新海誠先生の作品を読むのは「君の名は」「すずめの戸締まり」以来,3作目です。いずれも映画製作からのノベライズ作品です。僕自身は映画を観ていないからわかりませんが,本作品を自分の中でイメージ化して読みました。
新海先生があとがきで書かれていますが,映画のノベライズとはいえ,小説化するというのはまた違ったものを描き足すようです。登場人物の生い立ちとか,人間関係など。
映画製作の傍らで小説を描くのって,相当大変だろうし,それでいてしっかり文章としても成り立っているので,とても読みやすかったです。
天気の子とは何なのか。いろいろと考えさせられる作品。
是非読んでみてください!
目 次
1. こんな方にオススメ
2. 登場人物
3. 本作品 3つのポイント
3.1 ある少年,少女の出会い
3.2 少女に秘められた運命とは
3.3 本作品を読んで考えたこと
4. この作品で学べたこと
●「天気の子」にはどんな意味があるのか,知りたい
● 生きるということについて,深く考えてみたい
高校1年の夏、東京に家出してきた帆高は、連日降り続ける雨の中、不思議な能力を持つ少女・陽菜に出会う。
「ねぇ、今から晴れるよ」。それは祈るだけで、空を晴れに出来る力だった――。
新海誠監督が自ら執筆した原作小説!
-Booksデータベースより-
森嶋穂高・・・家出をし,フェリーに乗って東京へ向かう
天野陽菜・・・どんな天気でも晴れにしてしまう特殊能力を持つ
天野凪・・・・陽菜の弟
須賀圭介・・・K&Aプランニングという企業の社長
須賀夏美・・・圭介の姪。K&Aプランニングに勤務
1⃣ ある少年,少女の出会い
2⃣ 少女に秘められた運命とは
3⃣ 本作品を読んで考えたこと
高校一年生の森嶋帆高は高校一年生ですが,なぜか家出をし,自分の生活してきた島からフェリーに乗って出て行きます。向かう先は東京。ところが途中,大雨が降ってきて,帆高はフェリーから落ちそうになります。それを助けたのが須賀という中年の男でした。
帆高は生活するために働く必要がありましたが,逆におごらされます。ついてないと思いながらも,この男から「K&Aプランニング 須賀圭介」と書かれた名刺を受け取ります。
仕事を探す帆高。SNSにも「割のいいバイトを探しています」と書き込みますが,なかなか職にありつけない。彷徨っている中,帆高はゴミ箱の中から拳銃を見つけます。本物かどうかわかりませんが,バッグに入れます。
帆高はマックへ行くことにします。ここで運命的な出会いをします。マックのアルバイトの女性がビッグマックを帆高に渡します。彼女は帆高の姿から何かを察したのでしょうか。
感謝の意を伝え,帆高は先日名刺を渡されたことを思い出します。そしてその名刺の事務所へ向かうのでした。古ぼけた建物の中にそれはありました。出迎えたのは須賀圭介ではなく,夏美という女性でした。
この事務所の仕事内容は「歴史と権威ある雑誌からの執筆依頼」ということ。でも内容を見ると『空から魚』『徳川家の仮想通貨』『火星にCDが』など,胡散臭い都市伝説的なものを執筆する会社のようです。
帆高は「体験入店」という形で仕事を始めます。というか,この仕事,本当に大丈夫かなって感じですよね。依頼された仕事を受け,帆高も自分なりに原稿を書いています。圭介からはいろいろと細かい指摘をされますが,彼は帆高を社員として迎え入れることにします。
慣れない作業ばかりではありましたが,事務所に住み込みで何と食事付き。仕事は大変そうでしたが,須賀や夏美と関われることが嬉しそう。ようやく仕事に就くことができた帆高。先行き不安ながらも,帆高自身は何やら楽しんでいるようです。
ある日,帆高は,路地で怪しい男2人が少女に絡んでいるところを目撃します。少女が嫌がっていると判断した帆高は,彼女の手を握り逃げ出します。ところが,すぐに捕まってしまい,帆高は男たちから殴られてしまいます。どうやら少女はカネ欲しさに,男たちと話をしていたようなんですね。
話を聞くと、少女はお金が目当てで、話もついているということでした。しかし,少女の本音はそうではなさそうでした。今にも泣き出しそうな声を聞いた帆高は,バッグの中からあの拳銃を取り出します。
「どうせオモチャだろう」と思っていましたが,帆高が引き金を引いた瞬間,発泡されてしまいます。どうやら本物の銃だったようです。何とか抵抗し,ようやく男たちから逃げ出すことに成功しました。それにしてもこの少女,一体何者なのでしょうか。
少女が言うには,あのマックのバイトでクビになってしまったようです。帆高にあげたビックマックが原因の様子。責任を感じる帆高。しかし,少女は帆高を責めたりはせずに、ある廃ビルの屋上に帆高を連れて行きます。
「今から晴れるよ」と言って,祈ります。すると、頭上の雲が無くなり、日が当たります。唖然とする帆高。少女の名前は天野陽菜(ヒナ)と言うようです。年は帆高より2つ上のようです。
ここから、帆高と陽菜の関係が始まるのでした。
帆高は怖がらせたお詫びなのか,田端にある陽菜のアパートを訪ねます。実は陽菜は母親を亡くしていて、現在は小学生の弟である天野凪と暮らしていました。帆高は陽菜にある提案を持ちかけます。「お天気お届けします」という『晴れ女ビジネス』でした。
天気が悪くても,陽菜が祈れば晴れるということを目の当たりにした帆高が考えた仕事。
二人はWEBサイトを立ち上げ,問い合わせがあった場合にはその願いをかなえるということを実現します。『結婚式で晴れにしてほしい』『ペルセウス座流星群が見れるようにしてほしい』『運動会を晴れにしてほしい』などなど。
そして神宮外苑花火大会も陽菜の力で晴れになりました。どんどん依頼が舞い込み,その願いを実現する陽菜。彼女自身も人のために自分の能力を使えることに喜びを感じているようです。
一方,圭介と夏美は,晴れ女の取材で神社を訪れていました。そこで神主が見せてくれたのは、空中に龍や鯨が飛んでいて、さらに小さな魚たちが舞う絵でした。空に多くの生き物が舞っているこの絵は,天気の巫女が視た景色を描いたものということです。
この絵は800年前に描かれたもので,この巫女の役割は天気の治療であるというのです。
天と人を結ぶ細い糸があり、人の切なる願いをこめ,それを空に伝えることができる人物こそが「天気の巫女」なのです。
ここまで聞くと,大雨だったのを人の願いを聞いて簡単に天気にすることができることにある種の違和感を感じます。何かその反動で悪いことが起きるのではないか。そんな感情を読者に抱かせるのではないでしょうか。そして神主は言うのです。「天気の巫女には悲しい運命があってな。。。」
何か意味深な発言です。やはり何か良くないことがあるのだろうか。
口コミで晴れ女ビジネスは急速に広まりましたが、依頼だけでなく,悪意のあるコメントも多くなってしまいます。そして帆高たちはとうとうWEBサイトを閉鎖してしまいました。やっぱり嫌な予感がしますよね。
ただ,最後に一人だけ,依頼をこなそうとします。その依頼元は何と圭介でした。実は圭介には萌花(もか)という娘がいました。圭介には妻がいましたが,かつて事故で他界していたようです。
現在,祖母と暮らす萌花は喘息持ちだったために、雨の日はなかなか会わせてもらえなかったんですね。そこで「晴れ女」にお願いして、圭介は久しぶりに萌花に会うことができたのでした。萌花と圭介だけでなく,この日は帆高や陽菜、陽菜の弟の凪,そして夏美も一緒でした。
夏美って,圭介の彼女なのかと思っていたら,どうやら圭介の姪のようなんですね。圭介が萌花と遊んでいる間、夏美は陽菜と話をします。いろいろ話している間に,夏美は思わず神主から聞いた「天気の巫女の悲しい運命」について話してしまうのでした。
一体,どんな運命なんだろ。。。そして今後の展開は。。。
この続きは是非作品を読んでほしいと思います。
世界というのはいろいろなバランスをとって成り立っているのだと思います。
読んでいる途中に「人柱」という言葉も出てきました。
人柱とは
「人柱」とは、神の加護を得たり、穢れを払ったりする時に生きた人間を犠牲にして捧げる,人身供犠(じんしんくぎ)・人身御供(ひとみごくう)の一つとみられています。
いわゆる生贄(いけにえ)です。そして人柱伝説は、大規模で困難な工事の無事を祈って行われたと伝わり、アジア、ヨーロッパ、アフリカ、オセアニアの一部などにみられます。
日本では、築城の他に橋や堤防の工事にまつわる話として,城を築く際「土台や土の中に人間を埋めた」という儀式のことです。
-城びとサイトより-
主人公にも大きな宿命がありました。
男性がいて,女性がいて,多くの職業があって,それぞれが自分の役割を果たしていく。晴れる日があれば,大雨が降る日もある。人によってはそれが残念だったり,恵みの雨になったり。
この先,地球規模の気候変動があって,氷河期が訪れるかもしれない。あるいは地殻変動があって,かつて起こったような大規模な地震がやってくるかもしれない。
やはりそれは受け入れるしかないのだと思います。自分の思い通りに環境を変化させてはならない。もしそれをしてしまえば,私たちに大きな代償が待ち構えているかもしれない。
幸運も災難も受け入れながら,自分自身が思うように生きていくこと。
いろいろなことを考えさせられる作品でした。
● 世界は大きなバランス,小さなバランスで成り立っているのではないか
● バランスが崩れるとそこには大きな代償がある
● 自分が今後どのように生きていったらよいのか