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【再会】横関大|タイムカプセルの銃を誰が掘り出したのか

再会

横関大先生のデビュー作で,「江戸川乱歩賞」を受賞した作品でもあります。

横関先生というと最近では「ルパンの娘シリーズ」や「K2池袋署刑事課シリーズ」などが有名ですけど,本作品は本格ミステリーと言える作品ではないでしょうか。

僕自身は,本作品を読んだのはだいぶ後になってからで,2012年の2時間ドラマを観たのが最初でした。江口洋介,堤真一,常盤貴子,香川照之の豪華キャスト。

以前は「再会のタイムカプセル」というタイトルだったらしく,確かにタイムカプセルがキーポイントとなる作品です。

23年前,小学校の卒業式の前日に校庭の一角に埋めたタイムカプセル。

23年後に再会を果たした4人の同級生たち。同級生の4人そこで殺人事件が起こるというところから話は始まります。

こんな方にオススメ

● 横関大先生の本格ミステリーを読んでみたい

● 23年前と今回の事件がどのようにつながっているか知りたい

作品概要

小学校卒業の直前、悲しい記憶とともに拳銃をタイムカプセルに封じ込めた幼なじみ四人組。23年後、各々の道を歩んでいた彼らはある殺人事件をきっかけに再会する。わかっていることは一つだけ。四人の中に、拳銃を掘り出した人間がいる。繋がった過去と現在の事件の真相とは。<第56回江戸川乱歩賞受賞作>
-Booksデータベースより-



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主な登場人物

岩本万季子・・美容師。息子が万引きをしてしまい,ある男に脅される

清原圭介・・・万季子の元夫で,元同級生。再婚している。

佐久間直人・・サクマ産業の経営者。万季子とは同級生。

飛奈淳一・・・三ツ葉警察署の刑事。万季子と同級生

佐久間秀之・・直人の腹違いの兄で,スーパーの店長。

南良涼・・・・神奈川県警捜査一課刑事

本作品 3つのポイント

1⃣ タイムカプセルの銃のありか

2⃣ 4人の生い立ちと真犯人

3⃣ 23年前の真相

タイムカプセルの銃のありか

岩本万季子,清原圭介,佐久間直人,飛奈淳一の4人は小学校の卒業式前日に校庭にタイムカプセルを埋めました。それから23年後の話になります。

ある日,万季子はスーパーの店長である佐久間秀之,つまり佐久間直人の兄から連絡を受けます。それは「万季子の息子である正樹がスーパーで万引きをした」ということでした。

万季子は秀之から脅されました。金銭を要求された万季子。

万季子は元夫である清原圭介に相談します。秀之から脅されていると。脅されていることを圭介に連絡する万季子その金銭を圭介に預けた万季子。秀之に渡ったものの,今度は秀之は万季子の体を要求してくるのです。かつての同級生に対して許せない要求。

圭介は金銭で説得しようと,再度佐久間の元を訪れるのです。しかしそこには思ってもいない光景が待っていました。

佐久間が殺害されていたのです。圭介は現場に居合わせれば自分が第一発見者として警察から追及されると思ったのでしょう。その場から逃げ出してしまいます。

そしてその後,警察がやってきました。死因は「射殺」でした。

佐久間の兄が殺害されるしかも新たな事実が判明します。それは凶器に使用された銃が,かつて警官だった圭介の父親である清原和雄が所持していた拳銃だったことです。

23年前,圭介の父親は殉職していました。その時に使っていた拳銃だというのです。

一体,誰がこの拳銃を入手したのか。かなりの疑問ですよね。

実はこの拳銃,23年前にタイムカプセルに入れたものだというのです。

つまり,拳銃がタイムカプセルに入っていることを知る誰かが掘り起こし,その中にあった拳銃を使って佐久間を殺害したということになります。

タイムカプセルに入れた銃それを知っているのはもちろん同級生の4人です。

一体,なぜタイムカプセルに拳銃を入れたのか。誰が掘り起こしたのか。

そして「23年前に何があったのか」がポイントとなります。

4人の生い立ちと真犯人

ここで4人のこれまでの生い立ちを簡単に説明します。

清原圭介岩本万季子はかつては結婚して正樹という子供もいました。圭介と万季子万季子は三ツ葉市に美容室を開店する一方,圭介は渋谷に設計事務所を作ることにします。

一緒に付いてくるくるように言う圭介ですが,万季子は大反対。

結局彼らは離婚することになります。万季子はシングルマザー,圭介は別の女性と結婚していました。

佐久間直人には,腹違いの兄である「秀之」がいました。秀之の母親は外に男を作ってしまい,家を出てしまいます。腹違いの佐久間兄弟残された直人は秀之から金の無心をされていました。そして実質佐久間産業の経営者だった直人は,仕方なく秀之をスーパーの店長に据えるのでした。

飛奈淳一は警察官になっていました。ところが三ツ葉市に異動になります。警察官になった淳一付き合っていた博美という女性は彼についていく決断をし,同棲を始めます。

しかし淳一は、小学6年生の時、銀行強盗を射殺した体験からPTSD(心的外傷後ストレス障害)に罹っていました。

そのせいか,時々酒に溺れて同棲中の博美に暴力を振るっていたのです。

それぞれ辛い過去を抱える4人の同級生。そんな中で起こったのが先に書いた銃による殺人事件です。

そしてある日,直人が秀之殺害の容疑で逮捕されます。拳銃を取って撃ったのは自分だと。
直人には明確な殺意が芽生えた出来事がありました。

高校時代に,万季子を秀之が襲ったことがあったのです。草むらで襲われ横になっている万季子を発見した直人は自分の兄の行為を許せませんでした。

本当に直人がやったのだろうか。何となく誰かをかばっているような気もします。

拘置所に入れられた直人の元に淳一がやってきます。「本当はお前はやってないんだろ」

ここで南良という刑事も登場します。彼はどうやらキレ者のようです。そして4人を執拗に追及します。この中に犯人がいるのではないかと。南良刑事誰が撃ったかというのは話の中盤まで伏せられていますが,後半でようやく犯人の目星がついてきたようです。

そしてとうとう,4人のうちの一人が消息を絶ってしまいました。

残された3人は口車を合わせ,23年前の事件をも隠そうとしますが,刑事の南良により徐々に真相が明らかにされていきます。

ただ,南良は今回の事件の犯人を見つけるよりも,23年前のことに執着しているようでした。

南良のこだわり方,本当に異様でした。この違和感はなんだろう。それには理由がありました。

23年前の真実

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万季子は銃を持って逃亡していました。佐々木に脅され,銃を発砲したのは彼女だったんですね。

万季子に辛い思いをさせたと,自分たちを攻め続ける3人の同級生。

そんな3人に南良が23年前のことを語りだします。23年前,なぜ4人の同級生たちは拳銃をタイムカプセルに入れようとしたのか。

それには理由がありました。ここから23年前に遡ります。

23年前,ある強盗事件が発生していました。銀行から3000万円を奪った「大島」という強盗犯が,一人の主婦を銃で殺害し,森の中に逃亡しました。

犯人が森の中に逃亡当時,外出禁止の指示が出ていた一帯でしたが,万季子,圭介,淳一,直人の4人は外に出てしまいます。

そして,万季子と圭介淳一と直人の二手に分かれて行動していたのです。

そこで淳一と直人の向かっている先で2発の銃声が聞こえました。そしてその後に2発の銃声が鳴ります。

銃声の近くまで進んだ彼らのうち,淳一が近くにいくとそこには見慣れた男性が横たわっていました。警察官だった圭介の父親でした。そして目の前には大島の姿が。。。

慌てて圭介の父親の拳銃を拾い上げ,淳一が犯人に向かって銃を向け,次の瞬間に銃声が鳴り響きます。背中を撃ち抜かれた大島はそこに倒れ込んでしまいました。

撃ってしまった。。。」淳一はここから罪の意識でいっぱいになります。これが淳一がPTSDに罹ってしまった理由でした。淳一が銃を撃ってしまう?父親の遺体を見た圭介は父の銃を持ち帰り,タイムカプセルに入れたというわけです。

これが真相だったんですね。。。と思ってました。しかし真実は違うところにありました。

大島を撃ったのは淳一と思い込んでいましたが,実はそれは勘違いだったのです。

えっ? どういうこと?

南良はもう一度事件を整理していきます。銃声は,

① 大島が撃った1発
② 圭介の父が威嚇射撃した2発
③ 大島が圭介の父を撃った1発
④ 共犯者が大島を撃った1発

つまり,圭介の父親の放った弾は②の2発。そして佐久間殺しに使われた1発を合わせれば合計3発です。

確保された万季子が所持していた銃の残りは3発。しかし,銃の装填数は5発のみ。どう考えても1発多いのです。

これが何を意味するのか。実は23年前の森の中での事件には共犯者がいて,同型の銃をすり替えた人物がいたのでした。

同型の銃をすり替えられる人物。それは悲しくも圭介の父の同僚でした。犯人は,圭介の父の同僚の小杉最後に,南良がこの事件にこだわった理由。それは23年前に撃たれた主婦は南良の母親だったのです。

南良が23年前にこだわっていた理由はここにあったんですね。南良の執念を見ているようでした。

裏切られた圭介の父,そして23年もの間,罪の意識の中で生活してきた淳一。母親を撃たれた南良。

この事件がなければ圭介の父も亡くなることはなかったし,万季子も脅されることはなかったのかもしれません。本当に悲しい話でした。

「確かにこんな話だったなぁ」って思いながら読みました。特に最後の銃弾の合計数の推理には,かなり唸りました。

ドラマで観た記憶はありながらも,ここまで引き込まれたのはこの作品の奥の深さかなと思います。

やはり良い作品は何度読んでも本当に面白いです。

これ,日本推理作家大賞の選考員である東野圭吾先生が絶賛するはずです。

肩の力を抜いた自然体で,今自分に書けるものを一生懸命書いている」と。

社会問題や特殊な職業,専門知識を盛り込んだ方がよいという最近の風潮のせいか,そういう応募作が多い

というコメントからも,本作品は確かにそういう堅苦しい感じが全くないのかなと思います。

この作品で考えさせられたこと

● 過去の強盗事件の真実が,23年後に初めて明らかになったこと

● 南良刑事が執拗に23年前の事件にこだわった理由

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