下町ロケットシリーズの第2弾です。
みなさんは「人工心臓」の存在をご存じでしょうか。
よく,ペースメーカーの話は聞いたことありますよね。
僕は不整脈が出ることが時々ありますが,病院で検査をしたら「あなたのは大したことない不整脈」と言われて治療はしなかったのを思い出しました。
しかし,不整脈にも種類があって,放っておくと危険を伴うものもあるわけです。
その不整脈を監視して,正常な状態に調整するのがペースメーカーです。
では,人工心臓とは何なのでしょうか?
心臓の役割はもちろん心臓のポンプのような力で全身に酸素を含んだ血液を送り,全身からの血液を受け,再度送り出すということは小学生で学びましたよね。
それを人工的な力で制御しようとするものが人工心臓です。
専門家ではないので詳しい原理はわかりませんが,すごい技術なのは想像つきます。
今回の話は,佃製作所が人工心臓の一部の人工弁(バルブ)を製造するという話になっています。
目次
1. こんな方におすすめ
2. 登場人物
3. 本作品 3つのポイント
3.1 ガウディ計画とは
3.2 佃製作所 vs サヤマ製作所
3.3 人工心臓開発の課題
4. この作品で学べたこと
● ガウディ計画とは何かを知りたい
● 本作品で佃製作所が果たすべき役割を知りたい
● 人工心臓がなぜ必要なのかについて学びたい
ロケットエンジンのバルブシステムの開発により、倒産の危機を切り抜けてから数年――。大田区の町工場・佃製作所は、またしてもピンチに陥っていた。量産を約束したはずの取引は試作品段階で打ち切られ、ロケットエンジンの開発では、NASA出身の社長が率いるライバル企業とのコンペの話が持ち上がる。そんな時、社長・佃航平の元にかつての部下から、ある医療機器の開発依頼が持ち込まれた。「ガウディ」と呼ばれるその医療機器が完成すれば、多くの心臓病患者を救うことができるという。しかし、実用化まで長い時間と多大なコストを要する医療機器の開発は、中小企業である佃製作所にとってあまりにもリスクが大きい。苦悩の末に佃が出した決断は・・・・・・。
-Booksデータベースより-
佃 航平・・・主人公。佃製作所社長
立花洋介・・・佃製作所社員。ガウディ計画のリーダー
中里 淳・・・佃製作所社員。ライバル会社に引き抜かれる
財前道生・・・帝国重工宇宙航空部 開発担当部長
石坂宗典・・・帝国重工宇宙航空部 調達担当部長
一村隼人・・・北陸医科大学教授。貴船の元部下
貴船恒広・・・アジア医科大学心臓血管外科部長
1⃣ ガウディ計画とは
2⃣ 佃製作所 vs サヤマ製作所
3⃣ 人工心臓開発の課題
話は,人工心臓である「コアハート」開発のための人工弁の部分の製造を佃製作所が日本クラインという企業から依頼を受けるところから始まります。
前作の「下町ロケット」のバルブ製造のノウハウを生かし,人工心臓の一部である小児用の工弁を作るという「ガウディ計画」に参入しようとするのです。人間の生命にも直結する人工心臓のバルブ製造という,リスクの高いチャレンジをしようとする佃航平の精神にはいつも驚かされますね。
この計画の佃製作所の開発リーダーに社員の立花が指名されます。
ところで,「コアハート」のアイデアを出したのはアジア医科大学の一村教授だったんですけど,貴船教授がこのアイデアを横取りしたらしいんです。
今回の人工バルブについても一村教授の研究を貴船教授が乗っ取ろうとするんです。
失敗を責任を一村教授に押し付けたり,やっぱどこにも私利私欲の人っているんですね。
同時に佃製作所は,帝国重工のロケット開発にも参入していました。
これは前作でもあったように,佃製作所の重要な技術である「バルブ」がロケットエンジンに採用されたという話ですね。
佃製作所にとって,この大プロジェクトに関わるということは,大企業からの多額の資金の調達にもなるわけですから,必死になるわけです。
ただ,今回は「サヤマ製作所」というライバルも参入していて,二社での対決になります。
帝国重工において,このサヤマ製作所の担当は石坂,佃製作所の担当は財前で,この二人の闘いでもありました。
実はロケットエンジンの計画だけでなく,ガウディ計画には佃製作所だけでなく,サヤマ製作所も関わっていたのです。
佃製作所・一村教授 vs サヤマ製作所・貴船教授という構図となるわけです。まさに二社のガチンコ勝負です。
ガウディ計画は,日本クラインから受注したサヤマ製作所が思ったように開発が進みませんでした。
そこでサヤマはヘッドハンティング行います。しかも佃製作所の中里が引き抜かれてしまいます。
同時に中里は佃製作所時代の設計書を持ち出していました。
それがサヤマへ渡ってしまうのです。中小企業にとって大切な設計書が渡ってしまい,佃航平はどう出るのか。。。
ここで「PMDA」という国の機関が登場します。
これは「医薬品医療機器総合機構」と呼ばれる機関で,医薬品や医療機器の審査を行うようです。
PMDAにて,佃製作所の人工弁の審査が行われます。
ところが審査員の中に滝川という男がいて,佃製作所の人工弁にあまり良い反応をしないんです。
どうやらこの滝川にも貴船教授が関わっているようなんですね。またか。。。
審査に通るには,大企業も関わってないといけないようなんです。やはり大企業の肩書は大きいようです。
そこで佃は考えるのです。それなら「帝国重工」にも参入してもらおうと。
しかし,どうやって?
佃製作所の先では必ずサヤマ軍団の邪魔が入るという最悪の展開ですが,ここから大逆転が起こります!
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佃製作所は実は「シュレッダー」というものを開発していました。
これはバルブを通して不純物が入って異常な動作をしないように,不純物を破壊してしまうためのものでした。
これがロケットエンジンのバブルに搭載されれば,誤動作が起きにくくなるわけです。
「これをロケットエンジンに使う代わりに,ガウディ計画に名を連ねてほしい!」
という交換条件を使って,佃は帝国重工の財前にお願いするわけです。
なるほど,つまり「WIN-WIN」というわけですね。そんな時,貴船教授のコアハートの臨床実験の際に,患者が亡くなってしまうのです。
これも巻田という准教授に責任をなすりつけようとするんです。貴船恐るべし。。。
しかし,逆に巻田は反撃します。
耐久テストの際に「データが改ざんの可能性がある」という情報を仕入れ,それをジャーナリストの咲間という女性に渡すのです。
これが週刊誌に載ってしまい,サヤマ製作所はさあ大変!
この記事で,サヤマ製作所はロケットエンジンのバブル戦争にもダメージを与えられてしまいました。
つまり,サヤマのバブルは帝国重工に採用されなかったのです。いよいよ佃製作所に流れがやってきたようです!
佃製作所と一村教授は「PMDA」の二度目の審査に臨みます。
あの滝川が審査員として再度佃製作所を貶めようとします。しかし,帝国重工の名前が支援していること知って驚きます。
ここで佃製作所の開発リーダー立花は訴えます。
「人工弁が必要な子供たちがいて,その子供たちを救いたいという強い意欲がある企業であれば,その企業の大小は関係ない!」
これで審査も通過し,開発の許可が下りるのです。
設計書の持ち出しの件でも問題ありませんでした。
佃製作所はこの3年前に特許を取得しており,その技術を使用することを認めなかったのです。
前作でも思いましたけど,中小企業の技術と特許というものは切っても切れないものなのですね。
そして,ガウディ計画は成功したのです!
現在,世界で「心臓移植」が必要な人々は10万人もいると言われています。
しかし,実際に移植されるのは3000人ほどだそうです。約3%です。
特に日本の場合は移植のドナーの問題,移植の条件になる脳死に対する考え方の違いなど,いろいろと問題があります。
経済的に余裕がないとできないという部分もあるでしょうし,仮に移植できたとしてもうまく反応しなかったり,副作用が起こったりと問題も多いのだと思います。
また,移植だけではなく,「心不全」となって心臓が機能しなくなってしまうケースもあるようです。
そこで今回の人工心臓が必要になってくるわけです。
技術も進歩して小型化し,負担の少ない体内型の人工心臓も利用されてきつつあるといいます。
こういう研究に試行錯誤しながら仕事をしておられる方々を尊敬しますし,これからもさらに人工心臓の技術が発展していってほしいですね。
● 人工心臓を開発する人々の「思い」を知ることができた
● 大きなプロジェクトの達成には,多くの企業や人々が一体とならなければならない
● 人工心臓開発の必要性とその課題を学ぶことができた
今回のこの「ガウディ計画」は,人工心臓に関わっている方々,そして人工心臓を必要としている人々のことを深く考えさせられるテーマを与えてくれたかなと思います。
次は「下町ロケット ゴースト」に続きます!
是非,ご一読を!