2002年に発刊された本作品。レイクサイド,湖というと何となくホラー的なイメージが湧いてくるんですが,そこまで怖い話ではないです。
ただ湖が舞台となると,何か大きな事件が起こるのだろうなと思ってしまうのは僕だけではないでしょう。
複数の家族たちが,ある人物の別荘へやってきます。子供たちの勉強の合宿という形で。お受験のためにこんな合宿をすることって,実際にあるんでしょうね。そんな中で,ある事件が発生し,そこに大人たちが奔走するという話です。
本作品は「レイクサイド マーダーケース」という名前で2005年に映画化されています。役所広司さん,薬師丸ひろ子さん,豊川悦司さん,柄本明さんなど豪華キャストです。
事件の真相,合宿の目的だけでなく,最後の最後の意外な結末に驚かされると思います。
是非,読んでみて欲しい一冊です。
目 次
1. こんな方にオススメ
2. 登場人物
3. 本作品 3つのポイント
3.1 別荘で起こった殺人事件
3.2 遺体隠蔽に走る大人たち
3.3 事件の意外な真相
4. この作品で学べたこと
● 湖畔に集まった家族にどんな事件が起こったかを知りたい
● お受験というテーマからエスカレートするストーリーを知りたい
● 最後の意外な結末を知りたい
お受験合宿のため湖畔に集った4組の家族。夫の愛人が殺され、妻が「私が殺したのよ」と犯行を告白。映画化された傑作ベストセラー
-Booksデータベースより-
並木俊介・・・アートディレクター。家族と別荘での合宿にやってくる
並木美奈子・・俊介の再婚妻。
並木章太・・・俊介の息子だが,血縁関係はない。
藤間・・・藤間病院の院長
高階英理子・・俊介の部下
坂崎洋太郎・・妻の君子と息子の卓也と共に別荘へやってくる
関谷靖子・・・美奈子の大学時代の友人
1⃣ 別荘で起こった殺人事件
2⃣ 遺体隠蔽に走る大人たち
3⃣ 事件の意外な真相
並木俊介は,妻の美菜子,息子の章太とともに,姫神湖岸で行われる合宿に来ていました。合宿というのは,章太がどうしても私立中学へ進みたいということで,何組かの家族が集まる,子供たちのための合同合宿です。
子供たちに勉強を教えるのは津久見という講師です。ただ俊介はこの合宿に乗り気ではありませんでした。子供を過酷な受験勉強の環境に置くことが果たして良いのか,と考えていたからです。
受験という競争の中で子供を育てたいという親もいれば,伸び伸びとやりたいことをやらせたいと思う親もいるわけですね。ただ,俊介以外の家族はこのことを美菜子から聞いているらしく,ちょっとバカにしている感じ。特に関谷靖子は美菜子の大学からの友人で親しいらしく,俊介のことをいろいろと知っているようです。
実は俊介は,章太とは血が繋がっていないのです。俊介は再婚していて,章太は美菜子の連れ子だったというわけ。だから俊介だけは,何かこの合宿では浮いているような感じがします。
そこに高階英里子という,俊介の女性部下がやってきます。どうやら仕事の資料を届けに来たようです。一旦帰ったと思った英里子ですが,別荘の持ち主である藤間と靖子と外で会ったらしく,再び別荘へやってきました。
これには俊介の計画があったようです。実は俊介の妻の美菜子の浮気相手がこの合宿にいるのではないかと疑っていたのです。それを調査させるために英里子はやってきているのです。彼女は近くの「レイクサイドホテル」というホテルに泊まっているようです。
この合宿には,坂崎という夫妻も参加していました。ただ,妻の君子は悪性の腫瘍があるらしく,体調がすぐれない。津久見は,その坂崎夫妻以外を部屋に集め,これからの指導方針について説明します。子供ではなく,親に対して。各科目の重要なポイントや,受験までの学習のコツなど。つまり,受験は家族みんなでの総力戦ということですね。さすがは塾講師です。
ところが津久見が子供たちのいる部屋に戻ろうとした時,自分の靴が一足ないことに気づきます。ここにはいなかった坂崎が持って行ったのか。この件は何か意味があるのだろうか。
そして俊介はトラブルがあったと嘘をつき,英里子のいるホテルへ向かいます。しかし,当の英里子は部屋にいないのです。
慌てて合宿所に戻る俊介。そこではとんでもないことが起こってました。何と、英里子が亡くなっていたのです。さらに驚愕する事実が。。。「あたしが殺したのよ」と美菜子が言い出したから大混乱。
実は英里子は,俊介がいない間に美菜子に「並木(俊介)さんと別れてほしい」と言ったようなのです。さらに「もし別れないのなら,並木の子供を産む」とも言った様子。これに逆上したのか,美菜子は英里子を殺害したのでした。
この状況をどうするのか。ここで藤間がある計画を言い出します。
美菜子さんを殺人犯にしない方法は一つしかない。事件そのものをなかったことにするんです。具体的にいえば,あの死体を処分するんです。我々の手で。
藤間たちは俊介が戻る前にすでに話し合っていたようです。こんな短時間の間に警察には連絡せずに「もみ消す」ということを考えたのでしょうか。バレるのは時間の問題だと言い張る俊介に対し,他の人物たちは何とかもみ消す方向へ誘導しようとします。
彼らの説得に、とうとう俊介は折れました。そして死体を隠す場所は,やはり水の中。つまり姫神湖というわけです。なるほど、まさにレイクサイドで起こった殺人事件です。
俊介たちは,死体隠蔽のために動き出すのでした。
俊介はバーベキューをするために準備していたブルーシートを取り出し,それに死体をくるみます。車に乗せ,姫神湖へ向かいます。そして湖畔で身元隠蔽作業を行います。全て藤間の指示で動きます。俊介はライターを取り出し,まずは「指紋」を焼きます。そして歯形を取られないように,大きな石で英里子の顔面辺りを殴りつけます。
俊介と藤間は,英里子の遺体をボートに乗せ,湖の中央付近を目指します。そして湖へ遺体を落とすのです。その後も用意周到です。次の日の朝,ホテルに宿泊していた英里子のチェックアウトは,変装した美菜子が行います。
それにしても,あまりにも用意周到すぐないか? 藤間はここまで次々と指示が出せるものなのだろうか。いろいろ考えながら,俊介は美菜子に言います。「君たちはまるで何か特別な絆で結ばれているみたいだな」と。ん~,やっぱり何かありそうだな。。。違和感ありすぎです。
俊介は,体調のすぐれない坂崎の妻である君子と話をします。そこで君子は意外なことを言いだします。
もし,美菜子さんのことを愛しておられるのなら,あの人たちとの付き合いはやめさせた方がいいと思う。あの人たちは「異常」です。
君子は何かを知っているようです。俊介の持つ違和感とリンクします。やはり何かある,と。ただ,君子の夫である坂崎洋太郎だけは今回の事件に関与していないような気がします。俊介や美菜子,藤間たちが何らかの隠ぺい工作をしているのを目撃して怪しんでいるようです。
そんな中,俊介は藤間に単刀直入に聞きます。美菜子とはどういう関係なのかを。なぜ美菜子をここまで庇うのか,そして英里子の死体隠蔽に全力を尽くそうとするのか。俊介は確信しているようです。
それに対し,藤間はあっさりと認めます。自分と美菜子が普通の関係ではないことを。藤間は俊介に「一蓮托生」という言葉を浴びせます。なるほど,俊介に死体隠蔽に積極的に関わらせれば,警察などに駆け込むことはないと。
ここまで用意周到というか,したたかというか,さすが藤間という医師は頭がキレる。
しかし,ここで事件について気づいた人物がいました。それは怪しんでいた坂崎洋太郎です。
彼は自分がレイクサイドホテルで俊介や美菜子たちを見たこと,そして英里子が殺害されて,その犯人は美菜子であるということまで知っています。俊介たちは坂崎をなだめようとしますが,坂崎は「共犯者になれと? これは重罪じゃないですか!」とかなり怒っています。
ところが,ここで藤間が別室で坂崎を説得します。するとどいういうわけか,あっさり「協力する」ということを話したようなのです。藤間は坂崎に何を言って説得したのか。ここにも大きな違和感があります。本当にこの集団は,何か大きな秘密を共有しているような気がします。
一体,彼らの大きな秘密とは何なのでしょうか。事件の真犯人とは。そして真相とは。
この先は、実際に作品を読んでほしいと思います。意外な展開が待っています。
事件は私立中学受験のために大人たちが企画した,湖畔での合宿で起こりました。
子供たちにとって、同じ目標へ向かっていくという意味ではこの合宿は心強いものでしょう。
親ができるだけ良い学校へ進んでもらいたいという気持ちはわかります。でも大人が思っているほど,子供たちは無知ではない。親の気持ちは、そのまま子供に伝染する。
それは受験に対してだけでなく,自分の親に対する複雑な気持ちというものが存在するのだな,子を持つ親である僕自身も考えさせられました。
これからこの家族たちはどのように生きていくかわかりませんが,これだけは言えるというのは「親はいつまでも子供を守ろうとする」ということです。
それが善なのか悪なのかは別にして,親子には見えない糸で結ばれているのだなと改めて感じさせられるのです。
● 合宿の意外な目的に驚いた
● 今回の大人たちの行動は,果たして子供の将来のためになるのか
● 最後の数ページの大どんでん返しに驚いた