加賀恭一郎シリーズ第三弾です。このシリーズは大好きなので,ひたすら読んでいきました。
タイトルにもあるように「容疑者2人のうちどちらが殺人を犯したのか」というのがポイントなんですけど,最後は衝撃です。これまでのミステリーって
① 事件が起こって,真犯人は誰で,動機はなんだったのか。どんなトリックを使ったのか
② 倒叙的,つまり,最初に犯人の犯行シーンがあって,警察がどうやって犯人を追い詰めるか
この2パターンだと思ってました。本作品の衝撃は最後の最後に「犯人はあなただ」で終わるんですね。えっ? なになに犯人は自分で考えてくださいってこと? 正直驚きました。
ただ,最後に「袋とじ」が付いてて,犯人を示すヒントを残しておいてくれるのがさすが東野圭吾先生です。
ちゃっかり読んでしまいました。なるほどって感じです。面白い趣向の作品です。
目 次
1. こんな方にオススメ
2. 登場人物
3. 本作品 3つのポイント
3.1 園子の殺害事件
3.2 復讐の炎に燃える康正
3.3 佃と佳世子のどちらが犯人か
4. この作品で学べたこと
● これまで読んだことのない結末のミステリーを読んでみたい
● 加賀恭一郎シリーズが好きな方
● 本作品の真犯人を自分で推理したい人
殺したのは男か女か。究極の「推理」小説自殺の偽装を施され、妹は殺された。警察官である兄が割り出した容疑者は二人。犯人は妹の親友か、かつての恋人か。純粋推理の頂点を究めた話題沸騰のミステリ!
加賀恭一郎シリーズ
-Booksデータベースより-
加賀恭一郎・・主人公。練馬署の刑事
和泉園子・・・被害者。佳世子に彼氏を奪われる
弓場佳世子・・園子の親友だったが。。。
佃純一・・・・園子の友人。後に佳世子と付き合うようになる
和泉康正・・・園子の兄。園子の死に不審を抱く
1⃣ 園子の殺害事件
2⃣ 復讐の炎に燃える康正
3⃣ 佃と佳世子のどちらが犯人か
ある日,和泉康正という警察官が妹の園子から電話を受けます。「信じていた人間に裏切られた」と。
東京に住んでいた園子に対し,康正は名古屋の自宅に帰ってこいと言いますが帰ってきませんでした。
イヤな予感がする康正。東京の園子のマンションを訪れます。そしてそこには信じられない光景が待っていました。園子が亡くなっていたのです。
園子には,電源コードとタイマーが繋がれ感電死による自殺のようでした。もちろん本当は違います。自殺だと話にならないので。
康正は自分で解決しようと警察には連絡しませんでした。
部屋の中を調べると「J」「カヨコ」という人物の連絡先が残されていました。この「J」と「カヨコ」とは一体誰なのか。「J」は佃純一,「カヨコ」は弓場佳世子だということがわかりました。この二人を捜査しようと考える康正。
佃は,実は園子の彼氏でした。園子は彼氏を佳世子に紹介してしまうんですね。
そしていつの間にか佃は佳世子に惹かれ,隠れて付き合うことになるのです。
二人を追及する康正。お互いがお互いをかばい合っている様子で,なかなか真相を話そうとしないわけです。一気に復讐の炎の火がつく康正。そこに「加賀恭一郎」が登場します。何か不穏な空気を察したのでしょうか。
加賀は復讐しようとする康正を止めますが,怒りの収まらない康正は警察の力を借りずに,やはり自分で解決しようと考えます。
ここから康正が佃と佳代子を罠にかけて呼び出し,真相を聞き出そうとするのです。
康正は二人から真相を聞き出そうとします。
まず佳世子を事件現場におびき寄せます。事件現場にやってきてしまった佳世子は康正の策略に気づきますが,ついに追及されます。
佳世子の言い分はこうです。
佳世子は元々,園子を殺害するつもりでした。しかし,思いとどまったとらしいのです。園子は自殺したのだと主張するのです。園子は殺害されたと確信を持っている康正はこの言い訳を聞いて怒り心頭。彼女に「睡眠薬」を自分で飲まさせ,拉致します。
そして次は佃をおびき寄せます。佳世子同様に佃を追及する康正。ところが彼も佳世子と同じように,殺害するつもりだったが,やはり園子は自殺したのだと言い張ります。
しかし,ゴミ箱の中には睡眠薬の袋が「2つ」ありました。
佳世子と佃の話や状況を鑑みても「これは口裏を合わせている」と確信した康正。
この時,康正は我慢の限界だったと思います。二人に電源コードをつないで,園子と同じように殺害しようととする康正。ところがまたタイミングよく,加賀が現れるのです。
ここで,加賀が推理するために必要だった重要ポイントとなってくる「利き手」について述べようと思います。
① 園子 :「右利き」バドミントンのラケットのグリップ,封筒の開け方から判断
② 佳世子:「不明」
③ 佃 :「右利き」作品内に,佃は「右利き」であることがわかっている
佳世子の利き手が不明なのに,犯人が推理できるのか。
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加賀たちは事件の真相に近づいてきました。
確かに二人は園子を殺害しようとしましたが,最初に考えたのは佃でした。
園子に「睡眠薬」を飲ませ,自殺に見せかける工作を始めるのです。先に書いた電源コードとタイマーによる感電死のことですね。
そこに,同じように園子を殺害しようと考えていた佳世子が現れます。佃の工作を目の当たりにしますが,なぜか「殺害するのはやめとこう」という話になります。
その後に,誰かがアパートにやってきて,結局自殺に見せかけ,殺害します。
問題はこれが誰かということなんですが。。。
ここでポイントになってくるのが,二度目に実行した殺害の際にも「睡眠薬」を使用した形跡があります。
つまり,ゴミ箱の中には「2つの睡眠薬の袋」が存在したわけです。1つは最初の殺人計画未遂の時,もう1つは後で実際に殺害を実行した人間によるものです。
園子はラケットの持ち方が左利きだと書きましたが,実は食事などは右利きでした。こういう人,いますよね。部分的に矯正されたような利き手を持つ人。
ただ,もし薬袋を破るとすれば左利きでしょう。
しかし,最初に偽装工作をした佃は,園子が右利きと思い込み,睡眠薬を「右利きの破り方」をします。佃も右利きなんですけどね。
そして問題は2つ目の袋がどのように破られていたかです。康正に言われて破らされた佳世子のはずです。
佳世子の利き手がわからないのにどうやってわかるのでしょう。これは仮説を立てて考えるとわかります。
仮に「左利き」で破られていたとしましょう。そうすると園子も佳世子も左利きということなので,園子が破ったかもしれない。
つまり園子の自殺説が否定できないということになります。これでは犯人がわかりません。
ということはこの袋は「右利き」で破られていたということになります。
加賀は最後に「犯人はあなただ」と断定しています。犯人が特定できたということについて帰納法的に考えていくと,佳世子と佃の利き手は逆だったということになります。
そう,佳世子は左利きだったのです。
つまり犯人は右手の利き手を持つ「佃純一」ということになるのです。
は~,なるほど,さすが「袋とじ」にはすごい秘密が詰まっていました。
さすがにわからなかったです。袋とじ開けるまでは。
この作品では、最終的に誰が犯人とかは明かされない。それまでの文脈で読者がそれを判断するという、斬新な物。なかなか面白かったです。
ネットで検索してみても同様のことが書いてありました。
でもよく読むと,逆の人間を指している記事もあって,読者によって受け取り方も違うのかなって思いました。
いずれにしても,この手法を思いついた東野圭吾先生には脱帽です。
同じ「加賀恭一郎」シリーズの「私が彼を殺した」も同じような作風なので,また別の機会にブログで書こうと思います。
それにしても,今回のブログはどう書くいたらよいのか,かなり悩みました。
少しでも内容が伝わってくれれば幸いです。
● 最後の犯人を読者に推理させるという手法が面白かった
● 加賀恭一郎が解決した思考力に感服でした