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【優しい死神の飼い方】知念実希人|死神は人を護れるか

優しい死神の飼い方

本作品を読んだ時に思ったのは,

「そういえばこの間もホスピスが題材の作品を読んだな」

ということです。「ライオンのおやつ」です。以前、このサイトでも紹介しました。

よくあることなんですけど,読んだ本の次にまた似たような類の本を読むことがあります。

もちろんストーリーは違うんですけど,何かに導かれたかのように読んでしまうのは時に不思議に感じます。

この作品では丘の上病院というホスピス専門の病院で,いわくつきの3人の患者が登場します。何かしらの未練を残したまま丘の上病院へ入院しているようです。

そして本ストーリーの醍醐味と言うべき「死神」が登場します。

伊坂幸太郎先生の作品にも「死神の精度」という面白い趣向の作品がありますが,この得体の知れない死神がどういう役割をするのかが注目です。

本作品での死神,なぜか丘の上病院で飼っている「レオ」というゴールデンレトリバーに乗り移っているんですよね。

人間の死期を知り,その人間の奥底に話しかける能力を持つ死神という,面白い趣向の作品なんですけど,これ映像化されていないんですよね。

ん~,映像化にあたって何か問題があるのでしょうか。とにかくハラハラする場面あり,感動の場面ありの良い作品です。

こんな方にオススメ

● 心優しき死神「レオ」の特殊能力とは何かを知りたい

● 悔いなき人生を送りたい方

作品概要

犬の姿を借り、地上のホスピスに左遷……もとい派遣された死神のレオ。戦時中の悲恋。洋館で起きた殺人事件。色彩を失った画家。死に直面する人間を未練から救うため、患者たちの過去の謎を解き明かしていくレオ。しかし、彼の行動は、現在のホスピスに思わぬ危機を引き起こしていた――。天然キャラの死神の奮闘と人間との交流に、心温まるハートフルミステリー。
-Booksデータベースより-



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主な登場人物

レオ・・・・・ゴールデンレトリバー。実は死神が乗り移っている

朝比奈菜穂・・丘の上病院に勤務する看護師

南竜夫・・・・丘の上病院の入院患者。戦時中に出会った女性に未練

金村安司・・・丘の上病院の入院患者。かつての宝石卸

内海直樹・・・丘の上病院の入院患者。かつては画家を志していた

本作品 3つのポイント

1⃣ 死神「レオ」の能力

2⃣ 未練のある患者たち

3⃣ 丘の上病院を守れるか

死神「レオ」の能力

本作品では「死神」が登場します。死神の仕事は「亡くなった人間を無事に死神の『ボス』へ導くこと」です。

しかし,今回の死神は無事に導くことができず,「地縛霊」が増えてしまうという成績不振でこの世に送られるのです。

そしてゴールデンレトリバーに乗り移って何とか取り戻そうとするわけです。もちろん好んで犬に入り込んでいるわけではないんですが,なかなか面白いです。レオ誰かに話しかけようとすると「わんっ!」って声が勝手に出てしまったり,弱気になってしまうと「クゥ~ン」って声が自然と出てしまったり,楽しみながら読めます。

死神(以降はレオ)は下記の能力を持っています。

● 地縛霊(ボスへ導かれなかった霊)の腐臭を嗅ぎ取る能力

● 人の夢に入り込み,夢の中でその人間と話す能力

レオは3人の入院者に腐臭を感じているようでした。3人とも何かの未練のようなものがあるということです。

まずレオがターゲットにしたのは南竜夫です。彼は戦時中にある女性と出会います。名前を葉子と言いました。戦時中の男女葉子には婚約者がいましたが,彼とはどうもうまくいっていないようです。葉子に対して暴力をふるったりしていたようです。

そんな中,南と葉子はお互い惹かれあい,一緒に生活したいという思いが強くなってきました。

ところがこのことを,婚約者は掴んでいたようです。婚約者は南に「余計なことをするな」と脅します。

そしてある日,二人で駆け落ちしようと決心します。

待ち合わせをした南と葉子。しかし葉子は持ってきた袋の中をみて「はっ」とします。袋には飴玉が入っていたようです。そして葉子はすぐに家に戻ってしまいました。

葉子に裏切られたと考えた南。南は何とか生き延びました。しかし,葉子は空襲を受け,防空壕の中で亡くなってしまったのでした。防空壕一体,真相はなんだったのか。真実を知らないまま,南は余命あとわずかとなっていました。

そこでレオの登場です。レオは南の夢の中に入り『あの日』の真実を語りだすのです。

葉子が家に戻ったのは,婚約者のところに戻ったのではありませんでした。

袋の中に入っているはずの「ダイヤ」がなくなっていたのです。婚約者が勘づいて前もって取り出してしまっていたのでした。

つまり,葉子は家に取りに戻っていたのでした。

ダイヤがあれば,換金して二人で十分暮らしていけると思っていた葉子の思いがそこにはあったのでした。

ダイアモンドその真実を知った南は号泣します。裏切られたと卑屈になっていた南は,真実を知りようやく未練がなくなったようでした。

南はレオと目が合うと,微笑むのでした。夢の中と言えども,そこにレオが関係していたことは南も理解しているということでしょうか。

そして,あと二人。腐臭が漂っている入院者がいます。

レオがこの二人にどう関わるのかが見モノです。

未練のある患者たち

2人目の患者である金村安司。彼は一体どんな未練があるのでしょうか。

実は金村は,この病院に大きく関わっていました。というより,病院が建つ前の家に住んでいた家族と関わりがあったようです。

金村はかつて宝石の卸業をしていました。しかしバブルの影響で経営が傾き,とうとう消費者金融に手を出してしまったのです。

宝石商手元にあった宝石を売りながら生活していましたが,徐々に生活が厳しくなってきたところでした。一度手を出してしまったため,執拗に追い回されていたんですね。

ある日,その家の少年と出会います。「この石は値打ちが高いのか」と持ってきた石を鑑定するとそれは「ダイヤ」でした。

しかし金村は「ただの石」と言って少年を帰します。

金村は考えました。「あの本物のダイヤを売れば,生活できる」と。

金村はダイヤを盗むために銃を調達します。

そして犯行当日がやってきました。しかし金村が家に入った途端,恐ろしい光景が。。。。

丘の上の家血生臭い匂いのする家に違和感を感じた金村が見たものは,「一家虐殺」の現場でした。

先に家に忍び込み,一家を殺害したグループがいたのです。

そのグループに金村は気づかれます。大ピンチの金村は,持っていた銃で追手を撃ち,何とか逃げ切ります。

翌日,事件が報道されました。それは一家の殺害と行方不明の子供のことでした。

まさか,自分が乱射した時に『あの子』を撃ってしまったのでは。。。

驚くおじさん金村は罪を抱えたまま,日本から逃亡します。

そして,数十年後,日本へ戻った金村。命幾ばくの状態になり,丘の上病院で余生をすごくことにしたということです。

3人目の人間は内海という画家です。

実はこの内海,先に書いた一家の親子に絵を売ったことがありました。

元々内海には絵の才能はありましたが,そう簡単には絵が売れません。

売れない画家しかし,その絵を買いたいと思っていたのがあの少年です。

絵が売れたことがないわけですから,内海はいくらで売っていいかもわからない。

でも親子が買ってくれることに対して,かすかな満足感を味わっているようでした。

しかしある日から内海の元に,あの親子が現れなくなりました。

報道で知ったのです。もちろんあの一家が殺害された事件のことです。

報道内海は病に罹っており,あの一家がかつて住んでいた丘の上病院に入ることにします。

しかしそこには自分が売ったはずの絵は飾られていませんでした。

廊下に一つだけ飾られていた絵はありましたが,それ以外の多くの絵はありませんでした。

内海は内心いい気持ちがしなかったようです。

あの絵は捨てられたのか

ところがこのことに疑問を持ったレオ。

「ひょっとして,この病院には何かからくりがあるのではないか」

そしてとうとう見つけるのです。地下室の存在を。

地下室そこは恐らくあの子供の部屋だったのでしょう。かつて内海が売った絵であふれていました。

なるほど,あの子はこの隠れ地下室にいたから「行方不明」となっていたんですね。

内海はこれで勇気をもらい,再び絵を描くことにするのでした。

しかし,丘の上病院を買収しようとしている業者がいました。

菜穂の父である院長に何度も交渉しにきますが,院長は頑なに拒んできました。

「患者がいる限りはこの病院を売り渡すわけにはいかない」と。

なんか胡散臭いこの業者。嫌な予感がします。

しかし,とうとう丘の上病院,そしてレオにも試練がやってくるのでした。

丘の上病院を守れるか

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レオは菜穂から腐臭がすることに気づきます。ひょっとして,菜穂の命も。。。

菜穂も難病に罹っていたんですね。菜穂菜穂には名城先生という,思いを寄せている医師がいました。

そんな菜穂と名城がうまく結ばれるようにレオも動きます。そして菜穂が名城に「告白」するチャンスがやってきます。

菜穂は告白できていないことに未練を感じているようでした。レオの後押しもあり,告白に成功するのです。

少しだけ腐臭がなくなったかと思いきや,レオに試練がやってきます。

同業者である死神から

近いうちにこの病院で7,8人もの人間が殺害されるだろう

と打ち明けられます。戸惑うレオ。死神が言うから本当のことなんですよね。

おそらく先に書いたあの「丘の上の病院を買収しようとしている人間」がポイントなのでしょう。買収しようとする男この運命を受け入れるしかないのか。レオは悩みます。そしてレオは決断するのです。丘の上の病院にいる職員や患者たちを救うということを。

それにしても,あの業者はなぜ丘の上病院にこだわるのか。この病院には一体どんな秘密があるのでしょうか。

レオは菜穂に伝えます。近いうちに恐ろしいことが起こることを。そして菜穂は,父でもある院長にこの事実を話すのです。

ここで衝撃的な事実が判明します。実はこの業者,かつて一家を殺害したグループの一味だったのです。

レオたちは病院を守れるのか。ここから丘の上病院と犯人グループの対決となるのです。対決犯人グループの中心人物は近藤という男でした。レオは近藤をあの地下室に閉じ込めてしまおうと考えます。

「ダイヤモンドを出さなければ全員を殺害する」と脅されます。

そうなんです。犯人グループは今回も,かつての事件でも,この建物のどこかに「ダイヤモンド」があると考えて犯行に及んでいたのでした。

レオ vs 近藤

死闘の末,ガソリンを被ってしまった近藤。自分が発砲した銃によってガソリンに引火し,焼け死んでしまったのでした。銃を撃つ闘いには勝ちました。しかし使命に反することをやってしまったレオ。

未来を変えてしまったレオ。自分の処遇を覚悟します。

しかし,レオの上司はレオを処罰しませんでした。その代わり,

「しばらくこの世界で過ごせ」

と言われるのでした。

事件後,病院では「クリスマス会」が行われます。病院職員や菜穂,患者たち,そしてレオ。

屋根裏を覗くとそこには「クリスマスツリー」がありました。

ひょっとして。。。そう,ダイヤモンドはこのクリスマスツリーの飾りとしてカモフラージュされていたのでした。

犯人グループが探していたダイヤモンド。地下室の,しかもツリーの飾りになっているからどれだけ探しても見つからないわけです。クリスマスツリーダイヤモンドは病院の経営に苦しんでいた菜穂の父親に託されました。

そしてこれからの病院存続に役立てることになったのです。

これまで,何冊か死神が登場する作品を読んだことがありました。多くの作家さんが「死」というものをテーマに作品を描かれていることを感じます。

死神というと恐ろしいイメージを想像しますが「こんな死神もいていいのかな」って思いました。死神自分の死を前にした人物には,後悔していることや心にひっかかっているものがあるのだなと思います。

あの時,こうしておけばよかったな」という後悔。

実はこうだったのではないか」という先入観。

真実を知らずに命が終わること,また失敗を恐れずに行動すればよかったという未練。

多くの作品を読んでも考えることがありますが,やはり自分の死に間際に後悔しない人生を送りたいなと思わせられました。

この作品で考えさせられたこと

● 「死神」の設定の面白さ

● 後悔しない人生を送りたいと思わせられました

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