警察学校初任科第九十八期短期課程の生徒たちは、「落ち度があれば退校」という極限状態の中、異色の教官・風間公親に導かれ、覚醒してゆく。必要な人材を育てる前に、不要な人材をはじきだすための篩、それが警察学校だ。週刊文春「2013年ミステリーベスト10」国内部門第1位、宝島社「このミステリーがすごい! 2014年版」国内編第2位、2014年本屋大賞第6位に輝き、80以上のメディアに取り上げられた既視感ゼロの警察小説!
-Booksデータベースより-



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警察学校今回の「教場」は,警察学校のことがよくわかる作品です。主人公は風間と言う教官。

2020年に木村拓哉さんが風間教官となってドラマ化された作品です。

作者は「長岡弘樹」さんです。

長岡弘樹さんの経歴

1963年生まれ 筑波大学第一学群社会学類 卒業

2003年「真夏の車輪」で作家デビュー

主な受賞歴

小説推理新人賞(真夏の車輪)・日本推理作家協会賞(傍聞き)

警察学校という場所は単に警察官になるために必ず行かなければならない場所であるくらいしか思ってませんでした。

しかしこれを読めば警察学校がいかに厳しい場所であるかということがわかります。

本作品 3つのポイント

1⃣ 警察学校の厳しさ

2⃣ 素質を見抜く風間教官

3⃣ 風間教官の秘めたる思い

警察学校の厳しさ

警察学校の厳しさは,まずは規律の厳しさです。

● 数分の狂いもなく行動しなければならない

● 授業に必要なものの準備を忘れてはならない

● 嘘,偽りを述べたり書き記したりしてはならない

これらに違反すれば,教官から厳しい指導があります。

風間教官連帯責任でクラウンド25周とか,往復ビンタをくらうとか。

僕が学生時代の時の学校教育の名残がそのまま残っているような感じもしましたが,今はどうなんでしょうか。

その中で警察官なるために最後まで生活していくというのは,警察官になりたいという熱い思いと,かなりのメンタルの強さが必要だと思いました。

素質を見抜く風間教官

この作品は6つの短編に分かれています。

※ネタバレを含みますので,見たい方だけクリックしてください!

👈クリックするとネタバレ表示

職質」では,便器用の洗剤で毒ガスを発生させ,仲間もろとも心中しようとしますが,それを風間教官にすでに見破られ,命を救われます。

牢問」では,楠本という生徒が,岸川という女生徒が楠本の婚約者をひき殺したと思い込んでいました。それは誤解であると見破った風間教官が楠本に厳しい指導をします。

蟻穴」では,鳥羽という生徒が無断外出したのを隠すため,日記に嘘の記述をしたために,最終的には風間教官から厳しい仕打ちが行われます。

調達」では,先輩警官の尾崎が覚せい剤を使用し,小火騒ぎをもみ消すため,日下部という生徒に罪を擦り付けようとしたのを風間教官が見抜きます。

異物」では,かつてスズメバチに刺されたことがある由良が,風間教官のサポートによって,その恐怖を克服します。

背水」では,都築という生徒が,過去に大きなことを乗り越えたことがないという弱さを指摘され,自分の弱さを克服するために,未来の自分像を文集に書き,そしてそれをプレッシャーに実現させました。

風間教官は,悪事にはとても厳しい。その悪事が大きければ大きいほど,それなりの指導を行います。

しかし,弱くても正直なものには何かしらの手を貸し,成長させようとします

警察官警察という組織の中で本当に仕事ができるかどうか,生徒たちの素質を見抜き,またそれを伸ばす力を持った人だと思いました。

風間教官の秘めたる思い

主人公である風間という教官はかなりのキレ者です。

若者の心情を敏感に察知し,学校のルール,将来本当に警察官としてやっていけるのかを判断します。

そしてもし向いてないなら「辞めろ」と彼はハッキリ伝えます。

伝えるというよりは,誘導尋問のように生徒の口から語らせる辺りもすごいと思いました。

生徒の考えていることは全て風間教官はお見通しという印象です。

しかし,実は人情もあるとも感じます。

教官の人情どんなものにも向き不向きがあり,警察官としてやっていけないのであれば退校を命じたりするのは,その若者たちのことを思ってのことなのかも知れないです。

篩(ふるい)に掛けられ,生き残った生徒たちが立派な警察官になり,生徒それぞれがどこに配属になっても立派にやっていける人間に育て上げること。

警察学校というのはそういうところで,風間教官の思いはそこにあるのではないかと思います。

この作品で考えさせられたこと

● 警察学校の厳しさは,警察官になってからどんな逆境があっても任務を遂行する力を養うためのものである

● 本作品の風間教官は,警察官としての生徒の向き不向きを見極める力がある

● 風間教官は,悪事にはとても厳しく,逆に弱いものには手を差し伸べ,成長させる力を持っている

我々が困ったときに頼る警察官というのは,多くの厳しさを乗り越えた人たちです。

警察学校という厳しい環境,そして厳しく指導する教官の元で学んだからこそ,私たちにとっても頼れる存在であるのだろうなと思います。

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