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【ストロベリーナイト】誉田哲也|恐ろしいイベントの存在

ストロベリーナイト

ストロベリーナイトシリーズ」の原点。

誉田哲也先生の本作品は以前から読んでみたいと思ってました。

ドラマでも映像化されていますが,誉田先生の作品を初めて読んだのが本作品です。

まず読んで思ったのは,殺人の描写があまりにも衝撃すぎる,というかエグいということです。ドラマではどう描かれているんだろう。。。

実際にこれを映像化する際,監督は描写の倫理的問題に気を付けながら作ったようですね。作家2010年に初めて映像化された本作品。主人公の姫川を竹内結子さん,部下の菊田を西島秀俊さんが演じています。

それを知っていたからか,僕自身も本作品を竹内さん,西島さんなどをイメージして読みました。

WiKiには「誉田先生は姫川を『松嶋菜々子』さんをイメージして作った」とありました。

意外でした。姫川のイメージは竹内さんにピッタリだと思っていたので。

ストーリーにもスピード感あって,そして女性でありながら気を強く持って部下を指揮し,時には弱みを見せることもある姫川の姿に引き込まれる作品だと思います。

こんな方にオススメ

● ストロベリーナイトとは一体何なのかを知りたい

● 女性刑事である姫川の人物像と活躍を知りたい

作品概要

溜め池近くの植え込みから、ビニールシートに包まれた男の惨殺死体が発見された!警視庁捜査一課の警部補・姫川玲子は、これが単独の殺人事件で終わらないことに気づく。捜査で浮上した謎の言葉「ストロベリーナイト」が意味するものは?クセ者揃いの刑事たちとともに悪戦苦闘の末、辿り着いたのは、あまりにも衝撃的な事実だった。
-Booksデータベースより-




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主な登場人物

姫川玲子・・主人公。警視庁捜査一課の警部補

菊田和男・・警視庁捜査一課の巡査部長。姫川の部下

勝俣健作・・警視庁捜査一課の警部補

井岡博満・・警視庁捜査一課の巡査長

日下守・・・警視庁捜査一課の警部補

北見昇・・・警視庁捜査一課の警部補(キャリア組)

本作品 3つのポイント

1⃣ 姫川率いる捜査班

2⃣ ストロベリーナイトとは

3⃣ 意外な真犯人

姫川率いる捜査班

男は何があったかわからないという顔で僕を見下ろした。喉元を押さえた掌から真っ赤な血が飛沫(しぶき)となって散る。その鮮やかな赤が,僕に降り注いだ

冒頭から衝撃のシーン。衝撃の描写で始まります。殺人誉田先生の描写は本当にイメージしやすく,いやイメージし過ぎて脳内に鮮烈に埋め込められる,と言った方がいいかもしれません。

男の変態行為という「虐待」を受けていた,一人の若い人物による殺害シーンです。

多くの場所連続して事件が起こり,それを警察が捜査することになります。

その中心人物が姫川警部補です。彼女は男性社会の紅一点的な存在ですが,洞察力があり,物怖じせずハッキリ物申す人物です。姫川警部補それ以外にも多くの刑事たちが登場します。姫川の部下である菊田巡査部長,姫川のライバルとも言うべき強者である勝俣警部補。

それ以外にも日下警部補,北見というキャリア組など,男性社会のような警察の組織で,一目置かれながらも必死で行動する姫川でした。

地取り」と呼ばれる現場周辺の捜査,「鑑取り」と呼ばれる被害者との人間関係などの調査。

警察小説ではおなじみの言葉ですが,遺体と結びつける何かを見つけるために必死で捜査する警察。

遺体を解剖し,さらに歯形や治療痕から導き出す被害者の特定など,警察の捜査がわかりやすく説明されているのも本作品の特徴でしょう。警察の捜査そしてとうとう事件が。。。ある遺体が水元公園のため池の中で発見されるのです。

姫川は「他にもこの公園に遺体があるかもしれない」とため池の中を探しだします。

さらに遺体が発見されていきます。他にも十数もの遺体がどんどん発見されいてく事態になり,警察も捜査本部を設置するのです。公園の池一体,何が起きているのか。。。

ここで,先ほどの加害者「僕」の視点になります。

加害者である「僕」は両親を殺害し,施設で育てられていました。

事件前,自分の家で両親に虐待され,さらに「排泄物」扱いを受けていた「僕」は,ある日自分の仲間と言うべきグループに出会います。

マコ,クス,エル,モチ,タジ,トキなどと呼ばれている面々と話す「僕」に,マコが

「じゃあ,君は『エフ』ね」若者たちとあだ名をつけます。生まれ変わったような気持ちになる「エフ」でした。

この「エフ」が事件にどのように関わっているのかがポイントになります。

ストロベリーナイトとは

深沢康之という男がある事件に関わっていることであることが出てきます。

かつて深沢はすでに亡くなっていた両親がいるアパートに火を放ち,実刑判決を受けています。

その深沢は「ネグレリア・フォーレリ」という寄生アメーバによって死亡しています。

彼の脳の中身はドロドロに溶けた感じになっていたのです。

ネグレリア・フォーレリとは

ネグレリア・フォーレリは別名「脳食いアメーバ」とも呼ばれる病原体であり、鼻腔から脳に到達して人を死に至らしめる。

儀式的な鼻うがいによって感染して脳死状態となったという報告もあり、身近な病原体ともいえる。

-健栄製薬サイトより-

そのネグレリアフォーレリは,水元公園にしかいないことが判明。

つまり,深沢はその溜池に入水していたと。何らかの方法で被害者を殺害し,水元公園の溜池に沈めたということでしょうか。

そんな深沢も亡くなっているので,「死人に口なし」という状況となっていました。

実は康之には3つ下の妹がいました。名前は深沢由香里といいます。

彼女はこの事件で保護観察対象となり,病院に入院しています。入院少女両親の死,兄の死で精神的におかしい状態になっていたのかもしれません。

現在は一人暮らしをしているとのことでした。

殺人事件はつながりがあるのか。どこで行われているのか。単独犯なのか,複数犯なのか。

深沢も絡んでいたのか。必死で調査をする姫川たち。

ある日,姫川はそのヒントになる情報を得るのです。姫川の部下である大塚から衝撃の事実が。

「田代という男がですね,『ストロベリーナイト』という言葉を調べてみろって言うんですよ」とうとう出てきたタイトルにもなっている言葉。

田代という男は,今回の事件の被害者の一人である滑川から『ストロベリーナイト』のことを教えてもらったらしいんですね。

このストロベリーナイト,専用のサイトがあって,ある質問にYes・Noで答えてうまくいくと,そのサイトが現れるらしいのです。

そして流れてくるのが公開処刑の映像。どうやらストロベリーナイトとは,人を大衆の面前で殺害するショーのようです。公開処刑の動画その存在に気づいた姫川は唖然とします。本当にこんなことが実行されているのだろうかと。

「お前すごいよ。お前は殺しのアートだ。天才的な殺しの芸術家だ」

「僕」いや「エフ」はそう仲間に言われるのです。どうやらこの「エフ」はこのグループの一人になったようです。

そして,ストロベリーナイトの概要が明らかになります。

参加者の中から殺す側と殺される側の人間が選ばれ,それが参加者の目の前でおこなわれるショー公開処刑本当に恐ろしいイベントです。これまで,このような事件が本当に起こったことがあるのだろうかと思うと,恐ろしくなります。

そしてとうとうこの「ショー」の行われていた現場を押さえるのです。押さえたのは姫川にストロベリーナイトの情報を話した大塚でした。

彼は北見というキャリアと共に行動していたはずでしたが,大塚は単独行動で「ROCKMAN」というライブハウスの跡地に踏み込みます。

「こんなところでショーが行われているのか」

大塚がそう思った矢先,何者かが大塚を襲います。あっという間に身動きがとれなくなった大塚。 彼の動きを察知していた人間がいたようです。

果たして,大塚はどうなってしまうのか。

意外な真犯人

※ネタバレを含みますので,見たい方だけクリックしてください!

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「頸動脈をナイフで切り,そこから噴き上げる鮮血が美しい」

そんなことをあっさりやってのけてしまうショー自体が「ストロベリーナイト」でした。

大塚の行方がわからなくなったという報告を受けた姫川は,一緒に捜査していた北見を追及します。

「なぜ,単独行動をさせてしまったのか」指さす姫川姫川に強く言われ,タジタジの北見警部補。東大法学部卒でキャリアだから,いきなり警部補なんですよね。

新人でありながら階級的には姫川と同じですが,班をまとめる人間として姫川は北見を責めます。「重大な職務違反である」と。

そんな時,驚愕の事実が。あの大塚が殺害されてしまったのです。

姫川にとっては大塚は初めての部下だったので,思い入れがあったんですね。

そんなかけがえのない部下を亡くしてしまった姫川の気持ちを察すると心が締め付けられるようです。悲しむ姫川姫川に情報を流した田代という男が,ストロベリーナイトの実際の現場を話し始めます。

あまりにもグロテスクなので,ここでは割愛しますが。。。

田代が言うには「エフ」という人物がいたとのこと。やはりエフはこのショーの中心人物のようです。

大塚が殺害され,ショックを受けていた姫川はようやく大塚が踏み込んだ現場へ向かいます。

同行したのは大塚とコンビを組んでいた北見です。なぜかノリノリで先を進む北見に違和感を感じながらも,姫川はそれに続いていきます。

そして次の瞬間,北見が姫川に銃をつきつけるのです。そうか,犯人は北見だったのか。。。何か怪しいと思ったんだよな。。。銃を突きつける北見一方で,同僚の勝俣は別のルートで捜査をしていました。

病院に入院していた深沢由香里が精神的な病気に罹っていたと先に書きましたが,その病院に時々訪ねてきた若い人物がいたようです。

これが「北見」だったのです。そうなると,姫川があぶない。

姫川は北見の手錠によって,身動きが取れない状況になっています。

そしてある女性が顔を出すのです。「エフ」こと,深沢由香里でした。エフは由香里のことだったんですね。

姫川を精神的に追い詰める北見に,由香里が抵抗します。

最後の最後に北見と由香里は仲間割れを起こしてしまいます。

「『僕』は死しか感じることができなかった。あんたとは違う!」

そう由香里が言った瞬間,動いたのは姫川でした。北見に体当たり。そして由香里も北見の銃を受けながら,姫川を助けようとしたのです。戦う姫川幸い,由香里は命を取り留めることができました。姫川も由香里のお陰で辛うじて北見の攻撃をかわし,菊田,勝俣たちが駆け付けます。

これまで幾度と流れる血を見てきた由香里。姫川からも血が流れているのを見て「同じなの?」と問いかけます。

由香里は姫川と同じように「生きていること」を実感しているようでした。

最近,幼児虐待に関わった小説を読むことが多いような気がします。

この社会的な問題というのは,公になっているのは氷山の一角に過ぎないだけなのだろうか,いろいろと考えさせられました。幼児虐待虐待する親から逃げたい,でも血の繋がった親から愛されたい,その二つの相反する気持ちが多重人格を生み出してしまうことがあるという現実。

その虐待を受けた人間が,結果的に殺人を犯してしまうことになったとしても,それは絶対に罪を償わないといけない。どんな理由があったとしても。

でも感情的な部分に注目すると,ある意味責め切れれない部分もあるのかも知れないと思います。

ある講演会で誰かが言ってたけど、人間というのは「情緒」によって動く。

その動き方は、過去の経験、性格などにより、人それぞれ,十人十色,千差万別です。

姫川が犯人に同情してしまうというのも,過去の経験に裏付けられる部分が大きいのかも知れないと思いました。姫川僕自身が普通に育てられたこと。そしていろいろなことがありながらも何とか生きてこられたこと。苦しい時に励ましてくれた人たちがいたこと。

多くの人に感謝したいと思います。

この作品で考えさせられたこと

● ストロベリーナイトとは,恐るべきショーの名前だった

● 姫川の事件に対する洞察力と,誰かを守ろうとする勇気を知ることができた

● 本作品は,一つの社会問題をテーマに描かれた作品でした

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