僕がこれまで読んだ「伊坂幸太郎」さんの作品の中で三本の指に入るくらい好きな作品です。
2008年本屋大賞・山本周五郎賞のダブル受賞作です。
2009年にも「このミステリーがすごい」も受賞しているので3冠達成です!
ホントにすごい作品ですよね。
伊坂幸太郎さんの作品というのはスピード感があって,読んでいても次を次を読みたくなる作品ばかりです。
目次
1. こんな方にオススメ
2. 登場人物
3. 本作品 3つのポイント
3.1 総理大臣暗殺?
3.2 青柳の必死の逃亡
3.3 All For One
4. この作品で学べたこと
● 常に主人公の視点でストーリーが進む展開の作品を読みたい
● 相手がどう動くかを想像しながら行動する主人公の心理戦を知りたい
● 主人公から勇気をもらいたい
衆人環視の中、首相が爆殺された。そして犯人は俺だと報道されている。なぜだ? 何が起こっているんだ? 俺はやっていない――。首相暗殺の濡れ衣をきせられ、巨大な陰謀に包囲された青年・青柳雅春。暴力も辞さぬ追手集団からの、孤独な必死の逃走。行く手に見え隠れする謎の人物達。運命の鍵を握る古い記憶の断片とビートルズのメロディ。スリル炸裂超弩級エンタテインメント巨編。
-Booksデータベースより-
ゴールデンスランバーとは、かつてビートルズが最後に出したアルバムの中の、4曲メドレーの最初の曲らしいです。
この曲の元になったのは,「ゴールデンスランバー」という子守唄らしく,その歌詞の美しさに魅かれたポール・マッカートニーが曲をつけたみたいですね。
2010年には主人公の青柳を堺雅人さんが演じた映画も上映されました。
青柳雅春・・・今回の主人公。宅配ドライバーを辞めて,失業中
樋口晴子・・・雅春の学生時代の彼女。新聞記者
金田貞義・・・現総理大臣。ヘリの乗っている途中,爆破されて亡くなる
佐々木一太郎・・青柳を犯人と断定し,執拗に追跡する
キルオ・・・・かつて犯罪を犯したが,青柳の手助けをする
保土ヶ谷康志・・病院に入院中だが,青柳の手助けをする
1⃣ 総理大臣暗殺?
2⃣ 青柳の必死の逃亡
3⃣ All For One
青柳という主人公は,宅配ドライバーをやっていたんですけど,それをやめて失業保険をもらいながら生活していました。
そんな青柳に,とんでもない容疑がかけられるのです!
総理大臣の金田が,ヘリで仙台へ凱旋することになりました。
ところが,金田の乗ったヘリは突然爆発し,首相が亡くなるという大事件になってしまいます。青柳が,ラジコンを購入したり,花火工場で働いた経験があったり,いろんな状況証拠が揃っているということで,青柳が容疑者となってしまいます。
マスコミも青柳犯人を報じてしまい,大ピンチ!
しかし,その取材をしていた元カノで記者の晴子は,青柳容疑者説に疑問を持ちます。
元彼がこんな事件を起こすはずがないと。
今回の話は,青柳が警察から逃げ切り,濡れ衣を剥がせるかということがポイントとなります。
青柳はとにかく逃げ回ります。なぜ自分が追いかけられなければならないのか。
仙台市内に張り巡らされたセキュリティポッドが監視してました。
このセキュリティポッドなんですけど,現在の社会ではまだないと思います。
街中では監視カメラが設置されていたりしますけど,このポッドは音声や携帯電話の傍受までできてしまうというのです。
これは国民は納得しないでしょうね。
捜査をする方にはメリットは大きいでしょうけど,住民たちにとってはプライバシー的に問題がありますから。
浜口倫太郎さんの「AI崩壊」を思い出しました。
あの話も主人公がAIによる監視から逃れるものでした。
一体,青柳はどうなってしまうのか。本当にドキドキする展開です!
※ネタバレを含みますので,見たい方だけクリックしてください!
👈クリックするとネタバレ表示
ある大きな組織が青柳に濡れ衣を着せ、事の事態を収めようとします。
一体,この組織はどこだったのかわかりませんでした。
国家? それとも秘密結社みたいなところ?
青柳を味方する人間が徐々に増えていきました。
そして,ある人物のアドバイスで,マスコミのカメラの前で日本国民全員に向かって,自分の無実を訴えようとします。
しかしこれも警察に止められ万事休すか? と思われました。
そこで青柳はいろいろな人と出会います。この出会いが彼を救うのです。
かつて犯罪を犯したキルオと呼ばれる男だったり,入院中の老人だったり,彼の「人間性」を信じ,何とか逃亡させようとするんですね。
そしてかつての恋人だった晴子も。
青柳のかつての友人や、青柳が潔白であることを信じる者の協力で何とか逃げきるのです。ただ青柳自身は自分がが逃げることで周りの人間に影響を与えてしまったり、殺害されていることに心を痛め、ある決心をします。
青柳は「整形」し、生き続けるのです。
青柳は本当に苦しんでいたんですね。でもこれからも生きていきたい。
だから整形をしてまで生き延びようとしたんでしょうね。
最後に晴子の子供に「たいへんよくできました」のスタンプを押されたところでは、感動しました。整形しても,何というかその空気感というものなのか,やっぱり一緒にいたことがある者にとっては何か感じるものがあるんでしょうか。
警察に追われる青柳の視点からの描写が説妙で、警察の手がどこまで伸びているか想像しながら逃走する青柳の心中をよく表していて、本当に臨場感のある作品でした。
ポール・マッカートニーの「もう一度みんなで」という気持ちと、青柳の思いもシンクロしていて、だからこの題名なのかと納得しました。
● 主人公のみの視点なので,周囲の捜査との駆け引き・心理戦など,臨場感がある
● 人間性がある人間には,それを知る人たちがサポートしようとする
● 最後の最後まで諦めず,勇気を持って自分の無実を証明しようとする覚悟
この作品にめぐり逢えたことで勇気をもらいました。
ゴールデンスランバー,最高です!!