マスカレードシリーズの第1弾です。
かつてこの作品を読んだとき「結構面白いのになぜ映像化されてないのだろう」って思った記憶があります。
2011年に出版されていて,映像化されたのが2019年です。
この8年間のブランクは何なのかは最後の方で僕の考察があるので読んでいただければと思います。
それが今や,東野圭吾さんの代名詞の一つにも数えられる作品になっているというのがすごいですね。
目 次
1. こんな方にオススメ
2. 登場人物
3. 本作品 3つのポイント
3.1 フロント新人の新田刑事
3.2 怪しい宿泊客たち
3.3 仮面をかぶっていた真犯人
4. この作品で学べたこと
● 刑事の新田がホテルの業務と事件の捜査をどう進めるのかを知りたい
● ホテルのフロント業務が少しだけ学んでみたい
● 事件を解決するために,新田と山岸がどういう連携をするのか知りたい
都内で起きた不可解な連続殺人事件。次の犯行現場としてあるホテルが浮上、ターゲットも容疑者も不明のまま、警察は潜入捜査を決定する。東野圭吾の最高に華麗な長編ミステリ! 新シリーズ、スタート。
-Booksデータベースより-
新田浩介・・・主人公。捜査一課警部補
山岸尚美・・・ホテルのフロントクラーク
片桐瑶子・・・宿泊客。目の不自由な老婦人
安野絵里子・・宿泊客。館林と何かある?
栗原健治・・・宿泊客。新田にいろいろと頼み事をする
高山佳子・・・宿泊客。近く挙式をする予定
話は,都内で起こっていた連続殺人事件が舞台です。殺人事件はすでに3件起こっていました。
ある数字が並んだ暗号があって,これを解くと,実は緯度と経度を表すものだったんです。
そこが指す場所こそが「ホテル・コルテシア東京」というわけです。
ここに捜査一課の刑事である新田が,ホテルのフロントにいる山岸尚美という女性からレクチャーを受けつつ,真犯人を探すという話です。
1⃣ フロント新人の新田刑事
2⃣ 怪しい宿泊客たち
3⃣ 仮面をかぶっていた真犯人
まず「マスカレード」という言葉は「仮面舞踏会」という意味があります。「ん? ひょっとするとこれは宿泊客の中に誰か犯人がいるのか?」
作品の中でも書かれているんですけど,ホテルにはたくさんのお客様がくるわけで,その中には仮面をかぶっている客もいるのでしょうね。
偽名を使ったり,変装したり,いろいろなお客がやってくるようです。
ホテルって,やっぱりお客様にゆっくりくつろいでもらえるように,またリピーターになってもらうために,いかにホスピタリティを充実させることが大事なのかなと思います。
フロントの優秀な女性である山岸尚美は,ホテルの従業員とともにホテルの支配人に呼ばれ,連続殺人事件の捜査に協力してほしいことを伝えられます。
それで刑事の新田がフロントに入るのです。新田は尚美から「ホテル業務の心得」みたいなのを厳しくレクチャーされます。
尚美の指導を受けタジタジになる新田が読んでいて面白い部分です。
ただ新田の本来の目的はフロントになりすまて犯人を見つけることですから,新田もそうですが,尚美も仮面をかぶっているということになりますね。
新田と尚美が意見をぶつけ合う場面もあります。
しかし,新田のさりげない心遣いなどもあり,尚美は徐々に理解をしていくようになります。
平静を装いながら業務をこなす新田と尚美がとても印象的です。
このホテルに次々と宿泊客が訪れます。
一体誰が犯人なのか,想像しながら読めるのがこの作品の面白いところです。
この作品では,何人かの宿泊客が登場します。それは冒頭の「登場人物」にもざっと書きました。
片桐瑶子という老婦人。目が不自由であるが,なぜか白い手袋をしている。本人曰く,かつてやけどを負ったということです。
視覚障碍者である夫が宿泊できるかどうかを確認したくて,宿泊したらしい。
安野絵里子という女性が宿泊します。そこで自分を訪ねてくる男性を近寄らせないように言ってきます。
ところがその男性客がホテルへ来ると,今度はこの女性が男性に接近します。
この違和感はなんだろうか,という話。意外な事実がありました。
栗原という男性客が,新田のことを知っている様子でした。何か新田にばかり話しかけてくるので何かあるのではないかという雰囲気になります。
確かに栗原は新田を知っていたのです。過去の出来事がポイントになります。
尚美の過去の出来事の空想シーン。ある女性が宿泊していて,別の男が宿泊している部屋を教えてほしいという依頼があった。当然教えるわけにはいかず,尚美は男性に会わせず,またその女性がホテルに宿泊したいと言っても,取り合わなかった。なぜこの話が出てきたのかは後でわかります。
というふうに,いろいろな客が仮面を装っているというなんですね。
ホテルにやってくるお客様のプライベートは秘密にしなければならない。
偽名を使ったり、密会に使用したり、変装していたり、つまり仮面をかぶっているわけです。まさにマスカレード!
新田と尚美は時々価値観の違いでぶつかりつつも、お互いのことを理解できるようになり,ホテルで起こる様々な出来事に対処していくようになります。
普段のホテルの従業員がこんなにも警戒心を持って客と接しているとは思えませんが,規模が大きいホテルになるとそういうこともあるのかもしれませんね。
そして,とうとう事件が動き出すのです。
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この一連の殺人事件,実はX1, X2, X3, X4という4人が関わっていました。
ネットである人物が操っていたんですね。黒幕はX4でした。
実はこのX4がこれまで書いた中に登場していたんです。
近々,コルテシアで挙式が行われれる予定になっていました。この新婦にはストーカーがいました。
前日には,コルクに注射器の穴があいたワインが送られてきました。これもストーカーの仕業なのか。ん? ひょっとしてこのストーカーがX4?
しかし,新田は別のことを考えます。
そもそもX4はなぜこんな計画を立てたのかということです。
犯人が異なる,そして犯行方法も異なる。でも緯度・経度は必ず次の現場を表している。
事件は別の場所でも発生してました。
松岡という男が殺害されているという情報が入ります。そして彼の足から注射の跡が見つかります。
新田は,ひょっとするとこの事件の真犯人はもう一つこのコルテシアで起こそうとしているのではないかという仮説を立てます。
つまり,連続殺人事件に見立て,X1, X2などの事件は実はフェイクで,真犯人は二人のターゲットを狙っているのではないか。その一人が松岡だったということ。
そして重要な手掛かりが発見されます。
実は殺害された松岡は,劇団に所属していました。
ある刑事から送られてきた劇団の公演のポスターを見た新田は「はっ!」とします。そこに写っていたのはあの「老婆」でした。
は~,なるほど,あなたが犯人だったんですか。。。
この老婆,いや本名長倉麻貴は山岸を拉致しますが,間一髪,新田が救いました。
では,なぜ尚美を狙ったか?
それは山岸の「過去の出来事」で書いた通りです。尚美は恨まれていたんですね。
あの時の女性がこの長倉だったわけです。
犯人は過去の復讐のために仮面をかぶっていたんですね。
まさかの展開でした。やはり「マスカレード」です!
この作品が出版されて約8年後に映画化されました。
僕が読んだのは2017年だったんですけど,これは面白いと思ってネットを調べたら,まだ映像化されていなかったというのが意外でした。
これは想像ですが,次作の「マスカレード・イブ」を読めばわかると思うんですけど,きっと「マスカレード・ホテル」が読みたくなるはずです。僕がそうでしたから。
そこで,本作品を映像化してしまおうという話になったのではないのかなと思います。あくまで想像ですが。。。
東野圭吾さんの作品ってすぐに映像化されるイメージだったので,これまでの作品の流れから「マスカレードシリーズ」が見直されたということなのかなって思ってます。
● ホテルにはさまざまな理由で「仮面」を装っている人々がやってくる
● ホテルで働く人々は,まずお客様を第一に考えているということ
● 作者のミスリードに見事にひっかかってしまいました!
フロントの尚美が刑事っぽく,そして刑事の新田がフロントクラークっぽくなっていくところがとてもよかったです。
次は「マスカレード・イブ」ですね!
新田と尚美がまだ出会ってない頃の作品のなので,是非ご一読を!!