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【十三番目の人格 ISOLA】貴志祐介|ISOLAの正体とは

十三番目の人格

みなさんは,多重人格者を信じますか?

二重人格者というのは小説でもよくあります。

例えば東野圭吾さんの「プラチナデータ」もそうですし,世の中にはきっとそういう方もいるんだろうなって思います。

こんな方にオススメ

● 13番目の人格であるISOLAとは一体何者なのか知りたい

● ISOLAを生み出した原因を知りたい

● 世の中から悪はなくならないのかを考えたい

作品概要

賀茂由香里は、人の強い感情を読みとることができるエンパス。あどけない少女千尋の多重人格障害に胸を痛める。やがて十三番目の人格〈ISOLA〉の出現に、彼女は身も凍る思いがした。
-Booksデータベースより-



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この作品は「貴志祐介」さんのデビュー作で,2000年に「多重人格少女 ISOLA」として映像化されています。

貴志祐介さんの紹介

1959年生まれ 京都大学大学院経済学研究科 卒業

朝日生命に勤務後,執筆を開始 1996年に「十三番目の人格 ISOLA」でデビュー

主な受賞歴

日本ホラー大賞(黒い家)・日本推理作家協会賞(硝子のハンマー)・日本SF大賞(新世界より)・山田風太郎賞(悪の教典)

ミステリー小説というよりは,ホラー小説というイメージ強いですね。

「悪の教典」には特に衝撃を受けました。

主な登場人物

加茂由香里・・今回の主人公。多重人格者の中の「ISOLA」に興味を持つ

野村浩子・・・心理カウンセラー。問題の人物「千尋」のカウンセリングを行う

森谷千尋・・・多重人格者。カウンセリングを受けている

真部和彦・・・人体離脱の研究を行っている

高野弥生・・・真部と共同研究。実験中にアクシデントが。。。

加茂由里香という,人の心を読むことができる女性が,多重人格者である森谷千尋と出会うというところから話は始まります。

この千尋の中には13もの人格があり,この作品の焦点は,その13番目の謎の人格が何者であるのかというところになります。

本作品 3つのポイント

1⃣ 多重人格者へのカウンセリング

2⃣ ISOLAという人格

3⃣ ISOLAの正体

多重人格者へのカウンセリング

舞台は「阪神淡路大震災」が発生した頃の話です。

かつては精神分裂症と言ったりしてましたけど,現在は正式には「解離性同一性障害」というらしいです。

つまり,一つの体の中に分離された複数の人格が共存する病気ということなのでしょうか。

本当にそういう人っているんだろうけど,今まで生きてた中で,実際に会ったことはあるのだろうか。。。多重人格者由里香はこの千尋に対し興味を持ち,千尋の学校にいる臨床心理士である野村浩子に会いに行くことにします。

浩子は何度も千尋のカウンセリングを行っており,長年かけてようやくいくつもの人格を把握できるようになりました。

同席していた由里香は,人の心を読むことができる由香里は,千尋の中にいるいくつかの人格と向き合い,コミュニケーションをとろうとするのです。

しかし由香里は,千尋の中に特に気になる人格がいることに気づくのです。

ISOLAという人格

由香里は一つの人格に不審を抱きます。それが磯良(ISOLA)でした。

isolationという単語から取ったものでしょうか。

確か「分離」という意味があるから,そこから名前を付けたのかもしれないですね。

実はこの磯良という人格が,千尋をいじめていた少女を次々と殺害していくんです。

ISOLA由香里は千尋と話すことで,彼女の中にいる磯良をおびき出そうとしますが,なかなかうまくいかないのです。

逆に,千尋には全く心当たりがない様子。何のことですかと。

由香里は多くの人に聞き込みをし,また千尋と接しながら,磯良自身は果たして千尋の中に存在するのか,ということに疑問を感じるようになります。

実は,この後,重大な事実がわかります。

一番の原因は過去の大きな出来事に遡ります。ISOLAの正体はそこで判明するのです!

ISOLAの正体

※ネタバレを含みますので,見たい方だけクリックしてください!

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由香里は,かつて千尋に接しようとしていた高野弥生という人物と会おうとします。

しかし彼女は大震災で亡くなっていました。

それは共同研究していた真部という男性から聞いたのだけど,由香里はその話にも疑問を感じているようでした。

実は弥生が体外離脱装置に入って「離脱」をするという実験を真部によって受けていました。

ところがその実験最中に大震災が起こってしまったのです。

そのまま自分の体に戻ることができずに,いわゆる「魂」としてさまよっていたのです。

真部は弥生を助けることなく,自分だけ逃げてしまいました。

単に地震がきたから逃げたのか,離脱したままにしてしまって後ろめたさを感じたのか。

復讐の魂つまり,磯良は千尋の十三番目の人格ではなく,弥生の魂だったのです。

磯良,つまり弥生の魂が,自分を置いて逃げてしまった真部に復讐しようとするのです。

自分の肉体が滅びてしまい,魂だけが残った磯良は戻る人体もなく,そのままになってしまったのです。

自分を置き去りにした真部を許せない磯良の気持ちはわかるような気がします。

最後のクライマックス。真部は自分の体を磯良にささげようとします。

喜んだ磯良はその好意を受け止め,真部と弥生は本当の意味で一緒になります。

それは真部のせめてもの罪滅ぼしだったのでしょう。そして屋上から身を投げた。

飛び降りるISOLAというのは,結局は悲劇のヒロインだったのではないかと思います。

そして平穏な日々が訪れました。千尋も落ち着いてきました。

ところが最後の最後にオチが待っていました。

彼女には新たな人格が現れていたのです。その名も「憧子」

憧れるという字だがもう一つの意味が。落ち着かないさま。落ち着かずに「離れる」

ん? 離れる? ひょっとして。。。

凶悪な人格を消すことは難しいのでしょうか。

いや,世の中から悪が決して消えないようになっているというか,悪は自然とできてしまう。

世の中には「悪」の考えに染まっている人が存在します。

人間が私利私欲を持った生き物である限り,決してそれは消えないのではないでしょうか。

そしてその悪は善人にも影響を及ぼしている。

社会は「善」と「悪」でバランスを取っているような気がします。悲しいですが。。。

千尋が育った環境,両親に虐待された経験が,さらに新たな意思が出てしまったのでしょうか。

この作品で考えさせられたこと

● 世の中には多重人格で苦しんでいる人がいるということ

● 本作品のISOLAは,人間社会での被害者のようにも見える

● 人間社会は「本音と建前」「善と悪」というようにバランスを取っているのではないか

一時は平和になったとしても,また悪が出てくる。

これは人間社会の道理なのかもしれません。

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