みなさんは「3億円当たったらどうしよう」と考えたことありますか?
そもそも「お金って何なんだろう?」って考えたりします。
当然,食料や物を買うときに交換する大切なものではありますけど,お金の本質を考えたことはありませんでした。
本作品は「川村元気」さんが2014年に映像化された作品です。
主人公の一男が,タイトルにもあるように「億男」になる話です。
目 次
1. こんな方にオススメ
2. 登場人物
3. 本作品 3つのポイント
3.1 宝くじで3億円当選!
3.2 九十九を追う一男
3.3 お金の本質とは
4. この作品で学べたこと
● もし宝くじが当たった時に,気を付けなければならないことを知りたい
● 3億円を当てた男の親友が,なぜそのお金とともに消えたのかを知りたい
● 「お金とは何なのか」を真剣に考えてみたい
「お金と幸せの答えを教えてあげよう」。宝くじで三億円を当てた図書館司書の一男は、大富豪となった親友・九十九のもとを訪ねる。だがその直後、九十九が三億円と共に失踪。ソクラテス、ドストエフスキー、福沢諭吉、ビル・ゲイツ。数々の偉人たちの言葉をくぐり抜け、一男のお金をめぐる三十日間の冒険が始まる。
-Booksデータベースより-
一男・・・・主人公。街のくじ引きで三億円を当てる
九十九・・・一男の同級生で親友。起業し富を得る
万佐子・・・一男の妻。一男とは別居中
まどか・・・一男の娘。万佐子ととも住んでいる
十和子・・・九十九の企業の元社員。九十九と付き合っていた
百瀬・・・・九十九の企業の元社員。競馬に明け暮れる
千住・・・・九十九の企業の元社員。詐欺まがいの仕事をする
1⃣ 宝くじで3億円当選!
2⃣ 九十九を追う一男
3⃣ お金の本質とは
主人公の一男は,娘のまどかと商店街でくじを引き,宝くじ10枚を当てました。
「こんなもんしか当たらんかった」と,まどかに謝りつつも,後日そのうちの1枚が当選していることがわかります。その額なんと3億円!そんな大金を持ったことないからわからないですけど,当たってしまって人生が変わってしまったってよく聞きますよね。それも悪い方向に。
この作品中でも,「宝くじの当選した人々の悲惨な人生」が書いてあります。
修羅場,バレる,家庭崩壊,失業,詐欺,失踪,死亡などのネガティブキーワードが並んでいる情報を見ながら不安になる一男。
一男はチャップリンの言葉を思い出します。
「人生に必要なもの。それは勇気と想像力とほんの少しのお金さ」
一男はその言葉を教えてくれた学生時代の親友,九十九(つくも)を訪ねるのです。
彼は自分で企業を立ち上げ,すでの億万長者になっていて,六本木に住んでいるという生活を送っていました。一男はそんな大金を持ったことないから,それを持ったことのある人間に話を聞きたかったんでしょうね。
一男は九十九の言葉に刺激されます。
「自分が特別と思うな。世の中には年間500人もの当選者がいる。いつ死ぬかわからないのに,口座にそのお金を眠らせて見ないまま終わるより,実際におろして見てた方がいいだろ」と。
銀行員には「それはやめた方がいい」と止められますが,一男は九十九の言った通りにするのです。
しかし,ここで事件が起こります。九十九が3億円とともに消えてしまったのです。
一男は九十九を探します。
まず会ったのが十和子という女性。彼女はかつて九十九の会社に在籍しており,九十九とも付き合ってました。企業の売却の話が持ち上がり,その後九十九とは疎遠になります。そして別の男性と結婚するのです。
売却益の10億を部屋の壁紙に隠しており,毎日そこに囲まれている生活に満足しているようです。
十和子は夫もそれには気づいてないと思い込んでましたが,実は夫は気づいていました。知らないふりしていたんですね。
このお金と秘密自体が,十和子と夫にとっての幸せのバランスなのかなって思いました。
十和子は売却した時の残りの二人の男性「百瀬」と「千住」の話をします。
一男は彼らを探す旅にでるのです。
百瀬は競馬場にいました。九十九の行方が気になる一男ですが,百瀬に強引に100万円の馬券を買わされ,「俺の言う通りに買え」と言われてその通りにするのです。
最初は当たって一億になりましたが,次のレースでは賭けていた馬が最後の最後で落馬という不運で全部失ってしまいます。
でも,百瀬はなぜか「実際には賭けてなかった」と言うのです。
つまり,そのお金は一男の頭の中だけで行き来していたものだったんですね。
最後に千住に会いに行きます。彼は宗教団体の教祖のような人間でした。
「ミリオネア・ニューワールド」というセミナーを開催し,一人2万円で多くの人々を参加させてました。そこで行われていたのは詐欺のような話です。「あなた方はお金があったら何をしますか。勉強していい大学に入れば安定した収入が得られるという時代は終わっています。無知は悪魔であり,お金の正体を知ってこそ幸せになれる」というようなことを千住は言っていました。
ん~,僕だったら行かないですね。かなり胡散臭いですもん。
脱税目的で始めた宗教団体で,お金を知る教祖のように振舞い,いつの間にか信者が増えていきました。それが彼の生きがいになっているということ。
ただ千住は売却した10億は使わずに架空の口座に入れてました。
それは贖罪だというのです。
売却した三人は,ある意味九十九を裏切ったわけです。
九十九はこの3人のことをどう思っているのだろう。
九十九が自分の企業に十和子,百瀬,千住の3人を採用するときの「ある言葉」を伝えてました。
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九十九は十和子,百瀬,千住の三人を採用するときに,こんな言葉を条件に出しています。
「信じることができる人を求む。僕が信じることができる人。僕のことを信じてくれる人」
それが九十九の採用条件でした。その後は事業がどんどん発展し,大きな利益を生むようになります。
しかし,徐々にほころびが出てくるのですね。ある企業から「買収」の話が持ち上がるのです。「存続か,売却か?」
九十九は当然,売るつもりはなかったでしょう。やはり事業は順調だし,自分が作った会社で思い入れがあるだろうし。
しかし他の三人は違いました。徐々に欲が出てきたのでしょうね。値を吊り上げられ,今売却しないと値が下がってしまう。
3人は九十九が大切にしていた採用条件を忘れ,結果的には売却して九十九を裏切ってしまったんですね。
その時の九十九の絶望感は想像以上だったと思います。
九十九は3人を試したのかもしれませんね。「信用する・信じる」ということを思い出してくれるように。
一男はここで気づかされたのだと思います。
お金さえあれば幸せになれる。今は別居しているけど,お金があればまた元に戻ることができると信じ切っていたこと。
でも結局は戻れませんでした。一男はお金より大事なものを完全に見失っていたんですね。
九十九はそれを一男に教えたくて,そして一男を試すために「失踪」したのだと思います。
「一男よ,お前は本当に俺を信用することができるのか」
十和子,百瀬,千住と会ったことで,一男は間違いなく九十九を信用していたのだと思います。今回は,「お金とは一体何なのか」「お金より大切なものって何なのか」を考えさせられました。
2000年に「やまとなでしこ」というドラマがありました。
脚本家である中園ミホさんの作品で,「ハケンの品格」や最近では「西郷どん」でも有名ですね。
あの時の主人公である神野桜子の「貧乏なんて大っ嫌い。お金がすべて」というセリフを思い出します。
最後には「お金には代えられないものがある」ということに気づいていくというストーリーでしたけど,それは中園ミホさんが未婚のシングルマザーの境地から生まれたものだと言っています。
あの時は「人との信頼関係」というよりは,「人を愛する強い思い,思いやりを持つことがお金より重要」というふうに僕自身はとらえました。
でも,結局行きつくところは同じことなのかなとも思いました。
自分がどうしたいかという「欲」も大事なんだと思います。
その「欲」を実現しようとするために働いて必要最小限の収入を得ること。
そのためにはお金の本質を知らなければならない。
「人生に必要なもの。それは勇気と想像力とほんの少しのお金さ」
チャップリンのこの言葉の真の意味を教えてくれる作品でした。
● 大金を手に入れたからといって,幸せになれるとは限らないこと
● 「お金」の本質のヒントを知ることの難しさ
● 親友とは,相手のことを信頼・信用できる人のことを言うのではないか