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【救国ゲーム】結城真一郎|地方創生を利用した犯罪トリック

救国ゲーム

結城真一郎先生の作品。以前、先生の作品である「#真相をお話しします」をブログに上げました。短編集でしたが、複雑ながらも話がよく練られていて、とても引き込まれたのを思い出します。

今回は長編ということで、どんな作品を描かれているのかとても興味があって購入しました。「救国ゲーム」という、何か恐ろしい物語ではないかと想像させられます。

天才、神楽零士が掲げた「地方創生」に物申す謎の人物「パトリシア」と、天才官僚である人物が、ある殺人事件に対して頭脳対決を挑むという面白い話になっています。

地方創生、最新の機器を利用したビジネス、SNSを利用した犯行声明など、今の時代にマッチした題材をベースに、ミステリーを織り交ぜるというもので、今の若い方にはとても興味があるストーリーになっていると思います。

「#真相をお話しします」同様、引き込まれる作品になっているので、是非読んでみてください!!

こんな方にオススメ

● 高度なIT技術に興味がある方

● 地方創生について興味がある方

● 新しい時代の本格ミステリーに興味がある方

作品概要

“奇跡”の限界集落で発見された首無し死体。愛国者にして救世主(パトリシア)を名乗る犯人は高らかに宣告する。「すべての地方都市を放棄せよ。人質は地方に暮らす8000万人の日本国民」。ドローンによる無差別テロの期限(タイムリミット)が迫る中、集落の住人でカリスマブロガーの陽菜子と、“死神”の異名を持つエリート官僚の雨宮は、日本の存亡を賭け、不可能犯罪に挑む。最注目作家による本格ミステリ×サスペンス!
-Booksデータベースより-



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主な登場人物

晴山陽菜子・・自分が住む村で起こった事件を雨宮とともに追及する

雨宮・・・陽菜子の同級生で高い頭脳の持ち主。現在は官僚。

神楽零士・・・地方創生に力を入れる元官僚。殺害されてしまう。

中井佑・・・・神楽と親交が深い。ドローン操縦に精通している。

パトリシア・・・SNSで全国民を脅迫する、謎の人物

本作品 3つのポイント

1⃣殺人事件とパトリシア

2⃣ 難航する調査

3⃣ 本作品の考察

殺人事件とパトリシア

岡山県にある過疎村「霜里」「奥霜里」を再生させた、地方創生の立役者である天才、神楽零士。彼は世間から地方創生の救世主として崇められるようになりました。2つの村を行き来する自動運転車両の「スマイリー」と、3台のドローンを利用して2つの村へ物資を届ける高性能なドローンを利用したビジネスを考案したのがこの神楽零士なのです。

ところがそれに反対する人物がSNS上に現れます。その名は<パトリシア>。男性なのか女性なのかわからないこの謎の人物が訴えるのが、簡単に言えば「地方創生」というのは名ばかりで、結果的に多くの過疎地域には国家予算、地方交付税のほとんどが中央から与えられてしまっており、中央と過疎地域の不公平感があるということ。

確かに、企業はどんどん東京へ集中し、地方から人口が吸い上げられてしまっているという実態がある。この<パトリシア>は「政府は、60日以内に過疎対策を撤廃せよ」という声明を出すのです。60日以内にできなければ、大変なことが起こるとも宣言するのです。

そして60日が過ぎ、ある事件が起きてしまいます。何と、あの神楽零士が殺害されてしまうのです。しかも胴体が「スマイリー」の中に、頭部がドローンの中に入れられて。恐ろしい事件が起こってしまいました。

犯人は霜里にいる。犯行状況がそれを証明していました。一体、村人の誰が犯人なのかという流れになっていきます。

この事件を調べるのが、村に移住してきていた晴山陽菜子です。彼女は住民として何とか犯人を暴きたいと思っているようです。というより、彼女は学生時代から成績優秀で、クラスメイトからも一目置かれる存在だったという「プライド」がそうさせているようでした。
しかし、どうやって犯行を実行したのか。霜里に住む住民たちのアリバイはほぼ鉄壁で、誰が犯人なのか、全く見当がつかない状態でした。

そこで陽菜子はある人物を頼ることにします。常に成績優秀で、陽菜子が唯一敵わなかった、現在官僚である「雨宮」です。この雨宮を味方にした陽菜子は見事に犯人を暴けるのかというのが本作品の見どころとなるのです。

難航する調査

いよいよ本格的に事件の真相を探ろうとする雨宮と陽菜子。ただ、この二人、学生時代はあまり仲がよくなかったようです。特に陽菜子は雨宮に対して何かしらの劣等感を感じ、嫌な思い出を引きずっているのです。

でも性の合わない男性だとわかっていながら雨宮を頼るというところを見ると、この雨宮に対する能力の高さを認め、信頼感はかなり持っているということなのでしょう。この二人と新聞記者、そして警察も交えて捜査が行われるわけです。

集落の人々に聞き込みを行い、頭の中で整理するのが雨宮。彼はいろいろな可能性を視野に入れながら推理しようと試みます。しかし、なかなか決定的な証拠が掴めず、大苦戦します。

ただ、全ての状況を把握した雨宮は、ある人物が犯人である確率が95%である、と言い放ちます。それは「中井」という人物。彼は神楽と親交があり、さらにはドローン操縦のスペシャリストでした。

今回の事件には確実にドローンが関わっており、この中井にはその犯行が可能であると判断するのです。ただ、問題は時間です。犯行を実行するためにはあまりにも時間の制約がある。高い頭脳があって、体力もあればぎりぎり犯行は可能なように思えます。

でも、犯人がそのギリギリの時間で犯行を行うことを計画するのだろうか、高い知能を持つ犯人が、そんな不確かな状況で犯行をしようと考えるだろうかという疑問が湧きます。

調査は進んでいきます。一体誰が犯人なのか、という状況でも、雨宮の中では犯人は「中井」で確信しているようなんですね。彼がそこまで確信する理由はなんなのか。それは最後の最後にわかります。

しかし、状況証拠は揃っていても、決定的な物証が何もないというのは変わらずなのです。「あと一枚足りない」という雨宮。

ここまでの情報としては、犯行が行われたであろう時刻、遺体が発見された時刻、ドローンの飛行時刻のログなど。決定打がなかなか見いだせない状況。犯人はいろいろなことを想定して計画を立てていたのでしょう。その「一枚」が何なのかわからない。読んでいる方も、時刻の細かいトリックについては混乱してなかなかわからない。

まるで、古き良き○〇列車殺人事件的な本格ミステリー小説を読んでいる気分です。この手のミステリーは本当に細かい時間のズレとかがポイントとなるので、ちょっと苦手なんです。論理的に解決できる方がうらやましい。。。

ただ、ある人物の一言が雨宮に確信を与えます。どうやら雨宮はこの犯人の緻密なトリックに気づいた様子。全くわからないという陽菜子。

一体、犯人は誰で、事件の真相は何なのでしょうか。

本作品の考察

この後は実際に作品を読んでほしいと思います。最後は、これでもか、これでもかというどんでん返しがやってきます。

まさに「天才 vs 天才」の対決。犯人のトリックや、計画の奥深さに驚きました。

今回のストーリーのベースは「地方創生」でした。確かに、僕自身が住んでいる地方も人口がどんどん流出しているのを感じます。大学、専門学校、高校を卒業した若者は地元に残ることもありますが、大半は都会へ就職していきます。

中央に人口が集中し、企業はどんどん巨大になり、その数もどんどん増える。しかも優秀な人材がです。一方、地方に残りたいという若者もいますが、その数はどんどん減っている。しかも世の中は少子化で、日本全体の人口も確実に減っています。

去年(2024年)には東京都知事選挙がありました。中央に集中するあらゆるものを、どうにか地方へ分散できないか。もちろんそれができている地域もあるとは思いますが、中央から離れれば離れるほどその力は弱くなっている気がします。

さらに今回のトリックにも使われたドローン、自動運転。IT企業が巨大になれば、技術も中央に集まってくる。企業が多いから競争力もある。しかし地方ではそうはいかない。比較的都市部では発展しているとは思いますが、そうでない地域はやはり弱体化しているのではないかと思います。

そこに目を付けた今回の犯行の動機。それはここでは明かせませんが、真相を知れば今の日本がどうするべきかが見えてくる気もしました。
そのくらい本作品は奥が深いものだったと思います。

是非読んでみるべき作品だと思います。

この作品で考えさせられたこと

● 地方創生を実現するために必要なのは何なのか

● 最先端の技術を利用した巧妙なトリック

● 今回の計画のあまりの壮大さに圧倒されました

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