自分の今の状況が「ちょっと今から仕事やめてくる、って言えたらどれだけ楽にだろう」って思ってる時だときっと共感できる作品です。
ページ数も200ページ強くらいだからとても読みやすい。そしてとても勇気をもらえました。絶対読んだ方がいい!
北川恵海先生のことを知らなかったので,一層「他の作品も読んでみたい」って強く思いました。
本作品,ドラマ化されていたんですね。本当に知りませんでした。福士蒼汰さんや黒木華さんなど,結構豪華キャストで。
世の中にはこんなキツい思いしながら働いている人ってたくさんいるんだろうなって思いながら読みました。
自分はまだマシだな,と。
目 次
1. こんな方にオススメ
2. 登場人物
3. 本作品 3つのポイント
3.1 青山を助けた人物
3.2 青山,大ピンチ!
3.3 ヤマモトの正体とは
4. この作品で学べたこと
● 青山を救った「ヤマモト」の正体を知りたい
● 人生に悩んでいる方,苦しんでいる方
かつてブラック企業に勤めボロボロになったものの、謎の男ヤマモトと出会ったことで本来の自分を取り戻した青山。そして彼の前から姿を消してしまったヤマモト――。
すべての働く人が共感して泣いた感動作『ちょっと今から仕事やめてくる』で語られなかった、珠玉の裏エピソードが、いま明かされる。
青山とヤマモトの、そして彼らと出会った人たちの新しい物語が、また始まる。
仕事に悩み、日々に迷う人たちに勇気を与える人生応援ストーリー!!
-Booksデータベースより-
1⃣ 青山を助けた人物
2⃣ 青山,大ピンチ!
3⃣ ヤマモトの正体とは
主人公の青山は,東京の印刷業界の中小企業に働くサラリーマンです。
朝6時に起床し,約2時間かけて通勤。そこから仕事を始めるも,帰れるのが9時すぎ。
また2時間近くかけて電車に揺られ,寝れるのは夜中の1時。ショートスリーパーの人っているとは思うけど,こんな生活は絶対にできないなぁ。
いや,でも昔そんな生活してたことがあったっけな。
結局体を壊してしまえば会社を退職することになるわけで。そんなことを思い出してしまいます。
さらに土曜出勤は当たり前で,貴重な日曜日には顧客のクレーム対応をしなければならない日も。
これで人間関係が良ければまたいいけど,山上という部長からはパワハラを受け,まさにブラック企業で働く青山。
そんなこと繰り返していたらそりゃ病みますよね。読みながらゾッとしてしまいました。
ある日,仕事が終わり帰宅途中,会社から電話が入ります。もう疲れ果てていた青山はその電話には出ませんでした。何か開き直ってしまっている感じ。
このまま,この心穏やかなままで気を失ったら,ホームに落ちるんだろうか
そうしたら明日,会社へ行かなくても済むかな
僕自身も苦しかった時「このまま落ちたら楽になれるんだろうか」って,一度だけ思った記憶があるなぁ。だから青山の気持ちが本当によくわかる。
今にも落ちそうになる青山。そこに一人の男が現れ,青山の腕をガシッと掴みます。
見覚えのない男。なぜ彼は青山を掴んだのか。
久しぶりやな! 俺や,ヤマモト!
なんだ,青山の知り合いかと思いきや,青山はそのヤマモトと名乗る男に全く見覚えがありません。
大阪弁丸出しの体格のいい,歯を見せてニカッと笑うような男性。
ヤマモトは青山の同級生で,途中で転校してしまったから覚えてない,というようなことを言います。
ヤマモトは本当に同級生なのか,青山は半信半疑のまま,ヤマモトに呑みに誘われ行くことになるのです。
居酒屋で会話を始めるヤマモト。見覚えがない青山は話をわざと合わせます。ヤマモトはニートでした。別にニートでも生きていける,というようなことを言っています。
過去のことで盛り上がる二人。青山は次第にヤマモトのことを信じるようになり「奇跡の再会」と思うようになりました。
月曜日の朝は,死にたくなる
火曜日の朝は,何も考えたくない
水曜日の朝は,一番しんどい
木曜日の朝は,少し楽になる
金曜日の朝は,少し嬉しい
土曜日の朝は,一番幸せ
日曜日の朝は,少し幸せ。でも明日を思うと一転,憂鬱
これ,青山が作った曲です。作詞 青山隆。
ん~,わかるなぁ。日曜日の夜は「サザエさん症候群」で、月曜日の朝は「ブルーマンデー」みんなもやっぱキツいのかなぁ。
青山の会社には五十嵐という先輩がいました。
青山がある顧客の契約が取れそうになっていることに五十嵐も気になっているようでした。ヤマモトと青山は毎週のように呑みに行くようになります。青山にとってはそれが息抜きにも思えました。そのせいか,最近の青山は元気が出てきたようです。
本作品は本当にポイントを突いている。確かに誰かに話をするだけで,気持ちが楽になることがありますもんね。
ヤマモト,いいやつ。って思ってましたけど,ここで意外な事実がわかります。
青山の友人に岩井という男がいて,彼はこう言うのです。
「ヤマモトケンイチは、今ニューヨークにいるはず!」
えっ,てことはヤマモトは偽者。何となくそんな気がしてたけど。。。
どうやらヤマモトの話すことには嘘があるようです。一体,ヤマモトは何者なんでしょうか。青山は次にヤマモトと会った時に,本当のことを聞くと決めます。
「ヤマモトって名前は本当なのか?」
どうやらヤマモトの本名は「山本純」のようです。その証拠の免許証まで出すのです。確かに同じ顔。
ってことは,どういうこと?
話は変わって,青山に仕事の大クレームが来ます。
小谷製菓への納品物が,実際に指定していた紙種と違ったらしいのです。
青山は部長から問い詰められます。「しっかり確認したのか」と。工場からも「納期までに同じ紙種を届けることも不可能だ」とも言われ,青山は顔面蒼白になってしまいます。
ここに五十嵐先輩が仲介に入って,先方と話をつけることになり,青山は小谷製菓の担当を外されてしまうのです。
青山は精神的に追い詰められます。五十嵐先輩以外は誰もフォローしてくれない。部長はカンカン。
ヤマモトと出会って,一時期は仕事に対しても意欲的になりつつあった青山も,この件を境に希望を失ってしまった感じ。
確かに誰にでもミスはあると思うけど,あの慎重な青山がこんな単純なミスをするだろうか。
ヤマモトにもこの件を話します。ヤマモトは何とか励まそうとしてますが,青山は卑屈になってるようです。正社員にならないといけないと考える青山と,別にニートでも生きてればいいと考えるヤマモト。ここでヤマモトが衝撃の事実を話します。
「お前,死のうとしてたやん」
あの,駅のホームで青山が落ちそうになっていたことを話し出すのです。やっぱりあの時,ヤマモトは青山の異変を感じていたんですね。
どうやらヤマモトは暗い感じの青山の跡をつけていたようです。
「心配やったから,死んでしまいそうで。。」
その話をした時,初めてヤマモトは暗い表情を見せるのでした。
ヤマモトには何か隠していることがあるんじゃないだろうか。う~ん,一体なんだろう。。。ある日,青山は五十嵐先輩と険悪なムードになり,屋上で話すことになります。
青山は五十嵐先輩からは自分の失敗をフォローしてもらって感謝しているようでした。
しかし,五十嵐先輩から衝撃の言葉を聞くのです。
もう,わかってんだろ? 俺がやったんだよ!
小谷製菓の発注を書き換えたのは俺だよ!
青山にとっては衝撃だったでしょうけど。ただ読んでて何となく何かありそうな気はしました。
では五十嵐先輩が書き換えた理由は何だったのか。
それは,青山に大型発注を取られたくなくて,青山を貶めようとしていたからでした。
五十嵐先輩は,地道に仕事をして徐々に結果を出す青山に対して嫉妬していたんですね。これが組織で働くことの恐ろしさの一つかもしれないですね。青山は苛立ちを隠せません。結局は自分の存在が誤発注を誘導させたこと。
物に当たり散らす青山。うまく行かない人生に苛立っているようでした。
青山はその話をヤマモトに話します。ヤマモトは青山に聞くのです。
「あのさ,隆。人生は誰のためにあると思う?」
なぜそんなことを聞くのか。「自分のため」って答えたくなります。
そう,半分は自分のためにある。では,残りの半分は誰のためにあると思う?
お前は自分の気持ちばかり考えているけどさ,一回でも残された者の気持ちを考えたことあるか?
なんで助けてあげられなかったのか,一生後悔しながら生きていく人間の気持ち,考えたことあるか?
それを聞いた青山は,両親の顔が思い浮かぶのでした。
実家に電話する青山。母親と久しぶりに会話します。何気ない会話の中にも愛情を感じる青山。
電話を切る前に「いつでも帰ってきていいんだからね」と言われます。やはり親と言うのは子供のことをいつも想っているのでしょう。
「親の心,子知らず」という言葉が思い浮かびます。
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ある日,仕事で外回りをしていた時,駅のホームでヤマモトの姿を見かけます。
ヤマモトは駅から出ている霊園行きのバスへ乗り込みます。
そして,そのヤマモトの表情はいつものヤマモトのものではありませんでした。とても暗い表情をしていました。
青山はネットで「山本純」を検索します。あるブログがヒットします。そこには衝撃の事実が。。。
どうやら「山本純」は3年前に自殺していて,この世にいなかったのです。ブログの投稿者は「みぃ」と言いました。
青山は,ヤマモトの正体を探ろうと図書館へ向かいます。新聞や週刊誌から山本純に関する記事を探し出しました。ここで青山はようやく,ヤマモトが必死で自分を助けたことを理解するのです。
では青山と会っている「ヤマモト」は何者なのか。
それを知るため「みぃ」に連絡します。すると返信が来ました。どうやら山本純の実家は大阪のようです。
青山は山本純の実家へ行く決心をするのでした。
青山が会った「みぃ」というのは,年配の女性でした。山本純の母親です。
山本純は,今の青山のように真面目な人物だったようです。そして純の母親は言うのです。
私の後悔はあの子に「逃げ方」を教えてあげていなかったこと。
あの子は小さい頃から真面目で,いつも「頑張れ,頑張れ」って励ましていた。
そして,慣れない環境で逃げることも弱音を吐くこともできずに,とうとう壊れてしまったの
青山は純の母親の話を聞いて,今の自分とダブらせているようでした。そして,あのヤマモトがなぜ自分を助けようとしたのかも。
山本純と同じ顔をしたヤマモトの正体。ここまでくればわかりますよね。
そう,山本純と「ヤマモト」は双子の兄弟だったんです。
本名は山本優。名前の通り,本当に優しい人間だったんですね。
そして青山はここで大きな決断をするのです。何か吹っ切れたような感覚。
久しぶりに会社に出社した青山。部長からは「お前今までどこで何をしていた!?」と怒鳴られます。
ここで青山から意外な言葉が飛び出します。
「いつもうるせえのはお前だよ!」
周りの社員たちが凍りつきます。あの真面目でおとなしい青山のセリフとは思えません。
俺,今日で仕事辞めます!
タイトルの言葉はここで飛び出すんですね。とうとう言っちゃいました。そして続けます。
俺の人生はお前のためにあるんでも,会社のためにあるんでもない。俺の人生はなあ,俺と,俺の大切な人間のためにあるんだよ!
これ以外にも青山は部長に対していろいろな言葉を浴びせます。
これがスカッとしました。実際に読んでほしいです。
五十嵐先輩も「青山,頑張れよ!」と最後に励ましてくれるのもよかった。
仕事を辞めた青山は「臨床心理士」を目指していました。ニートではなく,フリーランスとして活躍しようとする青山。思い浮かべるのはあの「ヤマモト」のこと。彼とはすでに会わなくなっていました。
最後に場面は変わります。どうやら病院のようです。
「ゆう先生,こんにちは」
一人の少女が話しかけます。なるほど,この場面は「彼」の視点なのか。
一瞬暗い表情をすることがあるこの男性に,ある人物が話しかけます。
先生,俺にも救いたい人がいるんだよ。
俺はその人に命を救ってもらったから,今度は俺がその人を苦しみから救いたい。
それを聞いた男性は思うのです。
「なあ,純。人生,そんな悪いもんじゃないぞ」と。
苦しい時や悩んでいる時,自分のことしか考えられないことってありますよね。
でもその後のことを考えて,何とか踏みとどまっているような気がします。
もし自分と親しい誰かが亡くなってしまった時,なぜ助けてあげられなかったのか。
逆の立場になって考えると絶対に後悔すると思います。
それが客観的に考えられれば,ひょっとしたら抑止力になるかもしれない。
世の中には,年間に約2万人以上もの方々が,悩み苦しんだ末に亡くなっています。
本作品の青山とヤマモトの存在は,僕自身にとっても共感できたし,勇気を与えてくれるものでした。
苦しい時を乗り越えた時って,本当に思うんですよね。
「人生,そんなに悪いもんじゃないぞ」と。
● 世の中には仕事をしながら,学校に通いながら悩んでいる人が多いということ
● 人生に苦しんでいる人は,同じ境遇にいる人の気持ちがわかる
● 最後に主人公が言い放った上司への言葉が痛快だった