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【むかし僕が死んだ家】東野圭吾|白い家で何があったのか

むかし僕が死んだ家

1994年に発刊された作品。本作家の作品の中でもかなり印象に残っている作品です。

作中に登場する「私」という表現が最後まで気になっていました。一体誰なのか。最後まで誰かは正確には明かされないんですよね。

むかし僕が死んだ家の「僕」のことなのではないかとか,この「家」では一体何があったのだろうか,など,いろいろなことを想像しながら読んだ記憶があります。

でも四半世紀を超えてこの「私」の謎が明かされました。

僕自身はまだ「透明な螺旋」を読んでいないからわからないんですけど,どうやらこの作品にそのヒントというか答えが描かれているらしいです。

ということはその人物とは。。。

ま,とにかく本作品の面白さを感じてほしいと思います。

こんな方にオススメ

● 語り手の「私」が誰なのか知りたい

● 沙也加が知りたかった過去とは何かを知りたい

作品概要

「あたしは幼い頃の思い出が全然ないの」。
7年前に別れた恋人・沙也加の記憶を取り戻すため、私は彼女と「幻の家」を訪れた。
それは、めったに人が来ることのない山の中にひっそりと立つ異国調の白い小さな家だった。
そこで二人を待ちうける恐るべき真実とは……。
-Booksデータベースより-



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主な登場人物

・・今回の物語の語り手。素性は明かされない

中野沙也加・・・「私」がかつて付き合っていた女性

御厨佑介・・・松原湖畔の家に住んでいた少年

御厨啓一郎・・祐輔の父

御厨藤子・・・祐輔の母

御厨雅和・・・啓一郎の実の息子

チャーミー・・日記に登場する少女

倉橋民子・・・「おたいさん」と呼ばれた家政婦

本作品 3つのポイント

1⃣ 「私」への依頼

2⃣ 白い家で起こった事件

3⃣ 沙也加が知った真実とは

「私」への依頼

ある日「私」の元に一本の電話がかかってきます。電話その電話は「私」が7年前に別れたかつての恋人である中野沙也加でした。沙也加は既に結婚し,子供もいました。

沙也加は父の形見だといって真鍮(しんちゅう)の鍵と地図を取り出して語り始めます。

父親は生前「釣りしに行ってくる」と言いながら何か隠し事をしているというのを感じていたようです。

この鍵は,かつて沙也加の父が自分に隠して通っていたらしき地図の場所らしいのです。地図長野の松原湖近くに行くのに一緒に行って欲しいと「私」に頼むわけです。

最近になって気づいたの。自分には大事なものが欠けているってことに。その理由を突き詰めていくうちに、幼い日の思い出がないことに行き着いたわけ

沙也加には小学生以前の記憶が完全に抜けているようでした。

つまり,この家に行けばその記憶に結びつくものが見つかるかも知れない。行けばきっと思い出せそうな気がするといって「私」をその気にさせようと必死です。

「私」はとても真面目な正確なようで「既婚者と二人きりで行動するわけにはいかない」と断ろうとするんですけど,頼まれたら断れない性格でもあるようです。二人沙也加に異様な感情を感じたのか,とうとうこの場所に行くことに了承するのです。

二人は地図を頼りに目的の場所を探します。そして見つけ出しました。

そこは人が来ることが滅多になさそうな山の奥深い場所でした。そして異国調の白い家を発見するのです。

山奥夫が仕事で家にいない時、沙也加は娘に暴力を振るってしまうことがあったようです。

見るに見かねた夫は「育児ノイローゼだろうから、落ち着くまでしばらく預かる」と娘を夫の実家へ連れて行かれたようです。

沙也加は自分が母親失格で,何かが欠落した人間なのだと思い込み,かなり悩んでいるようでした。

過去に何かあったのか。それはこの探し出した家の中にヒントがあるのでしょうか。そもそもなぜ沙也加が「私」を「同行者」に選んだのか。

白い家それは元カレである「私」が物理学者として雑誌に書いていた虐待がテーマの記事を読んだらしいのです。

完全に欠落している幼少の記憶の中に,自分が虐待をしてしまう原因があるのではないかと考えるわけです。

それにしても,子供を実家に預けている間に,元カレを連れ出すなんて,よほど「私」のことを信頼しているのかな。

白い家で起こった事件

目的地に到着した2人。鍵を使い,そこには地下に降りる階段がありました。

階段二人は家の中に入り,いろいろなものを見つけ出します。そこには日記や手紙が遺されていました。

どうやらこの家には,かつて御厨啓一郎と妻の藤子,そして幼い息子である祐介が三人で住んでいたようです。

御厨家は法律家で,啓一郎は祐介に自分と同じ道を進ませたいと考えていました。

さらに「おたいさん」という家政婦を雇っていたようです。その時には家政婦の娘も遊びにきていました。住人ひょっとして,この佑介と娘が今調査している二人じゃないよな。。。なんて想像もしたりしながら読み続けます。

沙也加の両親がこの家で使用人として雇われていたこと、啓一郎が病気で亡くなり、

ある日,御厨家にある人物がやってきます。それは父親啓一郎が嫌っていた「あいつ」がチャーミーを連れてやってきたのです。

一緒に住むこととなってしまいます。「あいつ」って,一体誰なのか。。。あいつこの一緒に住み始めたことが事件へと発展していきます。

日記には,祐介が「あいつ」から毎日のように暴力を受けるようになっていたことがわかります。

「私」は日記を読みながらいろいろと推理を働かせます。そして恐ろしい真相に辿り着くのです。

実は,祐介の両親と思っていた啓一郎と藤子は,本当は両親ではないのではないか。

本当は祐介の祖父と祖母なのではないか。啓一郎の亡き後にやって来た「あいつ」が本当の父親では。。。

厳格だった啓一郎は,不出来な一人息子・雅和に愛想をつかしていたようでした。家から追い出したいと考えていたようです。啓一郎啓一郎は,雅和の妻が亡くなると,その頃まだ幼かった祐介を引き取ります。

「今度こそ完璧に育ててみせる」と誓うのです。

雅和の育て方に失敗したと考えた啓一郎は,子育てのやり直しを孫である祐介をしっかり育てることで果たそうとしたようです。

実際に啓一郎は祐介に自分と藤子のことを「おとうさん」「おかあさん」と呼ばせることで,本当の親子関係を築き上げようとしていたようでした。

啓一郎は,祐介に対し「お前は絶対にあんな大人になっちゃダメだ」と言い聞かせ続けたのです。注意ところがここで不運が起こります。肝心の啓一郎が亡くなってしまったのです。

それを知った祐介の本当の父親である雅和は,かつての自分の家に戻ってくるのでした。

「ようやく父親の邪魔が入らずに息子と接することが出来る」

と雅和は考えますが,息子の祐介は違いました。これまで啓一郎に「あいつはダメだ」と言い続けられてきたわけですから。

だから当然祐介は雅和にはまったく懐かず、さらに嫌悪感を持っているのです。

その態度に怒り心頭の雅和は苛立ち、とうとう祐介に暴力をするようになってしまったのです。虐待

沙也加が知った真実とは

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23年前、自分に暴力を与える雅和に対して強い憎悪の気持ちを持った祐介は,あることを考え出します。

家を放火し,失火に見せかけて雅和を葬り去ろうとしたのです。そしてその計画は実行されるのです。

放火しかし、実行後,予想外のことが起こりました。放火した直後,火のまわりが思ったより以上に早かったのです。

祐介がこの火に巻き込まれてしまいました。

家は全焼し,焼け跡からは雅和と祐介,そしてなぜか一人の女の子の遺体が発見される。

その女の子の名は久美といいました。雅和の二番目の妻が産んだ子で,この子が実は「チャーミー」だったんですね。

久美は,雅和が祐介の家に戻ってくる際に一緒に連れてきた娘でした。

何もうまくいかない,そして周囲からも蔑まれていたことに苛立ちを感じていた雅和は,幼い娘である久美に性的虐待をしていたのです。

祐介自身だけではなく、妹にまで酷い仕打ちをしていることを知った祐介は,雅和を殺害する計画を立てたわけです。

しかし後でわかったのは,実際に火事に巻き込まれて死んだのは「家政婦の娘」だった沙也加だったのです。久美と沙也加ってことは,沙也加って何者なの?

啓一郎が亡くなり,そして放火で雅和だけでなく,息子の祐介,そして関係のない沙也加まで亡くした藤子はある行動に出ます。

家政婦の子供を亡くしてしまった負い目を感じてか,藤子は沙也加ではなく「久美を死んだことにした」わけです。

そして記憶喪失となってしまった久美を使用人夫婦に預けます。

こうして二人は入れ替えられ「久美は沙也加として生きる」ことになったのでした。

山の中にあった白い家。これは元々横浜に建っていたものでした。

横浜そして今まさに「私」と沙也加の二人が家の中を調査している長野の山中にあるこの家こそ,横浜の家の内部まで再現した「レプリカ」だったのです。

つまり,多くの人間が亡くなった,まさに「墓」として建てられたような家だったのです。

「私」は推理します。御厨藤子は,いつか沙也加にすべて教えるつもりだったのではないだろうか。

気づかせる装置という意味合いも込め,レプリカの家を建てたのではないか。レプリカの家家の中には日記や真実を暗示させる材料がたくさんありました。

まるで,亡くなった人を弔うかのように。誰かにこの家の意味を知ってもらいたいかのように。

つまり,沙也加は昔,死んでいたってことなんですよね。あの白い家で沙也加は,自分の遺体を見つけることになった。

忌まわしい記憶を「白い家」に置き去りにしていた沙也加。

彼女にとって、果たしてこの記憶を取り戻したことが良いことなのかどうかは分りません。

自分の子供に虐待をしていた沙也加は,結局離婚し,子供は別れた夫が引き取ることとなりました。

最後に彼女は「私」に手紙を送ります。手紙

いろいろとお世話になりました。

私はやはり、私以外の誰でもないのだと信じて、これからも生きていこうと思います

差出人の名は「沙也加」となっていました。

沙也加には確信があったのかなって思います。むかし自分が死んだかもしれない家があるということを。。。

ただそこに横たわっているに違いない、自分自身の死体に出会いたくなくて、気づかないふりをしているだけで。

記憶を甦らせてしまった沙也加。というか,幼い記憶がない理由を知ってしまった沙也加。

その真実を知った時の沙也加の気持ちはどうだったのだろうか。

本当に真実を知って良かったのだろうかと考えさせられます。

親が離婚してしまい,別の家で育てられたとすれば、それまでの自分という人間は一度は死んだことになるのでしょうか。

沙也加は真実を知りましたが,最後は改めて「沙也加」として生きていく覚悟を感じました。

ん~,それにしても今回の「私」はきっとあの人なんだろうな。。。ガリレオとにかく,早く「透明な螺旋」を読みたいと思いました。

この作品で考えさせられたこと

● 過去の真実を知るべきなのかどうか

● 「透明な螺旋」を早く読んでみたい

● 過去を生かすのかどうかは自分次第である

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