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【君の名は】新海誠|遠く離れた二人の繋ぐものとは

君の名は

2016年公開の映画をノベライズした新海誠先生の作品です。

基本的に映像化されている作品を小説にした作品ってあまり好みではなかったので,今回読もうと思うまでにはかなり時間がかかりました。

でも,ふと読みたいという気持ちが湧いてきて,読み始めて数時間で読了。本当に面白かったです。

興行収入が,日本映画史上でも『千と千尋の神隠し』『タイタニック』『アナと雪の女王』に次ぐ第4位の伝説の作品になりましたね。

遠く離れた二人の主人公がある日突然入れ替わり,二人は出会うことができるのか,それとも。。。

クスッと笑ってしまうシーンもあれば,ドキドキ・ハラハラする展開もあり「これはみんな好きだろうな」って思いました。

1200年ぶりにやってくる彗星というのも一つのポイントになるんですが,こちらも意外な展開でした。

アニメのイメージが強いと思うので,今回のブログでは極力画像は風景画のみとしています。

いろいろなことを考えさせられる作品なので,是非,一読してもらいたいです。

こんな方にオススメ

● 映画史上伝説となった作品のノベライズ作品を読んでみたい

● 「君の名は」の意味が知りたい

作品概要

山深い田舎町に暮らす女子高校生・三葉は、自分が男の子になる夢を見る。見慣れない部屋、見知らぬ友人、目の前に広がるのは東京の街並み。一方、東京で暮らす男子高校生・瀧も、山奥の町で自分が女子高校生になる夢を見る。やがて二人は夢の中で入れ替わっていることに気づくが――。出会うことのない二人の出逢いから、運命の歯車が動き出す。
-Booksデータベースより-



主な登場人物

立花瀧・・・主人公。東京の都心に住む男子高校生

宮水三葉・・主人公。岐阜県糸守町に住む女子高校生

宮水四葉・・・三葉の妹

宮水一葉・・・三葉と四葉の祖母で宮水神社の宮司

勅使河原克彦・・三葉の同級生

名取早耶香・・三葉の同級生

奥寺ミキ・・・瀧のアルバイト先の先輩

本作品 3つのポイント

1⃣ 遠く離れた二人の物語

2⃣ 生きている時代が違う?

3⃣ 歴史を変えることはできるのか

遠く離れた二人の物語

覚えてない? 名前は『みつは』

主人公の男子高校生である立花瀧(たき)は夢を見ていたようです。ところが次の瞬間に衝撃が走ります。

自分の胸に谷間があるのです。まだ夢を見ているのかと思いながらも,徐々に現実感が湧いてきます。そして絶叫!

朝になって食事の時間。「お姉ちゃんおそーい!」という少女の声。どうやら,瀧は『三葉』という女子高生に成り代わっているようなんです。そこには老婦人と妹の四葉がいました。

話を合わせている感じの瀧は学校でも話を合わせます。三葉の友人である勅使河原ことテッシーと早耶香が話しかけてきます。訳がわからないまま過ごす瀧は自分のノートを見て驚きます。

お前は,誰だ?」これは誰が書いたものなのか。

結局,何も思い出せないまま夜、三葉は四葉と共に巫女の儀式を行います。どうやら三葉は宮水神社の娘で宮水三葉という名前のようです。

神社東京で育っている瀧はこの事実に驚きます。さらに儀式である口噛み酒を作る姿を見られるのが耐えられない様子。

口噛み酒とは

穀物やイモ類などデンプン質の原料を噛んで壺やヒョウタンなどの容器に貯め、自然発酵を促して造られる酒です。

原料のデンプンは唾液中のアミラーゼという酵素の働きで糖に分解されます。

-月桂冠サイトより-

確かに,一度口に含んだものをまた吐き出すというのは,女性に限らず嫌な儀式だなって思ってしまいます。

この地には,1200年ぶりにティアマト彗星がやってくることになっていました。空を見上げると彗星の軌道が見えます。あと何日かで最接近するようです。

ハレー彗星そして視点は三葉に移ります。瀧同様,三葉が目を覚ますといつもと違う光景に戸惑います。見たことのない部屋、空気、そして身体には男性にしかないものが存在する。男性の姿になっていたのです。

三葉はそのまま制服に着替え、戸惑いながらも瀧の通っている高校へと行きます。そして友達に誘われカフェへ行き、夜は瀧の働いているレストランのアルバイトへと行くのです。

当然バイトなんか初めてなので,失敗だらけ。それでも周りの人々に助けられながらこなしていきます。

そう,二人は完全に入れ替わってしまっていたのです。その日を境に瀧と三葉は,時々入れ替わるようになります。入れ替えタイミングは寝た後、そして頻度は週に2,3回程度あるようです。

三葉はスマホに日記が記録されているのを見つけます。

「9/7 司たちとKFC喰う」「9/6 日比谷にて映画」「8/25 バイト給料日!」などなど。スマホそして「お前は,誰だ?」という言葉を思い出し,三葉は自分の手に「みつは」と書きます。後日「みつは? お前はなんだ? お前は誰だ????」

これまでのことを整理し,二人は思うのです。

俺は夢の中でこの女と。。。入れ替わってる?

私は夢の中であの男の子と。。。入れ替わってる?

生きている時代が違う?

お互いの名前と顔を知ることはできても,直接話すことはできない二人の関係。何か戸惑いながらも,二人は今の現状を楽しんでいるようでした。

三葉は憧れの東京での生活を満喫し、瀧のアルバイト先の先輩である奥寺先輩と仲がよくなります。

一方,瀧も田舎での高校生活である意味一目置かれる存在となり,宮水家での生活を送っています。そして,お互いの世界でやってはいけない「禁止事項」をやりとりするにまで発展します。

ある日,瀧は自分が約束した覚えのないデートに出かけます。相手はバイトの奥寺先輩です。二人は美術館を訪れます。富良野,津軽,三陸,陸前,会津,信州。。。

美術館各エリアに分かれた田舎の風景を見ている時でした。ふと,見覚えのある風景を目にします。それは「飛騨」のエリア。

「俺はここを知っている」瀧に既視感が押し寄せます。

ここで思ったのが「お互い電話すればいいんじゃないの?」ということ。

そうすれば声も知ることができるし,本当に入れ替わっていることも確信できるのでは?

瀧は,スマホにある三葉の電話番号にかけてみました。

お客様のおかけになった電話番号は,現在使われていないか,電源が入っていないため。。。。

あのお馴染みの電子音声が流れてきます。ん? でもどういうことだ? かからないってことがあるのか?

実はこの日を境に,二度と二人が入れ替わることはありませんでした。

体の入れ替わりがなくなった瀧は、ある風景の絵を描き続けていました。それは瀧が三葉と入れ替わっていた時に見ていた景色でした。

描いた絵を持ち,瀧は飛騨へ向かいます。そして三葉に会おうとするわけです。

急に入れ替わりがなくなってしまい,それがなぜなのかを追及しようとしているようにも思えました。

一人で行こうと思っていた瀧。駅へ着くと友人の司とバイト先の奥寺先輩が待っていました。どうやら一緒に行くようですね。

果たして瀧は三葉に会うことができるのか。手がかりは「飛騨」と彼の描いた絵だけです。

飛騨飛騨に着いた三人。周りの景色を見ながら似た場所はないか探し,また瀧の描いた絵を見せて回ります。

しかし何も手掛かりがつかめません。日が暮れようとしていました。ここで意外な手がかりを掴みます。たまたま入った高山ラーメンのお店でその絵の風景を知っている人がいたのです。

「それ,昔のイトモリやろ?」

「昔のイトモリ」という表現が気になります。実はラーメン屋の店主は糸守町の出身でした。しかし、糸守町には3年前,2013年にティアマト彗星の破片が落下し、町ごと消滅していたのです。

そして今はもう誰も住んでいないようなんですね。これって,どういうことだ?衝撃の事実を知った瀧。すぐに過去の資料を調べ始めます。確かに3年前,彗星が二つに分裂し,糸守町に直撃していたのです。

そして瀧は衝撃的なものを目にします。それは事故の犠牲者の名前です。500人以上にも及ぶその事故の被害者の中にある名前を発見します。

宮水一葉(82)
宮水三葉(17)
宮水四葉(9)

何と,三葉は3年前に死んでいたのです。ちょっと頭が混乱しそうです。以前は入れ替わっていたじゃないか,って思います。

こういうことです。確かに瀧と三葉は入れ替わっていました。しかし,それぞれの時代が違った。つまり,2016年の瀧と2013年の三葉が入れ替わっていたのです。なるほど,そういうことか。。。。

瀧は次の日,宮水神社のあった場所へ向かいます。そこはかつて瀧が三葉の身体に入れ替わって訪れた祠(ほこら)がありました。

祠この世とあの世の境があるという三葉の家系にとって大切な場所。瀧は思いつきで,口噛み酒を口にします。そうすればまた三葉と会えかもしれない。

「本当に時間が戻るのなら。もう一度だけ。。。」しかし,何も起こりません。

そして瀧が立ち上がろうとしたとき,足がもつれてしまい転倒してしまいます。ただ,その転倒のしかたが普通ではない。

仰向けに転んだはずなのに,背中がいつまで経っても地面にぶつからないのです。瀧が目を覚ますと、そこは見覚えのある三葉の部屋でした。

そこへすぐに一人の女の子が顔を出します。三葉の妹・四葉でした。瀧は2013年に戻ってきたのです。三葉として。

瀧の目的はもちろん三葉や糸守町の人達を助けること。そしてその日は宮水神社の祭りがあり,あのティアマト彗星が落ちてくる日でした。

果たして,瀧は三葉を守ることができるのでしょうか。

歴史を変えることはできるのか

※ネタバレを含みますので,見たい方だけクリックしてください!

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糸守町の人たちは、三葉に成り代わった瀧が逃げろと叫びます。しかし誰も信じてくれません。

どうしたらいいのか。そこで思いついたのが糸守町全体に放送を流すことです。発電所を爆破すれば、災害放送をかけられるのではないか。

糸守町瀧は,テシガワラとさやかとともに決死の表情で伝えます。

「このままだと今夜,みんな死ぬ!」

町の人は誰も信じてくれませんでしたが、テッシーたちは信じます。その後、すぐにかつて行ったことのある祠を思い出しました。

「あの祠には瀧の体に入った三葉がいるのではないか」

そこには本当に瀧のからだになった三葉がいました。目を覚ました三葉は周囲の光景を見て驚くのです。

三年後の糸守町は彗星衝突により消滅していました。そこで悟るのです。「自分は『あの日』に死んだのだと。

瀧の声が聞こえます。そして三葉の声を瀧も聞くことができます。元々異なる時代にいた者同士が入れ替わっているからなのか、お互いにその姿を見ることはできません。

すぐ近くにいるはずなのに。しかし、その『存在』は感じることはできました。

そして、再び二人は入れ替わります。三葉は自分自身の身体に戻り、糸守町の人達の避難を急ぎます。ただ、夢で出会った瀧の名前も思い出せなくなりつつありました。

あの時、会った彼の名を思い出せない。「あなたの名前は?」と。

彼女の手には名前は書かれていませんでしたが、『すきだ』と一言書かれていました。
涙が溢れ出す三葉。彼女は立ち上がり、再び走ります。

彗星の災害から糸守町の人々を守るために。三葉は町を守ることができたのでしょうか。

あれから5年が経ち、瀧が就職活動をしているシーンへ移ります。瀧はあの『彗星落下』事件を思い出します。結末はこうでした。

彗星の一部が落下して糸守町を破壊しますが、奇跡的に町民のほとんどが無事だったのです。彗星の落下したあの日、偶然にも町全体で避難訓練をしており、町民の大半が被害範囲の外にいたのです。災害放送つまり、三葉は町を守ることに成功したということ。

さらに数年が経ち、瀧は大学を卒業して、就職活動後、企業で働いていました。

今でもずっと、あと少しでいいからと願う気持ちがあり、瀧はその気持ちを胸に通勤電車に乗ります。

すると、併走する電車に乗る女性と目が合います。直感します。名前も知らないのが、それは自分が求めていた人物だと分かります。

二人は電車を降り、お互いを求めて走り出します。階段の上には三葉が、下には瀧がいます。特別な人物であるとわかりながら、何も言えずに通り過ぎてしまいます。

駅のフォームしかし、すぐにお互いに振り返るのです。女性の長い髪には、夕陽のような色の組紐が結ばれていました。

瀧が笑うと、その女性・三葉も泣きながら笑います。そして同時に二人はお互いに聞くのです。

君の、名前は』と。

異なる場所に住み、お互いの体が入れ替わった二人。そこには3年という埋められない時間が存在して、二人が出会うということはありえない。

ただ、二人のお互いに対する思いがあまりにも強かったのか、何かを感じ取る二人。最後の二人のセリフを見たとき、この後、どんな展開になっていくのかを想像してしまいます。

新海先生は『ご想像にお任せします』と、作者らしいコメントを出していますが、本作品を読んだ方、映画を観られた方はハッピーエンドを期待したでしょう。

どんな作品を読んでも、読んだ人の受け取り方って違うのと同じように、今後二人がどうなっていくのかという考え方も異なるのでしょう。

でも、二人がこれからも仲良くしていくと期待するのは僕自身だけでしょうか。

この映画を観ていないので、機会があれば観て、自分の想像と映画のリンクする部分、しない部分を楽しんでみたいと思います。

この作品で考えさせられたこと

● 過去に戻ることで,未来を変えることができるのか

● 「君の名は」という言葉の深い意味を知ることができた

● 何かを予感させる二人の未来

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