マスカレードシリーズの第2弾なんですけど,最初に読んだのは実は「マスカレード・イブ」の方でした。
僕の場合,この作品が面白かったので「マスカレード・ホテル」を読んだというわけです。
でも時系列的にはこの作品の方が前なんですよね。尚美と新田が出会う前の話です。読めばわかると思うんですけど,必ず「マスカレード・ホテル」を読みたくなるはずです!
目 次
1. こんな方にオススメ
2. 本作品 3つのポイント
2.1 尚美・新田のそれぞれの話
2.2 仮面をかぶった人々
2.3 マスカレード・ホテルへ
3. この作品で学べたこと
● 刑事の新田と,ホテルフロントの尚美が出会う前の作品を読んでみたい
● 新田と尚美がどこで繋がっていくのかを知りたい
● 「マスカレード・ホテル」とのつながりを知りたい
ホテル・コルテシア東京のフロントクラーク山岸尚美と、警視庁捜査一課の新田浩介。『マスカレード・ホテル』で二人が出会う前、大学教授殺人事件の真相とは!? 新シリーズ第2弾!!
-Booksデータベースより-
1⃣ 尚美・新田のそれぞれの話
2⃣ 仮面をかぶった人々
3⃣ マスカレード・ホテルへ
尚美と新田が出会う前の話で,4つの短編で構成されている作品です。
特にタイトルにもある「マスカレード・イブ」が面白いです。
舞台はマスカレード・ホテルと同じく「ホテル・コルテシア東京」です。
① それぞれの仮面
尚美は「ホテル・コルテシア東京」に勤務しすでに4年経っていました。
ある日,ホテルに大学時代に付き合っていた宮原隆司がやってきます。
宮原は,元プロ野球選手の大山将弘と一緒でした。なにやら不穏な空気を感じます。
宮原が,ホテルに宿泊している西村美枝子という既婚女性と密会しているようなのですが。。。
② ルーキー登場
新田はある事件の捜査をしていました。
田所昇一という男性がランニングをしているところを刺されて亡くなってしまっていたのです。
妻の美代子は心当たりがなかったのですが,横森という男が容疑者として浮上します。
一体,何が起こっていたのか。
③ 仮面と覆面
ホテル・コルテシア東京に男性5人組が宿泊します。
彼らは「タチバナサクラ」という作家のファンで,ホテルに泊まることを知っていたようです。彼らはどうしても作家に会いたい。
しかしその作家の正体は年配の男性でした。
一体どういう秘密があるのか?
④ マスカレード・イブ
尚美は,「ホテル・コルテシア大阪」がオープンするということで,大阪へ助っ人で行ってました。尚美はそこで「バラの匂いのする女性」と出会います。
東京では岡島という教授が殺害される件が起こってました。
そこには新田が捜査に入っていました。
南原という准教授が容疑者にあがります。
実はこの東京の話と大阪の話がつながっていきます。一体真相は何か?
※ネタバレを含みますので,見たい方だけクリックしてください!
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① それぞれの仮面
実は,美枝子と不倫をしていたのは宮原ではなく,元プロ野球選手の大山だったんです。宮原はその身代わりだったんですね。
なんてわがままな大山となんてお人好しな宮原。
尚美は宮原の部屋で美枝子のピアスを見つけるんですけど,跡を追ってきた夫がいた部屋に落ちていたと言い,フロントクラークとしての心遣いをみせます。
② ルーキー登場
横森は犯行を認めます。しかし新田は裏になにかあるのではないかと疑うのです。
彼は実は美代子に惚れていたんですね。
そしてホワイトデーの当日,昇一を刺してしまったと。
しかも美代子に依頼されて。彼女も昇一から暴力を振るわれていたという動機があり,しかも別の横森以外の男性に好意を寄せていたようです。
彼女はいくつも仮面をかぶっていたんですね。
③ 仮面と覆面
尚美は「タチバナサクラ」の正体が実は年配の男性であることを打ち明けられます。
5人組の一人が,作家が宿泊しているであろう人間と電話で話してしまうんです。
バレてしまったか。。。と思いきや,電話で話した男は納得顔。
確かに電話の相手は女性だったというのです。
これで尚美は不信感を持ちます。まだ裏があると。
実は,本物の玉村薫は少女でした。年配の男性はソウイチといって,彼女の父親でした。
ゴーストライターを想像しましたが,そうではなかったようです。
タチバナサクラは確かに存在したのですね。
④ マスカレード・イブ
事件当日,南原は京都の学会に出席していました。
アリバイが曖昧だったため新田が追及すると,ある人妻とホテルで密会をしていたということが判明します。
そのホテルがコルテシア大阪でした。なるほど,ここで繋がるんですね。
新田は相棒の理沙という女性警官にホテルに聞き込みするように指示されます。
その相手が尚美でした。
南原はチェックアウトの際,ホテルのタオルを持ってきてしまい,その匂いがバラの香りだったのです。その女性は畑山玲子といいました。
ここで,別の殺人事件が浮上します。
伊村由里という女性が殺害されていました。
この女性の自宅を捜索した結果,意外な事実が判明したのです。
玲子の父親からの手紙で「由里は自分の娘で,遺産も由里に渡す」というものでした。
新田は玲子を怪しむのですが,玲子には鉄壁のアリバイがあったのです。
実は,南原がこの由里を殺害し,玲子が岡島を殺害したといういわゆる「交換殺人」だったのです。
こんな恐ろしいことを考えるなんて。。。
動機はお互いあるわけですから,その「交換」が対等だったということなんですね。
しかもこれは玲子の夫の義之が考えたものでした。仮面夫婦ということでしょうか。
ホテルにやってくるお客というのは本当に全員が仮面をかぶっているようで,恐ろしくなりますよね。
刑事の新田と,ホテルフロントの尚美のそれぞれの仕事ぶりだけでなく,何か初々しさみたいなものもあって新鮮でした。
そして「マスカレード・ホテル」へ続いていくわけです。
先に書いたように,本作品では,尚美と新田はまだ出会っていません。
今回,新田はホテルへ行かず,相棒の理沙に聞き込みをさせてたわけです。
もし新田が行っていたらまた違う展開になって「マスカレード・ホテル」のストーリーも微妙に変わっていたかもしれないですね。
最後に,新田が話す言葉が印象的でした。
「そのホテルのフロントの女性に会ってみたいな」
● ホテルには,やはり「仮面」を装っている人々がやってくる
● 本作品が「マスカレード・ホテル」を引き立たせる役目を持っていること
● 私たちも本音と建前,善意と悪意,いろいろな顔をしていて,本作品同様に仮面をかぶって生きているような気がする
マスカレード・イブがあったからこそ,マスカレード・ホテルが映画化されたのかもしれませんね。
次は「マスカレード・ナイト」です!