横山秀夫さんの作品で,かなり好きな作品です。
事件発生後,警察が動き,裁判での検察官,弁護士,裁判官や刑務官と,事件に関わる全ての職種が出てくるのもこの作品の特徴です。
この「半落ちは」直木三十五賞候補になったものの,審査委員からの致命的欠陥を指摘され,受賞になりませんでした。
その理由を書くとネタバレになってしまうので書きませんが。。。
とにかく,いずれにしてもいい作品なので多くの方に読んでいただきたいです。
目次
1. こんな方にオススメ
2. 登場人物
3. 本作品 3つのポイント
3.1 嘱託殺人発生
3.2 違和感のある流れ?
3.3 空白の二日間の真実
4. この作品で学べたこと
● なぜこの作品が完落ちではなく「半落ち」なのかを知りたい
● 元刑事,犯行後の空白の二日間の理由を知りたい
● 警察・検察官・弁護士・裁判官・刑務官と,元刑事とのやりとりを知りたい
「妻を殺しました」。現職警察官・梶聡一郎が、アルツハイマーを患う妻を殺害し自首してきた。動機も経過も素直に明かす梶だが、殺害から自首までの2日間の行動だけは頑として語ろうとしない。梶が完全に“落ち”ないのはなぜなのか、その胸に秘めている想いとは――。日本中が震えた、ベストセラー作家の代表作。
-Booksデータベースより-
梶聡一郎・・・元刑事で今回の主人公。アルツハイマーの妻を殺害してしまう
志木和正・・・県警捜査一課強行犯係指導官 警視
佐瀬銛男・・・地方検察庁三席検事
植村学・・・・弁護士。検事時代の佐瀬の同期
藤林圭吾・・・裁判官。梶に懲役4年の判決を言い渡す
古賀誠司・・・刑務官
元刑事である梶という男が,アルツハイマーを患っていた自分の妻を殺害するところから話は始まります。
1⃣ 嘱託殺人発生!
2⃣ 完落ちではなく半落ち
3⃣ 空白の二日間の真実
元刑事である梶の妻がアルツハイマーで、私を殺してと妻に言われて殺害してしまいます。
嘱託殺人を犯したといことで,夫の梶が起訴されます。
犯行があったのは,彼が自首した三日前です。
この話のキーとなるのは、殺害してから自首するまでの空白の2日間、梶は一体どこで何をしていたかということです。何か深い理由がありそう。一体,何なのでしょう。
梶が犯人であることは間違いない。しかし空白の二日間がわからない。
だから「半落ち」なんですね。
元刑事だから逃げようとは思ってなさそうだし,志木警視が追及しても全く答えない。その後も,検察官、新聞記者、そして梶の弁護士も同じ疑問を抱き、その謎を解き明かそうとするが、梶は決して口を割らないんです。
気になるのは,梶の部屋に残していた「人生五十年」という文字。
49歳の梶は,ひょっとすると50歳になったタイミングで自殺するのでは?
しかし,捜査をしていくうちに,どうやら梶は歌舞伎町へ行っていたということがわかります。
一体何をしていたのか。ここが大きなポイントとなります。
警察は元刑事が歌舞伎町へ行ったということを隠そうとします。
確かに心証は悪いですよね。歌舞伎町=風俗の街ですから。
では仮に風俗だとして何の意図があるのか。ん~,これは想像つかない。。。
結局,確証もないまま,裁判官まで登場するが、法廷でもスムーズに裁判は流れ,妥当な「懲役4年の実刑判決」が下るのです。
ここに違和感を感じます。
なぜ弁護士はさらなる減刑を求めようとしないのか。
なぜここにきて,刑事も検察官も弁護士もみんな落としどころは懲役4年であるかのような態度を見せるのか。
本当にこれでいいのかと思いたくなるような流れです。一体何があるのでしょう。
ここから先が本当に深い話になります。
是非,読んでみてください!!
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最後の最後に梶の行動の理由が判明します。
それがわかった瞬間、正直体がぐらつきました。そういうことかと。。。
梶は自分にとって大切な人間に会いに行っていたのです。
梶はかつて臓器提供ドナーを待っていた息子を亡くしていました。
そして別の人間に望みを託そうとしていました。
歌舞伎町で働いていたラーメン屋の青年に会いに行っていたのです。この青年は梶から臓器提供を受けていたのです。
ドナーでいられるのは50歳まで。51歳になるとドナーが取り消されてしまうのです。
だから「人生五十年」だったんですね。
そして、自分もドナーになると心に誓い、提供者が現れるまで生きようとしたと。
だから自殺せずに自首したのです。
(ちなみに,直木賞を受賞できなかった理由は,受刑者がドナーになってはいけないということらしいです)
正直、衝撃を受けました。唸りました。
「梶を死なせてはならない。彼は生きるべきだ!」
きっと刑事も検察官も弁護士も裁判官もみんな同じことを考えたということなのだろうと思います。
● 刑事の捜査,検事の追及,弁護士,裁判官,刑務官など,一連の警察関係者とのやりとりを見ることができた
● 自分が命をかけてまで守りたいと思うのは,自分の子供だけとは限らない
● 空白の二日間で,梶は自分の命よりも大切な「生きがい」を見つけることができた
梶はその青年に救われたのかも知れませんね。
それは梶にとって最大の「生きがい」だったのではないでしょうか。
四年後に青年がと会えることを夢に。