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【ハサミ男】殊能将之|ハサミ男の正体に驚く

ハサミ男

「面白いミステリー小説を読んでみたい」とインターネットで探していた頃があったんですが,いろいろなサイトで紹介されているミステリー作品の中に,ほとんどと言っていいほど入っていたのがこの「ハサミ男」です。

タイトルもさることながら,ストーリーも読者を惹きつける内容になっています。

世間を騒がせている「ハサミ男」の犯罪。しかしそこに「模倣犯」が現れます。

プライドが許さない「真のハサミ男」が模倣犯を追うという,面白い作品です。模様犯を真のハサミ男が追う最後の大どんでん返しの展開に「あっ」驚くと思います。

こんな方にオススメ

● 以前から評価の高いミステリ―「ハサミ男」を読んでみたい

● ハサミ男の正体を知りたい

● 最後の大どんでん返しがどんなものか知りたい

作品概要

美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。3番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。「ハサミ男」は調査をはじめる。精緻にして大胆な長編ミステリの傑作!
-Booksデータベースより-




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主な登場人物

わたし・・・・主人公。「ハサミ男」のこと。日高と同一人物?

樽宮由紀子・・今回のハサミ男のターゲット

磯部龍彦・・・目黒署の刑事。ハサミ男の捜査をする

村木晴彦・・・磯部とともに捜査をする

堀之内靖治・・警視庁科学捜査研究所・犯罪心理分析官

本作品 3つのポイント

1⃣ ハサミ男のターゲット

2⃣ 追い詰められるハサミ男

3⃣ ハサミ男の正体とは?

ハサミ男のターゲット

「わたし」こと「ハサミ男」は,すでに2人を殺害していました。

手口はハサミの先を自分で研ぎ,ターゲットを刺すということ。

3人目に選んだのは樽宮由紀子という女性。用意周到に「わたし」は由紀子の調査を始めます。

由紀子が住んでいる場所,家族構成,普段の行動などなど,確実に実行するための準備を整えていきます。

そしてとうとう殺人の準備を開始します。アルバイト先でハサミを購入し,先端をやすりで研いでハサミというよりは,アイスピックのようなものを作り上げるのです。アイスピックのようなハサミ犯行当日,「わたし」は喫茶店で由紀子が現れるのを待ちます。ところが由紀子はなかなか現れませんでした。

「あれ?」と思っている「わたし」。しびれを切らし,今度はマンションで待ち伏せします。それでも現れない由紀子。「どうした?」

犯行を諦めた「わたし」は,ある公園でうずくまっている女性を発見します。そこには遺体がありました。しかもその遺体は由紀子でした。真のハサミ男,死体を発見ハサミ男は大混乱。そしてちょうどバッドタイミングで別の男性が現れます。日高という男でした。近くにいた女性は警察を呼ぶように日高にお願いするのです。

ん~,この日高という男。何やら怪しい。。。ひょっとして「わたし」とは日高のこと?

「わたし」は怪しまれると思ったのか,自分がこしらえた「ハサミ」を投げ捨て,自宅に戻るのでした。

そこへ警察がやってきます。ベンチに座っている女性(知夏)と一緒に居合わせた日高という男。警察はこの日高という男が第一発見者だと考え,事情聴取するのです。日高の事情聴取やっぱりこれって「日高=わたし=ハサミ男では?」ということを想像しながら読み続けることになります。

警察官の磯部は,堀之内という上司の指揮の下,事件を調査します。ハサミ男の正体を掴むために。

真のハサミ男である「わたし」は,由紀子を殺害した偽者のハサミ男を調査することにします。一体,誰が第三の被害者を出したのかを調べるために。

しかし逆に,警察は「日高が怪しい」として調査をはじめることになります。

とうとうハサミ男の素性を捉えたか? ハサミ男,大ピンチ!

追い詰められるハサミ男

殺人現場に投げ捨てたハサミも見つかり,徐々に警察も真犯人に迫っているようです。

ところがその「ハサミ」の存在に言及していない堀之内が作成した調書を見た村木は,堀之内を少し疑っているようでした。堀之内も何か関係があるのか。。。

「わたし」は,亡くなった由紀子のことを調査します。すると,由紀子は訳あって,複数の男性と肉体関係にあったことを知ります。

ジャーナリストになりすまし,事件を調査する「わたし」。

警察も「わたし」を疑っているようです。磯部は由紀子の葬儀で「日高」を目撃していました。

確実に迫っているように思える警察。犯人は自分が殺めた人間の葬儀にも顔を出すということを聞いたことありますけど,それを知る警察は葬儀に潜入したのでしょう。

そしてとうとう警察は「わたし」に目を付け,自宅に警察がやってくるのです。二人の刑事磯部と村木の二人は,「わたし」を誘い出し,喫茶店で話を聞かれることになります。

投げ捨てられていた「もう一つのハサミ」についても追及されます。

その場では「そんなハサミは知らない」で通しましたが,「わたし」は自分が捨てたハサミだから当然知っているわけで,とうとうそれを記者にリークします。これで警察は大混乱。

しかし,このハサミについて,警察は新しい事実を掴みます。

この捨てられていた「もう一つのハサミ」は,第一,第二の殺人で使用されたものと非常によく似ていると。逆に由紀子の殺人の際に使用されたハサミは,先のとがり方が甘いと。

ここでようやく警察は,第三の殺人に「ハサミ男は絡んでいない」と知るのです。

そして事件は最終局面を迎えます。「わたし」の元に一人の男性がやってくるのです。

ハサミ男の正体とは?

※ネタバレを含みますので,見たい方だけクリックしてください!

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「わたし」の元にやってきた男。それは「日高」でした。

えっ? 日高? どういうこと? つまり「わたし≠日高」ということになります。ミスリード,日高が現れる完全にミスリード! ちょっと待て。じゃ,模倣犯が日高?

日高は,実は「わたし」がハサミ男であることを知っていました。それは「もう一つのハサミ」を投げ捨てた瞬間を見ていたからです。

ハサミ男 vs 日高。しかもハサミ男は安永知夏という女性でした。

これが一番の衝撃。ハサミ「男」というタイトルにも騙されていたのです。

乱闘の末,知夏は日高を殺害することに成功します。そして今度はあの「堀之内」が現れます。模倣犯 vs 真ハサミ男偽のハサミ男,つまり模倣犯は堀之内だったのです。

自分の「第三」の殺人を暴露されないために,堀之内は真のハサミ男に近づいたのでした。

彼女を捕まえれば,自分の犯行もうやむやにできると思ったのでしょうか。

堀之内の犯罪の動機は,由紀子から妊娠をほのめかされたからでした。

再度,乱闘の末,知夏は銃を向けられます。真の「ハサミ男」大ピンチ!

と,そこへ磯部登場! 堀之内は観念し,最後は自分で発砲,自殺してしまいました。

最初に読み始めた時,確かに違和感がありました。「わたし」と表現しているこのハサミ男の素性がはっきりしないことです。何かここに大きな秘密があるんじゃないか。

「日高」という男が途中から登場し,犯人と匂わされ,読者にミスリードさせるように仕向けられました。何度もミステリー読んでるのに騙されるとは。。。

わたし」という,男性でも女性でも取れる表現だったというだけでなく,犯行後に「暴行の後がなかった」ということが「ひょっとしたら女性では?」と考えられる伏線だったんだなぁって思いました。

そして「わたし自身」が「私が見ても自分のことが美しい」という表現がありますし。
読者を先入観に陥れる,よく考えられた作品だという印象を持ちました。

連続殺人犯であり,未だに捕まっていない「ハサミ男」の前に模倣犯が現れ,それを本物の「ハサミ男」が追うという,予想外の展開と結末でした。

二転,三転と状況が変化し,完全に読者をミスリードさせる技法に正直圧巻でした。だから何年経っても色あせない,語り継がれるミステリーに数えられるんですね。

これ,映画化されたみたいなんだけど,どうやって演出しているんだろう?

とても興味深いですよね。これを映像化するのはとても難しかったんじゃないかな。

映画の方も是非観てみたいと思います!

この作品で考えさせられたこと

● 本作品のタイトルでミスリードしてしまった

● 真犯人の模倣犯が現れた時の,真犯人の心理

● 二点,三点,そして最後の大どんでん返しの展開が楽しめた

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