「君の膵臓をたべたい」
2015年の作品でありながら,ツイッターなどのSNSでは現在でもよく紹介されていて,とても気にはなってました。累計260万部の大ベストセラーです。ようやく購入して読むことができました。タイトルがとても気になりますよね。
ただこれまで読んでこなかったのは,あまり「青春小説」というものを読んだことがなかったからだと思います。食わず嫌いみたいな感じで。。。
でも確実に言えるのは「これは早く読んだ方がいい」「読むことで多くのことを学べた」ということです。
命の大切さ,自分の殻を破ろうとする勇気。いろいろなことを教えてくれます。
本作品,住野よる先生のデビュー作なんですね。それでこの完成度と感動。
最後は大号泣してしまいました。読めばその理由がわかるはずです。
膵臓に疾患を持った少女と,他人と関わりを持とうとしない少年との青春の話です。
目 次
1. こんな方にオススメ
2. 登場人物
3. 本作品 3つのポイント
3.1 桜良と春樹の出会い
3.2 桜良の強引さにタジタジの春樹
3.3 「君の膵臓をたべたい」の真意
4. この作品で学べたこと
● 「君の膵臓をたべたい」の真意を知りたい
● 正反対の性格の二人が徐々に惹かれ合う姿を見てみたい
● 桜良の人生観を知りたい
ある日、高校生の僕は病院で一冊の文庫本を拾う。タイトルは「共病文庫」。それはクラスメイトである山内桜良が綴った、秘密の日記帳だった。そこには、彼女の余命が膵臓の病気により、もういくばくもないと書かれていて――。読後、きっとこのタイトルに涙する。「名前のない僕」と「日常のない彼女」が織りなす、大ベストセラー青春小説
-Booksデータベースより-
1⃣ 桜良と春樹の出会い
2⃣ 桜良の強引さにタジタジの春樹
3⃣「君の膵臓をたべたい」の真意
冒頭は主人公の山内桜良が,ぼく(志賀春樹)に対して「君の膵臓をたべたい」と話すところから始まります。
話の途中で,桜良と春樹が初めて出会う回想シーンが出てきます。その部分から書きたいと思います。春樹は盲腸の手術をしていて,その抜糸に病院へやってくるんですけど,そこである一冊の日記を見つけます。「共病文庫」というタイトルでした。
「共病文庫」を書いたのは桜良でした。この日記が後々大きなポイントになってきます。
春樹は中を覗きますが,そこには衝撃的なことが書かれていました。桜良は実は膵臓の病気に罹っていて,余命も少ないということがわかります。春樹が日記を見ている瞬間を桜良に見つかります。どうやら家族にしか言ってなかったようです。
家族以外,誰も知らない桜良の秘密を知ってしまった春樹。気を遣いつつも,この辺りから桜良と春樹は仲良くなっていきます。
「ぎゃははは」とか盛大に笑う天真爛漫な桜良からは,命が残り少ないということを感じさせないんですね。
心の中ではきっと思い悩んでいるのではないでしょうか。それでも明るく振る舞う桜良はすごい女性です。話は現在に戻ります。桜良は積極的に春樹に話しかけてきます。徐々に行動も共にするようになってきました。
クラスメイトも「なんであの桜良が春樹と一緒にいるんだ?」って雰囲気でしたが,そんな噂もおかまいなしに桜良は春樹と行動することを好みます。
元々春樹は引きこもり的な感じの人間なので,確かに桜良の意図がよく見えません。
一緒にスイーツビュッフェにも行きます。かなり押され気味の春樹ですが,二人はお互い言いたいこと伝え合います。
そんな二人に不信感を持っていたのが桜良の親友の「キョウコ」でした。もちろん桜良と仲が悪くなったわけではないですが,春樹のことをあまりよく思っていないようなんですね。これって嫉妬なんですかね。春樹としては桜良が強引に接してくるので何か誤解されている感じもします。
さらに積極的に話しかけてくる桜良。どうやら二人で旅行へ行くことにしたようです。
行先は明かされてませんが,「改札を出るとラーメンの匂いがする」「学問の神様の神社がある」という表現から,福岡へ行ったのかなって思います。
改札を出ると「とんこつラーメンの匂いがする」かどうかはわかりませんがこれはおそらく「博多駅」で,後者は「太宰府天満宮」のことでしょう。新幹線で結構遠いところまできてしまいました。桜良の行動力はすごいです。
何か最期に行きたいところに行こうと考えているふうにも思えます。
旅行にやってきた二人は,一緒にいろいろなところを観光した後,ホテルへチェックインします。しかし予約がしっかりできていなかったのか,同部屋に泊まることになります。春樹は女の子と同じ部屋に泊まったこともないですし,ましてや同じベッドに入るってこともしたことないでしょうから,かなり混乱しているようでした。
先に風呂に入ると言い出した桜良が,自分のリュックから洗顔クリームをとってほしいと春樹に頼みます。女の子の持ち物を探すのも初めてでしょうね。
しかし春樹は衝撃を受けます。洗顔クリーム以外にも,注射器やたくさんの錠剤,検査機器が入っていることに気づくのです。「やはり,桜良の余命は短いのか」と思っているようです。ただ,桜良はわざと自分のことを知ってもらおうとしているようにも思えました。
どうしてここまで桜良は春樹に積極的になるのか。桜良が一方的に春樹のことが好きなのか。
ホテルの部屋で二人はゲームをすることにしました。「真実と挑戦」というゲームです。
このゲームは,とりあえず何かのゲームをした後,負けた方が「真実」か「挑戦」を選びます。
●「真実」:負けた方が,勝った方の質問に答えなければならない
●「挑戦」:負けた方が,勝った方の指示に従わなければならない
なんか面白そうですね。これ,ほとんど桜良が勝ちます。
春樹は,クラスでかわいいと思う女の子を白状させられたり,桜良を「お姫様だっこ」させられたり,ベッドで一緒に寝ることになったり,徐々に桜良との距離も近づいてきているようです。
一晩明け,桜良に電話がかかってきました。またも「キョウコ」でした。「あんた,今どこにいるの?」
これでさらにキョウコは春樹に対しての不信感が倍増です。直球一途の桜良と,警戒しながらも桜良に徐々に惹かれていく春樹。
そして2人は旅行から戻ってきます。
ある日,桜良は死ぬまでに「恋人でも好きでもない男の子とハグをする」と言って春樹にハグしたところからおかしくなります。
桜良は「冗談,冗談」とはぐらかしますが,真剣で真面目な春樹は怒りを覚えます。「僕を何だと思っているのか」と。
飛び出した春樹の元に一人の男子高校生がやってきます。タカヒロといいました。桜良のことが好きな様子のタカヒロは,春樹を殴ってしまいます。
その現場にやってきた桜良は激情します。「二度と近づくな」とタカヒロに言い放ちました。
一時は仲が悪くなりかけましたが,お互いの気持ちをしっかり伝え仲直りします。
そして二人に思ってもいないことが起こってしまうのです。
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桜良は春樹に言います。「自分たちが出会ったのは偶然ではない,必然である」と。
要は,それぞれがこれまでに「無数の選択」をしてきて,その結果が今につながっているということを話します。いい言葉だと思います。
何か桜良は人生を達観している感もあるんですよね。いろいろなことを教えられる春樹。ある意味,桜良を尊敬しているような気もします。
そして桜良は体調を悪くしたのか,入院することになりました。
お見舞いに行く春樹でしたが,ここでもキョウコと鉢合わせます。やっぱりキョウコは春樹に対して不信感が消えないようです。
桜良が「春樹はいい人だよ」と言っているにもかかわらず。
春樹が桜良のストーカーをしているという噂もたつようになります。でも春樹はこういうのは慣れているようですね。
元々,他人とコミュニケーションをとることが少ないからかもしれませんが,何か寂しい気もします。本当はいいやつなのになぁ。
そこで桜良はアドバイスします。
「みんなに自分の意見を言うべきだ。そうすればみんなと仲良くなれるはずだ」と。ある意味,ここが春樹の弱点なんですよね。何を言われても言い訳をしないから,逆に周囲が不信感を持っているような気がします。
春樹は桜良に聞きます。「生きるってどういうこと?」と。
桜良は答えます。「人と繋がることである」と。
そして,桜良の入院期間も徐々に延びてしまいます。状況がよくないのでしょうか。
その証拠に桜良は「遺書」を下書きしていると言い出します。
何か切なくなりますね。しかしどうにか退院することができました。
生きる意味を教えられた春樹は,「僕は本当は君になりたかった」と伝えようと思っているようです。
春樹の中で,桜良の存在と言うのはかけがえのない,大切なものになりつつあったように思います。
ところがここで大変な事件が発生してしまいます。桜良が通り魔に刺されて亡くなってしまったのです。えっ? そんな最期なの?
桜良の葬儀が行われます。しかし,そこには春樹の姿はありませんでした。相当ショックだったのは言うまでもありません。
そして後日,春樹は桜良の母親を訪ねることにします。あの「共病文庫」を読むために。
桜良の母親は驚きます。家族以外誰にも桜良の病気のことを話していなかったのに,春樹自身がそのことを知っていたから。そして「共病文庫」は,大切な人物のため,つまり春樹のために書いたものだったからです。
まさに目の前に桜良の大切な人物が現れ,母親は「共病文庫」を春樹に渡します。
そこには,「共病文庫」は春樹の好きにしていいこと,そして春樹に対する思いが書かれていました。
桜良は春樹にいろいろとアドバイスをしていましたが,実際には春樹のことを尊敬していたのではないかという部分があります。
春樹は決して臆病なのではなく生きていく力を持っている,そう思っていたようです。
よく「孤独な人が強い」って言う人もいますよね。それに近い,自分にはない部分を桜良は尊敬していたのでしょうか。
「君の膵臓を食べたい」
春樹からすれば「桜良のような人間になりたい」という意味だったでしょうが,「共病文庫」に書かれたものは,桜良自身が「春樹のようになりたい」という意味だったんですね。
最後のシーン。何と春樹がキョウコ(恭子)と一緒に桜良の墓参りに行きました。「共病文庫」を恭子に見せ,恭子はようやく春樹のことを理解できたようでした。
君の膵臓を食べたいという言葉。いろいろな意味があったのではないかと思います。
例えば内臓が強くなるためにはその臓器を焼いて食べる,例えばホルモンだとかそんな感じですよね。
桜良にとってもそれは本心だったのかもしれません。
そしてお互いの「爪の垢を煎じて飲む」というような意味も込められていたような気がします。
強くなりたい,人前で堂々としたい,緊張せずに話せるようになりたい,などなど。
世の中にはいろいろなことで悩んでいる人が多いと思います。
僕自身にもやはり弱点はありますし,どうやったら乗り越えられるか,真剣に考えたことは数知れず。
自分にはないものを持っている人はうらやましいですよね。でもそれはお互い様なのかなって思います。
全てを兼ね備えている人って,世の中にはいないと思いますから。
自分にないものを目指して,それができるようになった時の嬉しさは計り知れないですもんね。
他人のすばらしいところを素直にほめ,自分が持っていないもの,できないという先入観を持っていること。
それらを克服することも,生きる目的の一つなのかなって思います。
● 「君の膵臓を食べたい」の真意を理解できた
● 「共病文庫」を読むシーンでは号泣しました
● できれば桜良と春樹が仲良く成長していく姿を見たかった