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【卒業】東野圭吾|加賀恭一郎の原点に迫る

卒業

「加賀恭一郎シリーズ」の第一弾です。

東野圭吾先生が「放課後」でデビューを飾り,第二作が1986年に発刊されたこの「卒業」です。

当時は「本格ミステリー」を売りにされていた節があり,真犯人が誰で,どんなトリックを使ったのかという部分にスポットを当てた作品となっています。

「雪月花殺人ゲーム」というサブタイトルが付いてますが,雪月花とは「雪月花之式」という茶道裏千家という派に伝わる,札を使い茶道を愉しみながら行う「ゲームのようなもの」だそうです。

その「雪月花の札」が今回のポイントにもなっています。雪月花之式の札そもそも「加賀恭一郎」をシリーズ化するというのを東野先生は考えていたのでしょうか。

加賀恭一郎といえば,シリーズ約10冊を読んでいけばわかりますが,事件の真相を粛々と調査しつつ,人間味のあふれる人物で好感が持てます。

そんな「人格者」と言えるような加賀恭一郎であるからこそ,ここまでシリーズが大きくなっていったのではないかと思います。

そして,以降の彼の活躍を知れば,本作品が加賀の,おそらく人生を大きく左右する事件に関わった貴重な作品なのだろうと思います。

加賀は一度は教員になりますが,もう一度警察学校に入り直して刑事になっています。

そういう意味でも,本作品の事件なくしてはこのシリーズもなかったと言える作品ではないでしょうか。

こんな方にオススメ

● 加賀恭一郎の大学時代の生活を知りたい

● 加賀が,大学時代に関わった殺人事件のことを知りたい

● 東野先生の初期の本格ミステリーを読んでみたい

作品概要

7人の大学4年生が秋を迎え、就職、恋愛に忙しい季節。ある日、祥子が自室で死んだ。部屋は密室、自殺か、他殺か? 心やさしき大学生名探偵・加賀恭一郎は、祥子が残した日記を手掛りに死の謎を追求する。しかし、第2の事件はさらに異常なものだった。茶道の作法の中に秘められた殺人ゲームの真相は!?
加賀恭一郎シリーズ
-Booksデータベースより-



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主な登場人物

加賀恭一郎・・主人公。T大社会学部社会学科4年生

相原沙都子・・T大文学部国文科4年生。加賀が気に入っている女性

藤堂正彦・・・T大理工学部金属工学科4年生

牧村祥子・・・T大文学部英米学科4年生

金井波香・・・T大文学部英米学科4年生

若生勇・・・T大4年生。井沢華江の恋人

井沢華江・・・T大文学部4年生。若生の恋人

本作品 3つのポイント

1⃣ 学生時代に加賀が関わった事件を知りたい

2⃣ 東野圭吾先生の第二作目の作品を読んでみたい

3⃣ 本格ミステリーを読んでみたい

加賀恭一郎の初めての事件

ある日,牧村祥子が体調を崩していたということで,相原沙都子は見舞いに行きました。

ところがそこで違和感を感じます。鍵が閉まっているのに,明かりが点いたままになっているのです。

管理人が部屋を開け,彼女たちが見たものは祥子の遺体でした。近くにはカミソリが落ちていました。自殺なのか,それとも他殺なのか。。。祥子と付き合っていた藤堂と何かあったのか。沙都子は動揺します。

しばらくすると,事件について金井波香が何やら聞き込みをしていることを知ります。どうやらこの波香がキーパーソンのようです。

沙都子,波香,祥子はともに華道部に所属していました。ある日,恩師の南沢雅子の誕生日を祝うため,雅子の家を訪れることになります。

訪れたメンバーは,沙都子,波香,若生,井沢,藤堂です。

容疑者たち彼女たちは「雪月花之式」というゲーム感覚でお茶を楽しむというものをやっていました。

参加メンバーで役割を決めるもので,お茶を入れるもの,飲むもの,菓子を食べる者など,カードを引くというゲームです。

ここで大事件が起こるのです。ゲーム中に突然波香が亡くなってしまうんです。青酸中毒でした。何者かが毒を仕込んでいたということですね。

波香はお茶を飲む役でした。そうなるとお茶を入れた人物が怪しくなります。

それは沙都子でした。彼女が犯人かという流れになりますが,ここでようやく主人公が登場します。加賀恭一郎です。加賀恭一郎刑事でもない彼はこの事件をどう推理するのでしょうか。

加賀恭一郎の推理

波香に関する怪しい出来事がありました。それが「八百長疑惑」です。

彼女は剣道をしていて,優勝候補の三島亮子との対戦の時,波香は不調を訴えます。

それは波香だけではありません。亮子と対戦した別の対戦者も同様の症状を訴えていたのです。

試合前に何かを飲まされたのではないか。どうやら波香はこれを仕組んだ「誰か」を探していたようです。異物が仕込まれたドリンク一方,恭一郎は波香の亡くなった事件について考え込んでいました。

お茶を飲むというカードを引くことは誰にでも可能性があったわけで,これを波香に必ず引かせることは不可能ではないかと考えます。

ここで恭一郎は父親に相談します。誰か一人だけに毒を盛る方法があるのかと。父親からヒントを得た恭一郎は推理します。

あっ,ここで加賀の父親についてですが,元刑事です。加賀恭一郎シリーズの随所で登場します。

どうやら恭一郎はぼんやりながらも,事件の真相と真犯人に気づいたようです。

祥子の事件,波香の殺人,八百長疑惑,これらがどうつながるのか。

真相に辿り着く加賀

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恭一郎は,藤堂と同じ研究室,つまり金属工学の寺塚に「ピエロの人形」を作ってもらいます。ここには恭一郎の意図がありました。ピエロの人形ピエロの人間を作っている金属にこそ意味があったのです。クリスマスパーティーを開くことになり,そこにその人形を置きます。

この人形に反応した人間がいました。藤堂です。彼はパーティー中に外出します。

そして恭一郎は祥子のアパートに向かうのです。そこに人影が。。。。

藤堂でした。恭一郎は推理していたのです。祥子の家の鍵には「形状記憶合金」が付けてあると。温度によって鍵の開け閉めができるようにです。

形状記憶クレセント錠祥子の亡くなった理由,それは自殺でした。彼女は旅行中に,他の男性に性病をうつされていたその負い目からか,藤堂への申し訳なさからから自殺していたのでした。

それを見た藤堂が外に出た瞬間に,波香に見つかっていたのです。

そして波香の八百長疑惑,これは若生がからんでました。彼が就職を決めるために,波香の対戦相手の亮子に頼まれ,薬を盛ったのです。

そして試合に負け,その事実を知った波香は藤堂を脅し,若生に毒を盛ることを提案。

しかし,逆に波香は利用されて,殺害されてしまいました。

それがあの「雪月花之式」での藤堂の殺害の真相であり,動機でした。

茶道裏千家

加賀恭一郎の原点とも言うべき本作品。確かに加賀の推理にまだ粗削りな部分はあるかもしれませんが,そこはまだ刑事ではないのでしょうがないとして。。。

それにしても,事件に興味を持ち,そして真実を知るために独自の調査をしながら真相までたどり着いたその行動力は,まさに「刑事」のものだったと思います。

加賀が「卒業」を迎える前に起こってしまったこの事件が,刑事になるきっかけを作ったのは間違いなさそうです。

でも,一度は教師を目指しているのはなぜか疑問が残りますが,本作品以降に続く作品を楽しむことができるのも,この「卒業」があるからではないでしょうか。

この作品で考えさせられたこと

● 加賀恭一郎の大学時代を知ることができた

● 大学時代の出来事が加賀恭一郎という「刑事」を生み出した

● 加賀恭一郎シリーズの「原点」がここにあることを再確認できた

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