日本の首相官邸で,日本初の女性総理がアメリカの国務長官と会談をしている最中に「テロ」が起こってしまうという話です。
こんなことが本当に今の日本に起こりうるのか,考えさせられる作品です。
目次
1. こんな方にオススメ
2. 作者の経歴
3. 登場人物
4. 本作品 3つのポイント
4.1 首相を護るSP
4.2 日本のプライド
4.3 スーザンの正体
5. この作品で学べたこと
● 本作品でのSPの警護対象者は誰か,護ることができたのか知りたい
● 日本がテロリストに対抗するためには何が必要かを学びたい
● 何かの目的を達成するために必要なことは何かを学びたい
夏目明日香は、一年前の官邸襲撃事件のトラウマを抱えつつも、総理付きSPとして復帰した。一方、総理の新崎は、欧米で立て続けに起きたテロ事件に対抗し、〈テロ撲滅世界会議〉を東京で開催すると宣言。しかしその結果、東京がテロの標的となることに。そんな中、六本木で最初の爆発事件が起きた……。さらに国際会議を守るべく奮闘する明日香たちの作戦はテログループに漏れ、対策は後手に回り続ける。裏切り者は誰なのか? そして会議の開催の行方は!?
-Booksデータベースより-
高嶋哲夫さんは,主に災害関係の小説を描かれますけど,こういうテロの話も描けるんですね。バラエティに富んでいてすごいです。
1949年生まれ 慶応義塾大学工学部卒業
経産省の研究所で核融合の研究を行った経験あり
カリフォルニア大学留学・学習塾を経営 1999年に作家デビュー
主な受賞歴
北日本文学賞(帰国)・小説現代推理新人賞(メルトダウン)・サントリーミステリー大賞(イントゥルーダー)・エネルギーフォーラム賞(福島第二原発の奇跡)
世界で「テロ」は起こってます。一般市民を巻き込むテロは,毎日のように起こっているのではないかと思います。
かつて「SP」というドラマがありましたが,警護対象者を命をかけてまで護るという仕事はまさに命をかける覚悟がないとできないものだと思います。
夏目明日香・・首相を警護するSP。今回の主人公
新崎百合子・・日本初の女性首相。テロリストに拉致される
高見沢・・・・SPで明日香の上司。
スーザン・・・アメリカの新聞記者。夏目とともに行動する。実は今回の重要人物
1⃣ 首相を護るSP
2⃣ 日本のプライド
3⃣ スーザンの正体
日本の首相官邸で,女性初の首相である新崎百合子はアメリカの国務長官と会談していました。
首相は新崎百合子という名前からも小池百合子を想定しているんでしょうか。
そのSPをしていたのが同じく女性で主人公の夏目明日香です。
SPの仕事は警護対象者を護ることであって,テログループに対抗するのが仕事ではないわけです。
首相はテログループに捕まって拉致されてしまいます。
それをどうやって救おうか迷う明日香ということが今回のポイントとなっています。
明日香と一緒にいるのは上司の高見沢と,アメリカの女性記者であるスーザンです。
普通の記者だと本人は言っているが,彼女にはどうやら本人も知らない秘密があるらしいですね。
そんな彼女の正体は後半にわかるんですけど,明日香たちは何とかして総理を助け出そうと作戦を練るのです。
総理官邸には実は地下道があるというのです。ホントかどうかわかりません。
国会議事堂から官邸へは秘密の地下道が通っていて,そこを使って総理を助けようとするんですけど,実はそれすらもテロリストたちはお見通しでした。
地下道に侵入したSAT部隊を,テロリストたちは地下道を爆発させることで生き埋めにしてしまうんですね。
というか,本当にこんな地下道が官邸にあるんでしょうか。
国家機関の一部だから,万が一のことを考えて作ってあるというのは十分考えられるわけですけど。
実は彼らは官邸の見取図も持っていたのです。本当にお見通し。
日本の警視庁は何をしているのだろうか。
アメリカの国務長官も拉致されているわけだから,アメリカにも応援を頼めばいいではないか。
ところが,そこは日本のプライドが邪魔をするわけなんです。
テロリストに難なく占拠されたなどと報道されたら国の威信が落ちるというのです。
万が一,総理大臣や国務長官に何かあったらどうするつもりなのか。
そんなつまらないプライドを持つくらいなら,テロリストが入ってきても,他国の支援を迅速に実行できるような,世界に誇れる力を示せた方がいいんじゃないのかな。
これは日本に課された「テロのためのシミュレーション」のようにも思えました。
絶望的と思われたテロリストとの対決ですが,ここからが面白いところです。
是非,続きを読んでみてください!
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東日本大震災の時もそうですが,ひょっとしたらアメリカの力を借りれば,少しは被害を抑えられたかもしれない。
この作品の中では,警視総監と警察庁長官のやりとりもあります。
首都を守護する警視庁のトップである警視総監としては何とかテロを抑えたいのはわかります。
しかし「そんなプライドを捨ててアメリカの手を借りるべきだ」という警察庁長官の意見は尤もです。
そして,クライマックスが訪れます。
今回のテロの原因は一体何なのか。それはアメリカにありました。
アメリカは現在,原油生産高一位であると聞いたことがあります。
その多くは「シェールオイル」や「シェールガス」です。
アメリカ,特にアラスカの地下奥深くに埋蔵された資源を掘り起こしたために,周囲の人間が健康被害を受けたというのです。そして多くの人が亡くなりました。
アメリカに報復することがテロリストの狙いでした。
そして「プリンセス」と呼ばれる女性を拉致しようとした。
そう,それがスーザンだったのです。
スーザンは,アメリカの大統領の娘だったんですね。
本人は知らなかったみたいですけど,大統領は彼女を絶対助け出そうとようやく動き出したのです。
最後は明日香は,スーザンという存在の運にも味方され,そして,アメリカ海軍特殊部隊であるネイビーシールズの手を借りながら,テロリストに打ち克つわけです。
結局,日本は巻き込まれたわけだったんですね。
思い出すのは同時多発テロです。
あの時のアメリカは最大の屈辱と被害を受け,最後にはそのテロの首謀者を葬りました。
同じことが日本に起こった時,果たして日本はどうするのでしょうか。
● もしテロが発生した時,日本は対処できる能力があるのか疑問
● プライドを捨て,多くの国や人の手を借りて問題解決することの重要性
● アメリカに護られているという考えを捨て,自分たちで考えて動ける自立した国家になるべき
決して憲法改正を望んでいるわけではないです。
ただ,自分の国を自分たちで守ろうという気概があるのかということを国に問いたいのです。
私たちや将来の子供たちの生活は護られるのかを。