青島製作所という企業が持つ野球部の存続の危機,青島製作所自体の存続をかけたストーリーです。
以前「ノーサイド・ゲーム」について書きましたが,あの話も企業が所有するチームと企業競争が舞台の話でした。
2014年にドラマ化されています。日曜劇場って,池井戸潤先生の作品アワーみたいなところがありますよね。
日曜9時のドラマと言えば「半沢直樹シリーズ」「下町ロケットシリーズ」「ノーサイド・ゲーム」などを思い浮かべる方も大野ではないでしょうか。
社長の細川を唐沢寿明さんが,ライバルの専務である笹井を江口洋介さんが演じています。
まるで「白い巨塔」のキャストを見ているようです。
元々「ルーズヴェルト・ゲーム」という言葉は,かの第32代アメリカ大統領であるフランクリン・ルーズヴェルトが新聞記事の中で「最も面白い野球のスコアは8対7だ」という発言をしたことがきっかけらしいです。 アメリカにとって野球というのはやはり特別なものなんだろうなと思います。
企業経営にも通じるところがあるのかもしれませんね。
ま,とにかく本作品では,ピンチに陥った青島製作所はこの苦境を乗り越えることができるのか,というのが大きなポイントとなっています。
目 次
1. こんな方にオススメ
2. 登場人物
3. 本作品 3つのポイント
3.1 青島製作所の大ピンチ
3.2 青島製作所の業務統合?
3.3 青島製作所と野球部の行方
4. この作品で学べたこと
● 「ルーズヴェルト・ゲーム」が本作品で何を意味するのかを知りたい
● 企業経営において大切なものを考えてみたい
● 青島製作所がどうなっていくのかの結末を知りたい
大手ライバル企業に攻勢をかけられ、業績不振にあえぐ青島製作所。リストラが始まり、歴史ある野球部の存続を疑問視する声が上がる。かつての名門チームも、今やエース不在で崩壊寸前。廃部にすればコストは浮くが――社長が、選手が、監督が、技術者が、それぞれの人生とプライドをかけて挑む「奇跡の大逆転(ルーズヴェルト・ゲーム)」とは。
-Booksデータベースより-
細川充・・・・主人公。青島製作所社長
笹井小太郎・・青島製作所の専務
沖原和也・・・青島製作所の野球部のエース
坂東昌彦・・・ミツワ電器社長。青島製作所のライバル
城戸志眞・・・キド・エステートの女性社長。青島製作所の株主
1⃣ 青島製作所の大ピンチ
2⃣ 青島製作所の業務統合?
3⃣ 青島製作所と野球部の行方
世間はリーマンショックの影響により,大不況に陥っていました。その中で,イメージセンサーを製造する部品メーカー青島製作所も苦境を味わっていました。
ライバル会社のミツワ電器が攻勢をかかてきており,青島製作所は倒産寸前の窮地に立たされています。
こうなると,負の連鎖は続きます。銀行からの融資の貸し渋りに遭うのです。
青島製作所には野球部がありましたが,廃部に追い込まれそうな予感。
さらにこの状況が続いてしまえば「リストラ」も敢行しなければならない。
そこで青島製作所はいろいろな手を打ちます。徹底的なコストカット,新しい技術の開発します。それを東洋カメラという企業に売り込もうと考えるのです。
ところが,なかなか改善されない。本当にリストラをしなければならないのでしょうか。
社長の青島は心臓のバイパス手術を受けていました。そして細川に言うのです。
「俺は会長に退くから,社長になってくれ」唖然とする細川。しかし細川は覚悟を決めたようです。野球部に関しても,大道という新しい監督を迎えます。
大道はこれまでの野球部のデータを様々な角度から分析し,レギュラーメンバーを一新しようというのです。
次に開催される都市対抗野球大会に出場し,何とか存続させようとするのでした。野球部には大きな問題がありました。絶対的エースがいなかったのです。
しかしある日、青島製作所社内野球大会が行われた時,思わぬ収穫がありました。
製造部チームのメンバーに入っていた沖原という男。
「俺に投げさせてくれませんか」
彼は野球は辞めたつもりでいましたが,製造部チームのピンチでピッチャーとして登場します。
そして剛速球を投げ,観客含めた全員が驚愕します。野球部に勧誘しますが,「俺はもう辞めたんだ」と一点張りなんです。
一体,彼にはどんな過去があったのでしょうか。
監督の大道が沖原の家を訪れます。沖原の家には「レッドソックス」のポスターが貼ってありました。
大リーグは沖原の夢でもあったようです。マネージャーの古賀はある新聞記事を目にします。沖原が中学時代は有名だったことがわかります。
5回途中までのノーヒットピッチング。しかし,その次の試合には中学の名前がありませんでした。
どうやら沖原の中学で暴力事件が発生し,出場停止になっていたようです。
沖原が絡んでいたのか。それでも沖原の力が必要だと力説する大道。何とか沖原を説得し、沖原はとうとう野球部の一員になるのです。
少しずつ野球部の状況も上向きになってきたようです。
沖原が入部しても,野球部に対する評価は芳しくありませんでした。
投手の萬田が肘を痛めてしまいます。体力の限界だったようです。
彼は野球部退部を決意し、会社の部署全員の前でその旨を伝えます。そして続けてこう訴えるのです。
「野球部を応援して下さい」と。
その言葉で,野球部は風向きが変わってきたようです。
一方,青島製作所の社長に就任した細川は、ライバルであるミツワ電器に押され気味でした。
製造で大幅にコストダウンしてきたのです。イメージセンサーのシェアを奪われそうになる青島製作所。
そしてさらにミツワ電器社長である坂東から「経営統合」の話が上がってきます。これまで青島製作所の冠で経営してきたが,立ち回らなくなってきたようです。
専務の笹井は坂東社長から統合できた場合,社長の座を笹井に渡すと言ったようです。
経営統合に前向きな専務の笹井。社長の細川 vs 専務の笹井の対決となります。笹井は,野球部を廃部にして負債を減らそうという方針のようです。
さらに総務部長の三上も,大規模なリストラを推奨し、何とか銀行に融資をしてもらうことを進めていきます。
このままいくと,野球部は本当に廃部になってしまう。
これでは何のために沖原を野球部に入部させたのかわからなくなってしまいます。
経営難に陥っている青島製作所にとって,野球部存続にはメリットあるようには思えませんでした。
青島製作所の経営陣は「経営統合」には反対していましたが,思わぬ展開を迎えます。
ミツワ電器社長の坂東から、大株主の竹原から重要な話がいくのです。
経営統合すれば株価が上がり,大量のキャピタルゲインが入ると言われたのです。
この言葉に竹原は株主総会を開き,そこで「経営統合か否か」を争点にすることを決めます。
株主総会で「経営統合」が決まれば,それは社長や社員が束になっても覆ることはないわけです。
細川社長は何とか阻止したい。そこで細川は青島製作所大株主の一人であるキド・エステート女社長である城戸志眞に会うことにします。
細川は,城戸なら青島製作所を救ってくれる信じていたのでしょうか。
そんな中,とうとう株主総会を迎えることになるのです。
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そもそも,なぜ会長は細川に社長の座を渡したのか。
会長は,あるブレーキ会社が自分たちのブレーキを売り込もうとしていた話をします。
F1チームにも参戦しているマクラーレンが,そのブレーキ会社のブレーキを触っただけで採用を決めてくれました。モノ作りの現場では「わかる人間にはわかるのだ」と。つまり細川にもその素質があったのだと。
そんな中で行われることになった株主総会。
城戸志眞はどちらに入れるのか。まさに「ルーズヴェルト・ゲーム」
城戸の一票が勝敗を左右する状況になります。ところが城戸は,ここで青島製作所専務である笹井に問うのです。
「私が聞きたいのはあんたの意見だよ!」
竹原に社長の座を約束された笹井は全員の前で堂々と言うのです。
「自分は社長の器ではない。会社のことも一番よく知っている。でもそれだけだ」
さらに「楽しく愉快な自由気ままで技術力のある青島製作所を誇りに思っている。ミツワ電器社長になるより青島製作所の一兵卒でありたい」と伝えます。それを聞いた城戸の手は挙がらなかった。つまり,採択は否決となった瞬間でした。
これに業を煮やした竹原。とうとう別の手で青島製作所を追い込もうとします。
ミツワ電器は大幅にコスト削減したイメージセンサーを,顧客である東洋カメラに売り込もうとするのです。
その動きに反応してか,青島製作所も高スペックなイメージセンサーを開発しようとしていました。
その試作品が完成したと細川社長に連絡がきます。細川は唖然とします。他社のイメージセンサーとの画像の精細さの比較。一目瞭然でした。
明らかに今回の方が性能が良いものです。
しかも,そのサイズは従来のものの三分の一になっていました。
高い技術力で,しかもダウンサイジングまで実現したイメージセンサーを細川はある企業に売り込むというのです。
それはジャパニクスという,スマートフォン製造会社でした。今でこそスマホでカメラは当たり前で,しかもどんどん性能が高くなってきました。
撮った画像の解像度も,かつてのディジタルカメラを凌ぐほどになり,今ではスマホで写真を撮る時代になりましたもんね。
「これは大きなビジネスになる」と考えた細川は,トップセールスでジャパニクスへ行くのです。
この辺りが専務の笹井が細川にかなわないと思っていたところだったようです。
細川の発想力の高さ,これが企業が生き残る一つの要素なのかもしれません。
勝っても負けても廃部。野球部の面々は絶対絶命のピンチに陥ります。
まさに崖っぷちに立たされた野球部の選手たち。ここから快進撃が始まります。
もちろん沖原の加入は大きかったと思います。都市対抗野球の予選をどんどん勝ち抜きます。そしてとうとう決勝までたどり着くのです。その相手がミツワ電器でした。
一進一退の状況の中,あとワンアウトでゲームセットというところまできます。
沖原は絶好調でした。そして最後のバッターを打ち取り,青島製作所野球部は「8対7」で勝利したのでした。
廃部が確定していた野球部でしたが、都市対抗野球を青島会長と観戦した城戸の提案がありました。
青島製作所野球部を「キド・エステート野球部」として育てたいと依頼があったのでした。
野球部必死の頑張りが報われた瞬間でした。
リストラは人員削減だけでなく、伝統のある野球部の解散にまで及びました。
企業繁栄の陰りとともに、野球部も衰退しつつありながら,多くの人々の力で続けることができたのです。
どの業界でも当然かも知れないですけど、やはり企業経営というのは難しいと思います。
経営が傾けば,コストカットという苦渋の決断を経営者は実行しなければならないこともあるでしょう。今回の場合は野球部の人員削減,いや野球部そのものの廃部という大ピンチ。
本当に経営者は孤独だなと思いました。
しかし、社員が前向きに自分の仕事に一生懸命取り組み、お互いを思いやり、経営者とともに一枚岩になった時はとても強いと思います。
この話も、経営陣、社員、そして野球部員とそれを応援する者、全員が一丸となりました。そして最後は経営も上向きになり、野球部も強くなった。とても感動しました。
人を信じ、思いやり、どんな挫折にもめげずに頑張ればいいこともあるのだなと改めて考えさせられました。
● 「ルーズヴェルト・ゲーム」という言葉の本当の意味を知ることができた
● ただ安ければよいわけではなく,顧客のことを考えたモノづくりの大切さ
● 先入観にとらわれない,誰も想像できなかった解決策を見つけ出す発想力