半沢直樹シリーズの第3弾です。
2013年に「半沢直樹」がドラマで一大ブームを巻き起こしました。
ちょうどあの頃話題になっていたのがこの「ロスジェネの逆襲」でした。
この「ロスジェネ」は,実は2020年にドラマで復活した「半沢直樹2」の前半部分の原作です。
目次
1. こんな方にオススメ
2. 作者の経歴
3. 登場人物
4. 本作品 3つのポイント
4.1 東京セントラル証券の人間模様
4.2 東京スパイラル買収計画
4.3 半沢 vs 東京中央銀行
5. この作品で学べたこと
● 東京セントラル証券へ左遷された半沢が,東京中央銀行へどう立ち向かうかを知りたい
● 企業の買収とはどのように行われるのかを学びたい
● 今後,半沢がどういう道をたどっていくのかを見てみたい
人事が怖くてサラリーマンが務まるか! ドラマ化も果たした「半沢直樹」シリーズ第3弾となる『ロスジェネの逆襲』は、バブル世代の主人公が飛ばされた証券子会社が舞台。 親会社から受けた嫌がらせや人事での圧力は、知恵と勇気で倍返し。ロスジェネ世代の部下とともに、周囲をあっと言わせる秘策に出る。直木賞作家による、企業を舞台にしたエンタテインメント小説の傑作!
-Booksデータベースより-
池井戸潤さんと言えば,ピンチからの大逆転がとても痛快な作品を描かれますよね。
特にこの「半沢直樹シリーズ」「下町ロケットシリーズ」というのは飛び抜けて面白いと思います。
1963年生まれ 慶応大学文学部・法学部卒業
三菱銀行に入行 退職後コンサルタント業,ビジネス書の執筆を経験
1998年「果つる底なき}で作家デビュー
主な受賞歴
江戸川乱歩賞(果つる底なき)・吉川英治文学新人賞(鉄の骨)・直木三十五賞(下町ロケット)
半沢は,前作の「俺たち花のバブル組」の後,東京中央銀行から東京セントラル証券へ左遷されてしまいました。
半沢直樹・・・主人公 東京セントラル証券に出向 営業企画部長
森山雅弘・・・半沢の部下。営業企画部調査役
伊佐山泰二・・東京中央銀行の証券営業部長
平山一正・・・電脳雑伎集団の社長
瀬名洋介・・・IT企業である東京スパイラル社長
「東京セントラル証券」へ出向した半沢がどんな活躍をするのかがとても面白い作品になっていて,池井戸作品の中で僕が一番好きなのがこの「ロスジェネの逆襲」です。
1⃣ 東京セントラル証券の人間模様
2⃣ 東京スパイラル買収計画
3⃣ 半沢 vs 東京中央銀行
半沢は先に書いたように東京セントラル証券へ出向になるんですが,いろいろな人間模様があって,半沢自身も悩んでいる様子があります。
当然,東京中央銀行の傘下企業であるとはいえ,東京セントラル証券に元々入社して働いている,いわゆるプロパー社員もいるわけです。
彼らからすると出向してきた人間に対してあまりいい印象を持たないわけなんですね。
プライドなのでしょうか。。。いろいろと大変そうです。
「この会社のことは俺たちが一番わかってんだ」みたいな。
逆に出向組にも銀行員のプライドがあるわけですから,プロパー組を見下す様子もあります。
さらに「銀行の連中を見返してやる」みたいな復讐心みたいなものもあって厄介ですね。
前作までの半沢も,東京中央銀行内部での人間関係にかなり苦しんでいた時もあったので,また新しいところに入ったばかりというのはとてもやりにくかったでしょう。そして,ロスジェネという言葉がありますが,バブル期の前の世代が「バブル組」,後の世代が「ロスジェネ組」ということです。
この二つの世代の間にも軋轢があって,本当に人間関係って難しいなって思います。
そんな中,半沢は部下であるロスジェネ世代の森山と組んで,電脳雑伎集団という企業案件プロジェクトに参加することになります。
電脳雑伎集団の社長である平山は「東京スパイラル」というIT企業の買収を計画していました。
そのプロジェクトのアドバイザー契約を結んだ東京セントラル証券は,半沢と森山が担当しようとしていたのですが,急にその案件がなくなってしまいました。
なぜ? と思っている半沢に,同期で東京中央銀行の渡真利から話がくるのです。
「お前のやっているプロジェクトは,東京中央銀行がやることになったぞ」と。
そこには伊佐山という東京中央銀行の人間が関わっていました。
伊佐山と平山は組んでいたんですね。
そして電脳雑伎集団は東京スパイラルの株の約3割を買うことにしていました。
ん~,真山仁さんの作品「ハゲタカ」を思い出しました。
確か3割というのは,「会社の意思決定を単独で阻止できる」数字だった思います。
東京スパイラルの社長である瀬名は困ってしまいます。
瀬名は森山と同級生でした。何とか瀬名を助けたい森山。
そして,大洋証券という企業から逆に対抗措置を提案されるのです。
東京スパイラルに新株を発行し,それを「フォックス」という企業に買ってもらうと。
新株発行すれば,3割という割合は減るし,一方的な買収作戦を阻止してフォックスを有利にできるということなのでしょうか。
逆に株価は下がる可能性があるし,メリットばかりではないような気もします。
ところが,フォックスには秘密があったのです!
半沢はさらなる窮地に追い込まれます!
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実はフォックスは,実は東京中央銀行・東京雑伎集団とつながりがあったことが判明するのです。半沢ピンチ!
伊佐山は半沢に問い詰めます。「なぜ東京中央銀行に盾突くのか」
半沢も東京中央銀行側のやり方にモノ申します。
「これは東京セントラル証券の案件だろう。筋を通せ!」
ということは,大洋証券もグルだったんですね。
半沢の周りはみんな的ばかりなのかと疑心暗鬼になりそうです。
フォックスは実は経営が傾いていたんです。
フォックスが東京スパイラルの買収に成功すれば,電脳雑伎集団は東京スパイラルをも買収できるわけですから一石二鳥なわけです。
そして,半沢は対抗策を提案します。それが「フォックスの逆買収」です。やっぱ本当に「ハゲタカ」の世界を見ているみたいだ。。。
電脳雑伎集団にも秘密がありました。実は経営が傾いていて,さらに「粉飾」していたのです。
半沢は東京中央銀行に激高します。
「この状況を東京中央銀行は見抜けなかったのか!」
そして,東京中央銀行はこのプロジェクトを取りやめるわけです。
ある意味,東京中央銀行は半沢に救われたことになります。
半沢を出向へ追いやった中野渡頭取は,とうとう半沢を東京中央銀行へ戻すのです。
半沢は「営業第二部次長」となって東京中央銀行に返り咲くわけです。
現実の世界でも企業の買収,いわゆるM&Aというのは行われています。
M&Aの主な目的
● 商品やサービスの拡張したい
● 企業の規模を大きくしたい
● 新しい事業の獲得
● ライバル企業の取り込み
他にもあるかとは思いますが,企業の経営陣にとっては大きな決断や勇気が必要になるのだと思います。
半沢の言葉が突き刺さります。
「正しいと思うことを、正しいと言えること」
「仕事は自分のためじゃなく、客のためにするもんだ」
もう一度自分自身を見直せ,と言われているような気がしました。
作品を通して実際に企業買収がどのように行われているかが学べましたし,何よりも半沢直樹のすごさをさらに感じることができる作品です。
● どんな企業にもプライドを持った社員がいて,人間関係のしがらみがある
● 本作品を通して,企業買収のことを詳しくイメージすることができた
● 仕事は自分のためではなく,顧客のためにするものである
最後は森山,瀬名に「ロスジェネの逆襲」という言葉を自分の部下に残して去ります。
半沢は東京中央銀行へ戻って,これからどんな活躍をするのかが楽しみですね!
次作は「銀翼のイカロス」です!