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【ヒポクラテスの試練】中山七里|肝臓異変の原因とは

ヒポクラテスの試練

ヒポクラテスシリーズの第三弾です。

このシリーズの面白いところは,法医学者である「光崎」が,法医学教室のキャシーや栂野真琴とともに事件の真相を解明するというところです。

法医学教室のメンバー前二作は短編が最終的に一つの大きな秘密につながっているという構成だったんですけど,今回は長編という壮大なストーリーになっています。

ある日,友人から遺体の解剖を依頼されるところから始まります。そして徐々に大きな事件へと発展していくのです。

こんな方にオススメ

● 光崎を中心に描かれている作品を読んでみたい

● 冒頭の肝臓がんの遺体の原因が何かを知りたい

● 人類に影響する壮大な事件の真相を知りたい

作品概要

死因はMRIにも映らない、急激に悪化した肝臓がん?――浦和医大法医学教室の光崎藤次郎教授のもとに、急死した前都議会議員の司法解剖の依頼がきた。埼玉県警の古手川が捜査すると、毒殺の疑いが浮上。だが光崎は、別の死因をつきとめる。法医学の権威の動揺ぶりに、得体の知れない恐怖を感じた助教の栂野真琴たち。さらに、都議会関係者から第二の犠牲者が!
-Booksデータベースより-



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主な登場人物

光崎藤次郎・・法医学教室の教授。数々の司法解剖を行う

栂野真琴・・・法医学教室で光崎の元で研修中

キャシー・・・法医学教室の准教授。アメリカ出身

古手川和也・・埼玉県警捜査一課の刑事

本作品 3つのポイント

1⃣ 肝臓異変による遺体

2⃣ 原因の追究

3⃣ 光崎必死の行動

肝臓異変による遺体

光崎の元に,友人である城戸大附属病院の南条が現れます。

南条は,権藤という男性が肝臓がんによって亡くなったことに疑問を抱いていたようです。

肝臓は沈黙の臓器と言われるのはよく聞きますけど,肝臓がんも静かに進行するものらしいです。

ところが,ある日突然権藤の容体が急変し,死に至ったらしいのです。

去年の定期健診では肝臓がんは見つかっておらず、ここまで短期間に成長するということに疑問を持ったということですね。

その原因を光崎をはじめとする法医学教室の面々が調査していきます。光崎の解剖そして同じ症状で亡くなった二人目の人間が出てきてしまうんです。実はその死因は肝硬変なんですけど,やはり原因は肝臓だったのです。

解剖して調べてみると,肝臓に寄生虫が巣くっていました。その名も「エキノコックス」。
ん? なんか聞いたことあるぞ?

調べてみると,実際に実在する寄生虫です。これが突然変異したというのです。

ウィルスに限らず,寄生虫もやはり変異していくんですね。 エキノコックスこの寄生虫,何が原因で侵入してきたのか,というのが本作品の大きなポイントです。

原因の追究

光崎を中心とした法医学教室の面々は肝臓を食い破り,同時に独特の毒素を排出する寄生虫「エキノコックス」が,どういうルートでこの患者に寄生したのかを突き止めようとします。

二人の遺体に何か共通点がないのかを光崎や真琴,キャシー,刑事の古手川が調査していいきます。そして,とうとうその共通項が見つかるのです。

実は亡くなった二人は,同時期にアメリカに視察に行っていたらしいのです。

ということは,舞台はアメリカ? 問題はアメリカでどこを視察したのか。アメリカ出張しかしどういうわけか,視察の記録だけが存在しないのです。

つまり,視察自体を明るみに出したくない何者かによって隠ぺいされたと推測されます。

徐々に核心に迫っていきます。そしてその真の原因が判明するのです。

やはり原因は一行のアメリカでの行動にありました。

光崎必死の行動

※ネタバレを含みますので,見たい方だけクリックしてください!

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実はこの視察に同行したのは、被害者をのぞけば5人いました。

でも何も話さないんです。5人とも何かを隠している。何だろう?黙秘アメリカに行った時の食事での感染? 訪問先の一つである検死機関での感染?

いろいろな可能性が出てきます。僕自身も最初はこの辺りが怪しいと思っていました。

実際に検死を行えば,寄生虫に感染している患者もいるかもしれないし。そこから広かったのではないかと思うわけです。

しかし違いました。さすが中山七里先生。ここからがどんでん返しでした。

この期間は,あまりの暑さに食材の腐敗を考慮して,きちんと火を通した食事をつくっていたというのです。だから食事による感染はない。ということはどういうこと?

検死機関による感染もなさそうでした。では寄生虫の本丸はどこなのか?

それは,アメリカにあるコリアタウンと呼ばれる場所に問題がありました。

コリアタウンそこで行われていたのは,犬肉を食していたということ。

この肉に寄生虫が巣くっていたのです。

しかもそれを知っていて,キャシーがアメリカにいた頃のかつての同僚が自分の上司を殺害するために「寄生」させたのです。

同僚が追及され,しかし問題はこれで解決ではありません。

日本での寄生虫のパンデミックを防がなければならないということです。

光崎が必死で動きます。パンデミックを防ぐために。その原因を作ったのはひとりの私利私欲にまみれた人間でした。

現在もコロナウィルスが変異を繰り返し,人類を脅かしています。

オミクロン株という新たな変異体が見つかったり,さらに「サル痘ウィルス」というものも国内感染が見つかったとのこと。

パンデミックというのはウィルスだけではなく,細菌や今回のように寄生虫が原因となる可能性があるのだと考えさせられます。

人間と同様,ウィルスも細菌も寄生虫も,やはり生物だから生きていくためにどんどん変異・進化していくものなのですね。変異光崎がこれまで以上に動いたのも,人類への影響を防ぎたいという彼自身の本来の使命を感じてたからではないでしょうか。

それが今後,自然発生であった場合はしょうがないにしても,「人的災害」ではないことを祈りたいと思います。

この作品で考えさせられたこと

● パンデミックとは,ウィルスだけではなく,寄生虫などにも起こる可能性がある

● 光崎自身がその強い危機感を持ち,率先して行動する姿がこれまでの作品と異なる

● 私利私欲による人の行動による結末はやはり良い結果を生まないこと

次は「ヒポクラテスの悔恨」です!

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